【完】学園トップに反抗したら様子がおかしくなった(かねもち学園)

いとこんドリア

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八章/嫉妬

57.無事

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「甲斐ちゃん、大丈夫~?」
「大丈夫だって言っているだろ」

 病院で甲斐は右手の怪我の縫合を終えたばかりだった。
 待合室には四天王や数人のクラスメート達が大した事がなくてよかったと肩をなでおろしている。

 先ほどは無才と百合ノ宮の生徒会も見舞いに来院。甲斐に申し訳なさそうに頭を下げていた。別にそちらのせいではないと言っておいたが、それでも連中は腑に落ちない表情を浮かべて謝罪していた。

 特に無才学園の生徒会連中は、あの日下部にお熱だった事をすでに過去話にしていて、なぜあのような者に盲目的になっていたんだろうとまるで憑き物が落ちたようにまともになっていた。

 すべては日下部が転校して来た日からおかしくなった気がすると話しており、今までしてきた事の反省の弁を口にしていた。

 あの体育祭は波乱のまま幕を閉じ、今回の対決は無効とされた。ニュースでは体育祭の事にも触れていたが、何より矢崎財閥のご子息が刺されたというビックニュースは大いに世間を驚かせ、その話題でもちきり。病院外ではマスコミ連中が今も性懲りもなく張り込みをしている。

 おかげで関係者が買い物にと外出をすれば、マスコミに一斉に囲まれて問答無用でインタビュー責めにあってしまう。しばらくは裏口からコソコソと出入りをしなくてはならない事が億劫に思うが、ほとぼりが冷めるまでの辛抱。

 事件を起こした張本人である日下部は、逮捕されてから現在は勾留中である。
 全く反省していない所か独房の中で「俺のせいじゃない」と繰り返し同じ事ばかりを叫び続けているらしい。

 しまいには「俺は理事長の甥だぞ!こんな事をしてタダで済むと思うなよな!」と、得意げに叫んでいる始末。
 その理事長が自殺した事は伝えられているはずなのに、日下部の都合のいい頭には入っていないようだ。少年院行きは確実だろう。

「その傷……痛そうだね」と、穂高。
「少し縫っただけで済んだし大丈夫。それより……」
「直の事でしょ?」

 相田が甲斐の聞きたい事を汲み取った。

「矢崎は「ピンピンしているぞ」
「……へ」

 ハルのあっさりした声に甲斐は目を丸くする。

「直君があーんな傷でくたばるわけがないじゃない。体力だけはバカみたいにある直君だよ。ただの人間とは一味も二味も違うんだから心配無用さ」
「そーそー直は小さい頃から化け物じみてるしね。倒れた時は意識失ってたけど、実は呑気に寝てたってオチ。だからぜーんぜん大丈夫!モウマンタイよ!」
「今は病室で安静にしている。さっきまでドラ○エを暇そうにプレイしていた。傷の具合もそれほど大した事ないと自分で言っていたくらいだぞ」
「そ、そっかぁ。よかった」

 奴に限ってそう簡単にくたばらないとは思っていたが、ピンピンしているならいう事はない。

「それにしても、甲斐ちゃん助けるためにまさか身を挺してまで守るなんて、直も粋な事するよねぇ。オイラでさえ反応できなかったのに、まるでほんまもんの王子みたいだったねー。王子って柄じゃないのにさァ」

 見た目と雰囲気が魔王だろうと誰もが思っていたが、行動はちゃんと王子であった。

「直君てなんだかんだ言って甲斐君の事大事にしてそうだね。なかなか素直にならない所がツンデレそのものだけど」
「直は時々幼い子供のような所があるからな。まあ何はともあれ、架谷は直に会って来るといい。直もお前にあいたがっていたし、お前の事を待っているはずだ」
「……あ、ああ。会ってくるよ」

 身を挺してアイツが自分を守ってくれた。
 我儘で、俺様で、傲慢で、俺の大嫌いな奴だったのに、俺のためにアイツは……

 なんだかんだ思う所はあっても、あいつが俺を助けてくれた事には変わりない。だから、ちゃんとお礼は言わなくちゃな。

 甲斐は直がいるであろう大部屋の個室に向かった。有名セレブを受け入れるためのセキュリティーが万全の病室である。直の部屋の前を警護するエスピーの人に頭を下げて、壁や扉だけで豪華さが漂う病室の扉をノックした。

 返事がなかったのでそっと扉を開けると、そこは高級ホテル顔負けの病室であった。ヨーロッパのブランド物の家具一式に、キッチンや冷蔵庫、広々とした風呂場まで付いている。おまけにベットは当然のようにダブルサイズ。

 最近の病院はここまで設備がいいのか。病院ていうと暗くて重苦しいイメージがあったのだが、こんな病室を見る限り、金さえあればホテルに滞在している気分を味わえるんだろう。貧乏人には一生ご縁がなさそうな部屋だ。

 ……寝てるのか。

 ベットで穏やかな寝息をたてて眠っている。

 無防備すぎだろ、矢崎。
 たしかに俺はあんたに危害を加えたりはしないけれど、それにしたって財閥の御曹司様がこんなんでいいのかよ。寝首をかかれるぞ、不埒な野郎に。

 そうして眺めていると、突然手首を掴まれて引き寄せられた。

「っ、!?」

 勢い余ってぽすんと直の胸に顔が埋まってしまう。

「お前……いつまでオレの顔眺めてんだよ変態か」

 そう言った声の主は起きていて、そのままぎゅっと甲斐の体を両腕で包み込んでいた。

「やっぱ起きてやがったのか」

 そんな気はしていたけれど、奴の顔を眺めているのに夢中で油断していた。

「お前が来るまでずっと起きていた。お前と話したかったからな」
「なら、とりあえず放し「だめだな」

 即答し、直はさらにぎゅっと抱きしめる腕の力を強めた。

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