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IFさよならは言わないよ(R18)
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注)二回目のデート後に二人して逃げるパターン/悲恋エンド/死にネタ
たとえ、この先何があろうと、どうなろうと、覚悟をしていたというより、未来なんて見たくなかった。考えたくなかった。現実なんて知りたくなかった。
自分の立場も、置かれている状況も、全て忘れて、愛し、愛される喜びと幸福に包まれていたかった。
ただ、今はこの腕の中にいる存在と共にありたい。
ずっとずっと甲斐のそばにいたいってそれだけだった。
なのに、救いなんてなかった。
神様なんていない。
オレから何もかもほしいものを奪っていく。
新幹線を降りた途端に甲斐の手を無理やり引いて、気が付けば走っていた。
無我夢中で別のホームへ移り、別方向の新幹線に飛び乗る。平日だからか乗客は疎ら。
乗客の前を通り過ぎても、誰しも自分をあの矢崎直だと気づく者はいないようでほっとして、とりあえず甲斐の手を引いて空いている自由席に座った。
お互いは無言だった。目も合わせなかった。
ううん、合わせることができなかった。
だってオレは、オレ自身のエゴのために甲斐を……
いや、今はそんな事より。
これから先どうしたらいいか、どうなっていくのか、皆目見当がつかない。常に脳裏は不安と薄暗い先行きで占領されている。体の震えが止まらない。
次期矢崎財閥社長という立場を放り投げて、今までの全てを捨て、甲斐と共にいる事だけを選んだ。甲斐の気持ちも考えず。
それがどういう意味をもたらすのか、どういう結末をもたらすのか、予測できても知らないふりをする。
何も考えたくはない。今は何も。
だって、甲斐を失ったら、きっと生きてはいけないのだから。たとえ生き永らえたとしても、まともではいられない。
自分の心が意外に弱くて脆い事をよく知っているし、甲斐といる時のこの満たされたひと時を知ってしまえば、甲斐を手放そうとする気なんておきやしない。
甲斐がオレの全て――。
もしそれがなくなれば、そう遠くないうちに自分で命を絶ってしまう未来が読めてくる。そう確信したからこそ、自衛のために甲斐を連れだしてしまった。
新幹線を降りる際は甲斐に「だめだ」って何度も強く説得された。もっと考えろって。何か方法があるはずだって。でも、もう後には引けなかった。甲斐を失いたくなくてガキみたいに駄々をこねた。泣いて泣いて縋った。
オレからお前を取り上げないでくれって。
そして、何度かそんなやりとりをするうちに、甲斐は何も言わなくなった。ただ、オレの手を握り締めて前を向いていた。
何も言わない甲斐が逆に怖くなって、恐る恐る声をかけた。
「甲斐」
何を話せばいいか言葉が出てこなかった。出てくるのは自分のわがままで半ば無理やり甲斐をさらってしまった事への罪悪感。
「オレ……」
バカだな。自分がやった事なのに、オレの方が震えているなんて。
「なんて顔しているんだよ。ひどい顔」
「甲斐……」
咎めなかった。
オレが無理やりお前をさらったのに。困った顔をして笑っている。
「俺がお前を止められればよかったけど、でも……止められなかった。だって、俺もお前と離れたくないって気持ちの方がずっとずっと勝っていたから。俺……つくづくお前に甘いみたいだ」
悲しむように笑う甲斐。そんな顔をさせたくないのに、今の状況で笑えるはずなんてないんだ。でも、そう言ってくれて嬉しいのは本当。
「どんな事があっても全てを捨てて、オレのそばに……いてくれるの……?」
改めて甲斐に訊ねる。
「バカ。それを強引に促したのはどっちだよ。もうこうなっちゃったんだから、答えは決まっているだろ」
「甲斐……っ」
「ずっとお前のそばにいるよ、直。お前のためだけに生きていく。全てを捨てても、世界中から後ろ指をさされても……」
「っ……甲斐っ、甲斐、ごめん。オレの、ために。ごめんな」
強く強く甲斐を抱きしめた。甲斐は健気に微笑んでいる。
もう何があっても放さない。離しはしない。甲斐の人生を狂わせてしまった責任をとらなくてはならないのだから。
それから、追っ手が来る毎日だった。
どこへ行っても矢崎の手の者や警察が追いかけてきて、嗅ぎつけられ、オレと甲斐を追ってくる。
あてもなく逃げて、逃げて、逃げ続けて、遠い東北の山奥の村にまでやってきて、オレと甲斐は一時的に疲れた体を休ませた。人のいい老夫婦の家に厄介になり、つかの間の安らげるひと時を過ごす。
しかし、長くは留まれない。
もう全国に指名手配されているお尋ね者もいい所なのだ。だからこの村でも名前も素性も偽り続けている。
世間では「あの四天王の矢崎直が一人の少年に無理やり連れだされた」だとか「高校生の少年に洗脳され駆け落ち」なんてTVのワイドショーでは好き勝手に連日報道している。
どれもこれも大半が甲斐を悪くいうものばかり。しかも、ネット上では気持ちの悪い同性愛者だと揶揄し、おもちゃにしては嘲笑うものばかり。
ふざけてやがる。オレ自ら甲斐をさらったのに。甲斐は何も悪くないのに。
甲斐が諸悪の根源みたいにされている現状が悲しくて、遣る瀬無くて、やり場のない怒りがこみあげてくる。
そのおかげで、架谷家は甲斐が犯罪者のような扱いを受けているせいか、日々誹謗中傷を受け続けていると聞いた。
友里香やまともな矢崎の人間が全力で一家を守ってくれているだろうが、それでも辛い日々を送っているのはたしかだった。
「直、今日は何食べたい?肉以外で野菜系ならなんでも作ってやるよ」
段ボールいっぱいに野菜を詰めて持ってきた甲斐の格好は泥だらけだった。畑仕事を手伝ってきたのか汗だくだ。
「……お前が食べたい」
いろんな不安を拭うために、気が付けばそう口走っていた。
「っ、何言ってんだよ。まだ昼間だろ。盛ってんじゃねぇよ」
「今すぐ、甲斐が食べたい」
甲斐を抱き寄せて、首筋や耳元に口づける。汗のにおいと石鹸の香りがとてもそそり、愛おしくてたまらない。
今すぐ、自分のものにしたい。甲斐のナカを自分のモノで犯したい。
思いつめたようなオレを見て、甲斐はとうとう折れたように抱きしめかえし、唇にそっとキスをしてきた。
「仕方ないな。お前にはほんと弱くなったよ、俺……」
困ったように笑う甲斐になんだか切なくなって、オレからもキスをする。
唇を侵し、口内を侵し、甲斐の全てを堪能する。
今日は日差しが温かくて寒くないから、柔らかい草の上で繋がろうかなんて考えて、甲斐を横抱きにして持ち上げた。
「愛してる……オレだけの甲斐……」
柔らかい草の上で甲斐に覆いかぶさり、衣服を取っ払っていく。
白い肌が陽の下にさらされ、昨晩つけたばかりの赤い痕の上にまた上塗りするようにマーキングする。
そして、無我夢中で甲斐を貪り、全身と胎内すら侵していく。
「あっ、な、お……は、あッあっ……ンあ」
「甲斐、甲斐っ……気持ち、いい……か?」
「っ……い、いわなくても、わか、るだろ……」
火照った頬と涙で潤んでいる甲斐が死ぬほど可愛くて、甲斐の胎内でまた自分自身が大きくなる。
「聞きたい」
「っ……」
「ほら……」
突き上げながら甲斐に答えを急かす。ぐちゅぐちゅと動くたびに結合部分から何度吐き出したかわからない精と唾液が滴ってくる。
「気持ち、いい、よ。し、幸せ……」
「……オレも、すごく……イイ。幸せ……」
嗚呼、たまらない。
「直……ぁ、あッ……イイ。気持ち、イイ……も……イク」
「甲斐……オレも、もう……」
あまりの快楽と愛し愛される幸せに満たされる。
甲斐の胎内に思いっきり愛欲を注ぎ込んで、もう一度キスをして、愛を囁く。
「愛してる……甲斐」
「俺も……愛してる、直」
深く深く繋がる。心も体も、幾度となく。
溶け合えばいいのにって思う程、不安な先行きを振り払うようにして、激しく求め合った。
「そろそろ服着ないと……誰か来るかも」
「まだ、いいだろ……。ひと時も離れていたくない」
手を握り絡めて唇にキスをする。
「それは……俺もだけど……」
ぎゅっと繋がりあいながら強く抱きしめあう。まだ甲斐のナカに浸っていたいのに。
「時間の続く限り、お前を求めていたい。ずっとセックスしていたい。だから、一晩中繋がってようか」
「バカ。抜けなくなったらどーすんだ」
「じゃあ、今日はずっと抱きついてるから。いいだろ?」
「っ……料理中はセクハラするなよな」
またキスをして微笑みあう。
「今夜もいっぱいスルから」
「俺、体もたねぇよ」
ずっと、ずっと、この幸せが続けばいいのに――。
終わりなんてこなければいいのに。
薄暗い未来がくる事は、普段冷静な頭であれば考えるに容易い。現実を見ないようにしていたけれど、この選択を選んだ時点で結末は決まっていた。
決して、幸せにはなれないって――。
「なあ、甲斐……」
「なんだよ」
けだるそうな体をオレに預けながら甲斐が顔を上げる。
抱いたばかりの甲斐の体には、至る所にオレが付けた所有の証が散らばっていて、とても蠱惑的。軽く汗と精液などでまみれた肢体を吹き上げて、甲斐を見つめる。
「生まれ変わりって信じる……?」
「なんだよ急に」
「いいから答えて」
「んー……信じる、かな。だって、そう思った方が希望が持てるだろう?この先、何があっても来世があるならって思ったら、死んでもまたやり直せるって思えるから」
「………」
本当にやり直せたらどんなにいいだろう。もっと別な道があったんじゃないかって少しだけ後悔してしまう。
オレは泣きそうになった。
「じゃあ生まれ変わっても……オレを見つけてくれる……?」
「直……」
「オレを探してほしい。生まれ変わっても、顔も、声も、存在も違っても、またお前にあいたい。来世でもお前の恋人でいさせてほしい。今度はちゃんと幸せにさせるから」
転生なんて前のオレだったら信じなかっただろう。けど、今なら信じたい。
「途方もない話だなそりゃあ」
「信じるって言っただろ」
「言ったけど……」
オレの気持ちを汲んでか、眉毛を下げた表情で「わかったよ」って言い直す。
「お前も俺を探してくれるならいいよ」
「探すよ。甲斐を」
「じゃあ、約束」
小指同士を繋いでゆびきりげんまんして、オレと甲斐は微笑みあう。
お互いに人生に大きな十字架を背負っているにも関わらず、自分達の健気さに我ながら涙ぐましいと思った。
転生なんて信じる程、オレ達は追いつめられていたんだろう。
翌日、集落の入口に大勢の警察などが張り込みをしていると聞いて、名残惜しいがここをもう離れなければならなくなった。せっかく住みやすい場所だと思ったのに、やはり連中達に見つかるのは早い。
オレは急いで甲斐にそれを伝えようと、頼まれていたお使いすら放り投げて居候させてもらっている家へ戻った。が――
家の前ではもう警察と見覚えのある黒服の連中達がいる。
そして、甲斐の両手首にはたった今重い手錠がかけられていた。
表向きは誘拐罪として、ありもしない性犯罪者として。
「こんな東北の片田舎にまでよく来れたモノだ。追っ手から逃げながら身を窶して……感心するものだよ」
スーツ姿の男がオレの方に振り返る。
「……矢崎、正之……」
オレのもっとも憎むべき男。
「逃げなければ酷い目にあわせるつもりはなかったのに。直、お前のせいで架谷甲斐は今や全国のお尋ね者。お前を誘拐した性犯罪者として精神異常者のレッテルを張られ、牢獄の中で生きていく事になる。お前のわがままでどれだけの人間が迷惑したのかわかっているのか?矢崎家始まって以来の恥と泥を塗りおってからに」
「…………」
わかってる。オレ自身のエゴで甲斐を傷つけて人生をめちゃくちゃにしてしまった事。もう自分の力では甲斐を幸せになんてできない事。
それでもオレは甲斐と離れたくなかった。
ずっと、ずっと一緒にいたくて、何を失っても一緒にいられる幸せの息吹に浸っていたかった。
甲斐といれば寂しくない。この先、どんなに絶望しようとも、甲斐がいれば自分は正常でいられると思ったから。
寂しいのは嫌なんだ。一人ぼっちは嫌なんだ。
甲斐がオレからいなくなる時こそ、オレが死ぬ時だと悟ってしまった。
「とにかく。もう逃亡ごっこはおしまいだ。お前は矢崎の次期トップとしてやる事が山ほどある。たった一人のガキ相手と遊ぶ時間は終わりだ」
「っ……」
「架谷甲斐を連行しろ」
「はっ」
いやだ。甲斐をこいつらなんかに引き渡したくない。
甲斐とひと時だって離れていたくないのに、オレから甲斐を取り上げないでくれよ。
もし、ここで甲斐が逮捕されて連れて行かれでもすれば、甲斐が想像以上にひどい目にあわされるのが目に浮かぶ。社会的地位を失ったどころか、世間から晒し者にされ、挙句の果てにこの正之の事だ。裏の者を使ってもっとひどい事をするかもしれない。
そう思うと、絶対に甲斐をこの連中に渡すわけにはいかない。
オレは一瞬の隙をついて、懐から拳銃を取り出して発砲する。
甲斐の手錠と甲斐の両脇にいる男を狙って。怯んで狼狽える連中達。
その隙に甲斐の手を取って走る。森の奥へ逃げ込むようにして。
「逃げたぞ!追え!!」
しびれを切らした連中達が、背後からオレや甲斐に向けて発砲してくる。致命傷にならない程度にわざと足や腕を狙って。
少し肩をかすってしまったけれど、こんな傷は大した事ない。
森の奥深くまで逃げ込んで、やっと連中達を撒けたと思い足を止めて呼吸を整える。
久しぶりに全速力で走ったものだから息が絶え絶え。甲斐の方を確認するように振り返ると、
「その傷!?」
甲斐の腹部には大きく血が滲んでいた。
先ほどの連中達からの発砲で流れ弾をくらったのか、青い顔をして甲斐は荒い呼吸を繰り返している。まさか心配させないようにと、撃たれても黙って走りついてきたというのか。そんなひどい傷で。
「悪い……直……」
オレ以上に呼吸を荒くさせている甲斐。すぐに甲斐を木陰に座らせて、止血しようとするも、弾丸が体内に貫通しているためにこの状態では手の施しようがない。
オレは見る見るうちに蒼褪めた。自分の行いを凄絶に後悔し、がくがく震える。
甲斐を失う恐怖と悲しさが一気にキテ、涙がどっとあふれてこぼれた。
「甲斐……甲斐……ごめん、な……ごめん……オレの、せいで……オレのせいでぇっ」
血で濡れるのもお構いなしに甲斐を強く抱きしめる。
「は、はやく病院に……」
もう正之がどうのとか言っている場合ではなかった。ただ、甲斐を助けたい一心で立ち上がろうとすると、オレの手を咄嗟に甲斐は握った。
「いいんだ」
甲斐は荒い呼吸を繰り返してそう言う。
「甲斐……?」
「すぐ、おわるから」
その台詞に絶句する。
また頬から一気に温かいモノがこぼれた。
「……何、言ってんだよっ。そんなの……そんなの嫌に決まってるだろ!バカ言うなよ!は、はやくしないと」
激しく狼狽えるオレはもう我を失っていたようなもの。
それでも甲斐は強くオレに哀願する。
「直、頼む。最後だけ言う事……きけよ。俺の事……愛してるなら……一緒にいたいなら……最期は……お前のそばで……」
「甲斐……っ」
あまりに強い意志を宿した顔でそう言う甲斐に、オレは従うほかなかった。
オレだって甲斐と一緒にいたいから、その願いを無視できるはずなんてなかった。
「なあ、直」
甲斐を抱き寄せながら、髪を優しく梳きながら、甲斐の声に耳を傾ける。目を伏せて荒い呼吸を吐きながら甲斐は微笑んでいた。
「……なんだよ」
「お前が昨日言ってた生まれ変わりの話……信じていいかな」
「……信じるも、信じないも……約束しただろ。姿かたち変わっても、お互いを探して見つけあうって」
「じゃあ今度……生まれ変わったら……次こそ……お前を、直を幸せに……してやるよ」
「っ……バカ。幸せにするのはオレだろ。だって、お前はきっと今の状態に後悔しt「してないよ」
甲斐は遮るように言う。
「後悔なんて……してない。お前と出会った事も……こうなったことも。お前と出会って、よかったと思ってる……。でなきゃ……ここまで必死で生きてなかったからな。でも今度は……こんな終わりじゃない方が……いいかな……。寂しがり屋なお前を……ひとりにさせちまう、から……」
「そう思うなら、オレをひとりにするなよ……甲斐。お前ナシじゃ……オレは生きられない。餓えて死んじまう。寂しくて孤独な思いをするくらいなら、この世になんて未練はない。こんなにもお前を愛してるのに……離れたくないのに」
「はは……熱烈な……愛の告白……だな」
甲斐はふと笑う。
「じゃあもう……好きにすればいい。俺は……お前のものなんだから……さ」
「好きにする。もうオレは甲斐がいる場所しか行く当てがないんだから」
どこにも居場所なんてない。もうこの世のどこにも。
あるとすれば、甲斐のもとだけ。そうでなければ生き続けろなんてあまりに残酷だ。
「だから甲斐……オレはお前の後を……」
「…………」
「甲斐……?」
「…………」
甲斐は動かない。
「甲斐、甲斐!おい!」
何度揺さぶって声をかけても、目を開けないし返事もない。
「っ……」
しばしの静寂の中でオレは、少しずつ、少しずつ今起きている現実を悟っていく。
深い悲しみが突き上げてきて、心の底から溢れ出た涙が一つ、二つと、冷たくなっていく甲斐の頬に零れ落ちた。
もう、何もない。全てを失ってしまった。
甲斐のいない腐りきったこの世なんて、全部いらない。
「待っててくれよ……今、追いかけるから……」
背後に人の気配がする。正之らの手の者だろう。
もはや逃げ場なく追いつめられてしまったが、この時だけは邪魔させない。
オレと甲斐の二人だけの時間を――。
そっと甲斐の唇に最期のキスをする。
冷たい甲斐の手に拳銃を持たせて、オレのこめかみに当てさせる。
そして、もう片方の手は、お互いの指を固く絡めて繋ぐ。
オレを殺す権利があるのは甲斐だけ。
「愛してる、オレの甲斐。あの世でも、来世でも……お前を見つけてみせる……必ず」
生まれ変わっても、逢いに行くから。
パーンと乾いた銃声が辺りに轟く。
もしも、もしも本当にもう一度生まれ変われるのなら、やり直せるのなら、今度こそ……
今度こそ甲斐と幸せな未来を望む。
終
たとえ、この先何があろうと、どうなろうと、覚悟をしていたというより、未来なんて見たくなかった。考えたくなかった。現実なんて知りたくなかった。
自分の立場も、置かれている状況も、全て忘れて、愛し、愛される喜びと幸福に包まれていたかった。
ただ、今はこの腕の中にいる存在と共にありたい。
ずっとずっと甲斐のそばにいたいってそれだけだった。
なのに、救いなんてなかった。
神様なんていない。
オレから何もかもほしいものを奪っていく。
新幹線を降りた途端に甲斐の手を無理やり引いて、気が付けば走っていた。
無我夢中で別のホームへ移り、別方向の新幹線に飛び乗る。平日だからか乗客は疎ら。
乗客の前を通り過ぎても、誰しも自分をあの矢崎直だと気づく者はいないようでほっとして、とりあえず甲斐の手を引いて空いている自由席に座った。
お互いは無言だった。目も合わせなかった。
ううん、合わせることができなかった。
だってオレは、オレ自身のエゴのために甲斐を……
いや、今はそんな事より。
これから先どうしたらいいか、どうなっていくのか、皆目見当がつかない。常に脳裏は不安と薄暗い先行きで占領されている。体の震えが止まらない。
次期矢崎財閥社長という立場を放り投げて、今までの全てを捨て、甲斐と共にいる事だけを選んだ。甲斐の気持ちも考えず。
それがどういう意味をもたらすのか、どういう結末をもたらすのか、予測できても知らないふりをする。
何も考えたくはない。今は何も。
だって、甲斐を失ったら、きっと生きてはいけないのだから。たとえ生き永らえたとしても、まともではいられない。
自分の心が意外に弱くて脆い事をよく知っているし、甲斐といる時のこの満たされたひと時を知ってしまえば、甲斐を手放そうとする気なんておきやしない。
甲斐がオレの全て――。
もしそれがなくなれば、そう遠くないうちに自分で命を絶ってしまう未来が読めてくる。そう確信したからこそ、自衛のために甲斐を連れだしてしまった。
新幹線を降りる際は甲斐に「だめだ」って何度も強く説得された。もっと考えろって。何か方法があるはずだって。でも、もう後には引けなかった。甲斐を失いたくなくてガキみたいに駄々をこねた。泣いて泣いて縋った。
オレからお前を取り上げないでくれって。
そして、何度かそんなやりとりをするうちに、甲斐は何も言わなくなった。ただ、オレの手を握り締めて前を向いていた。
何も言わない甲斐が逆に怖くなって、恐る恐る声をかけた。
「甲斐」
何を話せばいいか言葉が出てこなかった。出てくるのは自分のわがままで半ば無理やり甲斐をさらってしまった事への罪悪感。
「オレ……」
バカだな。自分がやった事なのに、オレの方が震えているなんて。
「なんて顔しているんだよ。ひどい顔」
「甲斐……」
咎めなかった。
オレが無理やりお前をさらったのに。困った顔をして笑っている。
「俺がお前を止められればよかったけど、でも……止められなかった。だって、俺もお前と離れたくないって気持ちの方がずっとずっと勝っていたから。俺……つくづくお前に甘いみたいだ」
悲しむように笑う甲斐。そんな顔をさせたくないのに、今の状況で笑えるはずなんてないんだ。でも、そう言ってくれて嬉しいのは本当。
「どんな事があっても全てを捨てて、オレのそばに……いてくれるの……?」
改めて甲斐に訊ねる。
「バカ。それを強引に促したのはどっちだよ。もうこうなっちゃったんだから、答えは決まっているだろ」
「甲斐……っ」
「ずっとお前のそばにいるよ、直。お前のためだけに生きていく。全てを捨てても、世界中から後ろ指をさされても……」
「っ……甲斐っ、甲斐、ごめん。オレの、ために。ごめんな」
強く強く甲斐を抱きしめた。甲斐は健気に微笑んでいる。
もう何があっても放さない。離しはしない。甲斐の人生を狂わせてしまった責任をとらなくてはならないのだから。
それから、追っ手が来る毎日だった。
どこへ行っても矢崎の手の者や警察が追いかけてきて、嗅ぎつけられ、オレと甲斐を追ってくる。
あてもなく逃げて、逃げて、逃げ続けて、遠い東北の山奥の村にまでやってきて、オレと甲斐は一時的に疲れた体を休ませた。人のいい老夫婦の家に厄介になり、つかの間の安らげるひと時を過ごす。
しかし、長くは留まれない。
もう全国に指名手配されているお尋ね者もいい所なのだ。だからこの村でも名前も素性も偽り続けている。
世間では「あの四天王の矢崎直が一人の少年に無理やり連れだされた」だとか「高校生の少年に洗脳され駆け落ち」なんてTVのワイドショーでは好き勝手に連日報道している。
どれもこれも大半が甲斐を悪くいうものばかり。しかも、ネット上では気持ちの悪い同性愛者だと揶揄し、おもちゃにしては嘲笑うものばかり。
ふざけてやがる。オレ自ら甲斐をさらったのに。甲斐は何も悪くないのに。
甲斐が諸悪の根源みたいにされている現状が悲しくて、遣る瀬無くて、やり場のない怒りがこみあげてくる。
そのおかげで、架谷家は甲斐が犯罪者のような扱いを受けているせいか、日々誹謗中傷を受け続けていると聞いた。
友里香やまともな矢崎の人間が全力で一家を守ってくれているだろうが、それでも辛い日々を送っているのはたしかだった。
「直、今日は何食べたい?肉以外で野菜系ならなんでも作ってやるよ」
段ボールいっぱいに野菜を詰めて持ってきた甲斐の格好は泥だらけだった。畑仕事を手伝ってきたのか汗だくだ。
「……お前が食べたい」
いろんな不安を拭うために、気が付けばそう口走っていた。
「っ、何言ってんだよ。まだ昼間だろ。盛ってんじゃねぇよ」
「今すぐ、甲斐が食べたい」
甲斐を抱き寄せて、首筋や耳元に口づける。汗のにおいと石鹸の香りがとてもそそり、愛おしくてたまらない。
今すぐ、自分のものにしたい。甲斐のナカを自分のモノで犯したい。
思いつめたようなオレを見て、甲斐はとうとう折れたように抱きしめかえし、唇にそっとキスをしてきた。
「仕方ないな。お前にはほんと弱くなったよ、俺……」
困ったように笑う甲斐になんだか切なくなって、オレからもキスをする。
唇を侵し、口内を侵し、甲斐の全てを堪能する。
今日は日差しが温かくて寒くないから、柔らかい草の上で繋がろうかなんて考えて、甲斐を横抱きにして持ち上げた。
「愛してる……オレだけの甲斐……」
柔らかい草の上で甲斐に覆いかぶさり、衣服を取っ払っていく。
白い肌が陽の下にさらされ、昨晩つけたばかりの赤い痕の上にまた上塗りするようにマーキングする。
そして、無我夢中で甲斐を貪り、全身と胎内すら侵していく。
「あっ、な、お……は、あッあっ……ンあ」
「甲斐、甲斐っ……気持ち、いい……か?」
「っ……い、いわなくても、わか、るだろ……」
火照った頬と涙で潤んでいる甲斐が死ぬほど可愛くて、甲斐の胎内でまた自分自身が大きくなる。
「聞きたい」
「っ……」
「ほら……」
突き上げながら甲斐に答えを急かす。ぐちゅぐちゅと動くたびに結合部分から何度吐き出したかわからない精と唾液が滴ってくる。
「気持ち、いい、よ。し、幸せ……」
「……オレも、すごく……イイ。幸せ……」
嗚呼、たまらない。
「直……ぁ、あッ……イイ。気持ち、イイ……も……イク」
「甲斐……オレも、もう……」
あまりの快楽と愛し愛される幸せに満たされる。
甲斐の胎内に思いっきり愛欲を注ぎ込んで、もう一度キスをして、愛を囁く。
「愛してる……甲斐」
「俺も……愛してる、直」
深く深く繋がる。心も体も、幾度となく。
溶け合えばいいのにって思う程、不安な先行きを振り払うようにして、激しく求め合った。
「そろそろ服着ないと……誰か来るかも」
「まだ、いいだろ……。ひと時も離れていたくない」
手を握り絡めて唇にキスをする。
「それは……俺もだけど……」
ぎゅっと繋がりあいながら強く抱きしめあう。まだ甲斐のナカに浸っていたいのに。
「時間の続く限り、お前を求めていたい。ずっとセックスしていたい。だから、一晩中繋がってようか」
「バカ。抜けなくなったらどーすんだ」
「じゃあ、今日はずっと抱きついてるから。いいだろ?」
「っ……料理中はセクハラするなよな」
またキスをして微笑みあう。
「今夜もいっぱいスルから」
「俺、体もたねぇよ」
ずっと、ずっと、この幸せが続けばいいのに――。
終わりなんてこなければいいのに。
薄暗い未来がくる事は、普段冷静な頭であれば考えるに容易い。現実を見ないようにしていたけれど、この選択を選んだ時点で結末は決まっていた。
決して、幸せにはなれないって――。
「なあ、甲斐……」
「なんだよ」
けだるそうな体をオレに預けながら甲斐が顔を上げる。
抱いたばかりの甲斐の体には、至る所にオレが付けた所有の証が散らばっていて、とても蠱惑的。軽く汗と精液などでまみれた肢体を吹き上げて、甲斐を見つめる。
「生まれ変わりって信じる……?」
「なんだよ急に」
「いいから答えて」
「んー……信じる、かな。だって、そう思った方が希望が持てるだろう?この先、何があっても来世があるならって思ったら、死んでもまたやり直せるって思えるから」
「………」
本当にやり直せたらどんなにいいだろう。もっと別な道があったんじゃないかって少しだけ後悔してしまう。
オレは泣きそうになった。
「じゃあ生まれ変わっても……オレを見つけてくれる……?」
「直……」
「オレを探してほしい。生まれ変わっても、顔も、声も、存在も違っても、またお前にあいたい。来世でもお前の恋人でいさせてほしい。今度はちゃんと幸せにさせるから」
転生なんて前のオレだったら信じなかっただろう。けど、今なら信じたい。
「途方もない話だなそりゃあ」
「信じるって言っただろ」
「言ったけど……」
オレの気持ちを汲んでか、眉毛を下げた表情で「わかったよ」って言い直す。
「お前も俺を探してくれるならいいよ」
「探すよ。甲斐を」
「じゃあ、約束」
小指同士を繋いでゆびきりげんまんして、オレと甲斐は微笑みあう。
お互いに人生に大きな十字架を背負っているにも関わらず、自分達の健気さに我ながら涙ぐましいと思った。
転生なんて信じる程、オレ達は追いつめられていたんだろう。
翌日、集落の入口に大勢の警察などが張り込みをしていると聞いて、名残惜しいがここをもう離れなければならなくなった。せっかく住みやすい場所だと思ったのに、やはり連中達に見つかるのは早い。
オレは急いで甲斐にそれを伝えようと、頼まれていたお使いすら放り投げて居候させてもらっている家へ戻った。が――
家の前ではもう警察と見覚えのある黒服の連中達がいる。
そして、甲斐の両手首にはたった今重い手錠がかけられていた。
表向きは誘拐罪として、ありもしない性犯罪者として。
「こんな東北の片田舎にまでよく来れたモノだ。追っ手から逃げながら身を窶して……感心するものだよ」
スーツ姿の男がオレの方に振り返る。
「……矢崎、正之……」
オレのもっとも憎むべき男。
「逃げなければ酷い目にあわせるつもりはなかったのに。直、お前のせいで架谷甲斐は今や全国のお尋ね者。お前を誘拐した性犯罪者として精神異常者のレッテルを張られ、牢獄の中で生きていく事になる。お前のわがままでどれだけの人間が迷惑したのかわかっているのか?矢崎家始まって以来の恥と泥を塗りおってからに」
「…………」
わかってる。オレ自身のエゴで甲斐を傷つけて人生をめちゃくちゃにしてしまった事。もう自分の力では甲斐を幸せになんてできない事。
それでもオレは甲斐と離れたくなかった。
ずっと、ずっと一緒にいたくて、何を失っても一緒にいられる幸せの息吹に浸っていたかった。
甲斐といれば寂しくない。この先、どんなに絶望しようとも、甲斐がいれば自分は正常でいられると思ったから。
寂しいのは嫌なんだ。一人ぼっちは嫌なんだ。
甲斐がオレからいなくなる時こそ、オレが死ぬ時だと悟ってしまった。
「とにかく。もう逃亡ごっこはおしまいだ。お前は矢崎の次期トップとしてやる事が山ほどある。たった一人のガキ相手と遊ぶ時間は終わりだ」
「っ……」
「架谷甲斐を連行しろ」
「はっ」
いやだ。甲斐をこいつらなんかに引き渡したくない。
甲斐とひと時だって離れていたくないのに、オレから甲斐を取り上げないでくれよ。
もし、ここで甲斐が逮捕されて連れて行かれでもすれば、甲斐が想像以上にひどい目にあわされるのが目に浮かぶ。社会的地位を失ったどころか、世間から晒し者にされ、挙句の果てにこの正之の事だ。裏の者を使ってもっとひどい事をするかもしれない。
そう思うと、絶対に甲斐をこの連中に渡すわけにはいかない。
オレは一瞬の隙をついて、懐から拳銃を取り出して発砲する。
甲斐の手錠と甲斐の両脇にいる男を狙って。怯んで狼狽える連中達。
その隙に甲斐の手を取って走る。森の奥へ逃げ込むようにして。
「逃げたぞ!追え!!」
しびれを切らした連中達が、背後からオレや甲斐に向けて発砲してくる。致命傷にならない程度にわざと足や腕を狙って。
少し肩をかすってしまったけれど、こんな傷は大した事ない。
森の奥深くまで逃げ込んで、やっと連中達を撒けたと思い足を止めて呼吸を整える。
久しぶりに全速力で走ったものだから息が絶え絶え。甲斐の方を確認するように振り返ると、
「その傷!?」
甲斐の腹部には大きく血が滲んでいた。
先ほどの連中達からの発砲で流れ弾をくらったのか、青い顔をして甲斐は荒い呼吸を繰り返している。まさか心配させないようにと、撃たれても黙って走りついてきたというのか。そんなひどい傷で。
「悪い……直……」
オレ以上に呼吸を荒くさせている甲斐。すぐに甲斐を木陰に座らせて、止血しようとするも、弾丸が体内に貫通しているためにこの状態では手の施しようがない。
オレは見る見るうちに蒼褪めた。自分の行いを凄絶に後悔し、がくがく震える。
甲斐を失う恐怖と悲しさが一気にキテ、涙がどっとあふれてこぼれた。
「甲斐……甲斐……ごめん、な……ごめん……オレの、せいで……オレのせいでぇっ」
血で濡れるのもお構いなしに甲斐を強く抱きしめる。
「は、はやく病院に……」
もう正之がどうのとか言っている場合ではなかった。ただ、甲斐を助けたい一心で立ち上がろうとすると、オレの手を咄嗟に甲斐は握った。
「いいんだ」
甲斐は荒い呼吸を繰り返してそう言う。
「甲斐……?」
「すぐ、おわるから」
その台詞に絶句する。
また頬から一気に温かいモノがこぼれた。
「……何、言ってんだよっ。そんなの……そんなの嫌に決まってるだろ!バカ言うなよ!は、はやくしないと」
激しく狼狽えるオレはもう我を失っていたようなもの。
それでも甲斐は強くオレに哀願する。
「直、頼む。最後だけ言う事……きけよ。俺の事……愛してるなら……一緒にいたいなら……最期は……お前のそばで……」
「甲斐……っ」
あまりに強い意志を宿した顔でそう言う甲斐に、オレは従うほかなかった。
オレだって甲斐と一緒にいたいから、その願いを無視できるはずなんてなかった。
「なあ、直」
甲斐を抱き寄せながら、髪を優しく梳きながら、甲斐の声に耳を傾ける。目を伏せて荒い呼吸を吐きながら甲斐は微笑んでいた。
「……なんだよ」
「お前が昨日言ってた生まれ変わりの話……信じていいかな」
「……信じるも、信じないも……約束しただろ。姿かたち変わっても、お互いを探して見つけあうって」
「じゃあ今度……生まれ変わったら……次こそ……お前を、直を幸せに……してやるよ」
「っ……バカ。幸せにするのはオレだろ。だって、お前はきっと今の状態に後悔しt「してないよ」
甲斐は遮るように言う。
「後悔なんて……してない。お前と出会った事も……こうなったことも。お前と出会って、よかったと思ってる……。でなきゃ……ここまで必死で生きてなかったからな。でも今度は……こんな終わりじゃない方が……いいかな……。寂しがり屋なお前を……ひとりにさせちまう、から……」
「そう思うなら、オレをひとりにするなよ……甲斐。お前ナシじゃ……オレは生きられない。餓えて死んじまう。寂しくて孤独な思いをするくらいなら、この世になんて未練はない。こんなにもお前を愛してるのに……離れたくないのに」
「はは……熱烈な……愛の告白……だな」
甲斐はふと笑う。
「じゃあもう……好きにすればいい。俺は……お前のものなんだから……さ」
「好きにする。もうオレは甲斐がいる場所しか行く当てがないんだから」
どこにも居場所なんてない。もうこの世のどこにも。
あるとすれば、甲斐のもとだけ。そうでなければ生き続けろなんてあまりに残酷だ。
「だから甲斐……オレはお前の後を……」
「…………」
「甲斐……?」
「…………」
甲斐は動かない。
「甲斐、甲斐!おい!」
何度揺さぶって声をかけても、目を開けないし返事もない。
「っ……」
しばしの静寂の中でオレは、少しずつ、少しずつ今起きている現実を悟っていく。
深い悲しみが突き上げてきて、心の底から溢れ出た涙が一つ、二つと、冷たくなっていく甲斐の頬に零れ落ちた。
もう、何もない。全てを失ってしまった。
甲斐のいない腐りきったこの世なんて、全部いらない。
「待っててくれよ……今、追いかけるから……」
背後に人の気配がする。正之らの手の者だろう。
もはや逃げ場なく追いつめられてしまったが、この時だけは邪魔させない。
オレと甲斐の二人だけの時間を――。
そっと甲斐の唇に最期のキスをする。
冷たい甲斐の手に拳銃を持たせて、オレのこめかみに当てさせる。
そして、もう片方の手は、お互いの指を固く絡めて繋ぐ。
オレを殺す権利があるのは甲斐だけ。
「愛してる、オレの甲斐。あの世でも、来世でも……お前を見つけてみせる……必ず」
生まれ変わっても、逢いに行くから。
パーンと乾いた銃声が辺りに轟く。
もしも、もしも本当にもう一度生まれ変われるのなら、やり直せるのなら、今度こそ……
今度こそ甲斐と幸せな未来を望む。
終
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