異世界で勇者を育てたら、帰還後にスーパーへ回復薬を買いに行きかけた話

和ノ白

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母は強し、鍋は正義。

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気がつけば、私は「鍋」を抱えていた。

抱えていた、というより抱え込んでいた。
両腕で。胸で。胃の底で。生活の底で。
鍋なんて、ただの調理器具だ。器具のくせに、器具の分際で、私の人生の半分くらいを一緒に煮込んできた。

それも、うちの台所で十年選手を務める、底が少し焦げついたステンレスの鍋。焦げついたのは私の不注意で、放置したのは私の疲労で、磨き直して使い続けているのは――まあ、私の執念だ。
右手には木べら。左手には買い物メモ。いつもの朝、いつもの段取り。
中学生の息子――直樹の弁当を詰め、味噌汁をよそい、牛乳を冷蔵庫から出して「早く起きなさい」と言う、その直前まで、私は確かにそこにいた。

いた、はずだった。

なのに今、私は、草の匂いが濃い風の中で立っている。
立っている、というより立たされている。立ち尽くしている。立ち止まっている。
“台所に立つ”のが私の仕事だったのに、いつのまにか“森に立つ”になってしまった。立つ場所って、そんなに簡単に変わっていいんだっけ。

目の前には、見たこともないほど高い樹々。空はやけに青く、雲が絵の具で塗ったみたいに白い。地面の土はふかふかで、靴の裏に軽く沈む。
そのくせ、遠くの山の稜線は異様にくっきりしていて、現実よりも現実味がある。
現実より現実味があるってなんだ。現実の立場がない。現実、しっかりして。

「……え?」

声が出た。自分の声が、妙に遠く聞こえる。
遠いのは声じゃない。たぶん私の常識だ。常識というやつは、環境に弱い。転校初日におとなしくなる中学生みたいに、場違いな場所では縮こまる。

私の名前は相川真弓、三十七歳。パートと家事と、たまに町内会の当番で、生活の九割が回っている、どこにでもいる母親だ。
今朝もいつも通り、直樹の制服のボタンを確認して、靴下の穴を見つけて「帰りに買ってくる」と思っていた。

それがどうして、森。
どうして、鍋。
どうして、私のエプロンまでついてるの。

私は呆然と、鍋を胸に抱きなおした。
エプロンには、昨夜のカレーの跳ねが一滴。妙にリアルで腹が立つ。夢ならこういう細部は再現しないはずだ。夢でエプロンのシミが正確に存在する世界なんて、嫌すぎる。
いや、夢ならもっと都合よくあってくれ。起きたらご飯ができてるとか、洗濯物が勝手に畳まれてるとか、そういう方向に都合よくあってくれ。

「はぁ……」

息を吐いた瞬間、背後で草を踏む音がした。

振り返ると、三人の若者が私を囲むように立っていた。
囲む、って時点でもう怖い。囲まれて安心するのは鍋の煮込みだけで十分だ。

一人は金髪の少年――と言いたいけど、背が高くて肩幅もあり、十五、六歳に見える。剣を背負っている。目はまっすぐで、眩しい。いかにも「勇者」って顔をしている。
もう一人は、フードを目深に被った少女。腰に短い杖。目だけが鋭く光っていて、たぶん魔法使いだ。
最後は、革鎧を着た少年で、短剣をいくつも持っている。盗賊系かな。目つきが軽い。口元に余裕がある。

三人とも、私の鍋をまず見て、その次に私の顔を見た。
順番が逆だろう。普通、人の顔を見てから鍋を見るだろう。いや、普通じゃない世界なんだろうけど、普通の心を守りたい。

金髪の少年が、恐る恐る、口を開いた。

「……あなた、どこから来たんですか?」

私は、息子の弁当を思い出した。
弁当というのは現実の象徴だ。弁当がある限り私は現実にいる――はずだ。いや、今こうして森にいる時点で象徴の効力が弱い。

「……うちの台所から」

三人が同時に黙った。
この沈黙は、疑っているというより、処理が追いついていない沈黙だった。人間、未知の情報に出会うと固まる。電子レンジもエラーが出る。

それから、盗賊っぽい少年が半歩前に出て、ニヤッと笑った。

「台所? へぇ。『台所の門』なんて聞いたことねぇな。新しいダンジョンか?」

「ダンジョンじゃないわよ。うちの台所。換気扇がちょっと古いけど」

「換気……?」

魔法使いの少女が眉をひそめる。
そうだよね、換気扇って概念は魔法使いに通じないよね。魔法で空気入れ替えられるんだろうし。羨ましい。うちの換気扇にも魔法をかけたい。

金髪の少年は困った顔をして頭をかいた。

「……とりあえず。ここ、魔物が出ます。森の縁まで案内します。あなた、装備……それだけですか?」

私は鍋を掲げて見せた。

「鍋はある」

盗賊少年が吹き出した。

「最強かよ」

魔法使い少女は真顔で頷いた。

「鍋は重要」

金髪の少年が目を瞬かせる。

「え?」

「知らないの? 鍋がないと煮込みができない。煮込みができないと、体力が落ちる」

私が当たり前のことを言うと、三人は妙な顔をした。
いや、私の方が妙なのかもしれない。だってここ、森で、剣と杖と短剣で、鍋を論じる場ではない。論じるにしても、せめてキャンプ地だ。森のど真ん中で鍋の重要性プレゼンしてるの、どう考えても変だ。

でも私は、母親だから。
母親というのは、変でもやる。
変だと気づいてもやる。
変だと気づいた上で、より良い方へ段取りを寄せていく。
――つまり、変を正にする職業である。職業じゃないけど。

とりあえず、今できることをやる。

「あなたたち、朝ご飯食べた?」

三人が揃って首を振った。揃って、ってところが致命的。全員で朝ご飯抜きなんて、全員でライフゲージ削る行為だ。協力プレイにも程がある。

金髪の少年が少し恥ずかしそうに言う。

「……旅の途中で、食料が尽きて」

盗賊少年が肩をすくめる。

「昨日、野ウサギ逃した」

魔法使い少女がボソリと言った。

「空腹は魔力を削る」

私は、ため息をついた。

「……あのねぇ」

それは、うちで直樹がテスト前日にゲームしてるのを見つけた時と、ほぼ同じ声色だったと思う。
母親の声色って、いくつかのプリセットがある。怒り、呆れ、心配、そして“あのねぇ”。“あのねぇ”はだいたい、論理と感情の混合物だ。

「朝ご飯抜きで動くなんて、論外。まず、腹ごしらえ」

金髪の少年が慌てる。

「でも、火を起こすのは時間が……」

「火おこし? 私、ライター持ってるわよ」

三人が一斉に「えっ」と言った。

私はエプロンのポケットを探った。主婦のポケットは、だいたい異次元だ。
レシート、輪ゴム、ヘアピン、絆創膏、そして小さなガスライター。ある。あるのよ。
昨日、コンロの火がつきにくくて、念のため入れておいた――という“念のため”が、こんな形で回収されるとは思わない。人生、伏線回収の仕方が雑すぎる。

「……あるじゃない」

私がライターを鳴らすと、小さな炎が灯った。
炎って、こんなに安心するものだったっけ。ガス代に怯えながらも、火は味方だ。

魔法使い少女が目を細める。

「火の精霊の契約なしで……」

盗賊少年が身を乗り出す。

「それ、売れる?」

金髪の少年が、敬虔な顔で呟く。

「神の道具……」

「神じゃない。百円」

私はそこらの枯れ枝を集め、手際よく火をおこした。鍋を置き、森の端に生えている草――見た目がネギに似ている――を摘み、岩陰にいる小さなカエルっぽいものを見つけて、躊躇なく掴んだ。

三人の視線が痛い。
痛いのは視線だけじゃなくて、私の行動もたぶん痛い。異世界初日から野草摘んでカエル掴む母親。何のRTAだ。

「……それ、食べるんですか?」と勇者少年。

「食べられそうだし。タンパク質」

「食べられそうで決めるのは危険だろ」と盗賊少年。

魔法使い少女が真剣に言った。

「毒草と毒蛙の区別は?」

私は一度、カエルを持った手を止めた。

……そうだ。ここは異世界。見た目がネギでも毒かもしれない。見た目がカエルでも爆発するかもしれない。爆発するカエルってなんだよ、と思うけど、異世界では“なんだよ”が通じない。
異世界とは、“なんだよ”が常に正解にならない世界だ。

私は慎重にカエルを観察した。肌はつやつや、目はつぶら。嫌な匂いはしない。――って、嗅いだらいけないか。いや、でも嗅ぐのが母親の判断材料の半分だ。賞味期限を嗅ぎで判断してきた人生だ。鼻を信じて何が悪い。

「……味見するわ」

「待て!」と三人が叫んだ。

私は鍋に水を入れ、草と、手持ちの塩をひとつまみ――エプロンのポケットから出てきた。
なんで塩があるのかは考えない。主婦のポケットは宇宙なのだ。宇宙には塩もある。そういうことにする。

草を煮て、少しだけ口に含む。苦いけど、嫌な苦さじゃない。野菜の苦さ。つまり大丈夫。
“つまり大丈夫”って、どんな根拠だ。根拠は私の人生経験である。人生経験はときどき雑。

次にカエルは――さすがに躊躇した。私は母親だけど、カエルを味見する母親ではない。たぶん。いや、母親にもいろいろいるから断言はできないけど、少なくとも私はそういう母親ではないと信じたい。

そこで、魔法使い少女が小さく手を上げた。

「……識別魔法、ある」

「あるなら最初に言って」

魔法使い少女――後で知ったけど、名前はリュミア――が呪文を唱えると、カエルの上に淡い光が浮かび、文字が踊った。

《森蛙:食用。滋養。》

私は安心して頷いた。

「ほら、食用。煮る」

盗賊少年――レオと名乗った――が、遠い目で言う。

「おばさん、強いな」

「おばさん言わない。お母さん」

勇者少年――アルト――が、目を輝かせる。

「お母さん……?」

私は鍋をかき回しながら言った。

「そう。お母さん。息子が中学生」

リュミアがふと、私の指先を見た。

「……指、荒れてる」

「水仕事ね。冬は特に。ハンドクリーム塗りたい」

アルトが急に真面目な声で言った。

「……あなたは、異世界から召喚された『賢者』かもしれません」

「賢者じゃない。パート」

レオが笑う。

「賢者より現実的だな」

スープが煮え、草とカエルの出汁が利いて、意外といい匂いがした。私は三人に木の器――それも森の中に落ちていた。を渡し、何なんだこの森。森なのに食器が落ちてる。森の落とし物、物騒。

三人が一口飲んだ瞬間、顔が変わった。
食べ物って、人の顔を変える。怒ってる時でも、温かい汁物が入ると一瞬だけ柔らかくなる。直樹もそうだ。味噌汁は家庭の魔法だ。魔法使いが納得しない? じゃあ契約書を見せるよ、毎日の献立表という名の契約書を。

アルトが目を見開く。

「……温かい」

リュミアが呟く。

「……胃が、落ち着く」

レオが、真剣に言う。

「……これ、もう、回復薬じゃん」

私は笑った。

「回復薬じゃない。スープ。温かいもの食べると元気出るでしょ」

アルトがスープを飲み干し、深々と頭を下げた。

「……ありがとうございます。僕たちは、王都へ向かう勇者一行です。魔王を倒す使命が……」

「魔王?」

レオが肩をすくめる。

「そういうやつがいるらしい」

リュミアが淡々と言う。

「世界が滅ぶらしい」

私は鍋を抱えなおした。

世界が滅ぶ――という言葉は重い。
けれど私は、つい先週、冷蔵庫が壊れて世界が滅ぶかと思った。
生活にとって、困ることはだいたい世界の終わりだ。世界の終わりって、案外頻繁に来る。しかも大抵は修理代請求書と一緒に来る。魔王より現実が怖い。

「で、あなたたち、今レベルいくつ?」

三人が顔を見合わせた。

アルトが小さく答える。

「……2」

レオが補足する。

「俺も2」

リュミアが、やや悔しそうに。

「……1」

私は鍋を落としそうになった。

「……え?」

「昨日、スライムに負けた」とレオ。

「スライムに?」

「いや、油断したんだよ。ヌルヌルしてさ」

アルトが真面目に頷く。

「僕たち、まだ、訓練を終えたばかりで……」

リュミアが言う。

「装備も貧弱」

私は頭の中で計算した。
計算というのは、母親の必殺技だ。家計簿と献立と学校行事と仕事のシフトを同時に回すには、計算が必要だ。
中学生の直樹が、部活の大会前に「練習足りない」と言っていた。なのに、勇者はスライムに負ける。
世界が滅ぶ以前に、あなたたちが先に滅ぶ。滅ぶ勇者一行、洒落にならない。

「……ちょっと待って。魔王の前に、基礎体力。レベル上げしなさい。段階踏むの」

アルトが驚く。

「レベル上げ……?」

「そう。お母さんは、計画立てるの得意。だって毎日、ご飯作って洗濯して掃除して、学校行事と仕事と、締め切りと、全部回してるのよ。段取りの鬼よ」

レオが笑う。

「段取りの鬼、こえぇ」

私は鍋を指さした。

「まず、栄養。次、睡眠。次、反復。これでレベルは上がる」

リュミアが真剣に言った。

「……あなた、支援職」

「支援職じゃない。お母さん」

その日から、私は「勇者一行」に同行することになった。

いや、同行というより、巻き込まれたというか、私が勝手に入り込んだというか。
だって、彼らを放っておけない。
放っておくと、死ぬ。
母親は、放っておくと死ぬものを放っておけないのだ。
――この世で一番厄介な性質が、“優しさ”じゃなくて“放っておけなさ”だと、私は知っている。



最初の村は、森を抜けた先にあった。

木と石でできた家が並び、畑が広がり、井戸があり、鶏が鳴いている。見た目は絵本みたいなのに、人々の顔が妙に疲れている。
絵本っぽいのに生活っぽい。生活っぽいのに疲れてる。――つまり、うちと同じだ。場所が違っても、暮らしは暮らしだ。

「魔物が増えてる」と村人が言った。
「畑が荒らされる」と言った。
「夜が怖い」と言った。

アルトが勇者らしく胸を張った。

「僕たちが守ります!」

その横で、私は村の子どもたちの痩せた腕を見て、眉をひそめた。

「まず、食べさせないと」

レオが首を傾げる。

「守るってそういうことじゃないのか?」

「守るには体力。体力にはご飯。ご飯には材料。材料には段取り」

私は村の広場にある空き小屋を借りて、即席の炊き出し所を作った。鍋は一つしかないけど、村の奥さんたちが鍋を貸してくれた。
みんな、最初は警戒していたけれど、私が手を動かし始めると、自然と集まってきた。
台所って、そういう場所だ。言葉より先に手が動く場所。信用より先に火が入る場所。人間関係を煮込む場所。

「これ、どうやって作るの?」

「野菜は先に炒めると甘みが出るのよ」

「味が薄い……」

「塩はね、最後。最初に入れると水分が出すぎる」

異世界でも、台所は台所だ。世界が違っても、鍋の中は同じだ。
鍋の中が同じなら、私がやれることも同じ。
――つまり私はここでも、母親でしかない。母親でしかない、というのは弱点じゃない。むしろ武器だ。母親は多目的ツールだ。

炊き出しをしながら、私は三人に言った。

「あなたたち、村の周りの弱い魔物から倒しなさい。いきなり強いのに突っ込んじゃだめ。まずは、数。数こなして、慣れる」

アルトが頷く。

「はい!」

レオが口笛を吹く。

「お母さん、隊長じゃん」

リュミアが淡々と。

「合理」

そして、私は「スローライフ」をしているつもりだった。

村で料理をして、洗濯をして、畑を手伝って、子どもたちにおにぎりを握ってあげて、夜は焚き火のそばで編み物――は材料がないから、代わりに布を繕って、みんなの服のほつれを直して。

これ、スローライフじゃない?
私はそう思っていた。思っていたのだ。
でも今振り返ると、それはスローライフじゃなくて“生活”だった。生活はスローとかファストとかじゃない。生活は生活だ。速度の問題じゃなくて、継続の問題だ。

ただ、三人のレベルが、異様な勢いで上がっていった。

アルトは最初は剣の振り方がぎこちなかったのに、毎朝私が「腕立て十回」と言い、腕立てが終わるまで朝ご飯を出さなかったら、泣きそうな顔で頑張って、二週間で腕が太くなった。
レオは最初は適当だったけど、私が「帰ったら靴を揃えなさい」と言い、揃えないと夜食を出さなかったら、なぜか足運びが静かになり、いつのまにか奇襲が上手くなった。
リュミアは魔法を使うと倒れていたのに、私が「水分と塩分、摂る」と言い、具だくさんスープを飲ませ、昼寝をさせ、夜更かしを禁止したら、魔力が安定して、呪文の詠唱が短くなった。

――つまり、生活が整うと強くなる。
当たり前だ。
当たり前すぎて忘れられている当たり前だ。
母親とは、忘れられている当たり前を毎日再生産する生き物だ。

村の人たちは言った。

「勇者様たちが強くなった」
「最近、魔物が減った」
「安心して眠れる」

私は鍋を洗いながら思う。

スローライフって、こういうことよね?
生活を整える。食べる。眠る。働く。守る。
ただ、毎日、なぜか経験値が入るだけで。
経験値って、積み重なると人生みたいだ。人生も、積み重なるとステータスが上がる。上がってほしくないステータス(疲労耐性とか)も上がるけど。



村を出る頃には、三人のレベルは――

アルトが誇らしげに言った。

「レベル、21になりました!」

レオが笑う。

「俺も21!」

リュミアが少しだけ口元を緩める。

「……19」

私は、鍋を落としそうになった。

「……二週間で?」

アルトが頷く。

「お母さんのご飯のおかげです!」

レオが肩を叩く。

「お母さんバフだよ。飯バフ、睡眠バフ、掃除バフ。全部乗ってる」

リュミアが真顔で言う。

「生活魔法、強い」

「魔法じゃない。生活」

でも、私の中で、少しずつ違和感が膨らんでいた。

直樹はどうしてる?
今朝、弁当は作りかけだった。味噌汁は火にかけたままだった。私は鍋を抱えて森に立っていた。
直樹は、家で、どうしてる?
――あの子、朝弱いのよ。私が起こさないと、遅刻するのよ。

その思いが、夜になると胸の奥で重くなった。
重いって、つまり、私が“帰る”を必要としている証拠だ。
母親というのは、誰かの帰り場所であることを自分の帰り場所にしてしまう。ややこしい。便利なようで不便だ。不便なようで、やっぱり便利だ。――呪いみたいに。

焚き火のそばで、アルトが言った。

「お母さん、帰りたいですか?」

私は木べらを握りしめた。

「……帰りたいに決まってる」

レオが珍しく真剣な顔をした。

「じゃあ、帰る方法、探す?」

リュミアが静かに言う。

「異世界から来た者は、世界の『綻び』から戻る」

「綻び?」

「……空の裂け目。時折、現れる。王都の大聖堂に記録がある」

アルトが拳を握る。

「王都へ行きましょう。魔王も倒す。お母さんも帰す」

私は笑ってしまった。
頼もしいのに、可笑しい。可笑しいのに、頼もしい。
世界を救うと言いながら、私を家に帰すと言う。
“勇者”って、そういうものなのかもしれない。誰かの生活に責任を持つこと。――それ、母親と同じだ。

「魔王倒す前に、宿の予約が必要ね。野宿はもう嫌」

レオが目を丸くする。

「宿の予約?」

「当たり前。四人で野宿なんて、体壊す」

リュミアが頷く。

「合理」

アルトが笑った。

「お母さん、王都でもスローライフですね」

「そうよ。王都でも生活は生活。ちゃんと暮らす」

私は、そう言って、自分に言い聞かせた。
ここは異世界。私は迷子。だけど、生活を回せば、心は壊れない。
母親は、そういうふうにできている。
――そして壊れないふりが上手い。壊れないわけじゃない。壊れないふりが上手いだけだ。



王都は、想像以上に大きかった。

石造りの城壁、広い道、行き交う人々。露店が並び、香辛料の匂いが漂い、魔法の光がちらちらと舞う。異世界の「都会」は、目にうるさいほど派手だった。
派手な場所ほど疲れる。派手な場所ほど、生活が乱れる。だから母親は、派手さを見て即座に“整え”にかかる。

「まず、宿」と私が言うと、三人は素直に従った。素直なのは良い。素直な若者は伸びる。伸びすぎて二週間でレベル二十になるけど。

宿屋の女将は、最初は私たちを怪しんだ。特に鍋。鍋を抱えた女が勇者と一緒に来るなんて、怪しさしかない。
でも私は、女将の手元を見て、すぐに分かった。

――この人、忙しすぎて回ってない。

忙しすぎて回ってない目。忙しすぎて回ってない手。忙しすぎて回ってない呼吸。
私は微笑んで言った。

「女将さん、台所、手伝いましょうか」

女将が目を細めた。

「……あんた、何者だい」

「母親です」

その夜、宿の台所で私は野菜を刻み、スープを作り、パンを焼く手伝いをした。女将は最初は警戒していたが、二時間後には「真弓、これも頼む!」と叫んでいた。
世界が違っても、忙しい台所は味方が欲しいのだ。
台所は戦場で、母親は兵站で、鍋は武器で、木べらは指揮棒である。いや、指揮棒は言い過ぎか。木べらは木べらだ。でも私にとって木べらは、生活の剣である。

そして、私の手が空いた頃。

アルトたちは宿の裏庭で素振りをしていた。

「休みなさい!」と私は叫んだ。

アルトが汗だくで振り返る。

「でも、レベルを……」

「レベルより睡眠!」

レオが笑う。

「お母さん、鬼」

「鬼じゃない。母」

リュミアが呟く。

「……母は鬼」

違う。
……違わないかもしれない。
母親は、子どものためなら鬼にもなる。鬼になるというより、鬼を演じる。鬼の演技をする。鬼の演技をしてでも、子どもを守る。
私はただ、直樹の顔が浮かぶだけだ。

あの子も無理をする。眠いのに夜更かしして、朝に弱くて、体調を崩す。私はそれを何度も見てきた。
だから、目の前の若者が無理していると、止めたくなる。
母親というのは、そういう呪いだ。
呪いというか、初期装備というか、取扱説明書に載ってない仕様というか。返品不可なのが一番厄介。



翌日、大聖堂へ行った。

天井が高く、ステンドグラスが光を落とし、空気が冷たい。
冷たい場所は、感情が浮く。浮いた感情は言葉になる。言葉になると、帰りたくなる。帰りたくなると、泣きそうになる。泣きそうになると、頑張りたくなる。頑張りたくなると、また生活が回る。――ループだ。母親ループ。

司祭は白い服を着て、私の話を聞くと眉をひそめた。

「異世界から来た……鍋を携えた……母……」

「鍋は関係ないと思うけど」

司祭は古い巻物を広げ、指でなぞった。

「……『綻び』は、強い感情に引かれる。帰りたい者の願いが強いほど、開く」

私は喉の奥が熱くなった。

「……帰りたい」

司祭は頷く。

「ただし、綻びは不安定。開いた瞬間に飛び込まねば閉じる。場所は――『魔王城の近く』に出た記録が多い」

アルトが前に出た。

「魔王城……」

司祭は続ける。

「魔王の存在が世界を歪め、綻びを生む。つまり――魔王の近くに行けば、帰る道がある可能性が高い」

レオが肩をすくめる。

「結局、魔王かよ」

リュミアが静かに言った。

「……合理」

私は、ため息をついた。

スローライフのつもりだったのに。
どうして、最後に「魔王城」になるの。
いや、でも、帰りたい。直樹のところへ。味噌汁、火にかけたままだった。

――味噌汁の火は、私の心の火でもある。消せない。消したくない。焦がしたくない。

「行くわ」

私が言うと、三人が同時にこちらを見た。

アルトが真剣な目で言う。

「守ります」

レオが笑う。

「ついてきてくれよ、お母さん」

リュミアが小さく頷く。

「……必要」

私は鍋を抱えなおした。

「じゃあ、準備。旅支度。まずは保存食」

司祭が口を開けた。

「……魔王城へ行くのに、まず保存食?」

「当たり前。腹が減ると判断が鈍る」

司祭は、何も言えなくなった。
司祭より私の方が現実的なの、世界の歪みを感じる。
でも現実的であることは、母親のスキルであり呪いであり、バフでありデバフである。便利なようで面倒、面倒なようで必要。まさに生活。



旅は、以前よりも危険だった。

魔王城へ近づくほど、空気が重くなる。森の色が濃くなり、鳥の声が減り、夜が異様に静かだった。
静かな夜は、怖い。怖い夜は、思い出を連れてくる。直樹が小さい頃、熱を出して夜中に何度も起きたこと。あの時の“静かすぎる夜”と、今の夜が似ている。
似ているから、余計に帰りたくなる。

途中、強い魔物に遭遇した。

黒い獣。目が赤く、牙が長い。獣のくせに、動きが妙に理性的で、こちらを見て笑った気がした。
笑った気がした、ってことは、たぶん笑っている。たぶん、こっちが怯えているのを楽しんでいる。――嫌なやつだ。人間でも嫌なやつだ。魔物のくせに性格が悪い。

アルトが剣を構え、レオが影に溶け、リュミアが呪文を唱える。

私は、鍋を持って立っていた。

鍋で戦うのか、私。
……いや、違う。

私は荷物袋から干し肉と塩を取り出した。そして、鍋の蓋をカンカンと叩いた。

「こっちよー!」

獣がこちらを向いた。怒ったように吠える。
怒るな。こっちは生活がかかってる。怒るのは私だ。味噌汁を焦がした時の私の怒りを知っているか。知らないだろうな、魔物だし。

アルトが叫ぶ。

「お母さん、危ない!」

「危なくない! 誘導する!」

危なくないと言ったのは嘘だ。危ない。めちゃくちゃ危ない。
でも嘘でも言わないと、足が止まる。足が止まったら終わる。終わったら帰れない。帰れないのは困る。困るのは直樹だ。困るのは私だ。困るのは味噌汁だ。味噌汁は関係ないかもしれないけど、私にとっては関係ある。

私は鍋の蓋を叩きながら獣の視線を引いた。獣が突っ込んできた瞬間、レオが横から足を払う。リュミアの魔法が獣を縛る。アルトの剣が、獣の急所を貫いた。

獣が倒れた後、アルトが息を切らしながら言った。

「……お母さん、今の、すごいです」

レオが笑う。

「タゲ取り上手すぎ」

リュミアが頷く。

「……支援職」

「支援職じゃない。母親は、危ないところに手を出す生き物なの」

自分で言っておいて、自分で嫌になる。危ないところに手を出したくて出してるんじゃない。危ないところに誰かがいると、手が出るのだ。
手が出る。口も出る。お金も出る。母親は、出る。出過ぎる。

私は鍋を見下ろした。鍋の蓋に少し傷がついている。
直樹に見せたら「なにそれ、カッコいい」って言うだろうか。いや、言わないか。中学生は、そういうの素直に言わない。たぶん。
たぶん、代わりに「それ何?」って言う。何でもないふりをする。
でも私は知っている。何でもないふりをするのは、照れの裏返しだ。

魔王城が見えた時、私は思った。

――帰れる。

怖いけど、帰れる。

私は、鍋の取っ手を握りしめた。
鍋の取っ手は熱くないのに、なぜか手が熱くなる。怖さの熱だ。決意の熱だ。――母親の熱だ。



魔王城の周りは、空気が裂けていた。

目に見える裂け目ではない。けれど肌が感じる。空間が歪む。風が逆に吹く。音が遅れて届く。
世界が、ちょっとずつズレている。ズレているのに、私は妙に納得している。
だって私自身がズレている。台所から森へズレた女だ。世界がズレていない方がおかしい。

司祭の言葉が頭に浮かぶ。

『強い感情に引かれる』

私は直樹の顔を思い浮かべた。

寝ぼけた顔で「あと五分」と言う直樹。帰ってきた時に「腹減った」と言う直樹。制服を投げっぱなしにする直樹。たまに、ふっと笑う直樹。
中学生の、まだ子どもで、でも背が伸びて、私の肩を追い越しそうな直樹。

帰りたい。

その瞬間、空気が「ぴし」と鳴った気がした。
鍋にヒビが入る時の音みたいな、嫌な小ささ。
でも嫌な小ささは、重大なことが起きる前触れでもある。

目の前に、薄い光の線が走る。そこから、じわじわと裂け目が広がっていく。

アルトが叫んだ。

「綻びだ!」

レオが唾を飲む。

「マジで開いた……」

リュミアが目を細める。

「……不安定」

私は裂け目に近づいた。そこは、冷たくて、熱くて、嫌な匂いがした。異世界と現実が擦れる匂い。言葉にできないのに、確かに「帰る道」だと分かる。
帰る道は、たいてい臭い。汗臭い。油臭い。味噌臭い。――生活の匂いだ。

「お母さん!」アルトが叫ぶ。「戻れるんですか!」

私は振り返った。

三人の顔が、そこにあった。最初は頼りなかったのに、今は目が違う。生きてきた目だ。鍋のスープで育った目だ。
……鍋のスープで育ったって言い方、なんだ。私、何を育ててるんだ。勇者を育ててるのか。異世界でまで子育てしてるのか。
母親、休みがない。

私は、笑った。

「……あなたたち、ちゃんとご飯食べるのよ」

レオが吹き出した。

「最後までそれかよ!」

リュミアが小さく言う。

「……忘れない」

アルトが、涙ぐんでいる。

「お母さん……僕たち、魔王を……」

私は一瞬、迷った。

魔王を倒すのは、彼らの使命だ。私の使命は、直樹の弁当だ。
世界が違う。
でも、目の前の三人が、私の家族みたいに思えてしまうのは――母親の呪いだ。
家族じゃないのに家族にしてしまう。責任じゃないのに責任にしてしまう。
呪いって、そういうことだ。誰も望んでないのに、勝手に発動する。

「……アルト」

「はい!」

「無理しない。レオ、調子に乗らない。リュミア、寝る。分かった?」

三人が同時に頷いた。
頷くな。素直に頷くな。余計に心配になる。
でも、素直に頷くところが、あなたたちの強さだ。

私は、裂け目に手を伸ばした。

その瞬間、背後から、低い声が響いた。

「……母、か」

振り返ると、そこにいた。

黒いマント。角。赤い目。いかにも、魔王。笑っているのに、笑いが冷たい。
冷たい笑いは、悪意の証拠だ。
でも魔王の冷たい笑いは、どこか“呆れ”にも見えた。――同業者? いや同業者って何だ。魔王と母親の同業者って何だ。

アルトが剣を構える。

「魔王!」

レオが短剣を抜く。

「うわ、出た」

リュミアが呪文を唱えようとする。

私は、一歩前に出た。

「ちょっと」

三人が一瞬止まった。止まるのも素直。素直すぎる。
魔王が首を傾げる。

「……何だ」

私は、鍋を抱えたまま、魔王を睨んだ。

「あなたのせいで、うちの味噌汁が火にかけっぱなしなのよ」

魔王が、瞬きをした。

「……味噌汁?」

「そう。焦げたら、鍋がダメになる。鍋がダメになると、生活が回らない。生活が回らないと、人は死ぬ」

“人は死ぬ”は大げさじゃない。生活が回らないと、人はじわじわ死ぬ。
それは魔王の呪いよりも、確実で、陰湿で、そして現実的だ。現実的なものが一番怖い。

魔王は、なぜか真剣に聞いている。
魔王のくせに。魔王の分際で。
でも魔王も、生活という単語には逆らえないのかもしれない。世界を滅ぼすのも、結局は生活の延長なのだろうか。滅ぼす生活って何だ。

私は続けた。

「あなた、世界を滅ぼすとか言ってるけど、滅ぼす前に、生活を考えなさい。まず、自分の城、掃除した? 洗濯した? 寝具干した? 湿気でカビるわよ」

魔王の口元が、ぴくりと動いた。
笑うのを堪えている顔だった。

「……母とは、恐ろしい存在だな」

「恐ろしいのは、帰り道の前に立ってるあなたよ。どいて」

魔王は、一歩横にずれた。
素直か。
魔王まで素直か。
この世界、素直が強い世界なのかもしれない。ある意味、健全だ。

アルトが目を丸くする。

「え……?」

レオが口を開ける。

「通してくれるの……?」

リュミアが小さく呟く。

「……理解不能」

魔王は、私を見下ろし、ゆっくり言った。

「帰れ。母よ」

私は、裂け目を見た。今にも閉じそうだ。迷っている暇はない。
迷う暇はないのに、迷いたい。迷いたいのに、迷えない。
母親って、いつもそうだ。決断を急かされる。決断した後で、感情が追いつく。

私は、三人を見た。

「いってきます」

アルトが泣きながら叫ぶ。

「いってらっしゃい!」

レオが笑って手を振る。

「またな、お母さん!」

リュミアが小さく手を上げる。

「……元気で」

私は、裂け目に飛び込んだ。



目を開けると、台所だった。

いや、正確には、台所の床に転がっていた。鍋を抱えて。エプロンをつけて。木べらも握っている。
転がっているのに、持ち物だけは完璧。主婦の転移は荷物管理が優秀だ。優秀な方向性が違う。

ガスコンロの上で、味噌汁が「ぐつぐつ」と鳴っていた。

私は跳ね起きて火を止め、鍋の蓋を開け、匂いを嗅いだ。

……ギリギリ、焦げてない。

「よかった……」

その瞬間、背後で「ガチャ」と玄関の鍵が開く音がした。

「……母さん?」

直樹の声。

私は振り返った。制服姿の直樹が立っている。目を丸くしている。
私は、息子の顔を見た瞬間、胸の奥がきゅっとなった。
きゅっとなった、っていうのは、つまり、全部が戻ってきたということだ。怖さも、嬉しさも、責任も、生活も、全部。

「直樹……!」

「え、なに、どうしたの。味噌汁……焦げたの?」

私は鍋を抱えたまま、泣きそうに笑った。

「焦げてない。大丈夫」

「……なんか、変じゃね? 母さん」

私は自分の手を見た。荒れた指先。鍋の蓋の傷。異世界の土の匂いが、まだ残っている気がする。
残っているのは匂いだけじゃない。習慣も、段取りも、心の構えも、残っている。
生活って、染みる。味噌汁みたいに。染みたら落ちない。

直樹が訝しげに言う。

「さっきまで、いなかった気がするんだけど」

「気のせいよ。ほら、朝ご飯。食べて」

直樹は首を傾げながらも椅子に座り、味噌汁を飲んだ。

「……うま」

その一言で、私は全部報われた気がした。
世界を救うより、魔王を倒すより、レベルを上げるより、
“うま”の一言の方が、私の人生には効く。
母親の報酬は金でも称号でもなく、こういう瞬間だ。――そしてその瞬間のために、母親は今日も鍋を抱える。

けれど、異世界の生活感は、簡単には抜けなかった。

それは、帰ってきた翌日のことだった。

私はスーパーのチラシを見ていた。卵が安い。牛乳も安い。直樹の好物のハムも――と思った瞬間、頭の中で別の言葉が浮かぶ。

回復薬。

旅の途中、アルトが擦り傷を作った時、私は思ったのだ。「回復薬、買っとけばよかった」と。
スープで治る傷もあるけど、治らない傷もある。備えは大事。備えが大事なのは、異世界でも現実でも同じだ。
母親は備える。備えすぎる。備えのために備える。

私は財布を持ち、エコバッグを持ち、靴を履きながら口に出していた。

「スーパー行って、回復薬買ってこよ」

居間でゲームしていた直樹が、顔を上げた。

「……は?」

私は玄関で手を止めた。

……回復薬?

スーパーで?

私は一瞬だけ真顔になって、それから、自分で自分が可笑しくなってしまった。
笑う。笑うしかない。笑わないと、異世界の匂いが抜けない気がした。

「……あ」

直樹が怪訝そうに言う。

「母さん、疲れてんの?」

私は笑って、エコバッグを握り直した。

「疲れてない。大丈夫。回復薬じゃなくて、栄養ドリンクにしとく」

「それ、回復薬じゃん」

「違う。これは現代の回復薬」

「じゃあ回復薬じゃん」

私は玄関を出ながら、独り言みたいに言った。

「……次からは、ちゃんとポーションの在庫管理もしないとね」

背後で直樹が「母さん、マジで大丈夫?」と叫んだ。

大丈夫。たぶん。

私はスーパーへの道を歩きながら、鍋を抱えて森に立っていた自分を思い出して、ちょっとだけ胸が温かくなった。

スローライフは、どこにいてもスローライフだ。
ただ、たまに、回復薬が欲しくなるだけで。
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