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第一章
第十五話:神竜①
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混血の神竜。
理想郷の神殿に住まうと伝承されている伝説の存在である。
セシル達から聞いたこの世界の伝承では、天使は神の血から創造された天の御使いと言われている。
その天使を創る神の血と、地上の竜の血の二つから創造されたのが理想郷の神竜────混血の神竜だそうだ。
目の前の神竜は、神の使いたる証である天使の翼を黒く染め、天蓋を覆い隠すように広げている。
「グォォォォォォォォォォォォォ!!!!!」
地の底が震えるような咆哮が湖を、そして地下世界全体を揺らす。
湖面が衝撃で波打ち、大きな波紋となり周囲へ広がる。
水面に立つことを諦めた私は、<空歩>の魔術へと切り替えて空に立つ。
そして物理的に衝撃を伴った咆哮をする彼女を、私は観察するように見つめる。
「…………やはり竜だったか。竜の素材は現代では貴重でね。ましてや神の血を引く混血竜などという希少ものだ。有り難く、軒並み全てを頂くとしよう」
私の言葉に激昂した黒竜が、その巨大な口を開き息吹を放つ。
漆黒の炎が目の前を覆い、湖ごと全てを消し去ろうと圧倒的な熱量で迫ってくる。
「《災厄払う円楯》」
手をかざした私は、自身の宝物庫から一つの円楯を取り出し、息吹を押し留める。
押し留められた息吹は、やがてパキパキと石化していき跡形もなく崩れ去った。
「あまり地形を破壊するのはやめてくれないか?この土地も私が貰う予定なのだから出来れば綺麗な状態が好ましい」
漆黒の竜は私の言葉を無視し、続けて連続で息吹を放つ。
まともに食らえば辺り一帯が消炭になるほどの熱量が、再度私を襲う。
「やめてほしいと言ってるんだがね」
私の《災厄払う円楯》で再び押し留められ、石化して固まった息吹の炎が湖の底へと沈んでいく。
やがて黒竜は息吹が効かないことを悟ると、上空へ飛翔して距離を取るように離れる。
そして膨大な数の魔法陣を空に描き、“魔法”を発動させようとする。
「────彼方より來れり天の翼。衆生見通す天の瞳。虹天よ、光天よ、彼の者の業に、罪に、天上より罰を降せ────」
黒竜はその静謐な声で詠唱を始める。
竜の周囲を取り囲む魔法陣がゆっくりと集まり、やがて一つの形となって砲台のように重なっていく。
《災厄払う円楯》は邪悪な力を払う楯であるため、聖なる力を防ぐことはできない。
…………目敏い女だ。
詠唱の終わりを合図に、天使の力が宿った神々しいほどの聖なる力が魔法陣へと集約していく。
そして聖なる力が一筋の光柱となって私へと襲いかかる。
「────<天罰>」
圧倒的な熱量を伴った聖なる光が、上空より光速で飛来し不可避の攻撃と化す。
神聖な力は悪魔に対して非常に有効な手段だ。
直撃したら私とて無事では済まないだろう。
私はその光が着弾する前に先手を打つことにする。
「────【暴食】」
私は『強欲』の権能を発動させ、奪った力の中で最も信頼している悪魔である彼女の権能を使った。
黒い靄のような不定形な闇が目の前に現れ、発動した魔法の光柱へとぶつかり、喰らいつく。
その無慈悲なほど強力な暴食の権能は、目の前の光柱を全て喰らい尽くして尚、収まることを知らない。
暴食の闇はそのまま上空で佇む黒竜をも喰らおうと突き進み、抵抗して抗う竜の息吹をも呑みこみながら迫っていく。
そして竜の身体を喰らおうと彼女の目前まで迫ったところで、私は暴食の力を解除した。
迫り込む闇が唐突に消滅したことを訝しげな表情で見ていた黒竜が私の方を向き、顔を顰めながら大きな口を開く。
「…………何のつもりですか?」
今にも襲い掛かってきそうなほどの低い声で、漆黒の竜が私に問いかける
私は平然とした様子で上空を見据え、それに答える。
「いやなに、君を食べてしまったら竜の素材が手に入らないじゃないか。私は別に殺したい訳じゃないのだよ。………それに、暴食の力は酷く腹が減ってね。あまり使いたくはない」
ブブ君から奪った暴食の権能は強力だが、発動と同時に彼女が抱く“暴食の渇望”も現れてしまう。
悪魔の渇望とは存在理由そのものだ。
私の『強欲』の権能で奪ったとしても一時的になくなるだけで、すぐに新しく同じ渇望が生まれてしまう。
ブブ君の渇望は暴食───食べることだ。
彼女は常に飢餓感の中にいて、食べることを求めていた。
その気が狂うほどの圧倒的な飢餓感は、私でも長く耐えられるものではない。
あまり長く使い続けるのは危険だ。
私の言葉を聞いた彼女は、静かに竜の目を細め訝しむように私を見つめて言う。
「…………どうやら、ただの魔術師ではないようですね。…………何者ですか、貴方は」
「人に物を聞くのならまずは自分から言うのが礼儀じゃないかね?」
人を食ったような笑みを浮かべて言う私に、彼女は憎々しげな顔をして答える。
「…………私の名はアメラ。下界の混血を管理する使命を帯びた、神の使徒」
彼女の言葉を受け、くつくつと怪しげな笑みを浮かべなから烏面を歪ませ、私は言う。
「私の名はマモン。ここではない異世界より来訪した────悪魔だよ」
理想郷の神殿に住まうと伝承されている伝説の存在である。
セシル達から聞いたこの世界の伝承では、天使は神の血から創造された天の御使いと言われている。
その天使を創る神の血と、地上の竜の血の二つから創造されたのが理想郷の神竜────混血の神竜だそうだ。
目の前の神竜は、神の使いたる証である天使の翼を黒く染め、天蓋を覆い隠すように広げている。
「グォォォォォォォォォォォォォ!!!!!」
地の底が震えるような咆哮が湖を、そして地下世界全体を揺らす。
湖面が衝撃で波打ち、大きな波紋となり周囲へ広がる。
水面に立つことを諦めた私は、<空歩>の魔術へと切り替えて空に立つ。
そして物理的に衝撃を伴った咆哮をする彼女を、私は観察するように見つめる。
「…………やはり竜だったか。竜の素材は現代では貴重でね。ましてや神の血を引く混血竜などという希少ものだ。有り難く、軒並み全てを頂くとしよう」
私の言葉に激昂した黒竜が、その巨大な口を開き息吹を放つ。
漆黒の炎が目の前を覆い、湖ごと全てを消し去ろうと圧倒的な熱量で迫ってくる。
「《災厄払う円楯》」
手をかざした私は、自身の宝物庫から一つの円楯を取り出し、息吹を押し留める。
押し留められた息吹は、やがてパキパキと石化していき跡形もなく崩れ去った。
「あまり地形を破壊するのはやめてくれないか?この土地も私が貰う予定なのだから出来れば綺麗な状態が好ましい」
漆黒の竜は私の言葉を無視し、続けて連続で息吹を放つ。
まともに食らえば辺り一帯が消炭になるほどの熱量が、再度私を襲う。
「やめてほしいと言ってるんだがね」
私の《災厄払う円楯》で再び押し留められ、石化して固まった息吹の炎が湖の底へと沈んでいく。
やがて黒竜は息吹が効かないことを悟ると、上空へ飛翔して距離を取るように離れる。
そして膨大な数の魔法陣を空に描き、“魔法”を発動させようとする。
「────彼方より來れり天の翼。衆生見通す天の瞳。虹天よ、光天よ、彼の者の業に、罪に、天上より罰を降せ────」
黒竜はその静謐な声で詠唱を始める。
竜の周囲を取り囲む魔法陣がゆっくりと集まり、やがて一つの形となって砲台のように重なっていく。
《災厄払う円楯》は邪悪な力を払う楯であるため、聖なる力を防ぐことはできない。
…………目敏い女だ。
詠唱の終わりを合図に、天使の力が宿った神々しいほどの聖なる力が魔法陣へと集約していく。
そして聖なる力が一筋の光柱となって私へと襲いかかる。
「────<天罰>」
圧倒的な熱量を伴った聖なる光が、上空より光速で飛来し不可避の攻撃と化す。
神聖な力は悪魔に対して非常に有効な手段だ。
直撃したら私とて無事では済まないだろう。
私はその光が着弾する前に先手を打つことにする。
「────【暴食】」
私は『強欲』の権能を発動させ、奪った力の中で最も信頼している悪魔である彼女の権能を使った。
黒い靄のような不定形な闇が目の前に現れ、発動した魔法の光柱へとぶつかり、喰らいつく。
その無慈悲なほど強力な暴食の権能は、目の前の光柱を全て喰らい尽くして尚、収まることを知らない。
暴食の闇はそのまま上空で佇む黒竜をも喰らおうと突き進み、抵抗して抗う竜の息吹をも呑みこみながら迫っていく。
そして竜の身体を喰らおうと彼女の目前まで迫ったところで、私は暴食の力を解除した。
迫り込む闇が唐突に消滅したことを訝しげな表情で見ていた黒竜が私の方を向き、顔を顰めながら大きな口を開く。
「…………何のつもりですか?」
今にも襲い掛かってきそうなほどの低い声で、漆黒の竜が私に問いかける
私は平然とした様子で上空を見据え、それに答える。
「いやなに、君を食べてしまったら竜の素材が手に入らないじゃないか。私は別に殺したい訳じゃないのだよ。………それに、暴食の力は酷く腹が減ってね。あまり使いたくはない」
ブブ君から奪った暴食の権能は強力だが、発動と同時に彼女が抱く“暴食の渇望”も現れてしまう。
悪魔の渇望とは存在理由そのものだ。
私の『強欲』の権能で奪ったとしても一時的になくなるだけで、すぐに新しく同じ渇望が生まれてしまう。
ブブ君の渇望は暴食───食べることだ。
彼女は常に飢餓感の中にいて、食べることを求めていた。
その気が狂うほどの圧倒的な飢餓感は、私でも長く耐えられるものではない。
あまり長く使い続けるのは危険だ。
私の言葉を聞いた彼女は、静かに竜の目を細め訝しむように私を見つめて言う。
「…………どうやら、ただの魔術師ではないようですね。…………何者ですか、貴方は」
「人に物を聞くのならまずは自分から言うのが礼儀じゃないかね?」
人を食ったような笑みを浮かべて言う私に、彼女は憎々しげな顔をして答える。
「…………私の名はアメラ。下界の混血を管理する使命を帯びた、神の使徒」
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