相談受付サービス-otian-

オチアン

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俺の名はotian

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人間関係最大の危機。
スマホの画面を前に俺は凝視する。

画面の向こうにはネット知り合いらしき人からのお悩みDMだった。

『彼女のことについてご相談があるのですがよろしいですか?』

この人とは特に仲がいいというわけではない、ましてや相談に乗るような仲でもない。
俺は困惑と焦りを抱えながら返信をする。

『〇〇さん、ご相談の件ですが、僕より仲の良いご友人に相談をするべきかと』

数分後に既読がつき、思わぬ返信が返ってきた。

『こういう相談は、身内よりあなたのような心優しい方に聞いていただく方が気持ちとしては楽なんです』

いや、うん。100歩譲ってネットの相談のがいいとして、俺の都合はどこいったんだ。
なにより、あなたと知り合ってまだ2日なのですが?2日3日で相談に乗ってもらうほどの仲になったとでも?

そんな気持ちとは裏腹に、俺の指は了承の返信をしていた。
昔から俺は他人相手にはいい顔をする癖がついており、その癖が今回の相談希望にも了承してしまったのだ。

やってしまった‥
また他人によって俺の時間が削られる‥

自分の癖に後悔をし、ため息を吐くと同時に返信がやって来る。

『ありがとうございます。その彼女の話なのですが、6年付き合ってる彼女がいます。高校から付き合ってて、僕は高校を中退して今の職場にいます。その時彼女が就活に入ったのですが中々職につけないまま2年間続けてます。僕の休みが日曜日で唯一彼女と遊べる日なのですが、仕事をしていない彼女を誘うのも気が引けます。そこでどうやれば彼女に仕事についてもらえるか、どう声をかければいいんでしょうか?』

とても長い長文が送られてきた。

見るだけで目眩がしそうだ。重々しい話だし、答えづらい。ていうかこれ中学生の俺に言うか普通。確実に年齢誤解されてるやんこれ‥

気だるさが増し、少し放心状態になり、返信を返す。

『仕事をしろ、何で働かないの?などの声はかけてはいけません。就職していないことに何かしらの後ろめたさが彼女にもあると思います。その不安を煽るようなことはしてはいけないかと。誘う形で仕事についてもらうのが一番かと。でも何度も誘ったりお願いするのもストレスを与えてしまうのでNGです。』

ネットサーフィンをしている時に見かけたYahoo知恵袋の内容や、言葉を手繰り寄せ、文章にして返信をした。

『ありがとうございます!試してみます!』

お礼の返信が返ってくると、ようやく終えたという疲れではなく、不思議と達成感と喜びに満ちていた。
さっきまでの嫌悪感、だるさがなかったかのような華やかな気持ちに俺は思った。

相談に乗るのってこんな気持ちええんやなぁ‥他の人の悩みも聞いてみたいかも!

厨二心をその時はまだ持っていた俺は後付けでチャットに指を乗せる。

『また何かありましたら、ご相談受け付けます。
   ご相談受け付けサービス【otian】   』

これが【otian】の始まりだったー
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