【スピンオフ】学園トップに反抗したら様子がおかしくなったいろいろ

いとこんドリア

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IF/オメガバース※支部版のみエロシーン追筆あり

大嫌いな奴が運命の番だった!11

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「愛してる……甲斐」
「いや、いや……」
「愛しているんだ、甲斐」
「きらい。きらいだ」

 そう全身に唇を寄せられながら求愛されるたび、どんどん脳裏にいる矢崎の顔が薄くなっていく。矢崎の存在が遠くなっていく。気持ちがこいつへと傾きそうになってしまう。
 口に出して否定し続けないと、堕ちて理性を失ってしまう気がして否定を止めない。

「番のいないレアオメガとしての本能は、好きでもないアルファ相手でも何度も求愛されれば少しずつ惹かれるようになる特性がある。自分だって気づいているんじゃないのかな。あの男を想いながらもその想いが薄れてきている事に」
「っ……そんなこと、ない。そんな事っ、やぁ」

 謎野の手が再び俺の下半身に及ぶ。
 もういやだ。こいつのひどいアルファ臭しかしないのに、なんで俺はこいつに求愛されて落ち着かなくなってんだよ。なんで矢崎の顔が薄くなっていくんだ。

 いやだ。いやだ。こんな奴に絆されたくない。惹かれたくない。
 俺が好きなのは矢崎直なのに。
 やっぱりレアオメガとしての本能っていうのは厄介でしかない。

「ん、やぁ、だめ、っ」
「私の手でこうやって触られる事に悦びを感じてきている。体は正直だ。でもそれもそろそろ飽きてきた」

 そういった途端、奴はベルトを外してチャックをおろしてきた。俺は興奮どころか青ざめた。

「そろそろ熟しきった胎内へ挿れさせてもらおうと思うよ」
「ッ――――!」
「私の手で仕込んだ愛着ある子宮にね」

 謎野が嫌がる俺の両足をグッと開かせて、赤黒いグロテスクのものを無防備な尻孔に押し付けてきた。
 はち切れんばかりのブツはとても興奮していて、俺の中へ今にも侵入したいと言わんばかりに隆起している。

 ゾッとする。こんなのいやだ。

「可愛い胎内へついに挿れると思うとすごく興奮する。今までで一番の高揚感を味わえそうだ」
「いやっ、やだあ、やだぁ!」

 俺は泣きながら死んでも嫌だと激しく抵抗するが、その弱弱しい抵抗虚しく簡単に腕を押さえ込まれた。 

「直っ、直……っ」
「その名前を私の前で呼ばないでくれるかな」
「嫌、っ……直……助けて」

 奴の赤黒いブツがグッと押し進められようとすると、俺は血の気が引いた。
 
  ばん
 
 その刹那、扉が勢いよく開いた。
 自分に触れていた謎野が一瞬で消え、無様に壁際に吹っ飛んでいた。茫然としていると、上からジャケットのようなものをかぶせられた。

「遅くなった。ごめん」

 その声を聞いた瞬間、涙が一気にこぼれた。
 ぎゅっと抱きしめられて俺も反射的に抱きしめ返す。不快な香りが消えて、待ち望んだ愛しい人の匂いと温もりに包まれてひどく安堵する。

「遅いよこのバカ……俺、どんな思いだったか……」
「本当にごめんっ。ごめんな。とても怖い思いさせた」

 たくさんの矢崎財閥の部下達がどっと入ってきて、謎野を強引に拘束していく。

「たった一人の少年のためにこんな所まで……あと一歩だったのに」

 謎野のメガネは矢崎に蹴られて割れていた。

「あと一歩で甲斐は私のものになるところだったのに。たくさんの子種を甲斐の胎内に注いで、子宮を私でいっぱいに満たしたかった。私と愛する甲斐の遺伝子を継いだたくさんの子を孕ませることが夢だったのに。残念でしょうがないよ」
 
 拘束されていながらも、狼狽えるわけでもなく顔は残念そうに笑っている。

「毎日フェラだって随分うまく躾けたし、深いキスの仕方もアナルの開発だってもう出来上がっていた。甲斐の柔らかい子宮も私の肉棒と精子を心待ちにしていたのに。今こそ初貫通する記念すべき瞬間で」

 吐きそうな説明をされている最中に謎野がまた吹っ飛んだ。
 矢崎が思いっきり殴りつけ、馬乗りになっている。

「お、おい」

 がつがつ頬を殴り続ける矢崎の目は、瞳孔が開いていて理性を失っている様子だった。

「矢崎っ!」と、慌てて駆け寄る。
「殺す。死ね。オレの甲斐の体をよくも弄びやがって!マジで殺す!ブチ殺す!!」
「矢崎ってば!」

 俺は疲弊していながらも、力を振り絞って矢崎の殴る腕を引っ掴んだ。これ以上やったら取り返しがつかなくなる。

「もういいからっ!それ以上やっちゃうと死んじまうから!」
「こんな変態ゴミクズ、殺してもいいだろ。おまえだってひどい目に遭ったくせに」
「今はお前が人を殺す所の方がもっと見たくねえ!俺のためならここで止めてくれ、直!」

 俺が名前で制止を促すと、フーフー興奮しながらまだまだ怒り心頭という中でもなんとか退く。
 謎野は動かない。死んではいないが、血だらけで気を失っている。

「そんな奴の事より、今はこっちを労わってほしくて……」

 がくんと力が抜ける。口から血が流れて眩暈がした。

「甲斐っ!?」
「つかれ、た……」

 俺はオメガ肺炎の症状で気を失った。

 *

 気分は超絶不愉快で最悪でしょうがなかった。
 なんとか甲斐の居場所を突き止めて部下達と強引に突入。国の機関だろうがなんだろうがそれ以上に矢崎の圧力で黙らせる。

 思った通り、あのクソ医者はここでいろんなレアオメガを食い物にしていたようだ。たくさんの元オメガを自分で開発したOMG数値をあげる薬でレアオメガに変え、気に入った者を連れてきて孕ませて都合のいい性奴隷にしていたようだ。
 その被害者はのべ百人以上もいて開いた口が塞がらなかった。
 どんだけ一夫多妻制のハーレム王になりたかったんだコイツ。

 誰も来ない孤島で深い山奥なだけあって、国の調査機関すらなかなか来れない場所だからこそ好き放題していたのだろう。
 それを知って、一刻の猶予もないと焦った。
 甲斐の安否や番にされていないか不安で心配でしょうがなかったが、間一髪助け出せてすごくホッとしている。
 あと一歩遅かったら甲斐は奴の番にされていた。本当に良かった。

 しかし、最後まではされていなくても、甲斐はこのくそ野郎にありとあらゆるセクハラ以上の事をされていたのを知って、怒りにどうにかなりそうだった。
 俺がゆっくりと開発して愛してやりたかったのに、一足先に美味しい思いをして甲斐を傷つけて泣かせた事が許せなかった。

 あの場で殴り殺そうと思ったが、甲斐に止められた。
 甲斐だってこいつを思いっきりぶん殴りたかっただろう。しかし、甲斐の体力が著しく落ちていてそれもできない悔しさはオレ以上だろうと思う。

 とりあえずこのクソ野郎の処分は後で考えるとして、奴を部下に身柄を預けてオレは甲斐のそばにいる事にした。

 *

「おれ……」

 目が覚めると泣きそうな愛しい顔が見えた。

「よかった……目を覚ましてくれて。とても危険な状態だって聞いて、恐怖で生きた心地がしなかった」

 目尻に涙を溜めた矢崎が俺を抱きしめた。
 そんな俺は酸素マスクを装着され、腕に点滴もされている重病人状態。心電図モニターが一定の間隔で動いていて、今は容体が危うい状況だったようだ。
 まあ、オメガ肺炎の影響か体が熱くて頭痛もするし、全身がとても気だるい。口の中は今も血の味がする。
 少し動くのもやっとだ。もう死が近いのだろう。


「もうオレが守るから。番にして一生かけてそばにいるから」
「矢崎……」

 そうしてほしい。俺はもうアンタがいないと生きてはいけない体だから。番関係にならないと今にも死んでしまうのだ。
 

「オレの事、もう名前で呼んでくれないの?」

 今更ながら、あの時名前で呼んだ事に恥ずかしくなってきた。

「甲斐」

 名前を呼ばれてどきっとする。

「お前もそう呼んでほしい」
「っ、う」
「ほら」
「っ、直……」 
「甲斐……よかった」

 再びぎゅっと覆い被さるように抱きしめられた。相当心配していたのかよく見たら涙の痕の他にクマもある。

「おれ……信じてた。アンタは必ず助けに来てくれるって」

 あの変態ドクターに襲われながらも、ずっと心の中で直を想い続けた。存在が薄くなりつつある中でも直の事だけを考えていた。
 でなければ今頃、奴の快楽に負けて堕ちていた。

「当然だろ。オレがどれだけお前に惚れてると思ってんだ。離れている間、甲斐の事ばかりを考えて呆れられたほどだ」

 少し前はあれだけ大嫌いな奴だったのに。お互いの性別を嫌っていたのに。
 運命の番という後押しもあってから一気に両思いになって、離れている間が長かったからこそ想いはより強くなった。

「愛してる」
「俺もあんたを愛してる」
 
 生涯もうこの人だけ。この人じゃない相手なんてもう考えられない。

「単刀直入に言う。お前のオメガ肺炎の症状が末期まで進んでる。だから今夜にも番わないとお前の命が危ない」

 そうだろうなと思う。もはや自分で動けない重病人だから。

「本当はお前の心の準備とか待ってからしたかったけど、命の危機ならやむを得ない。お前を抱くから」

 番契約を今夜にでもしなければ死ぬ。直にはっきり告げられてゾッとしたり顔が熱くなったりしたが、嬉しい方が勝っていた。

「……抱いて、直。愛して」

 毎日寂しくて苦しくて、あの変態ドクターに辱めを受け続けて泣いた。穢れきっている気がして清めてほしい。

「あんたと番になりたい。あのクソ医者にされた事、全部忘れたい」
「もちろん忘れさせてやる。あいつがした事、全部オレが塗り替える。オレのものだって体中にマーキングしてやるから」

 そっと額にキスをされて、何度も抱きしめあった。こうしているだけで気怠い体が少しだけ緩和された。


 その晩、ヒート用の特別な病室に移動して、直に優しく抱かれた。
 俺を気遣ってくれて、何度も労わり続けた。

 あの変態ドクターにされていた時は嫌悪感が半端なくて匂いも最悪に臭かったのに、直に触れられている時はとても幸せで良い匂いで、めちゃくちゃ気持ちがいい。眩暈がするほど気持ちよくて、途中で理性がトんでいやらしい台詞も言葉もたくさん言った気がする。

「っ、あん、直……気持ちいいよぉ……直のおちんちんすごいぃ。すき、すきぃ……直が大好きぃっ」
「甲斐、あんまり、煽るなっ……理性が、きかなくなる……」
「だってぇ、あ、あん。奥、気持ちよすぎて、頭へんになっちゃう。そこばかり、やらぁ」
「オレにそこ、突かれて、嬉しい、くせに」
「あ、ああ、だめ、もぅ――――でちゃうからぁ」

 がつがつと俺の好きな場所を狙ってくる直。天国に昇天するような多幸感に、俺は完璧に自我を失った台詞を言っていた。
 理性がある時にこれを言ってたらしばらく部屋から出てこれない自信がある。それほどの快楽に、これが運命の番効果なのを悟った。
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