愛想笑いと舌打ち

明宏

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気が利きすぎる村上1

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大学に入って1週間、結構慣れてきて友達もできた。1週間もすれば誰が同類で誰をカモにしていいか大体わかった。
「あいついつも一人でいるよな」
俺は前の方の席に座っているボサボサの髪をした男を指して言った。
「やめとけって、仲良くなっていいことなんて絶対ないぜ。近づいただけでシラミうつされそうだ」親友のリョウタが言った。
「冷たいこと言うなよ。それにあんな奴でもパンぐらいは買ってこれるさ」
「パシリ要因かよ。俺あんな奴の買ったパンなんて食いたくねえわ」
俺は前に行って、ボサ髪の隣に座った。
「やあ」
「ビクっ」
ボサ髪はよっぽど驚いたのか、口でビクっと言った。
「驚きすぎだよ」
「…本当にごめんなさい」
「怒ってねえよ。君も1年生?」
ボサ髪はコクリと頷いた。
「話しかけられたの生まれて初めてだよ」
「そうか、生まれてきてよかったじゃねえか」
俺は冗談で言ったつもりだったが、ボサ髪は嬉しそうに笑った。可愛いじゃねえかと言いたかったが、じつはなかなか気持ち悪かった。
「よろしく、俺ナオキ」
「ぼく、ぼく、む、村上」
「なんで名前詰まってんだよ」
「名乗ったの初めてだから」
「そうか、名前あってよかったじゃねえか」
「無駄なものだと思ってた」
「下の名前は?」
「忘れた」
「じゃあよろしく村上。この授業一緒に受けよう」俺はリョウタを呼んだ。リョウタは嫌そうな顔をしたが、渋々来た。
「うん」
「じゃあ寝るから後でノート見せて」
俺は村上が頷く前に眠りについた。 
 起きると枕が敷いてあった。枕からは頭皮のすっぱい匂いがした。
「くさ、これ君の?」
村上はにこっと笑った。笑い方からして悪気はないようだった。
「ノート書いといたよ」
「えっ、ありがと」
「どういたしまして」 
俺はこんなに使えるやつを始めてみた。今までカモにしたやつは口には出さなかったが嫌がっていたし、影で俺でも思い付かないような悪口を言ってたのを覚えている。こっちがノイローゼになりそうだったからクビにしたくらいだ。
「じゃあ友達の証にパン買ってきてくれるかな?」
「もう買ってあるよ」
「ありがと...でも俺カレーパン頼もうと思ってたんだけど」
「はい」村上はレジ袋をわたしてきた。
「開けてみて」
「えっ!」カレーパンが入っていた。しかも商品までイメージしてたやつと同じだ。
「次授業何?」
「政治学」
「そうなんだ」
「村上は?」
「経営学入門」
「行けよ」
「いいんだ」
「行けって」
「うーん、わかったよ」
村上はしぶしぶ教室を出て行った。
「あいつ使えるな」
「いや~、ちょっと怖くねえか」リョウタは食卓で毛虫を見たような顔をした。
「なんで、びびってんだよ」
「ビビるだろ、初対面で好きなパン当てるってなかなかだぜ」
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