【スピンオフ】学園トップに反抗したら様子がおかしくなったいろいろ

いとこんドリア

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IF/オメガバース※支部版のみエロシーン追筆あり

大嫌いな奴が運命の番だった!1

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 矢崎直――。
 初めて会った時から俺とは180度合わない奴だと思っていた。
 畑違いも甚だしいっていうか、住んでいる世界がこの世と異世界くらい違うっていうか。まあとにかく新人類と旧人類の違いほど俺とはあわない人種だと思った。

 なんでも金と権力で従わせるクソ上級国民共の次期トップで、暴力的で目つきも悪い。性格も悪い。
 こんな俺様鬼畜暴力野郎が世の女を手玉にとるほどの国民的人気なのだから世も末だ。

 四天王という四大金持ち貴族の一人で、その中でも一番の金持ち。今年の抱かれたい男ナンバーワンと国民的美形男子ランキング一位に輝いたとか学園の女子達が騒いでいたが、心底どうでもええわそんな肩書き。
 
 おい、中身を見ようともしないルッキズム女子よ。
 もう少し中身を見て想像力を働かせてから考えてくれたまえ。世の男は顔がいいだけの遊び人ヤリチンクズ野郎が山ほどいる事を理解してくれよ。顔がブサメンでも中身がいい奴も山ほどいるんだぞ。もうちっと見る目を養ってくれたまえ。

 まあ、目先の美男美女にはたしかに心は抗えないよな。俺も二次元美少女の嫁いまくりで一番を選べないクチだ。それとこれとは話は全然違うが、奴らはスペックが規格外である。異性からすりゃあどうしても目移りしてしまうもんだろう。納得いかんがね。

 ……ってあれ、俺全く勝てる要素ないじゃん。むしろモテる要素ゼロだ。

 貧乏だし、二次元美少女好きのキモオタだし、勉強できねえし、逮捕歴一回あるし、風呂一週間入らない時もあるしで、うわいい所ねぇな。
 あえて言うなら格闘くらい?これでも家が格闘一家なんで。うわ、ただのチー牛じゃん。泣けてくるぜ。

 そもそもだ。この俺様鬼畜暴力野郎が幼馴染の悠里や一つ下の友里香ちゃんの兄だというのも信じられないが、何よりあり得ないと思ったのが、こいつが俺の【運命の番】だった事が一番ありえない。


『こんなチー牛みたいな平凡地味男が運命の番とかマジありえねえ』


 初めて食堂でこのバカ財閥と対峙した時に言われた台詞だ。
 言われた瞬間、いろんな意味でハラワタが煮え繰り返って血管が切れそうになった。
 それはこっちの台詞です。ブーメランです。ありがとうございました。くたばれ。と、中指を立ててやったがね。
 
 ちなみに運命の番とは――――出会った瞬間にわかる自分のかけがえのない半身という意味らしい。相性が死ぬほどいい相手って事。

 ばかかっての。奴と俺のどこが相性いいんだよ。むしろ犬猿すぎるわい。

 つかこんな宝くじ一等に当たるか当たらないかの確率で運命の番ガチャに当たるって、変な所で運の悪さを発揮しないでくれよ。神様も悪戯がすぎるだろ。まじ勘弁してくれ。

 おかげで全校生徒から今日から【オメガ】認定受けたし、クラスのみんなから心配されるし、ブラコンの妹から嘆かれるしで、いろいろ挫折した。
 はあ、なんか俺の人生ツイてなさすぎ。

 最初は何かの間違いだと思いたかった。
 少し前まで自分はアルファ寄りのベータだったし、ベータとして生きていくものと思っていた。

 だけど、あの俺様鬼畜暴力野郎が運命の番だとわかった瞬間、自分の第二の性別はオメガに都合よく変わってしまったらしい。なんでや。
 ちなみに運良く翌日にあった春のパン祭りのごとく春の健康診断祭りで発覚ね。

 親父は光の戦士でコピー機の営業してるベータだし、母ちゃんもタイミーバイトで働いてるベータ。妹の未来も普通のブラコンなベータ。
 なんでオメガなっちゃったんだ。オメガって程庇護欲そそる外見でもないし、中身キモオタチー牛だぞ。自分で自分に引くわ。

「あ、オメガ野郎が登校してきたぜ。懲りずによく来るよなー」
「オメガホモとか無才学園に転校した方がよくない?ここに居場所ないから」
「淫売オメガ野郎が学校来るなよ。キモイフェロモン垂れ流したらぶっ殺すからな」
「オメガだからって直様に取り入ろうったってそうはいかないんだよ。金玉とケツ穴潰してやる」

 朝から盛大な野次を受けながら登校するのも慣れてきた。
 最初の頃はガチで凹んだが、自分がオメガなのには変わりないし、広まってしまっては今更誤魔化すこともできない。堂々としている事にした。

「Eクラスな上に男のオメガとかマジ最悪なのにな。俺だったら自殺したくなるわ」
「野郎が股開いてアンアンいうんだぜ。超きもいだろぷぷ」

 たしかに女のオメガならまだしも、男のオメガなんてホモゲイか好色家くらいしか得はしない。
 しかも男のオメガって全世界に数千人しかいないんだっけ。すごくね?逆にすごい数字だよ。はぐれメタル並みの珍しさだ。
 でもこんなに希少価値がありそうな珍しい男オメガなのにだれも見向きもしないんだぜ。むしろキモイ呼ばわり。泣けるわ。

 だが気持ちはわかる。重々わかるよ。
 俺だって男のオメガになる前までは気の毒に思いながらも無理だと思っていた。俺は生粋の二次元美少女好きなのでホモやBL好きの腐女子の気持ちはわからんし、ゲイやオメガの気持ちもわからん。だからなった時は人生に絶望しかけた。

「つか直様や四天王があのド貧乏野郎のせいでフェロモンで狂ったらどうしよう」
「そうなったらマジ損害賠償と慰謝料請求でブッコロよ。直様の身の安全のために早く退学してよ!」

 そうしたいわいこっちだって。
 でもあの俺様鬼畜暴力野郎には絶対に屈したくなかったので、意地でも学校に来ないと負け犬扱いされるからだ。

 あとせっかく友里香ちゃんのコネで借金返済をしてもらい、あまつさえ学校まで入学させてくれたのに今更退学になるなんて申し訳ないってのもある。日々san値削られまくるけどね。そのうち心療内科や精神科に通院するかも。

 ヒートになったら一週間休む羽目になるだろうし、休み明けとかになるとまた野次が多くなるんだろうな。ヒートはいろんな男の珍棒銜えた妄想楽しかったですかぁ?とか叡智な事言われてな。

 あー腹立つほどに想像ができてしまう。まだオメガになったばかりでヒートとは無縁だが、そのうち味わう事になると思うと鬱になってくる。


「毎回毎回よく学校くるよな、クソ貧乏人。とっとと辞めちまえば?楽になれるぜ」

 朝からさっそくお出ましか。この四面楚歌状態を作りやがった元凶が。

「残念ながら辞めないな。もし仮にてめえに屈して学校やめる時はてめえの中古品の金玉潰してから辞めてやる」
「相変わらず下品な事しか言えねえんだな、野蛮なド貧乏オメガめ。貴様みたいな品格ゼロのド貧乏野郎と今後番うバカがいるのか見ものだが、どうせ一生死ぬまで童貞どころか番う相手もいないだろ。モテない童貞チー牛くんだもんな。番いなしの哀れな童貞チー牛の一生って伝記でも書いてろよ」

 煽り嘲笑う矢崎の野郎にムカつくが、どうせ将来は誰とも番う気はないし、独り身予定なので何を言われてもどうって事はない。二次元美少女が嫁だからな。一生童貞処女イコール独身上等!

「ああ、言っておくが貴様が運命だろうがそんなもんオレ様には関係ないからくれぐれも変な勘違いを起こすなよ。ホモは趣味じゃねえんで。つか貴様と番うくらいならそこらのブス女抱いた方がマシだから」
「ご忠告どぉも。てめえとは死んでも番わんし想像もしたくもないので気色悪い事言わないでくれるか、クソお坊ちゃま。さっさと帰って別な女とどーぞやりたい放題ヤッてろや。そんで性病でくたばってろ」

 親指を下に向ける。一応公衆の面前なので殴り合いのけんかにならないだけまだマシだ。それでも時々矢崎から暴力を振るってくる時もあるので油断はできない。
 奴は俺が今までで戦ってきた奴の中で上位に入るほど強いからな。おまけに沸点も低くてすぐキレるガキ。王様気取り。
 これだから自己中で傲慢で配慮が出来ない奴は嫌いだ。

 アルファなんか大嫌いなんだよ。

 オメガのフェロモンのせいで人生狂わせられたとか、オメガは弱者を装う被害者ビジネスだとか、やたらアルファの奴らは被害者ぶるけどオメガだって被害者な場合が多々ある。
 差別や偏見で苦労するし、まともな友達すらもできにくいし、職場だって好きに選べない。

 さらに希少な【レアオメガ】になんてなったらもう人生の半分がお医者様だけが友達状態だ。働く事はおろか自由に生きる事はできず、生活ができないとレアオメガの専門医療機関で一生を過ごす事になるんだぜ。人間扱いさせてもらえないので人権もくそもない。

 アルファなんて人生イージーモードの勝ち組なくせに。

 元ベータの俺でさえ羨ましいと何度思った事か。劣等感抱きたくないし、そういう柄じゃないのにアルファの嫌な部分ばかりが見えてきて嫌になる。

 アルファってだけで周りから讃えられて尊敬されて愛されて、知らぬ間にカリスマ性発揮してる。ベータ平凡の能力じゃできない事を人間離れした能力でなんでもできる超人ちーとみたいな奴が多く、圧倒的な強者感に下々のベータやオメガは本能的に逆らえないのだ。

 特に厄介なのが、オメガやベータの事を視線や威圧感だけで従わせる某漫画の覇王色の覇気みたいな特殊能力を使う所だ。それのせいで一瞬だけ俺も動けない事があり、奴に先手を取られてしまうのがいつも悔しい。

 マジでアルファって恵まれてる。その恵まれた部分を少しは俺にくれよっていうかよこせ。
 まあとにかく、あんな奴を運命だなんて絶対思いたくないし、自分もオメガの本能なんかに負けたくない。



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