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第五章
狂気
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朝の冷たい光が街を淡く照らしていた。空気はまだひんやりとしている。いつものように街はとても静かで、遠くで鳴いている鳥のさえずりと自分の呼吸している音しか聞こえない。いつもの道を歩きながら、ふと目の前の歩道橋を目にして立ち止まる。今回も歩道橋は使わない。あの本には必ず『歩道橋の階段から転落して死亡』と書いてあるのだ。歩道橋を使わなければ、いつか、きっと。心の中でそう唱えながら、角を曲がった瞬間ーー、
白い光が視界を覆った。遠くに光る車のヘッドライトが、冷たい朝の光の中で鋭く輝く。そして、耳を裂くようなブレーキ音とタイヤがアスファルトを擦る音。反射的に体を引いたが、『今回もまた』間に合わなかった。
「もう、いや・・・」
衝撃。熱と痛みが体中を走り、視界が赤色に染まっていく。体が地面に叩きつけられる。
「また・・・」
ーそして、気づいたらまたこの会話。ループは今日も終わらない。
「ねえ、雅(みやび)ー!私の話聞いてる?」
なんだか腹が立ってきた。私がこのループに巻き込まれるようになったきっかけはこの会話だ。もとはと言えば夏美のせいじゃないか、そんなことを考えるようになってしまった。
「あのね、25時ぴったりに成生図書館に足を踏み入れると、未来の本が見れるっていう噂があるんだって!私の代わりに行ってきてほしいの!お願い!」
その言葉を聞いた瞬間、私は自分でも気づかないうちに叫んでいた。
「もういい加減にしてよ!あんたのその言葉のせいで私は今大変なことになってるのよ!毎回毎回、この会話をするたびに胸が苦しくなるの。もしかしたら、もう一生このままなんじゃないかって考えるようになって・・・、もうつらいの。」
思わず強く言ってしまう。言葉の先に、怒りと苛立ち、そしてどこかで自分を責める気持ちが入り混じっていた。
「え、どうしたの?何かあったの?」
夏美は、驚きと戸惑いが入り混じっている。私は、少し言い過ぎたことに気づく。でも、どうしても苛立ちが止められなかった。
「だって、あの噂のせいで私は・・・!」
声が震えて、言葉は途切れ途切れになる。夏美はその後しばらく黙り込み、そして少しだけ柔らかくこう言ってくれた。
「雅、大丈夫だよ。ゆっくりでいいから話してごらん。」
その声に、わずかに安堵が生じる。私は夏美に、今までのことを全て話すことにした。
「実はね、私はずっとループしているの。ずっと前に夏美に25時に成生図書館に足を踏み入れると未来の本が見れるっていう噂を聞いて、私は夏美にも頼まれたから実際に25時に図書館に行ったの。そうしたら未来の本には『漆原 雅 2025年6月19日午前7時12分 歩道橋の階段から転落して死亡』って書いてあった。最初は嘘だろうと思っていたけど本当だったの。それから、何度も死を回避しようとしているんだけど毎回死んでしまって何度も繰り返してる。」
呼吸もせずにひと思いに今までのことを話した。長い間沈黙が流れる。そして、夏美は静かにこう言った。
「ごめん雅、さすがに・・・そんなこと信じられないよ。」
夏美の声は平然としていて、冷たく、遠く感じる。
「ごめん。私の代わりに図書館に行くのが嫌でそんな嘘ついたんだよね。行かなくていいから。ほんとごめんね!」
その一言で胸がギュッと締め付けられる。必死に訴えたのに信じてもらえなかった。誰も、親友の夏美でさえもこの現実を理解してくれない。世界が音を失ったように静まり返り、孤独だと感じた。そう思うと、恐怖と絶望が胸に重くのしかかった。
私はいつの間にか図書館に来ていた。本棚を見上げて、『漆原 雅』と刻まれた本を手に取る。中を開くと、死因がさらに増えており白紙のページが少なくなっている。そして未来の本は、以前よりも光の輝きが鈍くなっていた。中を開くと、文字も滲み読みにくくなっていた。この輝きがなくなるとどうなるのだろうか。もうループ出来なくなるのではないか、不安で押し潰されそうになった。
白い光が視界を覆った。遠くに光る車のヘッドライトが、冷たい朝の光の中で鋭く輝く。そして、耳を裂くようなブレーキ音とタイヤがアスファルトを擦る音。反射的に体を引いたが、『今回もまた』間に合わなかった。
「もう、いや・・・」
衝撃。熱と痛みが体中を走り、視界が赤色に染まっていく。体が地面に叩きつけられる。
「また・・・」
ーそして、気づいたらまたこの会話。ループは今日も終わらない。
「ねえ、雅(みやび)ー!私の話聞いてる?」
なんだか腹が立ってきた。私がこのループに巻き込まれるようになったきっかけはこの会話だ。もとはと言えば夏美のせいじゃないか、そんなことを考えるようになってしまった。
「あのね、25時ぴったりに成生図書館に足を踏み入れると、未来の本が見れるっていう噂があるんだって!私の代わりに行ってきてほしいの!お願い!」
その言葉を聞いた瞬間、私は自分でも気づかないうちに叫んでいた。
「もういい加減にしてよ!あんたのその言葉のせいで私は今大変なことになってるのよ!毎回毎回、この会話をするたびに胸が苦しくなるの。もしかしたら、もう一生このままなんじゃないかって考えるようになって・・・、もうつらいの。」
思わず強く言ってしまう。言葉の先に、怒りと苛立ち、そしてどこかで自分を責める気持ちが入り混じっていた。
「え、どうしたの?何かあったの?」
夏美は、驚きと戸惑いが入り混じっている。私は、少し言い過ぎたことに気づく。でも、どうしても苛立ちが止められなかった。
「だって、あの噂のせいで私は・・・!」
声が震えて、言葉は途切れ途切れになる。夏美はその後しばらく黙り込み、そして少しだけ柔らかくこう言ってくれた。
「雅、大丈夫だよ。ゆっくりでいいから話してごらん。」
その声に、わずかに安堵が生じる。私は夏美に、今までのことを全て話すことにした。
「実はね、私はずっとループしているの。ずっと前に夏美に25時に成生図書館に足を踏み入れると未来の本が見れるっていう噂を聞いて、私は夏美にも頼まれたから実際に25時に図書館に行ったの。そうしたら未来の本には『漆原 雅 2025年6月19日午前7時12分 歩道橋の階段から転落して死亡』って書いてあった。最初は嘘だろうと思っていたけど本当だったの。それから、何度も死を回避しようとしているんだけど毎回死んでしまって何度も繰り返してる。」
呼吸もせずにひと思いに今までのことを話した。長い間沈黙が流れる。そして、夏美は静かにこう言った。
「ごめん雅、さすがに・・・そんなこと信じられないよ。」
夏美の声は平然としていて、冷たく、遠く感じる。
「ごめん。私の代わりに図書館に行くのが嫌でそんな嘘ついたんだよね。行かなくていいから。ほんとごめんね!」
その一言で胸がギュッと締め付けられる。必死に訴えたのに信じてもらえなかった。誰も、親友の夏美でさえもこの現実を理解してくれない。世界が音を失ったように静まり返り、孤独だと感じた。そう思うと、恐怖と絶望が胸に重くのしかかった。
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