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第一章「慟哭の和魂」
第02話 「一緒」の生活
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伊薙家は戦国時代に端を発する武士の家系だった。かつてはこの地を治めていたこともある。その名残で海斗の家は広い土地に平屋造りの日本家屋が建っている。他にも蔵や道場など、武家の家だった頃の名残が各所に見受けられる。
そんな道場の中で、海斗は朝から竹刀を持って祖父のしごきを受ける羽目になっていた。
「きえええーいっ!」
「痛えっ!」
絶叫と共に武志が振り下ろした竹刀が頭を叩く。海斗の目の前に星が散った。
「この程度で何を痛がる、軟弱者が!」
「痛いに決まってるだろ。せめて防具くらいつけさせてくれよ!」
そもそも道場まで強制的に引っ張り込まれ、いきなりの稽古だ。彼はまだパジャマから着替えてすらいない。
「手加減くらいしておるわ!」
「そういう問題じゃないって!」
『スパルタねえ……』
「誰のせいでこうなったんだよ!」
体の中で述べるミサキに海斗はツッコミを入れる。どうやらダメージは共有していないらしく、彼女の声は平然としたものだった。
だが、彼女と会話ができるのは海斗のみだが、その言葉を聞き取れるのはこの場にはもう一人いる。
「誰のせいかじゃと?」
「しまった!?」
「海斗、まだ目が覚めておらんようじゃのう」
武志が竹刀を振り上げ、鍔元を左手で、柄を右手に持ち変える。その構えを見て海斗の顔色が蒼くなる。
右上段の構え。武志が最も得意としている超攻撃型の構えだ。
「じいちゃん、冗談きついって!」
「上段だけにのう!」
「シャレになってないよ!」
慌てて海斗も竹刀を持ち直す。半身に構え、中段より少し高めに竹刀を持ち上げ、右腕に交差するように左手で柄を持つ。
剣先は相手に向け、竹刀の裏で面と小手と胴のすべてをカバーする。その体勢を見てミサキが呟いた。
『霞の構え?』
「なんだよ、知ってるのか?」
『うん、どうしてかは知らないけど』
日々、武志にしごかれている内に、海斗が身を守るために身に着けた防御の型だった。実際、上段からの攻撃には対処しやすい構えだ。
「何をぶつぶつ言っておる。心の乱れは剣の乱れじゃぞ!」
「いけね!」
「ふんっ!」
ミサキに気を取られている隙を武志は逃さない。雷のように振り下ろされる竹刀を海斗は受けきれない。
「痛ってーっ!」
「カッカッカ! 海斗、お前がだらしのない生活をしていればすぐに剣に出るのじゃぞ!」
一撃の下に竹刀を叩き落されてしまう。その衝撃で海斗の手が痺れていた。
『それにしても、元気なお爺ちゃんね』
「ああ、たぶん百歳過ぎてもピンピンしてる気がするよ」
「なんじゃ。このわしの元気さが羨ましいのか? カッカッカ。わしは幼い頃から毎日鍛錬をかかしたことがないからじゃ。そのお陰で病気一つしたことないわ!」
海斗がうんざりした表情を浮かべた。祖父の自慢話が始まると長くなることを彼はよく知っていた。
「見ろ、このわしの肉体を! 齢七十七にしていまだ健康そのものじゃ!」
『きゃああああーっ!』
「ぐわっ!」
いきなり武志がもろ肌を脱ぎ、その鍛えられた肉体を見せつけた。海斗には見慣れた光景だがミサキはそうではない。予期しないタイミングで悲鳴が上がり、防ぐことのできない大声が海斗の耳を貫いた。
「み、耳が……」
『あんたの家の男、変態しかいないの!?』
「濡れ衣だ! いたって普通の家庭だ!」
『いきなり脱ぐおじいさんが普通なわけないでしょ!』
ミサキの指摘に、海斗も一瞬だけ「もっともだ」と思ってしまった。
「話を聞かんか海斗!」
「おっと!」
また叩かれてはたまらないとばかりに海斗は距離を取る。
「陰口とは武士の風上にもおけん奴じゃ」
「違う」
「言いたいことがあるのならはっきり言わんか!」
『……正直お爺さんの裸に迫られるのは勘弁してほしいわ』
「ぶっ!」
頭の中の声に思わず海斗は噴き出してしまった。それを見て祖父の眉が釣り上がる。
「何を笑っておる!」
「なんでもありません!」
「情けない……そんな様で五百年の歴史を持つ伊薙一刀流を継げるとでも思っておるのか!」
『え、この剣術ってそんな伝統ある流派なの?』
「いや……実はこれ、じいちゃんの道楽なんだ」
言いづらそうに海斗が答える。
武士の家系と言うこともあり、伊薙家の男子は彼らが今いるこの道場で稽古に励むのが慣習となっている。とは言え、別に技を磨きあげて流派を起こしたわけでもなく、元々はただ武士として心身を鍛えるためのものだった。だが、武志が時代劇マニアだったこともあり、家を継いだ時に勝手にその剣術に流派名をつけてしまったのだ。
「『伊薙一刀流』なんて大層な名前がついているけど、特に由緒があるわけじゃないんだ。俺がやっているのも日々の体力づくりが目的だよ」
『なんと言うか……エキセントリックなおじいちゃんね』
「……言葉を選んでくれて感謝するよ」
「なんじゃ海斗、まだ性根を叩き直されたいのか?」
ゾッとする言葉に海斗が全力で首を振った。
「それよりじいちゃん、そろそろ朝飯にしないと」
「む? おお、そう言えばこんな時間か」
時計を指すと武志も殺気を収める。朝っぱらから激しく動いていたのでいい加減海斗も空腹だった。
「今日は豆腐の味噌汁が欲しいのう」
「それ、母さんに言ってよ」
「何を言っておる。おらんからお前に言っておるんじゃ」
竹刀袋の紐を縛る海斗の手が止まった。
「え、母さんいないの? なんで?」
「ありゃ、言っておらんかったか?」
「初耳だよ!」
武志がポリポリと頭を書いて苦笑する。どうやら朝のドタバタで言うのを忘れていたらしい。
「部活の指導とか言っておったのう。そうそう、夜も会議で遅くなるそうじゃ」
「それ早く言ってよ!」
海斗の母親は彼が通う高校の教員だ。今日は顧問を務めている水泳部のプール開きなので早く家を出たのだと言う。ちなみに父親は会社の社長を務めており、昨日から出張だった。
両親が互いに帰りが遅いこともあって、自然と海斗は料理をする機会が増え、ある程度のものなら作ることができる。
「それだと、俺が作るしかないじゃんか」
「カッカッカ。うまい飯を期待しておるぞ」
「はあ……てことは夕飯も俺か。カレーはこの間作ったし……何かいいレシピがないか、美波に聞いとかないと」
『美波?』
初めて出る名前にミサキの疑問の声が聞こえて来た。海斗は武志に聞こえない様に小声で呟く。
「幼馴染だよ」
『へー、ガールフレンドがいるなんて隅に置けないじゃない』
「そんなんじゃないよ」
肩をすくめて海斗が言った。親同士が出産のときに同じ病室だった縁で知り合い、小さい頃から一緒なだけだと。
『ま、そう言うことにしておきましょうか』
「なんだよ、思わせぶりに」
『美波って子の名前が出た瞬間、あんたの心が落ち着いた感じがしたのよ』
「……」
内心の自由は無いのかと海斗は叫びたくなった。
「付き合いが長いから家族同然なんだよ。それに、幼馴染はもう一人いるし」
『へー、ちなみにそっちの子のことはどう思っているのかしら?』
「今、お前がどんな表情してるか凄くイメージできるんだけど」
どんな姿をしているかはわからないが、その表情はニヤニヤとしているに違いない。目の前にいたら確実に一発チョップくらいは入れているだろう。海斗はそれだけは確信が持てた。
「ふむ、美波ちゃんか……何ならうちに呼んでも良いんじゃぞ?」
「いいよ。向こうも学校祭の準備で忙しい時期だし」
「おお、もうそんな頃か」
六月も下旬になり、もうすぐ開催される学校祭に向けて、現在海斗の高校では生徒会や各部活が準備を進めている。二人の話題に出て来た人物、神崎美波も所属している料理部でメニューの試作に取り組んでいるところだった。
「お前は何かやらんのか?」
「がらじゃないさ。俺は客として参加するつもりだよ」
「なんじゃ、つまらんのう」
「それじゃ、とりあえず着替えて来るよ」
海斗は苦笑して、竹刀袋を持って道場の外に向けて歩き出す。多少遅くなったが簡単な朝食なら作れるだろう。後は何を付け合わせにするか、それを考えるだけだった。
「しまった、忘れてた」
自室にたどり着いて海斗はようやく現実を思い出し頭を抱えた。彼の部屋は朝の落雷で半壊していたのだ。
「とほほ……帰ったら片付けだな、これ」
スマホで確認すると幸いにも梅雨明け宣言が出ており、しばらく雨の予定はないと言う。
天井の残骸が転がる部屋の中に入るのは気が滅入るが、その下からカバンを引っ張り出し、奇跡的に無事だったクローゼットから学生服とワイシャツを出す。
そして、パジャマのボタンを外――。
『ちょちょちょちょ、ちょっと待ちなさいよ!?』
「だあっ!」
ボタンを外そうとしたところでまたミサキが声を張り上げた。
その動揺した感情が海斗にも伝わって来る。
「何だよ、急いでるんだ」
『それは分かってるけど、あんた女の子のいる前で着替える気!?』
「……」
これまでの彼女の言葉を振り返る。考えてみれば海斗が見ている物について彼女も言葉を発していた。いまさら気付くのも遅い気がするが、つまり二人の視覚は共有されているということになる。
『私が見えないように着替えてよ』
「無茶を言うなよ!」
理不尽とはこういうことを言うのだろうか。だがここで「学校を休め」と言わない辺り、彼女自身も根は真面目な性格であることが海斗にはうかがえた。
そしてしばらくの言い合いの後、海斗が下を見ないようにして着替えるという案で渋々ながらお互いに決着するのだった。
そんな道場の中で、海斗は朝から竹刀を持って祖父のしごきを受ける羽目になっていた。
「きえええーいっ!」
「痛えっ!」
絶叫と共に武志が振り下ろした竹刀が頭を叩く。海斗の目の前に星が散った。
「この程度で何を痛がる、軟弱者が!」
「痛いに決まってるだろ。せめて防具くらいつけさせてくれよ!」
そもそも道場まで強制的に引っ張り込まれ、いきなりの稽古だ。彼はまだパジャマから着替えてすらいない。
「手加減くらいしておるわ!」
「そういう問題じゃないって!」
『スパルタねえ……』
「誰のせいでこうなったんだよ!」
体の中で述べるミサキに海斗はツッコミを入れる。どうやらダメージは共有していないらしく、彼女の声は平然としたものだった。
だが、彼女と会話ができるのは海斗のみだが、その言葉を聞き取れるのはこの場にはもう一人いる。
「誰のせいかじゃと?」
「しまった!?」
「海斗、まだ目が覚めておらんようじゃのう」
武志が竹刀を振り上げ、鍔元を左手で、柄を右手に持ち変える。その構えを見て海斗の顔色が蒼くなる。
右上段の構え。武志が最も得意としている超攻撃型の構えだ。
「じいちゃん、冗談きついって!」
「上段だけにのう!」
「シャレになってないよ!」
慌てて海斗も竹刀を持ち直す。半身に構え、中段より少し高めに竹刀を持ち上げ、右腕に交差するように左手で柄を持つ。
剣先は相手に向け、竹刀の裏で面と小手と胴のすべてをカバーする。その体勢を見てミサキが呟いた。
『霞の構え?』
「なんだよ、知ってるのか?」
『うん、どうしてかは知らないけど』
日々、武志にしごかれている内に、海斗が身を守るために身に着けた防御の型だった。実際、上段からの攻撃には対処しやすい構えだ。
「何をぶつぶつ言っておる。心の乱れは剣の乱れじゃぞ!」
「いけね!」
「ふんっ!」
ミサキに気を取られている隙を武志は逃さない。雷のように振り下ろされる竹刀を海斗は受けきれない。
「痛ってーっ!」
「カッカッカ! 海斗、お前がだらしのない生活をしていればすぐに剣に出るのじゃぞ!」
一撃の下に竹刀を叩き落されてしまう。その衝撃で海斗の手が痺れていた。
『それにしても、元気なお爺ちゃんね』
「ああ、たぶん百歳過ぎてもピンピンしてる気がするよ」
「なんじゃ。このわしの元気さが羨ましいのか? カッカッカ。わしは幼い頃から毎日鍛錬をかかしたことがないからじゃ。そのお陰で病気一つしたことないわ!」
海斗がうんざりした表情を浮かべた。祖父の自慢話が始まると長くなることを彼はよく知っていた。
「見ろ、このわしの肉体を! 齢七十七にしていまだ健康そのものじゃ!」
『きゃああああーっ!』
「ぐわっ!」
いきなり武志がもろ肌を脱ぎ、その鍛えられた肉体を見せつけた。海斗には見慣れた光景だがミサキはそうではない。予期しないタイミングで悲鳴が上がり、防ぐことのできない大声が海斗の耳を貫いた。
「み、耳が……」
『あんたの家の男、変態しかいないの!?』
「濡れ衣だ! いたって普通の家庭だ!」
『いきなり脱ぐおじいさんが普通なわけないでしょ!』
ミサキの指摘に、海斗も一瞬だけ「もっともだ」と思ってしまった。
「話を聞かんか海斗!」
「おっと!」
また叩かれてはたまらないとばかりに海斗は距離を取る。
「陰口とは武士の風上にもおけん奴じゃ」
「違う」
「言いたいことがあるのならはっきり言わんか!」
『……正直お爺さんの裸に迫られるのは勘弁してほしいわ』
「ぶっ!」
頭の中の声に思わず海斗は噴き出してしまった。それを見て祖父の眉が釣り上がる。
「何を笑っておる!」
「なんでもありません!」
「情けない……そんな様で五百年の歴史を持つ伊薙一刀流を継げるとでも思っておるのか!」
『え、この剣術ってそんな伝統ある流派なの?』
「いや……実はこれ、じいちゃんの道楽なんだ」
言いづらそうに海斗が答える。
武士の家系と言うこともあり、伊薙家の男子は彼らが今いるこの道場で稽古に励むのが慣習となっている。とは言え、別に技を磨きあげて流派を起こしたわけでもなく、元々はただ武士として心身を鍛えるためのものだった。だが、武志が時代劇マニアだったこともあり、家を継いだ時に勝手にその剣術に流派名をつけてしまったのだ。
「『伊薙一刀流』なんて大層な名前がついているけど、特に由緒があるわけじゃないんだ。俺がやっているのも日々の体力づくりが目的だよ」
『なんと言うか……エキセントリックなおじいちゃんね』
「……言葉を選んでくれて感謝するよ」
「なんじゃ海斗、まだ性根を叩き直されたいのか?」
ゾッとする言葉に海斗が全力で首を振った。
「それよりじいちゃん、そろそろ朝飯にしないと」
「む? おお、そう言えばこんな時間か」
時計を指すと武志も殺気を収める。朝っぱらから激しく動いていたのでいい加減海斗も空腹だった。
「今日は豆腐の味噌汁が欲しいのう」
「それ、母さんに言ってよ」
「何を言っておる。おらんからお前に言っておるんじゃ」
竹刀袋の紐を縛る海斗の手が止まった。
「え、母さんいないの? なんで?」
「ありゃ、言っておらんかったか?」
「初耳だよ!」
武志がポリポリと頭を書いて苦笑する。どうやら朝のドタバタで言うのを忘れていたらしい。
「部活の指導とか言っておったのう。そうそう、夜も会議で遅くなるそうじゃ」
「それ早く言ってよ!」
海斗の母親は彼が通う高校の教員だ。今日は顧問を務めている水泳部のプール開きなので早く家を出たのだと言う。ちなみに父親は会社の社長を務めており、昨日から出張だった。
両親が互いに帰りが遅いこともあって、自然と海斗は料理をする機会が増え、ある程度のものなら作ることができる。
「それだと、俺が作るしかないじゃんか」
「カッカッカ。うまい飯を期待しておるぞ」
「はあ……てことは夕飯も俺か。カレーはこの間作ったし……何かいいレシピがないか、美波に聞いとかないと」
『美波?』
初めて出る名前にミサキの疑問の声が聞こえて来た。海斗は武志に聞こえない様に小声で呟く。
「幼馴染だよ」
『へー、ガールフレンドがいるなんて隅に置けないじゃない』
「そんなんじゃないよ」
肩をすくめて海斗が言った。親同士が出産のときに同じ病室だった縁で知り合い、小さい頃から一緒なだけだと。
『ま、そう言うことにしておきましょうか』
「なんだよ、思わせぶりに」
『美波って子の名前が出た瞬間、あんたの心が落ち着いた感じがしたのよ』
「……」
内心の自由は無いのかと海斗は叫びたくなった。
「付き合いが長いから家族同然なんだよ。それに、幼馴染はもう一人いるし」
『へー、ちなみにそっちの子のことはどう思っているのかしら?』
「今、お前がどんな表情してるか凄くイメージできるんだけど」
どんな姿をしているかはわからないが、その表情はニヤニヤとしているに違いない。目の前にいたら確実に一発チョップくらいは入れているだろう。海斗はそれだけは確信が持てた。
「ふむ、美波ちゃんか……何ならうちに呼んでも良いんじゃぞ?」
「いいよ。向こうも学校祭の準備で忙しい時期だし」
「おお、もうそんな頃か」
六月も下旬になり、もうすぐ開催される学校祭に向けて、現在海斗の高校では生徒会や各部活が準備を進めている。二人の話題に出て来た人物、神崎美波も所属している料理部でメニューの試作に取り組んでいるところだった。
「お前は何かやらんのか?」
「がらじゃないさ。俺は客として参加するつもりだよ」
「なんじゃ、つまらんのう」
「それじゃ、とりあえず着替えて来るよ」
海斗は苦笑して、竹刀袋を持って道場の外に向けて歩き出す。多少遅くなったが簡単な朝食なら作れるだろう。後は何を付け合わせにするか、それを考えるだけだった。
「しまった、忘れてた」
自室にたどり着いて海斗はようやく現実を思い出し頭を抱えた。彼の部屋は朝の落雷で半壊していたのだ。
「とほほ……帰ったら片付けだな、これ」
スマホで確認すると幸いにも梅雨明け宣言が出ており、しばらく雨の予定はないと言う。
天井の残骸が転がる部屋の中に入るのは気が滅入るが、その下からカバンを引っ張り出し、奇跡的に無事だったクローゼットから学生服とワイシャツを出す。
そして、パジャマのボタンを外――。
『ちょちょちょちょ、ちょっと待ちなさいよ!?』
「だあっ!」
ボタンを外そうとしたところでまたミサキが声を張り上げた。
その動揺した感情が海斗にも伝わって来る。
「何だよ、急いでるんだ」
『それは分かってるけど、あんた女の子のいる前で着替える気!?』
「……」
これまでの彼女の言葉を振り返る。考えてみれば海斗が見ている物について彼女も言葉を発していた。いまさら気付くのも遅い気がするが、つまり二人の視覚は共有されているということになる。
『私が見えないように着替えてよ』
「無茶を言うなよ!」
理不尽とはこういうことを言うのだろうか。だがここで「学校を休め」と言わない辺り、彼女自身も根は真面目な性格であることが海斗にはうかがえた。
そしてしばらくの言い合いの後、海斗が下を見ないようにして着替えるという案で渋々ながらお互いに決着するのだった。
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