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Ⅵ
しおりを挟むダンディさんの再来があってさらに1週間経った。
この家が超ハイスペックの防御設備を搭載しているのはわかったが未だに外に出ることはできていない。
そりゃモンスターが徘徊する森なんだから気軽に出歩けませんよ。現実的な手段として考えているのは車かバイクに乗って一気に森の外に出る方法だけれども森の中ということで道がガタガタで運転キツそうだし、例え森の外に出られたとしても今度は無事戻ってこれるかわからないから中々踏み切ることができない。
家は高性能だけどその家がある場所が悪過ぎる。日当たりが良くて風通しが良いとまでは望まないからもう少し立地の良いところに住みたかったです。
そんなわけでまた1週間経過してまたリセットの仕組みがわかった。
私の考えた通りリセットの時に家の中にないものは複製されるらしい。なので台車いっぱいに積んだ小物(鏡とかライターとか胡椒とか)は全部複製された。
だけれども複製できないものもあった。台車と一緒に外に置いておいたバイクは新たに複製されていなかったのだ。
あまりにも構造が複雑すぎるものは複製できないのか?いや、でもそれならゲーム機が複製されるのっておかしくない?じゃあ大きさに制限があるのかな?リセットのルールはまだ色々と考えることがありそうだ。
それからリセットされて新たに出来た物と元々あったものにも差があることに気づいた。
家の外に出していてセーブができていたゲーム機は今回外に出さなくても変わらずセーブができていた。
つまり一度リセットの時間から出されたものはリセットの恩恵を受けることは出来ないということだ。外に出していた方の胡椒は使ってももう補充されないのだろう。
リセットのこともだいぶわかってきたかな?これ、絶対有効活用できると思うんだけど外部との接触がなさ過ぎてただの宝の持ち腐れになっているんだよね。またいつか役に立つかとされないし小まめに物は増やしておこう。
こうしてこの世界に来て1ヶ月経った。相変わらずの引きこもり生活なのだがここに来てひとつ、大きな変化があった。
なんと、ラインの返信が返って来たのだ。
『なんか、異世界来てしまったぽくて会社行けないです』
『俺の頭の中もグルグル回って異世界逝っちゃいそう。18連勤マジ辛いわ』
思わず二度見する。間違いなく同僚からの返信である。
え、連絡取ることできるの?異世界と現代が連絡取れないのはホラーゲームで外と連絡取れないのと同じようにお約束展開じゃないの?マジで?地球の電波システムすげえ。まさか異世界と繋がるとは。
いやでもそれでもやっぱりおかしくかい?私、30日も異世界にいるんだぞ?これだけ長い間いなかったらいくら薄情なあの会社だって連絡取って失踪届けくらい出すだろう。何故こんなに平然としたラインが返ってくるんだ?
……そういえば前からちょっと気になっていたことがある。それは時計についてだ。家の中に掛けられている時計や腕時計なんかはちゃんと時間を刻んでいるのだがスマホの時計やパソコンの右下に表示される時計は全然動かず私が来た日を表している。
いや、全然動いてないってことはないか。日付は変わらないが何故か数時間分だけ時間が動いている。今まで気にしたことなかったがこれってひょっとして向こうの実際の時間なのか?
つまりこちらでは30日経ったけど向こうではまだ数時間しか経っていないってこと?
そうであるなら同僚の態度があっさりしているのも納得である。向こうではまだ私がいなくなってから大して時間が経っていないんだからそりゃ事件にもならないでしょ。
取り敢えず同僚に『いや、リアルに異世界なう。外に化け物が闊歩していてつらい』と送ってみた。
1時間後くらいに『先輩から聞いたいい病院紹介するよ。そこの先生、俺たちの仕事にも理解あるから』と返って来た。頭の心配をされてしまった。先輩に教えてもらったということはうちの会社は病院の常連者なのか。つらい現実ですわ。
取り敢えず向こうとこちらでは時間経過が違うのは間違いなさそうだな。まあ事件になっていなくてよかったよ。あんまり周りに心配かけるのもどうかと思うし。
そういえば私、あまり帰りたいとは思ってないな。別に私を待っている人はいないし向こうにいてもブラック企業で身を削るだけの生活だ。特に未練はない。
だからと言って別にこの世界が好きというのでもないけれど。だってこの世界で出会ったのは元上司にそっくりなダンディさんとモンスターの数々だけだし。だからいきなり元の世界に戻ったとしてもそれはそれで構わない。
まあつまりはどうでもいいっことである。別に帰れるなら帰れるで構わないし帰れないなら帰れないでこの世界で生きていけるように頑張るだけだ。昔から適応力は高いって言われていたんだよね。そのせいでブラック企業にも適応してしまって辞めそびれたんだけど。
さて、じゃあ今のところは帰れる目処も立っていないしこの森から出る方法考えようかな。魔法は使えないけれどあのモンスター達を倒す方法はないかな。家庭で作れる武器をグーグル先生に聞いてみる。なんか、肺が溶ける毒煙の作り方とかが出て来たので黙って見ないことにした。もうちょっと使い勝手の良い武器が欲しいです。
気分転換に外に出る。といっても庭に出るだけだ。
家にこもりきりというのも良くないだろうし時々庭に出るのだが、まあ気は晴れないですね。だってこの森、黒の森と呼ばれるくらい暗くて陰惨とした雰囲気しているのだ。
私の家があるところは陽の光が差し込んでいるが庭から見る森にはそれすらなく薄暗い。うん、他の国にはいってみたいと思うが本当にこの森抜けることが出来るのだろうか?ちょっと自信なくなって来たよ。
そんなことを考えていた時だった。ふと、庭の入り口が少し盛り上がっているように見えた。
あんな風になっているところは見たことがない。少し不安だがこの家の中でなら私に危害を加えることはできないはずなので恐る恐る近づく。
盛り上がっているところを見ると所々から布が出ている。それに先端からは栗色の毛玉のようなものが見え隠れする。
なんだろうと思って上の土を払う。
そこから出て来たものに思わず息を飲んだ。人だ、人が埋まっていたのだ。
え、人間?なぜうちの庭に人が埋まっているんだし。桜の樹の下には死体が埋まっているという伝説は聞いたことはあるが超一般的家屋である我が家に死体が埋まっているのはおかしいよ!
え、というか本当に死体?マジで?どうしよう、こういう場合はお墓でも作った方がいいのだろうか。あ、じゃあもう一度埋め直す?
だがそう考えた瞬間、死体から『ううっ、』といううめき声が聞こえた。どうやらまだ死体ではなかったらしい。よかった!生きているよ!
だけどこのまま放っとくと本当に死体になりかねないので地面から無理矢理引っ張り出す。
出て来たのは精悍な顔立ちの茶色いローブを着た男性だ。
まさか、庭でイケメンを拾うとはどういう展開だこれ。異世界ではイケメンは落ちているものなのだろうか。すごいよ異世界。でもこんな展開だと嬉しいとは全然思えないんですけど。
取り敢えず深呼吸して落ち着く。今私が考えねばならないのはこのイケメンをどうするかだろう。
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