クイズ好きの彼女

結葉 天樹

文字の大きさ
1 / 1

それでは問題です

しおりを挟む
「それでは問題です」

 今年もあと五分で終わるというその時、年越し蕎麦をすする俺に向けて、茉莉まつりが指を突き付けた。

「年越し蕎麦は、どうして年末に食べるのでしょう?」
「蕎麦は他の麺よりも切れやすいから、『その年の厄を断ち切る』って意味で食べるんだろ?」
「正解」

 あっさり答えられたことに茉莉は少しつまらなそうだった。恐らくその問題を出してくると思っていたから年越し蕎麦に関しては予習済みだ。

「じゃあ、大晦日に現れる秋田県男鹿半島の鬼――」
「なまはげ」
「……正解」

 不貞腐れた。
 茉莉はこうやってことあるごとに仕入れた知識をクイズにして俺に出題してくる。
 だけど大抵が巷で話題になっていることや季節のネタなので、その傾向は簡単に読める。
 まあ、お陰で世間の話題には敏感になっているので、ありがたくもあるのだが。

「なかなか孝輔こうすけくんに参ったって言わせられないなあ……あ、ミカン取ってー」
「はいよ」

 さっき買ってきたミカンを炬燵に突っ伏す茉莉の前に転がしてやる。

「んー、甘くて美味しい!」

 そして、ミカンを食べて機嫌はすぐに直った。喜怒哀楽がころころ変わる茉莉の表情は見ていて飽きない。

「今年も終わりだねー」
「そうだな」

 今年が終わるまであと三分。まったりとした時間を過ごす。

「明日の初詣、何時に出かける?」
「混みそうだし、午前中か夕方ぐらいがいいかもな。寒いから甘酒を飲むのもいいな」
「それでは問題です。甘酒はいつの季語でしょう?」
「夏」
「むー」

 危なかった。今のは昨日、ネットで偶然見たから答えられたんだ。
 茉莉も今の問題は結構自信があったらしい。腹いせに炬燵の中で脚を蹴られた。

「ふあぁぁ……なんか眠くなってきた」
「疲れてる?」
「……まあな」

 大晦日なのに今日はバイトがあった。夕方に終わってから茉莉と待ち合わせて、買い物をした。今日は閉店が早いのでギリギリだった。

「ほらほら孝輔くん。テレビでもカウントダウン始まったよ!」
「ん……そうだな」
「あー、寝たらだめだって!」
「そんなこと言っても……」

 疲れと炬燵の暖かさ、年越し蕎麦を食べた満腹感で……だめだ、眠い。
 テレビの中でアイドルとファンが告げる時間がまもなくゼロになる。

「もー……あ、そうだ」

 何かを企んだような声が聞こえた。また新しいクイズを思いついたのだろうか。

「ふふふ……ごー、よーん、さーん、にー、いーち」

 近づいてきた?
 だけどごめん。眠くてもう付き合えない――。

「ゼロー!」
「――っ!?」

 唇に押しつけられる柔らかい感触。ふわりと香る甘い匂い。その不意打ちに俺は一気に目が覚めた。

「な、え……ちょ、お前?」
「えへへー、あけましておめでとう。孝輔くん」

 覚醒してすぐに目に入ったのは口元に指をあて、悪戯な顔ではにかむ茉莉の顔。

「それでは問題です」

 顔が赤いのは照れなのか、それとも炬燵で温まったからか。

「今のキスは去年最後のでしょうか、今年最初のでしょうか?」

 参った。二つの意味で。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

2回目の逃亡

158
恋愛
エラは王子の婚約者になりたくなくて1度目の人生で思い切りよく逃亡し、その後幸福な生活を送った。だが目覚めるとまた同じ人生が始まっていて・・・

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

Good Bye 〜愛していた人〜

鳴宮鶉子
恋愛
Good Bye 〜愛していた人〜

裏切り者

詩織
恋愛
付き合って3年の目の彼に裏切り者扱い。全く理由がわからない。 それでも話はどんどんと進み、私はここから逃げるしかなかった。

恋愛対象じゃないって言ったよね?

紗凪
恋愛
長編書いてから初めてのショートショートです!読んでくれたら嬉しいです😊今回もリクエスト受け付けております!(リクエストはコメントでお願いします🙇‍♀️)

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

利害一致の結婚

詩織
恋愛
私達は仲のいい夫婦。 けど、お互い条件が一致しての結婚。辛いから私は少しでも早く離れたかった。

処理中です...