【スピンオフ】学園トップに反抗したら様子がおかしくなったいろいろ

いとこんドリア

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平和な世界線in女体化

女になっちまいました17

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「ふざけるな」

 ニューヨーク支社の一室で大声を張り上げて机に置かれたある資料を床に払い落とした。資料の一部から垣間見えるのは自分と同じくらいの年齢の女の写真。一見大人しそうな顔つきと黒髪だが、誰もが美女だと納得する容姿で、少し自分の愛する甲斐に似ている。

 名前は川田凛々子かわだりりこ。年齢は二十歳。あらゆる企業を傘下におく川田グループのご令嬢で、現在は秘書見習いとして下請けの社長秘書に就任中と記載されている。こいつらがオレを呼び出したのは、この女を紹介するためだったのか。

「あなたが好みそうな許嫁を紹介してやるというのにつれない返事ですこと」

 この装飾過多なケバイ傲慢ババアは、矢崎正之の実の姉の矢崎柘榴やざきざくろ。現社長より権力が上だとされており、会長の矢崎誠一郎に匹敵する経営手腕を持つやり手ババア。仕事に関しては鉄の女だとか女帝だとかいろんな肩書きがあるが、人間性は最悪である。

 だれよりも傲慢で陰湿で性格が悪く、正之並に話の通じない冷血な野心家。オレを次期社長に据え置くため、黒崎家から無理やりさらう命令をくだしたのもこのババアらしい。だからこの姉弟を一生恨むほど大嫌いだし、最低最悪な似た者クズ同士いつも不幸を願わずにはいられない。姉弟そろっていつか地獄に落ちろとな。

 ただ、正之と少し違う所と言えば、邪魔者を排除する非情さはこのババアの方が上。社員に対しては危険な業務を労わるどころか、社員の命より会社の業績を優先する血も涙もない冷血ババアなのだ。


「なにが許嫁だ。勝手に見知らぬ女を許嫁にするなクソババア」

 オレは今にも殴りかからん勢いでババアを睨みつけた。

「副社長に向かってその口の利き方はどうなんだ。今はお前の方が立場は下だろう」

 すぐ近くにいた正之が呆れたように小言を言うが、所詮は姉の前だからいつもより大人しくしている。相変わらず姉の前ではいいなりの小心者だな。

「いきなり知らない女を宛てがわれちゃ声をあげたくもなりますよ。まあ、どうせこんなこったろーでニューヨークにまで呼び出したのはわかっていた。本当にろくでもない事だったが」

 嫌な予感はしていた。が、その予感は的中した。この許嫁予定の女はババアと正之のお眼鏡にかなったそうで、開星卒業と同時にオレの伴侶に宛がおうとするらしい。矢崎に必要な人材で足りない部分を補うんだと。

「お前が何を言おうと相手方の両親とはもう話はついている。本日の婚約と同時に来年の卒業後に式を挙げる事もな。お前はさっさとその川田のお嬢さんを受け入れ、一刻も早く留学をしろ。次期トップとしてやる事が山積みなのだからな」
「っ……」

 また矢崎の奴らに人生を狂わせられるのか。本当の肉親も、本当の親友とも引き離されて、愛する恋人でさえも……いや、甲斐だけは絶対に譲らない。死んでも引き離されない。

「その反抗的な目を見せている事は、まだあの平民に心を奪われているようですね。実に愚かな事だわ」
「愚か……だと」

 不快なババアの言葉に拳に力が入った。

「愚かではないですか。あのようななんの由緒もない貧乏平民にいつまでも夢と幻想を抱いて、次期社長としての自覚が欠けている事が。何度も言いますが、はやくあの架谷甲斐とは別れることです。あなたとあの平民とはあきらかに住んでいる世界が違うというのがあなた自身がよくわかっているはず。財閥社長としての使命感を持つあなたと、なんの由緒もないたかが中産階級の貧乏人。結び合うはずがないと」
「そうだ。お前のやや一方的すぎる求愛で迷惑しているのはあの平民でもあるはずだ」

 畳みかけられるようにクズ姉弟に言われると苛立ちも一入だ。だが、一方的すぎる、か。

 確かに甲斐はオレを好きだと言うけれど、あまり自分を求めて来る事は少ないから一方的すぎるのは否定しない。愛情表現はそう多くないし、照れすぎて恥ずかしがっているだけなのかもしれないし。

 それでも愛おしくてしょうがない。少し離れていただけで寂しくて、逢いたくて、ずっとずっと抱きしめていたくて、永遠に自分の腕の中に閉じ込めておきたいくらい愛おしいのだ。病的なほど執着しすぎて、束縛も激しくて、いつかそれで甲斐を困らせてしまう事もあるかもしれない。

 わかっている。わかっているのだが、止められない。愛情と同じくらい依存心も強くて、今更手放す事なんて死んでも無理だって事も。もしそうなれば甲斐を殺して自分も死ぬ事さえも厭わないほどに想ってやまない。


「先方がお部屋でお待ちです」

 ババアの秘書が呼びに来た。

「わかった。すぐに行く。とりあえず夕食会には参加してもらう。川田グループは婚約を抜きにしても付き合うメリットはあるからな」


 言いなりになんてならない。絶対に。婚約なんてもってのほか。オレには生涯甲斐一人だけ。それ以外は死んでもご免だ。



「初めまして。川田凛々子と申します」
「……ドーモ」

 社交の場とはいえ、オレの態度と顔には嘘はつけなかった。だってイライラするのだ。甲斐に逢えない事と、甲斐との少しの時間も作れない今の状況に。全ての元凶のババアと正之に。

 どんなに美女の顔を見ても、甲斐以外の女などすべて不細工の能面に見えてしまうし、個人的な損得以外で関わるだけ無駄なのだ。金と権力の世界にいる女など9割が下心丸出しなのだからわかりきった事。

「しっかり挨拶くらいしたらどうだ。川田グループといえば、矢崎には足りないアパレルや女性的なコスメ事業に精通している。今の我々には持って来いの相手だ」

 よく言う。川田如きなど三流グループではないか。ファッションやコスメ業界では矢崎よりかは多大な影響力を持っているが、所詮はそれだけだ。グループの総合力を見ると大した権力や地位でもなさそうだ。

 だとすれば、ババアはただ矢崎に足りないものを補うためにこの女との政略結婚を勧めるのだろう。たったそれだけのためにオレは利用される。人生を棒に振られるなんてたまったものではない。

「それにお前の秘書久瀬が不在の時は、お前の秘書を彼女に任せる事もできる」
「は……」
「久瀬は目の手術のために一か月は休みを申請しているそうじゃないか。丁度いい機会だ。その間は彼女にお前の秘書をしてもらえばいい」

 ああ、そのために許婚女を秘書見習いにさせていたのか。なぜそれなりな令嬢が秘書見習いをしていたのか謎だったが、より身近にオレに近づくためだったという事。なるほどな。マジ最悪。




 二時間ほどで終始無愛想な顔を晒したまま食事会は終了した。ほとんど正之とババアと相手の母親が商談の事をしゃべってばかりで、なんともつまらない時間を過ごした。

 これで甲斐に電話をする時間だけは確保できたが、日本では丁度祝日の午前中くらいか。姿を見れないのが寂しいけど、せめて声だけは聞きたい。その声を聞いたら明日も嫌々頑張れる気がするから。
 
「直様」

 電話を掛けようとスマホを取り出すと、声をかけられた。面倒くさそうに振り向けば川田が立っていて、オレは露骨に嫌な顔をして舌打ちをした。

「なんか用かよ」
「あの……」
「はやく言え。オレは忙しい」
「あ、あの……あなたが婚約相手で嬉しいです。あの有名な矢崎財閥の次期社長という方に目を向けられて……婚約相手にしてもらえて……しかも秘書をできるなんて、私……っ」
「何勘違いしてんの」

 頬を染めて嬉々としている女を憐れみの目で見おろし、オレはありのままの気持ちをはっきり言う。

「親同士が決めた政略的な婚約に何マジになってんだよ。しかもお前秘書だろ。お前とどうこうなるつもりなんて一切ないから変に勘違いするなよブス」
「っ、……」

 川田はオレを驚きと困惑の目で見ている。オレの理想と現実の姿の違いにショックを受けているようだ。残念だったな、自分の思い描いていた理想の矢崎直じゃなくて。

 所詮はマスメディアに踊らされて作られたオージサマとやらを鵜呑みにした己が悪いんだろ。現実のオレは甲斐や友人家族以外では性格がすこぶる悪い男だ。作られた矢崎直という架空のキャラに騙されてご愁傷様。

「秘書はただ事務仕事だけをしていろ。オレの仕事の邪魔だけはするなよ。あと、オレは久瀬以外の秘書は認めていない。ましてや、お前と婚約なんてのもありえない事。いい気になって婚約者ズラとか彼女ズラとかするなよ?したらただじゃおかないから。お前とはただのビジネス上での付き合い。それを絶対忘れるな」

 これくらいキツく睨みつけて言っておけば、さすがにバカな真似はしないだろう。勝手に許嫁にしてしかも秘書になるだとか冗談じゃない。矢崎のデク人形に成り下がるなんぞ御免だ。



「ごめんな。なかなか電話もできなくて」

 すぐに甲斐に電話をするが、ここ最近は謝罪からの会話となるのが心苦しかった。本当は今すぐにでも帰国して、逢いに行って、これでもかという程愛を囁いて、ベットの上で滅茶苦茶に愛してやりたいのに、それが出来ないこの立場に腹が立つ。帰るにはもう少しかかってしまうだろう。

『仕方ないさ。半年って言ってたもんな。いろんな会社を将来背負うわけだから、のんびりできる事の方が逆に珍しいって聞いてる』
「仕事なんかより、お前に逢いたいのに……」

 だけど、あと一か月で甲斐の誕生日が迫っている。その日だけはどんなに忙しくても甲斐に逢いに行くつもりだ。一年に一回だけの甲斐の誕生日だけは逃しはしない。

「誕生日だけは必ず逢いに行く。夜遅くになっちまうかもしれないけど……」
『……じゃあ、料理作って待ってるよ』
「楽しみにしてる。お前の料理ならなんだって好きだから。プレゼントも用意してる」
『プレゼント?まあ、なんでもいいけど、直がおめでとうって言ってくれるだけで満足だよ』
「相変わらず欲のないヤツだな。ま、そういう所がオレが好きになった所でもあるんだけど」
『欲がないわけじゃないよ。あんたに早く逢いたいっていうのが欲、かな』
「甲斐……そんな事言うと、どうしようもなく逢いたくなっちまうじゃないか」

 我慢しているのに、その我慢すらもできなくなりそうで、何もかも放り出して逢いに行きたい。抱きしめたい。甲斐だけの黒崎直というなんの肩書きもない存在になりたい。

「じゃあ……そろそろ切るよ……」

 本当は切りたくない。でも向こうの方にはババアらがいる。この会話を聞かれでもすれば、また余計な事を言われるのは目に見えている。泣く泣くもう切らなくてはならないのだ。

『じゃあ……また、な』

 寂しげな甲斐の声に胸が痛む。

「甲斐」
『ん?』
「愛してる」

 こうして精一杯の愛を電話口で伝えるだけしかできない事を許してほしい。

『俺も……愛してる……』

 電話口の向こうで、甲斐が赤くなっている顔が思い浮かんで、その姿を想像するだけで胸がぎゅっと締め付けられる。次に逢った時は、めいいっぱい可愛がって、滅茶苦茶に愛してやろうと決めた。

「じゃあ、な。オレの甲斐」
『ん……またな、直』

 名残惜しくそっとスマホを切る。甲斐と話しているだけで、今日の嫌な事がほとんど吹き飛んでしまう程癒された気分だった。だが、明日も忙しくなる。忙しい合間になんとか甲斐とまた電話をして、甲斐の誕生日のプレゼントも準備しておく。



 翌日、ニューヨーク支社で事業視察や会議などをこなし、部下だけで円滑に商談が進みそうな所で、一週間後には今度はパリへ飛ぶことになった。半年も海外で缶詰め状態なのは、数年後の新しい事業展開を見越しての事。まだまだ忙しい日々は続くだろう。

「直様」

 久瀬が目の手術のために一か月不在のため、オレの反対空しくこの女が久瀬の代わりとして臨時秘書に任命されてしまった。

「パリ支店での報告書とこちらの売り上げに関してですが……」


 婚約者という話は一先ず保留にしているが、この女の秘書としての実力とオレの仕事の速さに付いてこれるか見ものだったが、テキパキと与えられた仕事をこなし、冷静に周りを見ることもでき、気も利くようだ。どんなに難しい案件や他社の社長相手にも怯むことなく対応。語学力も申し分ない。ただの女とは思えない有能ぶりだった。

 あのクソババアが選んだだけの事はある。正之そっくりでなにかと矢崎のしきたりと口うるさいが、仕事に関しては妥協を許さないババアだからそれなりに能力がある女を寄越してきたようだ。オレと年齢はそう変わらないはずなのに秘書としての動きは確かだろう。

 こちらとしては少しでも使い物にならなければ即刻追い出すつもりだったのに、不本意だが久瀬に匹敵するほどの立ち回りのよさだった。これでは難癖をつける事はまだできない。

「直様?」
「なんでもない。続けろ」
「はい、こちらは上半期と比べて売上高2%と上昇しており、追加の投資を検討しておりまして、投資による追加の雇用に関しては……」

 川田凛々子の父親は官僚エリートで母親は弁護士。百合ノ宮学園を特待生で入学してから首席で卒業。米国の権威のある大学で経済学を専攻。趣味はピアノと華道。語学に堪能で英語ドイツ語中国語など世界10カ国語は普通に会話可能。履歴書だけみれば悪くはない。問題はこの女の真意。なんせババアの回し者だから油断はできない。


 *

 俺は学校帰りに近所のスーパーへ買い出しに出ていた。夕食は何にしようかと品定めをしていると、ふと近くの雑誌コーナーが目に付いた。本日発売の週刊誌が並んでいて、どの雑誌の表紙も【矢崎直の許嫁相手は秘書見習いのお嬢様だった】という見出し文が並んでいる。

 世間で噂の許嫁相手の女性の事だ。この頃、よくTVはその話題ばかりを取り上げ、連日相手の女性の事を紹介している。川田凛々子という帰国子女の令嬢の事を。

 某ワイドショーのコメンテーターは一斉にこの見習い秘書令嬢を絶賛し、家柄などを不思議なほど持ち上げ、結婚した方がいいだの、彼にはこの令嬢とがお似合いだの、秘書だなんて社長からすれば身近でよき理解者になるだの、今までの事を全否定するような報道を繰り返している。

 四天王信者のコメンテーターでさえ、曰くありげに「彼女は直様をとても理解している。彼女こそ美しく、気高く、家柄もばっちりで、直様という王子様を支えるよきプリンセスとなるでしょう」と、違和感丸出しのコメントをしていた。

 後にそのコメントを見た四天王信者達がこぞってワイドショーにブチギレ、大炎上騒ぎとなり、そのワイドショーの出演者達がSNSなどで見苦しい謝罪と言い訳を繰り返しているのだとか。バカかっての。

 なんともマスコミの不思議なほどの彼女のアゲアゲ報道に謎が残るもので、矢崎財閥から賄賂でももらったのかと疑うほどだった。

 俺はその報道を見て最初こそ動揺と不安を抱いていたが、電話口で話す直がいつも通りな様子に世間がただ騒いでいるだけだと思い、気にしない事にしていた。直がいつも通りならきっと何かの間違いだろう。マスコミが騒いでいるだけだって。



 買い物を終えて直のマンションへ帰ってくると、一台の高級なリムジンが自分の近くで停車した。高級マンション街なので見慣れたとばかりに通り過ぎようとすると、扉が開いた。

「架谷甲斐さんですね?」

 運転席にいる黒服の男が車を降りて訪ねてきた。そうだと返答して逆にお宅は何者かを訊ねると、矢崎財閥副社長秘書のくすのきと名乗った。話があるといわれて車に乗せられる。


「あなたが噂の架谷甲斐さん、ね」

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