上 下
8 / 41
新生活と詐欺と借金と

初体験と初体験未遂 X-rated

しおりを挟む
「だめです! だめです! これ以上はいけません! フォルテ様の上に乗るだって!」
「何を言っても駄目駄目ばっかり、子供かお前は……」

 縄は使わず、手を引いて自分の膝上に座らせる。

「あの、フォルテ様のが当たっていますが……」

 ピアノーのへそ下の外を肉棒がノックする。

「俺のここがお前のそこに入りたがって仕方がないんだ……」

 暴発寸前。苦しそうに呻いている。

「……俺は、お前としたい」
「フォルテ様……」

 改めて真っすぐに顔を見られ、心を貫かれたような気持ちになる。

「……フォルテ様、あの、私……」
「なんだ?」
「……フォルテ様の年から倍の女です」
「知ってる」
「……フォルテ様が思ってるように……年上の女性らしく振る舞うことができませんので……」
「処女か」
「もう! 言いにくいことをさらっと言わないでください!」
「馬鹿だな……俺がお前に床上手を求めるわけないだろう……」

 フォルテはピアニーの尻を持ち上げ、形の違う性器をあてがう。

「フォ、フォルテ様……!」
「というかそれ聞いて安心した、というか燃えてきた」

 興奮は最高潮に達する。

 ずぶり。

 かつてないほど怒張した肉棒をかつてないほど濡れた秘部の中に。

「あ、挿入って……」
「これは、想像以上に……!」

 ぬるぬるできつきつで一瞬で果てそうになる。
 せめて根元に入るまでは我慢しようと力を込める。

 ゆっくり、ゆっくりと沈んでいく。

「フォルテ様のが……私の、中に……!」
「痛いか?」
「痛くはないのですが、異物感が……」

 入念な前戯が功を奏し、処女でも痛みはなかった。

「そうか……たっぷりと俺を感じてくれ……」
「そんな……余裕、ありません……んっ……」

 ずしりとフォルテの膝に重みが感じられるようになった。
 これ以上、深くへは入り込めない。

(……対面座位でも子宮に届かなかったか……男として情けない……)

 自分の未熟さを痛感していると、

「フォルテ様……!」

 ピアニーはフォルテに抱き付く。ネグリジェ越しに胸を顔に押し付ける。

「どどうした?」

 動揺を隠せないまま、突然の行動に気遣う。

「怖いので……もう少し、このままでお願いします……」
「ああ、わかった……」

 全然問題はない。
 顔面に胸を押し付けられる状況。
 息が苦しい以外、何も問題はない。

「ふう……ふう……」

 ピアニーは呼吸を整える。
 フォルテは胸越しに心臓の鼓動を感じる。
 鼻の穴がピアニーの匂いで埋まる。
 リビドーが高まっていくのに発散できず生殺しにされる。

(う、うごかしてぇ……!)

 強い刺激はないものの中で萎むことはない。
 しかし動かさないまま果ててしまうことはありえる。

「ピアニー、そろそろ……」
「……はい、どうぞ、動いてください……」

 ピアニーがフォルテの肩に手を置いて体勢を立て直す。

(よし、俺から言い出して正解だったな……胸が離れたのは残念ではあるが……)

 腹筋に力を込めて肉棒を突き上げる。

「ふっ……ふっ……」
「あっ、あっ、ああ……!」

 突き上げと同時にピアニーが喘ぐ。誰にも聞かせたことがない声で、なんだったら本人も聞いたことがないだろう。

(演奏会では美しい四季を歌っていたあの喉から、こんな声が出てるんだよな……!)

 春は雪解けの色彩を喜び、夏は降り注ぐ陽射しを讃え、秋は飢えをしのぐ豊穣に感謝し、冬は峻厳な白銀に震え。
 初めて聞いた時は圧巻させられた。同じ楽器、同じ職人から作られたはずなのに彼女の演奏だけは特別だった。この世にこれほど美しいものがあったのかと。演奏が終わり次第立って盛大な拍手を送ろうと思った。会場中が割れんばかりの拍手に包まれると信じて疑わなかった。しかし現実は違った。皆が気まずそうに顔を見合わせて反応に困っていた。その理由に遅れて気付く。そして醜くも自分もそのうちの一人となった。紛れもない手のひら返し。しかし贖罪は迅速だった。彼女を何としてでも掌中に収めないといけない。必ずや自分の所有物に。手に入るならどれだけの物を失おうと構わないと覚悟した。あの時はどれだけ焦っただろうか。
 そして彼女は今、自分の膝上で、あの声で淫靡に喘ぎ、あの指で必死にしがみついている。

(あぁ、幸せだ……)

 自分の感覚が歪んでいる、間違っているとは自覚している。
 それでも幸せだった。募りに募った不安や怒り、後悔を綺麗さっぱり忘れ去ることができた。これを幸せといわずなんと言う。
 ベッドが軋むほどに無我夢中で突き上げる。加減を忘れて抜けてしまってもいいくらいに何度も強く。

「ふぉ、フォルテ様……!」
「ん、なんだ? 少し緩めるか?」

 さすがに強くしすぎたかと思ったが、

「い、いえ、その……」

 呼びかけておいて歯切れの悪い。
 次の言葉を待つ。そして衝撃の言葉を放たれる。

「き、もち、い、です……!」
「~~~!!!?」

 忘れないものもある。それはあの日の覚悟。この可愛い女のためなら全てを投げ出す覚悟は今も変わらない。むしろ日に日に強くなっていくぐらいだ。
 リビドーも情熱も滾る全てを突き上げに込める。

「は、はげしいです……! あたまが、おかしく!」
「うるさい! 今更遅いんだよ!」

 パンパンパンパン!

 肉と肉がぶつかり合う音。

「フォルテ様、また、また、また!」
「イクのか、俺も、限界だ……一緒に……!」

 フォルテは動きを止めて尻を掴んで腰を押し付ける。より奥にマーキングするために。
 ピアニーもフォルテの身体を抱き寄せた。腕も足も絡めて、離れていかないように強く。
 二人は共鳴したかのように震える身体を寄せ合った。
 快感が身体中に響き渡り、頭が真っ白になる。
 あまりの快感に呼吸すら忘れていた。

「ぷはっ……すご……」

 力が抜けそうに後ろに倒れそうになるピアニーを、

「この、馬鹿女は……!」

 フォルテは慌てて抱きかかえて身体を回転させてベッドに落とす。
 その際に穴から肉棒が抜け落ち、栓が抜けたように中から精液が零れ落ちる。

「あぁ、俺も疲れた……」

 肉の薄い胸を枕にして休憩する。ふわりふわりと浮いたり沈んだりするので揺りかごにいるようで安心してしまう。

「フォルテ様……私、上手にできたでしょうか……」
「ああ……最高に決まってるだろ……」
「えへへ……最高……ですか……」

 フォルテは首を振って眠気を吹き飛ばす。上半身を起こして上へ。
 忘れはならない。まだスタンプしていない場所がある。

「ピアニー……」

 上からピアニーの顔を見つめる。

「フォルテ様……」

 言葉はいらなかった。
 ピアニーは目を閉じた。
 フォルテも目を閉じ、ゆっくりと唇を下ろしていく。

 唇同士が触れようとしたその時。

 ドオオオオオオオン!!!!

 地上から伝わる衝撃と轟音。

「きゃああああ!?」
「ちくしょう、ここぞというときに!」

 衝撃が収まったがフォルテの判断は素早い。
 ベッドを下りズボンだけを履く。

「避難する! こんなボロ屋、もう一回衝撃が来たら崩れちまうぞ」
「これでボロ屋ですか……実家より立派なんですが……」

 経済格差にほろりと涙を流す。
 そんな彼女にコートを着せる。

「俺の上着を着ろ。ないよりましだろ」
「は、はい、ありがとうございます」

 フォルテはピアニーの手を引き、地上へと向かった。
しおりを挟む

処理中です...