魔女の家~無敵に素敵な我が家はチート~

空兎

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ダンディさんが魔法について語る。

「この世界は知っての通り土地によって異なる魔力を帯びている。そしてその土地で生まれ育った者はその特性を受け継ぎ操ることが出来る。それが魔法だ」

さらにダンディさんが語る。この黒の森を中心として12の属性に世界は分かれているそうだ。順番に光、音、炎、風、水、氷、雲、雷、竜、飛、酸、土で、このうち2つの属性を持っている国が大国、ひとつの国が小国になる。

ちなみに今世界は3つの大国と6つの小国に分かれていて、ダンディさんが所属する国は光と音の属性を持つ大国、アルデメストだそうだ。

ふむ、ちょっとイメージが湧いてきたかな?つまりこの世界は時計のような円形の形をしていて12の位置に光属性、1の位置に音属性、2の位置に飛属性……と言った感じの属性を持つ土地が並んでいる。

これらの土地に住むとその属性に即した魔法を使えるようになるから人々にとってどこの土地を所有しているのかということは大切になるらしい。

まあなんというか凄くファンタジックな話ですな。魔法というものが普通に存在している世界に私はきてしまったのか。

「ではこの黒の森にいたら何の属性が貰えるのですか?」

「属性はない。その代わり黒の森は純粋な魔力だけで出来ているためここにいれば多大な魔力を得ることが可能となるだろう。
だが、純粋な魔力は多く得ると身体に毒となる。そのため魔力を得過ぎた生物は化け物のような容貌になり狂うという。
この森に黒く薄気味悪い生物が多いのは魔力を摂取しすぎたからだ。どのくらいこの森にいるのかは知らんが貴様の髪が黒いのもそれが原因だろう」

そう言ってちらりとダンディさんが私の髪を見る。いや、これは別に地毛ですから魔力で染まったとかそういうものじゃないですよ?一般的日本人は皆黒髪なんです。

「だが一方で黒髪は魔力を多く持つということの証でもある。黒の森に住み狂わずこの森に住み続けることが出来る貴様はかなりの魔法使いのはずだ。元々はどこの国の者だったのだ?」
「いや、どこの国にも所属してないですよ?気付いたらこの森にいました」
「国がわからない?ふむ、魔女・・を生み出すために俗世のことから解き放ち黒の森に送り込む者たちがいると聞いたことがある。
おそらくは其方もその類なのだろう。そうであるならば其方が無知であることも納得である」

ダンディさんはうむ、と頷く。なんかまた新しい単語が出て来ましたね。魔女、その単語だけ聴くと魔法を使える女性のことかな?と思うけど生み出すとか言っているんだよね。これはもしかして某鬱系魔法少女アニメ系の魔女なのでしょうか?それはヤバいですわ。関わりたくない感じがムンムンします。

「どこにも所属していない黒髪の魔法使いか。よし、其方を特別に第3級魔術師待遇で我が国に迎え入れてやろう!」

突然ダンディさんがそう叫ぶ。はい?第3級魔術師?

「それはなんでしょう?」
「魔術師の能力を表す階級のことだ。トップが1級で下位が5級だ。3級といえば平民の中ではほぼ頂点、一代で手柄を立て名誉貴族となる者と同じくらいの扱いになる」

ああ、なるほど。魔法の能力にランクをつけているのだな。しかも話を聞くにそれがそのまま身分にもなっているっぽいぞ?この世界では魔法はかなり大切な物っぽいな。

だとしたらこれはいい話じゃないかな?今、この世界で私は何の身分も持ち合わせていない。それを保証してもらえるならこの世界で生きやすくなる。

いや、でも第3級魔術師として保証してもらっても意味はないのかな?向こうは私の髪の色を見てなんか凄い魔法使いだと勘違いしているっぽいけど実際は魔法なんて使えはしない。後で使えないとわかれば問題が起きそうだ。

うん、取り敢えず即答はやめよう。契約する時は1度家に持ち帰ってラジオ体操してホットミルク飲んで頭空っぽにして落ち着いてからもう一度考えろっていうもんね。

「えっと、ですね、大変ありがたいお話ですが急なことですし少し考えさせて欲しいのですが、」
「なんだと?まさか第1級魔術師である俺の提案を断るつもりなのか?」

ダンディさんが少し不機嫌そうに顔歪める。うわっ、この人1番上のランクである第1級魔術師なのかよ。え、もしかしなくともかなり強いのですか?

おいおい、それは機嫌損ねるわけにはいかないぞ?なんとか怒らせずに穏便に済まないだろうか?

「いや、せっかくそう提案してくださったのはありがたいのですが、私魔法を使えないんです。それなのに第3級魔術師の資格をいただくのは悪いですよ」
「心配せずとも黒髪であるならかなりの魔力を貯蔵できているはずだから我が国の役に立つだろう。まあそれに例え魔力もなかったとしてもこの家にある魔具で充分対価になるから第3級魔術師である価値はある」

ダンディさんがニヤリと笑いながらそういう。

……ちょっと待ってくれ。魔力を貯蔵しているから役に立つ?私は買い置きの灯油か何かですか?

しかもこの家の魔具が対価になる?なんかこの家にある物をダンディさんにやるみたいな流れになっているけどどこからそんな話が出てきたんだよ。私、全然、了承してないぞ?

なんだろう、既視感がある。この言い回し、凄く嫌な予感がする。

「……ちなみに私が第3級魔術師になったら何をするんでしょう?」
「決まっておろう。無駄な抵抗をし続ける愚かな土の国、ディダライラにトドメを刺すための魔術部隊に入るのだ。この森に来て3人の部下を失ってしまったからな。魔具を使う代わりの要員くらいにはなろう」

そう言って笑うダンディさんにーーーー私の心は冷めていった。

ああ、そうか。何処で見たことあると思ったらこの人は私の上司に似ているんだ。

私の会社はブラックだったが上司もダークだった。

休みは取らせない。残業せずに帰ろうとすると嫌がらせをしてくる。キャパオーバーの仕事を振る。メモを残して伝えたとしても聞いてないと喚き散らす。私が取った契約を自分の手柄に書き換える。

私は上司が大嫌いだった。

だけど入社3年目で上司は私をリーダーに推薦してくれた。厳しかったけど何だかんだ言って私のことを見ていてくれたのかと思ったけど違った。

役職が上がれば無茶が効くからあげたのだ。

リーダーだから人より仕事しろ。出勤しろ。残業しろ。責任を取れ。

それで月給が300円上がっただけなんだかは本当にやってられない。ただヒラでは責任を被せにくかったからリーダーにしたに過ぎないのだ。

これはその時に似ている気がする。私を第3級魔術師にするのは親切心からでも何でもない。ただ戦場に出すのに必要だからだ。いなくなった代わりの人手が欲しいだけなのだ。

冗談じゃない。何故異世界に来てまで搾取されないといけないんだ?どうでもいい他人の出世のために絞られ続けるのはもうごめんだ。

ふつふつと怒りが湧いてくる。ああ、そうだ。私は嫌だったんだ。あのハゲの上司の功績作って尻拭いして自分をすり減らしていくのが本当は嫌だったのだ。

麻痺していた。その環境が当たり前だと思い込んでいた。自分の居場所がここしかないと思い込んでいたけど栄養ドリンクの空き瓶でピラミッド作れる程働くのは普通のことではなんだよこのやろう。

ああ、だけど決めた。もう誰かに搾取されるだけの人生は辞めよう。嫌なことにはNOといえるようになろう。

「何を黙っているのだ?わかったならばこの魔具に魔力を込めろ。この家にある魔具を全て我が国へ持ち帰らなければならないからな」

そういってダンディさんが白い袋を机の上に投げた。滑らかな布に金色の刺繍がしているのが見える。

だけど私はそれを拾わない。顔を上げ真っ直ぐダンディさんを見つめる。

いう言葉は決まっていた。

「断る。何当たり前のようにこの家の物を持って行こうとしているんだよ言動パワハラ男が。第3級魔術師っていうのもお断りだ。私は雑巾のように絞られて捨てられる人生は飽き飽きなんだ。なんでも自分の思い通りになると思ったら大間違いだからな!」

ついでに白い袋を拾ってダンディさんに向かって投げつけてやる。

ああ、そうだ。ずっとこうしてやりたかった。偉そうなクソ野郎の命令を叩き返してドヤ顔プギャーしたいと思っていたんだよ。

今なら言える。あの経理に私の名前で請求させられたハゲ上司のキャバクラ代を、死ね!クソエロハゲジジイ!いい歳こいてキャバ嬢に入れ込んでユミちゃんラブ!なんてメール送っているのキモいんだよ!自分が財布でしかないことをいい加減わかりやがれ!と返してやれるわ。

ダンディさんは一瞬呆けた顔をしたが状況がわかるとワナワナと震え出し顔を真っ赤に染めた。

「こ、この俺に向かって物を投げるだとッ!?貴様、自分が何をしたかわかっているのか!!」
「お前こそ人の家で威張りちらすとはどうゆう了見だハゲ。礼儀を学んでから出直してこい。“出てけ!”」

別にダンディさんはハゲはいないが何となく元の世界の上司を思い出してハゲと叫んでしまった。まあいいや。ハゲてなくても。むしろハゲろよ。もうこいつのことすごく嫌い。

私がそう叫んだ瞬間だった。地面になんかよくわからない模様が浮かんだと思ったらダンディさんが薄く光り出した。え、マジでハゲになってしまったのか?それで後光が差してしまったとかそういう感じなのですか?いや、でも光っているのはダンディさんの頭だけじゃなくて身体だぞ?頭も光っているけど。あれ?こいつデコ広くね?

「な、なんだこれはっ!?おい、貴様俺をどうするつもりだッ!?」

ダンディさんがそう叫んだ。だけど私には答える暇はなかった。

瞬間リビングのドアが開く。その奥からもガチャリとドアが開く音がしたから玄関も開いたのだろう。

そして状況を理解する前にダンディさんが吹っ飛んだ。勢いよくリビングのドアを通り抜けて玄関のドアを抜けてダンディさんが飛んでいく。

呆然とそれを見ているとダンディさんは庭からも吹き飛ばされてさっき倒した大蜘蛛の死体に勢いよくダイブした。その衝撃でなんか大蜘蛛からでたドロリとした変な汁がダンディさんにかかってぐちょぐちょだ。

向こうの方でダンディさんが何か悲鳴をあげている。流石に同情した。蜘蛛の死体にダイブはちょっと可哀想である。

それにしても今の現象はなんだったんだろうね。私が“出てけ”といったらダンディさんが強制退出したんだけどこれもこの家の力なのか?

思い出すのはこの家のルールの2項目、『Ⅱ.この家の中で主人は絶対の存在である。』 これは私が出て行けといったからダンディさんは家に追い出されたのだろか?え、そうだとしたらこの家凄すぎない?つまり家の中にいたら私は無敵だということですか?こたつに入っていてみかん取ってこいって言ったら家が取って来てくれるの?これは夢のコタツ生活ができるかもしれませんよ!

窓から様子を伺っているとこちらに向かってダンディさんは叫んでいるようだったがやがて諦めて森の中へ去っていった。この森化け物だらけで恐ろしいけど第1級魔術師様なら大丈夫でしょう。気をつけてお帰り下さい。

なんにしてもこれでまた少し家のことがわかりましたね。この家の中なら無敵でいられる能力か。うん、ますます引きこもりに磨きがかかるような能力だが私が外へ行ける日はくるのだろうか?








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