【完】学園トップに反抗したら様子がおかしくなった(かねもち学園)

いとこんドリア

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十六章/トラウマ

132.最近の周り

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「おはよーさん」
「おはよー甲斐」

 Eクラスに入ると、クラス内は緊張感に包まれていた。健一が挨拶を返してくれたが、他の皆はそれどころではない様子で深刻そうだった。
 なんか雰囲気が不穏だ。事件でもあったのか。

「どうしたんだ」

 声を掛けて振り返るみんなが一様に怪我をしていた。それぞれ手足や頬にガーゼや絆創膏が貼られている。その中心部にいる由希や他の女子達は特に怪我がひどく、頭部に包帯を巻いていたり腕をギプスで巻かれていたりしていた。

「なんだその怪我」
「最近巷で有名な暴走族の連中に襲われちまってね」

 由希は頭部の包帯を撫でながら苦笑混じりに言う。

「暴走族……?」
此処壱ここいちっていう名前の族らしい。みんなで帰り道に突然襲われちまってびっくり。で、この有り様よ」

 だせえ名前の暴走族だな。某カレー屋のチェーン店かよ。

「もういきなり襲いかかってくるものだから逃げるので精一杯。金属バット振り回してきたからちょっとダメージくらったけど、丁度近くに警察署があったからみんなして必死でそこに駆け込んで事なきを得たってわけ」
「警察も警察で面倒くさそうに対応していたしな」

 襲われた一人の吉村が項垂れている。吉村はスキンヘッドだけあって頭部の包帯がより目立っている。剃っているだけと言い張っているが、本当はハゲなのをますます認めないだろう。

 五反田は強面だが顔にナイフの攻撃を受けたのか余計に強面さに拍車がかかっていた。おネエで臆病だから顔で損して同情する。
 オタ熊は丁度薄い本を買っていたらしいが、不潔のおかげか誰も近寄ってこなかったらしい。不潔で助かる命もあるもんだ。

「ほんと、けーさつってクソよね」
「やる気なさげだったし」
「こっちは怪我したっつうのにパトロール強化しますってだけ。事なかれ主義でやんなっちゃうわよ」

 サツがクソで仕事しない奴らなのは甲斐も十分わかっている。なんせ中学の頃に傷害事件でしょっ引かれた際、やる気のないクソ刑事が担当になって苦労したのだ。
 なんでもかんでもお前が悪いとしか通用しないし上から目線の嫌味な野郎しかいない。警察というのは偏見を持ちたくはないが性悪しかいないイメージだ。

「初めて暴走族って見たけど、本当に柄悪くて頭カラフルだったね。特にリーダー格の奴がなんか大男みたいでゴ●ゴ13かと思っちゃったし」
「そのゴ●ゴ似のリーダーみたいなの、実はあたしの昔の彼氏に似てたんだよねーここだけの話ー」
「えーまじー?あのゴ●ゴ似が~?」
「それで元彼と錯覚しちゃって、もしかしてあたしを追ってDVしに来たんじゃないかってマジびびって全速力で逃亡よ」
「それは超怖いじゃん!で、あんたそのゴ●ゴ似の元彼となんで別れたのよ」
「その顔見てると笑っちゃうからって理由に決まってンでしょ。あたし、笑い上戸だし。あの顔マジ無理」
「なーにそれー間抜けな理由過ぎー」

 深刻な状況でありながらも、かしまし三人娘がきゃっきゃと盛り上がっている。

「あたしなんてギャン泣きでぇー命がけで警察署に逃げたわぁー。で、イケメン警察官の人に抱きついて慰めてもらったのぉー。でも架谷くんに抱き締めてもらいたかったぁ~。ねえ、慰めてぇ~」

 ま、また今度で……と、言いながらさりげなく離れる。花野は相変わらず甲斐に色目を使ってくる。
 それにしても暴走族か。考えすぎかもしれないが、矢崎財閥が絡んでいるかもしれない。宣戦布告をしてから全てが怪しく思えてしょうがないのだ。

「あ、おはよう悠里」 

 女子達が悠里を見つけると彼女を取り囲んでおしゃべりに没頭し始めた。
 そういえば、いつもならもっと早く登校している悠里が珍しくチャイムギリギリだな。

「おはよう、悠里」
「甲斐くん、おはよう」

 彼女はいつもと違って笑顔に元気がない気がした。目の下にクマができていて、やつれているような感じだ。考えすぎかな。
 挨拶をした後はいつも通り席について教科書を準備している。

「なんだか元気ないな、悠里」

 そばにいた宮本や健一に印象を訊ねる。

「そうかな。いつもと変わりない気がするけど」
「そうだぜ。考えすぎだろ」
「でもなんか覇気がないというか……」

 健一や宮本は気づいていないようだが、甲斐からするといつもと違って見えていた。顔色もあまりよくないようだ。 

「そんな細かい所に気づける甲斐くんはさすがだね」
「甲斐ってやっぱり神山さんに惚れてんじゃねーの?」
「だからそういうわけじゃねーって。俺の考えすぎならいいんだけど」


 *

「この頃変なのによく絡まれるんだけど、アンタ何か変なところにケンカ売った?」

 その日の夕方、実家に帰った際に両親からそんな事を訊ねられた。自分が矢崎財閥にケンカを売り、宣戦布告をされた影響は早くも出ているようだ。
 学校はわからないが、実家の周りにも見覚えのない怪しい連中をよく見かけるようになったのだと言う。

「やっぱりそっちにも変なのがうろついてるみたいだな。ごめん、俺が矢崎財閥にケンカ売っちゃった」
「「矢崎財閥ぅ!?」」

 やっぱり驚くだろう。あの日本一の財閥を怒らせましたなんて普通だったらシャレにならない事である。

「まあ、別に大した奴らじゃないからいいんだけど」
「一応お灸は据えておいたよ」

 矢崎財閥の精鋭共を大した奴らじゃないと言えるのがさすが両親である。

「来た奴ら全員骨折って関節外しといたから、しばらくは大物以外はビビってこないと思うわ」
「相変わらずえっぐいな、母ちゃんは」
「唯ちゃんは誰に対しても容赦ないから」

 太郎は顔色悪く苦笑している。それを笑顔でやりそうなのが唯なので見ていてぞっとしただろう。

「それにいずれ矢崎財閥とケンカになる事はわかってた事だから」
「え……それってどういう事だよ」
「昔、あたし達も矢崎財閥と揉めた事があるからよ」
「ええ、そうなのか!?」
「まあ、いろいろあったのよ。もうムカつく奴らでね、このあたしが16年も我慢していた事なんだから。そんなアンタが矢崎財閥と関わったって事は時節がきたっていうか……とうとうあんたにも16年前の事を話す時がきたようね」
「16年前……?」

 自分が生まれたばかりの頃の出来事なのだろうか。

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