Radiantmagic-煌炎の勇者-

橘/たちばな

文字の大きさ
上 下
31 / 47
勇者の極光

海獣ドーファン

しおりを挟む
海底遺跡から出た一行は、泣く泣くサバノがいるメリューナの家に向かう。メリューナの死体は、ディスカに呼び出された兵士達によって棺桶に納められ、珊瑚の公園にて手厚く葬られていた。
「なあ……メリューナさんの事、やっぱりサバノに言うしかねぇのか?」
クレバルが問うものの、誰も答えられない。グラインは痛む傷口を抑えながらも、ただただ無力感に打ち震えていた。
「あ、マホウ使いのお兄ちゃんとお姉ちゃん! メリューナ姉ちゃんは?」
サバノの問いに、グライン達は答える事が出来なかった。だがディスカが意を決して前に出る。
「……サバノ君。どうか落ち着いて聞いて欲しい」
ディスカは淡々と全ての事情を伝え、そしてメリューナの死を告げる。
「……う……うそだ……メリューナ姉ちゃんが死んだなんて……」
サバノは悲しみに震え、嗚咽を漏らしつつも涙を流す。
「……うそだあああああああ!」
泣きながら家から飛び出すサバノ。
「あ、待って!」
止めようとするグラインだが、傷口から激痛が走り、思うように動けない。
「私が行くわ」
リルモがサバノの後を追おうとする。
「サバノ君は私が何とか元気づけるから、みんなは他の用事を済ませて来て」
「え、でも……」
「私の事は気にしないで。何だかわからないけど、あの子を見ていると放っておけないのよ」
そう言い残してサバノを追うリルモ。
「リルモは子供に優しいからな。ここは一旦任せておこうぜ」
「う、うん……」
重苦しい空気の中、グライン達はリルモの意思に従い、ディスカと共に宮殿へ向かう事に。都市内にて昏睡していた住民達は既に目覚めていた。メリューナの死によって催眠が解けていたのだ。
「ポセイドル様もお目覚めになったかもしれぬ。行こう」
宮殿の謁見の間に行くと、大臣の姿が見えなくなっている。兵士からポセイドルが目覚めたという知らせを聞いて、王室に行ったとの事だ。王室に行くと、大臣とポセイドルの姿があった。
「おお、お前達か! たった今、海王がお目覚めになられたのだ!」
喜びの声を上げる大臣。
「ポセイドル様!」
ポセイドルを前に跪くディスカ。
「ディスカか……その者達は?」
目覚めたばかりなのか、寝ぼけ眼のポセイドル。積もる話は後という事で、ポセイドルと大臣は一先ず謁見の間へ向かう。ポセイドルが玉座に腰掛けた時、ディスカはティムと共に改めて全ての事情を説明する。
「なんと、そんな事があったというのか……海王たるこの私が不覚を取るどころか、犠牲までも生んでしまうとは……」
リヴィエラとメリューナの一件を聞かされたポセイドルは自身の無力にやるせなさを感じていた。
「今こそそなたらに碧海の勇者が遺したエレメントオーブを渡さねばならぬ。眠りの中でそう伝えられたのだ」
ポセイドルは眠りの中である人物の声を聴いていた。その人物とは、碧海の勇者タラサの声だった。


海王よ――間もなくこの地に我らの意思を受け継ぎし者が訪れる。

彼らはそなたを魔の縛めから救い、やがて邪悪なる者に挑む。


彼らに、我が血肉となるエレメントオーブを授けて欲しい。

レディアダントを闇から救う為に――


そしてタラサは先代の海王エシガイとは親友の間柄で、現海王のポセイドルはエシガイの子であった。
「タラサからのお告げが来たのは、私の中に父の心が宿っていたが故なのかもしれぬ。父は、私に全てを託したのだからな」
勇者達と魔導帝国の戦いが終わった後、数々の戦いによって深手を負ったエシガイはポセイドルに残る力の全てを託して死を迎え、タラサの勇者の力が封印された水のエレメントオーブを守る使命を与えられていたポセイドル。グライン達が勇者の意思を継ぐ者だと悟り、お告げに従って水のエレメントオーブを与えるべく海底遺跡へ向かおうとする。
「お言葉ですが海王! この者達に易々とエレメントオーブを与えるなどという事は……」
大臣が異議を示す。
「黙っておれ! これはタラサのお告げに従っての事だ。タラサは、父の友でもあるのだからな」
ポセイドルの反論に思わず黙り込む大臣。ポセイドルは一行を連れて謁見の間を出る。
「全く、大臣の頭の固さは面倒なものよ」
ポセイドルは大臣の頑固な性格ぶりにウンザリしている様子だ。
「デモ、話が早くて助かるワ。イヤミな大臣とは大違いネ」
ティムが軽くウィンクをすると、ポセイドルはジッとティムを見つめる。
「な、何かしラ? そんなに見つめられると照れるじゃなイ」
ポセイドルはティムを見て何か思い始める。
「フム……気のせいか、君とは初めて会った気がしない。どこかで知り合いだったような……」
「エ?」
ティムは目を丸くする。
「海王さん。もしかしてこいつの事、何か知ってるのかよ?」
クレバルがティムを指差して問う。
「いや、初対面ではあるのだが……どうもそんな気がしないといったところだ」
初対面であるはずのティムを見ていると、何故か過去に知り合っていた気がしているという不思議な感覚に陥っていたポセイドル。どういう事だよとクレバルがぼやくものの、その答えを知る者は誰もいなかった。
「ティム……君は一体何者なんだ……?」
横目で見つつも呟くようにグラインが言う。
「ワタシの事よりモ。今は目的優先ヨ!」
はぐらかすようにティムが言う。グラインはティムの正体が気になるものの、一先ず考えるのをやめて目的を優先させる事にした。


その頃、リルモはサバノと共にメリューナの墓の前に来ていた。サバノが花を添えると、リルモは黙祷を捧げる。不意に従弟のパルと母のルルカを亡くした記憶が蘇り、涙を流す。
「リルモ姉ちゃん……泣いてるの?」
サバノに言われ、思わず涙を拭うリルモ。
「そ、そんな事ないわ。大丈夫よ」
誤魔化すように言いながらも、リルモは笑顔でサバノの頭を撫でる。
「メリューナ姉ちゃん……どうして死んじゃったのかな」
悲しそうにサバノが呟くと、リルモは何も答えられない。
「……サバノ君。ごめんね……何も出来なくて」
リルモはそっとサバノを抱きしめる事しか出来なかった。サバノはリルモの胸の中で再び泣き出してしまう。リルモはパルの事を思い出しながらも、サバノをずっと抱きしめていた。


この子の辛さと悲しみは痛い程よくわかる。私だって……この子と同じ経験をしたんだから。

せめて、私がこの子の面倒を見てあげられたら――


リルモは胸が痛む思いをしつつも、サバノを抱きしめたまま涙を零した。



ポセイドルに連れられ、再び海底遺跡を訪れる一行。遺跡の奥には古代文字が刻まれた巨大な扉がある。
「我は海王……今こそ封印を解く。イタゴアナメラヒ、ビエジアチマハ……ビワアテタホ、ニウケサモハコタイタ……ログマ!」
封印を解く古代呪文の詠唱を終えた瞬間、扉が光り輝き、重々しい音を立てながらもゆっくり開かれる。扉の向こうには周囲が滝と水に囲まれた巨大な空洞が広がり、台座に飾られた水のエレメントオーブと、巨大なイルカのような像が置かれていた。
「やったワ! ようやく水のエレメントオーブを見つけたわネ!」
オーブを前に喜ぶティムの傍ら、グライン達は巨大なイルカの像に注目していた。
「海王様、あれは?」
「勇者の協力者となる海の長だ」
巨大なイルカは海獣ドーファンと呼ばれる海底人族の兄弟的存在であり、勇者達の海の旅の乗り物として協力していたという。遠い未来、再び必要とされる時が来るまでタラサによって封印され、永い眠りに就いていた。ポセイドルはエレメントオーブを授ける他、グライン達の旅のお供として海獣ドーファンの封印を解こうと考えているのだ。
「あんなでっけぇイルカみてぇな奴も元々生き物だってのか?」
クレバルの言葉に返答する事なく、ポセイドルは封印を解く呪文の詠唱を始める。
「ゲラクデトヒ、コマナシウミウ、ニカメサシラザア……ドトカシアチウイセ、カルイ!」
呪文の詠唱が終わると、ドーファンの目が輝き、封印が解ける。動き始めたドーファンはけたたましい鳴き声を上げながらも、ヒレを大きく広げる。
「うむ、元気そうで何よりだ」
ドーファンの封印が解けた事を確認したポセイドルは、グラインに水のエレメントオーブを与える。
「ありがとうございます。ところで、あのイルカは何の為に封印を?」
「彼はお前達の心強いお供となるであろう。済まぬが宮殿に戻って来て欲しい。もう一つ渡したいものがある」
ポセイドルはディスカと共に部屋を出る。グライン達はドーファンの事が気になりつつも、言われた通りに宮殿へ戻る事にした。
「そういや、リルモは今何処にいるんだ?」
ふとリルモの事が気になったクレバルが呟く。
「サバノ君を元気づけたいって言ってたから、サバノ君のところにいるんじゃあ?」
グラインがそう返すと、不意に死んだメリューナの姿とサバノが泣いてる姿が頭に過ってしまう。
「今はあの子の好きにさせておきなさい。さっさと用事を済ませるわよ」
ガザニアの一言を受け、一行は宮殿に足を運ぶ。宮殿には、サバノと手を繋いだリルモがいた。
「リルモ!」
「多分来ると思って待っていたわ」
サバノは物憂げな表情でリルモに引っ付いている。
「エレメントオーブは?」
「今ちょうど海王様から授かったところだ。もう一つ渡したいものがあるんだとか」
「そう。ちょうど私も海王様にお願いしたい事があってね」
リルモがポセイドルに願う事は、サバノの保護であった。本当なら自分がメリューナに代わって面倒を見てあげたいものの、自分にはまだやるべき事があるので、旅が終わるまでの間サバノを見ていて欲しいと考えているのだ。
「確かにメリューナさんがいなくなったとならば、一人にさせておくわけにはいかないもんね」
「ええ。この旅が終わったら私が……この子の傍にいてあげようと思うの」
リルモはサバノに軽く笑顔を向ける。
「おいおいマジかよ。ま、お前らしい考えだな……」
苦笑いするクレバル。リルモと合流した一行は改めてポセイドルが待つ謁見の間を訪れる。
「うむ、よく来てくれた。こいつを受け取るがいい」
ポセイドルは水色のホイッスルをグラインに差し出す。
「これは?」
「海獣のホイッスルだ。海を渡る時にこいつを吹くとドーファンがお前達の力になってくれるであろう」
一行は海獣のホイッスルを快く受け取る。
「ありがとうございます、海王様!」
「礼には及ばぬ。お前達は選ばれし者だからな」
思わぬ収穫に喜ぶ中、リルモが一歩前に出る。
「海王様。一つお願いがあります」
「何だ?」
リルモは事情を説明し、サバノを保護するように頼み込む。
「気の毒な事だ……。確かにこんな幼い子を一人残しておくわけにはいかぬな」
ポセイドルはリルモの傍らにいるサバノを見て哀れに思うばかり。
「ポセイドル様。彼なら私が保護致します」
そう言ったのはディスカであった。
「ディスカさん!」
「本当ならば君達の力になりたいのだが、幼い彼を一人にするわけにはいかない。それに、君達が挑もうとしているジョーカーズとやらは、僕には到底太刀打ちできないような恐るべき存在なのだろう」
サバノはディスカが保護する事になり、リルモも快く了承する。
「リヴィエラの事は、君達に任せるよ。僕は君達を信じよう」
リヴィエラの救出を託されたグライン達は改めてポセイドルとディスカに礼を言い、謁見の間から立ち去ろうとする。
「待って!」
サバノは一つのペンダントをリルモに差し出す。白銀の鎖にコバルトブルーの名入り刻印ペンダントであった。
「これ……リルモ姉ちゃんにあげるよ」
刻印は一部が削れており、"イル……"と書かれていた。
「……私が貰っちゃっていいの?」
「うん、ぼくのお父さんが持ってたペンダントみたいなんだ」
ペンダントはサバノが海底人族に救助された時に発見されていたという。リルモに与えたのは行方不明になっていたサバノの父親を探す手掛かりになるかもしれないという考えがあっての事だった。
「そっか。確かにこのペンダントがあれば、サバノ君のお父さんを見つける手掛かりになるかもしれないわね」
リルモはペンダントを受け取り、サバノの父親を必ず見つける事を約束する。
「サバノ君のお父さんも、僕達が必ず見つけてみせるよ」
グラインも同調する。
「やれやれ。色々やる事が増えたものね。ま、わたくしだって悪い意味で人探し中の身だけど」
マイペースかつ気怠そうにガザニアが言う。
「旅の無事を祈っておるぞ、新たな勇者達よ。母なる海の加護があらん事を」
ポセイドル達に見送られながらも、一行は謁見の間を後にする。
「ヘイ、旅人の皆さん! 今からお帰りでっかァ?」
突然、一行の前にサハギンの男が現れる。
「えっと、あなたは?」
「ミーはこの海底都市の道案内役を務めるブーリといいマスねん。あんさんらが手っ取り早くお帰りできるよう案内しマスで」
ブーリと名乗るサハギンの案内人は手早く陸地まで戻れるように案内するとの事なので、一行は言葉に甘える事にした。ブーリに連れられた一行は、マンボウを模した乗り物のある場所に辿り着く。
「何だこりゃ?」
乗り物は、他種族を陸地まで送る為の潜水艇だった。
「さあさあ乗った乗った! マンボーマ号なら楽々と陸地まで浮上可能ですねん」
マンボーマ号と名付けられた潜水艇に乗り込む一行。ブーリが起動させると、マンボーマ号が音を立てて動き始め、浮上していくと、都市を覆う透明のドームをすり抜けていく。ドームは、海王の力による結界だったのだ。
「スゲーな。海の中ってこんな風になってんのかよ」
「綺麗ね……」
クレバルとリルモは、窓から見える海底の景色に見とれていた。海上に出たマンボーマ号が辿り着いた先は、巻貝の像と祠が存在する小さな無人島であった。
「海上でございマス! お忘れ物のないようお降り下さぁい!」
一行が島に降り立つと、マンボーマ号は音を立てて海の中に入っていく。
「もし再び海底都市へお戻りでしたらァ、そちらの祠からお越し下さぁい! ではではァ」
ブーリの一言で沈んでいくマンボーマ号。祠の内部には柱が立つ光のサークルがある。古の魔導師が遺したという、特定の場所に移動するワープスポットで、海底都市へのワープが可能な場所だった。
「この場所ハ、覚えておいた方がよさそうネ」
ワープスポットの存在を確認したティムは、再び海底都市に用事が出来た時の事を考えてこの場所の事を覚えておくように言う。
「これがあると海獣ドーファンが力になってくれるらしいけど……」
グラインは手元にある海獣のホイッスルをジッと見つめる。
「次の目的地に向かうには海を渡らなきゃいけないでショ。だから、それを使う時ヨ」
ティムに言われるがままに、グラインはホイッスルを吹いてみる。すると、海の中からドーファンが姿を現した。
「な、なあ……力になってくれるってどういう事だよ。まさかこいつに乗っていくって事か?」
クレバルはドーファンに乗る事について不安を抱いていた。
「この大きさだったラ十人くらいハ乗れそうネ」
ティムの見立てでは十人前後の人数分は乗れる大きさだった。
「大丈夫かな? 行き先とか言ったらちゃんとそこに向かってくれるの?」
グラインもドーファンが思い通りに動いてくれるか不安になっている様子。
「ウーン、試しにワタシが伝えてみるワ」
そう言ってさっさとドーファンの背中に乗るティム。
「ちょっと怖いけど……物は試しね」
リルモは恐る恐るドーファンの背中に乗る。ガザニアはクレバルを引っ張りながらもドーファンに乗ろうとする。
「ってて、引っ張るんじゃねえ!」
「お黙り。グズグズするんじゃないわよ」
無理矢理引っ張る形でクレバルと共にガザニアがドーファンの背中に乗ると、グラインもゆっくりと乗り込んでいく。全員がドーファンに乗った事を確認したティムは目を瞑って意識を集中させる。するとドーファンは鳴き声を上げ、動き始める。精神集中で自身の心の声をドーファンの意識に語り掛ける事で伝達に成功し、目的地へ向かおうとしているのだ。
「どうやらうまくいったみたいネ」
安心したようにティムが言う。
「何をしたの?」
「早い話、テレパシーヨ。意識に語り掛けてみたのヨ」
テレパシー能力によるものだと説明するティムに、グラインは驚くばかり。
「お前、最早何でもアリなんじゃねえかって思えてきたぜ」
クレバルが半ば訝しむようなジト目でティムを見つめる。
「ワ、ワタシだってうまくいくとは思わなかったンだかラ! それより、次の目的地は氷の王国ヨ!」
ティム曰く、次に向かう場所は氷のエレメントオーブがあるとされるフロスタル大陸のフロストール王国だ。
「こ、氷の王国って寒いとこかよ? 冗談じゃねえぜ! 防寒対策なんてしてねぇぞ!」
「そこはこれから考えるわヨ! 残るオーブはあと二つ! 気合いと根性で頑張るのヨ!」
「他人事みたいに言うんじゃねえええええ!」
クレバルの叫びが響き渡る中、グライン一行を乗せたドーファンは北に存在するフロスタル大陸へ向かっていった。



何故、次々と救われない者が出てくるんだろう。

勇者の力を以てしても、人同士の関係から生じた歪みによる悲しみは救えないのだろうか。


だけど、救わなくてはならないものがある。例え救えない事になっていたとしても。

僕は、無力でいたくない。無力のまま救われない者を見るのはもう嫌なんだ。



心の弱さに付け込まれて邪悪な取引を受け、無残な最期を迎えたメリューナの事が頭に過るものの、グラインは心を落ち着かせ、精神を研ぎ澄ませていた。



暗黒魔城の常闇の空間では、ソフィアによって攫われたリヴィエラが気を失った状態でタロスの元に運び込まれる。
「ほう? 海底人族の歌姫もなかなか良いものだな。新世界の歌姫としては悪くない」
タロスは興味深そうにリヴィエラを見つめながらも、グラスに注がれた酒を口にする。傍らに立つネヴィアがグラスに酒を注いでいくと、ファントムアイが飛んで来る。
「どうだ。奴らの様子は」
「ハッ。先程侵入に成功したとの事です」
ファントムアイの報告内容は、バキラとクロトの現状であった。二人は現在、神殿のような場所に来ている。
「フム、成る程。だがそう易々と手に入る物とは考えられぬ。念の為に奴らも送り込んでおこう」
タロスはバキラとクロトに『ある物』を手に入れるように命じていた。その『ある物』とは、闇の理想郷と化した新世界の創造主となる為に必要なものであった。


日が暮れる頃、海上に雨が降る。激しい雨の中、一人の女が漂流している。女の顔は血塗れで意識を失っており、口から血が流れている。女は、リフであった。


しおりを挟む

処理中です...