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3.悪魔の恋人になんぞならん
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「ベニオ・サクラコウジはいるか!」
声と共に扉がバァンと開かれた。
授業中にも関わらず、一斉に現れた者の方へ視線を向けるクラスメイト達。先生もチョークを持ったまま呆気にとられている。
言わずもがな、現れたのはキョウタロウだ。仕返しに来たのか、わしを。
自分でした事をまた後悔しながら「はい」と、震えた声で返事をした。
「話がある。来い」
女であるわしをボコるつもりならこっちだって命をかけるしかないのだろうか。
「あの今は授業中でして、そのあとで「アア!?んなもん関係ねぇだろ!いいからきやがれ!」
命令口調で却下だった。先生もキョウタロウと関わりたくないのか「行って来てもいいです。ここにいられちゃあ授業の妨げになりますからね、ひょほほ……し、死にたくない」と、震えた声で言った。
所詮わしはヒロインとはいえ、今はただの平民ハゲ頭女だ。見捨てる気満々であるこの教師は最低だとは思うが、自分の命の方が惜しいだろう。
せめて授業が終わってから死地に赴きたかったが、わしは覚悟を決めた。刺し違えても奴を殺すしか未来がないのなら致し方あるまい。
ボコボコに殴られようが殺されようがもう後悔はせん。元90代のババアだからちょっとやそっとの事じゃビビらんのだ。
隣に座っている友達に「わしがもし帰ってこなかったら骨は拾って海に蒔いてくれ」と、言伝を残して教室を出た。先祖代々伝わる護身用の棍棒を持参してな。
「は、話はなんだ」
再び連れてこられた花畑で、わしは内心びくびくしながら身構えた。棍棒を隠し持ちながら。
「俺と付き合え」
悪魔が開口一番、真正面を向いてそう言った。
「…………は?」
「だから俺と付き合えって言ってンだ」
「あの世へか」
「そういう意味じゃねえ。オレと恋人として付き合えって言ってンだよ!」
「……………………」
わしはこの男の言っている意味が全くもってよくわからなかった。
恋人?ぼーいふれんど?こいつは攻略対象ではないのに何言ってんだ。そもそもわしに惹かれる要素がどこにあったと?
自分で言ってて悲しくはなるが、わしは全くモテなくなった。転生したピンク頭の乙女げぇむヒロインとはいえ、この坊主頭と眼鏡とババくさいしゃべり方が魅力度を下げている。
髪を切る前だったならたくさん下心丸出しの獣がウジャウジャ寄ってきたが、今じゃこの有様。趣味悪いなこいつ。
「お前はバカか」
わしは呆れて突っ込まずにはいられなかった。
「アア!?」
つい悪魔相手にバカと言ってしまったが、これはどう聞いてもバカとしか言いようがない。
「そもそもだ。いきなり恋人としてつきあえとかおかしい。まだ知り合ったばかりなのにどういう思考回路してんだ」
「うるせぇ!とにかくテメエに拒否権はねぇんだよ。オレの恋人になれ!いいな!?」
ならねぇとぶっ殺すとまで言い切るこの男。
学園の女神を面倒くさくなってあっさり振ったような男だ。ろくでもない気がする。いや、十中八九ロクでもねぇのは目に見えている。だからわしだって選ぶ権利はある。
「わしを助平の被害者にして泣かせようなんざァそうはいかんぞ!わしをなめるな!」
花畑に鈍い音が響いた。またわしはこの男をぶん殴っていた。
「わしならワンちゃんイケると思っての考えだろうがわしはそこらの女とは違う!見下すのもいい加減にしろよ!」
「また殴りやがったなテメエ」
キョウタロウはわなわな震えて赤くなった頬を押さえている。
「お前が恋人になれとか寝言ほざくからだろうが。わしに人権はないのか」
「テメエみたいな変人にそんなもんあるわけねぇだろ。ならねえとブッ殺すって言っただろうが」
「変人で悪かったな。なんでもブッ殺すってバカの一つ覚えみたいに言って、それですべてが通ると思ったら大間違いだ。わしは絶対お前の恋人にはならん!」
「んだとッ!オレに逆らうのか!?」
「逆らうのはあたりめえだ。素性がわからん極悪不良から恋人になれとか理不尽な要求突きつけられて、ハイわかりました♡なんて都合よく頷くわけがない。とにかく、わしは泣かされんからな!」
「くっ……テメエはぜってーオレの恋人にさせてやるからな!!」
かくして、どうしてか恋人になるかならないかの意味不明なバトルが始まった。
声と共に扉がバァンと開かれた。
授業中にも関わらず、一斉に現れた者の方へ視線を向けるクラスメイト達。先生もチョークを持ったまま呆気にとられている。
言わずもがな、現れたのはキョウタロウだ。仕返しに来たのか、わしを。
自分でした事をまた後悔しながら「はい」と、震えた声で返事をした。
「話がある。来い」
女であるわしをボコるつもりならこっちだって命をかけるしかないのだろうか。
「あの今は授業中でして、そのあとで「アア!?んなもん関係ねぇだろ!いいからきやがれ!」
命令口調で却下だった。先生もキョウタロウと関わりたくないのか「行って来てもいいです。ここにいられちゃあ授業の妨げになりますからね、ひょほほ……し、死にたくない」と、震えた声で言った。
所詮わしはヒロインとはいえ、今はただの平民ハゲ頭女だ。見捨てる気満々であるこの教師は最低だとは思うが、自分の命の方が惜しいだろう。
せめて授業が終わってから死地に赴きたかったが、わしは覚悟を決めた。刺し違えても奴を殺すしか未来がないのなら致し方あるまい。
ボコボコに殴られようが殺されようがもう後悔はせん。元90代のババアだからちょっとやそっとの事じゃビビらんのだ。
隣に座っている友達に「わしがもし帰ってこなかったら骨は拾って海に蒔いてくれ」と、言伝を残して教室を出た。先祖代々伝わる護身用の棍棒を持参してな。
「は、話はなんだ」
再び連れてこられた花畑で、わしは内心びくびくしながら身構えた。棍棒を隠し持ちながら。
「俺と付き合え」
悪魔が開口一番、真正面を向いてそう言った。
「…………は?」
「だから俺と付き合えって言ってンだ」
「あの世へか」
「そういう意味じゃねえ。オレと恋人として付き合えって言ってンだよ!」
「……………………」
わしはこの男の言っている意味が全くもってよくわからなかった。
恋人?ぼーいふれんど?こいつは攻略対象ではないのに何言ってんだ。そもそもわしに惹かれる要素がどこにあったと?
自分で言ってて悲しくはなるが、わしは全くモテなくなった。転生したピンク頭の乙女げぇむヒロインとはいえ、この坊主頭と眼鏡とババくさいしゃべり方が魅力度を下げている。
髪を切る前だったならたくさん下心丸出しの獣がウジャウジャ寄ってきたが、今じゃこの有様。趣味悪いなこいつ。
「お前はバカか」
わしは呆れて突っ込まずにはいられなかった。
「アア!?」
つい悪魔相手にバカと言ってしまったが、これはどう聞いてもバカとしか言いようがない。
「そもそもだ。いきなり恋人としてつきあえとかおかしい。まだ知り合ったばかりなのにどういう思考回路してんだ」
「うるせぇ!とにかくテメエに拒否権はねぇんだよ。オレの恋人になれ!いいな!?」
ならねぇとぶっ殺すとまで言い切るこの男。
学園の女神を面倒くさくなってあっさり振ったような男だ。ろくでもない気がする。いや、十中八九ロクでもねぇのは目に見えている。だからわしだって選ぶ権利はある。
「わしを助平の被害者にして泣かせようなんざァそうはいかんぞ!わしをなめるな!」
花畑に鈍い音が響いた。またわしはこの男をぶん殴っていた。
「わしならワンちゃんイケると思っての考えだろうがわしはそこらの女とは違う!見下すのもいい加減にしろよ!」
「また殴りやがったなテメエ」
キョウタロウはわなわな震えて赤くなった頬を押さえている。
「お前が恋人になれとか寝言ほざくからだろうが。わしに人権はないのか」
「テメエみたいな変人にそんなもんあるわけねぇだろ。ならねえとブッ殺すって言っただろうが」
「変人で悪かったな。なんでもブッ殺すってバカの一つ覚えみたいに言って、それですべてが通ると思ったら大間違いだ。わしは絶対お前の恋人にはならん!」
「んだとッ!オレに逆らうのか!?」
「逆らうのはあたりめえだ。素性がわからん極悪不良から恋人になれとか理不尽な要求突きつけられて、ハイわかりました♡なんて都合よく頷くわけがない。とにかく、わしは泣かされんからな!」
「くっ……テメエはぜってーオレの恋人にさせてやるからな!!」
かくして、どうしてか恋人になるかならないかの意味不明なバトルが始まった。
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