魔女の家~無敵に素敵な我が家はチート~

空兎

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就職氷河期でブラック企業に就職してしまった。月の残業時間は100時間を超える時がほとんどで多い時は200時間を超えることもしばしば。

週休2日?何それおいしいの?

土曜出勤は当たり前で酷い時は日曜日まで出勤しなければならない。いや、会社は出勤を強制しないよ?ただ、『ほう、休んでも大丈夫な自信があるのだな?』と上司に言われるだけですよちくしょう。そんなん休めるか!

14連勤の時はやばかったな。頭痛と吐き気が酷くて世界が回っている感覚しかなくて死ぬかと思った。まあ逆にそこを超えて21連勤するとテンション上がり過ぎて楽しくなってくるんだけど。だぶん、アレ病んでいたんだろうな。

そんな感じなのに中々辞めることができない。あの、受けて落ちてしまくった就活を思い出すととてもじゃないけど転職できる気がしないのだ。あとは単純に時間がない。休みは家で屍となっています。

毎日の楽しみは冷や奴をツマミにビールをキュッと流し込むことだけだ。冬なら湯豆腐だ。あげても茹でても蒸してもそのままでも美味しい湯豆腐は神の食べ物である。豆腐があるからこそ私はあのブラック企業でなんとか生きていくことができている。

それにしても二十代の生き甲斐が豆腐と酒っていうのもどうなんだろう?自分でも枯れているとは思うけど他の気力を全て仕事が奪って行くのだから仕方ない。こんな非道な会社の社長の頭から毛根が駆逐されることを全力で祈っておこう。

これで家族や恋人と言った自分を支えてくれる誰かがいたら就職活動という魔窟にもう一度足を踏み入れることが出来たかもしれないが生憎と私はぼっちである。

実家暮らしではあるが両親は仕事の都合で海外に行っている。彼氏もいない。現状は絶望的である。

というわけで広い実家にひとりで暮らしている。確かこの家を建てたのは曾祖母の代だったはずなのに何故か見た目がものっすごく洋風の家だ。曽祖母の名前も確か恵令奈エレナだったしひょっとして外国人だったのだろうか?今度機会があれば誰かに聞いてみよう。

ふぅ、と豆乳を飲んで息をつく。どうでもいいことをグダグダと考えてしまったがもう出勤の時間だ。今日もタイムカードなどなく、何時に出勤退社しょうが手打ちで9:00~17:00を入力しないといけない会社に行かないと行けない。うちの会社、労基に訴えたら絶対にアウトだろうな。まあ、その場合私は職を失うのだろうけど。

そうして出勤しようと靴を履き、ドアを開けたまさにその時だった。

ぐらり、と世界が揺れる。

一瞬、立ち眩み?ついにあのブラック企業のせいで身体で壊したか、この野郎。と思ったが違うようだ。

地面が揺れているのだ。地震大国の日本だ、震度3、4くらいの地震は良くあることだがこの立っていられないほどの揺れはそんなレベルではない。

震度5、下手したら6がある。

そのまま直立不動なんてとても出来なくて思わず膝をつく。

ガタガタと靴箱が揺れ傘立てが倒れる中、ふと私がいる場所に何かの影が重なったのが見えた。

思わず顔を上げる。

それはゆっくりとこちらに迫ってきた。いや、ゆっくりと感じたのは体感速度なだけで実際は猛スピードだったのかもしれないが、とにかくそれは倒れてきた。

灰色の鉄筋コンクリートでできた長い円形の柱、それは電柱だった。電柱は真っ直ぐと私の方へ向かって倒れてくる。

ははっ、もう笑うしかないや。

電柱は私の家を押しつぶした。そして私の身体の上に家だった物が降り注ぐ。

痛みは感じなかった。ただただ身体が熱くてそして服をじっとりと重い液体が濡らしていく感覚だけがあった。どこか怪我をして血が流れているのだろう。

ああ、これはもう助からないな。そっか。もうこれで終わりなのか。

なんだか急に眠くなってきて目を閉じる。

もし、次があるならブラック企業なんかない世界でのんびり豆腐でも食べながら生きていたいわ。

そうしてゆっくりと薄れていく意識の中で私は誰かの声を聞いた気がした。



ーーーーーー魔力充電完了

ーーーーーーーー規定の条件を満たしました

ーーーー完了。完了

ーーーーーーーー命令を受領しました

ーーーーーー“命令 : ブラック企業なんかない世界でのんびり豆腐でも食べながら生きていたいわ”

ーーーーーーーーー“ブラック企業”のない世界に移動します

ーーーー魔力変換中……

ーーーーーー完了しました

ーーーーーーーーーー移動します


ーーーおかえりなさいませ、我等が魔女……




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