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それでは問題です
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「それでは問題です」
今年もあと五分で終わるというその時、年越し蕎麦をすする俺に向けて、茉莉が指を突き付けた。
「年越し蕎麦は、どうして年末に食べるのでしょう?」
「蕎麦は他の麺よりも切れやすいから、『その年の厄を断ち切る』って意味で食べるんだろ?」
「正解」
あっさり答えられたことに茉莉は少しつまらなそうだった。恐らくその問題を出してくると思っていたから年越し蕎麦に関しては予習済みだ。
「じゃあ、大晦日に現れる秋田県男鹿半島の鬼――」
「なまはげ」
「……正解」
不貞腐れた。
茉莉はこうやってことあるごとに仕入れた知識をクイズにして俺に出題してくる。
だけど大抵が巷で話題になっていることや季節のネタなので、その傾向は簡単に読める。
まあ、お陰で世間の話題には敏感になっているので、ありがたくもあるのだが。
「なかなか孝輔くんに参ったって言わせられないなあ……あ、ミカン取ってー」
「はいよ」
さっき買ってきたミカンを炬燵に突っ伏す茉莉の前に転がしてやる。
「んー、甘くて美味しい!」
そして、ミカンを食べて機嫌はすぐに直った。喜怒哀楽がころころ変わる茉莉の表情は見ていて飽きない。
「今年も終わりだねー」
「そうだな」
今年が終わるまであと三分。まったりとした時間を過ごす。
「明日の初詣、何時に出かける?」
「混みそうだし、午前中か夕方ぐらいがいいかもな。寒いから甘酒を飲むのもいいな」
「それでは問題です。甘酒はいつの季語でしょう?」
「夏」
「むー」
危なかった。今のは昨日、ネットで偶然見たから答えられたんだ。
茉莉も今の問題は結構自信があったらしい。腹いせに炬燵の中で脚を蹴られた。
「ふあぁぁ……なんか眠くなってきた」
「疲れてる?」
「……まあな」
大晦日なのに今日はバイトがあった。夕方に終わってから茉莉と待ち合わせて、買い物をした。今日は閉店が早いのでギリギリだった。
「ほらほら孝輔くん。テレビでもカウントダウン始まったよ!」
「ん……そうだな」
「あー、寝たらだめだって!」
「そんなこと言っても……」
疲れと炬燵の暖かさ、年越し蕎麦を食べた満腹感で……だめだ、眠い。
テレビの中でアイドルとファンが告げる時間がまもなくゼロになる。
「もー……あ、そうだ」
何かを企んだような声が聞こえた。また新しいクイズを思いついたのだろうか。
「ふふふ……ごー、よーん、さーん、にー、いーち」
近づいてきた?
だけどごめん。眠くてもう付き合えない――。
「ゼロー!」
「――っ!?」
唇に押しつけられる柔らかい感触。ふわりと香る甘い匂い。その不意打ちに俺は一気に目が覚めた。
「な、え……ちょ、お前?」
「えへへー、あけましておめでとう。孝輔くん」
覚醒してすぐに目に入ったのは口元に指をあて、悪戯な顔ではにかむ茉莉の顔。
「それでは問題です」
顔が赤いのは照れなのか、それとも炬燵で温まったからか。
「今のキスは去年最後のでしょうか、今年最初のでしょうか?」
参った。二つの意味で。
今年もあと五分で終わるというその時、年越し蕎麦をすする俺に向けて、茉莉が指を突き付けた。
「年越し蕎麦は、どうして年末に食べるのでしょう?」
「蕎麦は他の麺よりも切れやすいから、『その年の厄を断ち切る』って意味で食べるんだろ?」
「正解」
あっさり答えられたことに茉莉は少しつまらなそうだった。恐らくその問題を出してくると思っていたから年越し蕎麦に関しては予習済みだ。
「じゃあ、大晦日に現れる秋田県男鹿半島の鬼――」
「なまはげ」
「……正解」
不貞腐れた。
茉莉はこうやってことあるごとに仕入れた知識をクイズにして俺に出題してくる。
だけど大抵が巷で話題になっていることや季節のネタなので、その傾向は簡単に読める。
まあ、お陰で世間の話題には敏感になっているので、ありがたくもあるのだが。
「なかなか孝輔くんに参ったって言わせられないなあ……あ、ミカン取ってー」
「はいよ」
さっき買ってきたミカンを炬燵に突っ伏す茉莉の前に転がしてやる。
「んー、甘くて美味しい!」
そして、ミカンを食べて機嫌はすぐに直った。喜怒哀楽がころころ変わる茉莉の表情は見ていて飽きない。
「今年も終わりだねー」
「そうだな」
今年が終わるまであと三分。まったりとした時間を過ごす。
「明日の初詣、何時に出かける?」
「混みそうだし、午前中か夕方ぐらいがいいかもな。寒いから甘酒を飲むのもいいな」
「それでは問題です。甘酒はいつの季語でしょう?」
「夏」
「むー」
危なかった。今のは昨日、ネットで偶然見たから答えられたんだ。
茉莉も今の問題は結構自信があったらしい。腹いせに炬燵の中で脚を蹴られた。
「ふあぁぁ……なんか眠くなってきた」
「疲れてる?」
「……まあな」
大晦日なのに今日はバイトがあった。夕方に終わってから茉莉と待ち合わせて、買い物をした。今日は閉店が早いのでギリギリだった。
「ほらほら孝輔くん。テレビでもカウントダウン始まったよ!」
「ん……そうだな」
「あー、寝たらだめだって!」
「そんなこと言っても……」
疲れと炬燵の暖かさ、年越し蕎麦を食べた満腹感で……だめだ、眠い。
テレビの中でアイドルとファンが告げる時間がまもなくゼロになる。
「もー……あ、そうだ」
何かを企んだような声が聞こえた。また新しいクイズを思いついたのだろうか。
「ふふふ……ごー、よーん、さーん、にー、いーち」
近づいてきた?
だけどごめん。眠くてもう付き合えない――。
「ゼロー!」
「――っ!?」
唇に押しつけられる柔らかい感触。ふわりと香る甘い匂い。その不意打ちに俺は一気に目が覚めた。
「な、え……ちょ、お前?」
「えへへー、あけましておめでとう。孝輔くん」
覚醒してすぐに目に入ったのは口元に指をあて、悪戯な顔ではにかむ茉莉の顔。
「それでは問題です」
顔が赤いのは照れなのか、それとも炬燵で温まったからか。
「今のキスは去年最後のでしょうか、今年最初のでしょうか?」
参った。二つの意味で。
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