ダンジョン最奥に住む魔王ですがこのままだと推しの勇者PTに倒されてしまいます。

田村ケンタッキー

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マチルドの過去とテオの覚悟 前編

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 夕食前だと言うのに空気が重い。疲れが溜まった時は無言ではあったものの、食への楽しみがあった。今は準備からして喉が詰まっているようだった。

「今日の飯は……魚にするか、肉にするか……魚にするか、肉にするか……」

 料理長のロビンはメニュー決めに悩んでいた。なお彼の頭は別のことでいっぱいなので一生決まることはない。

「……」

 マチルドはあれからずっと無言だ。こうしている今もテオが起こした焚火をぼんやりとうつろ気に見つめている。

「なあ、ビクトリア。師匠とマチルド、二人に元気ないよな」

 担当している火起こしを終えたテオは離れた場所で探知魔法で警戒しているビクトリアに尋ねる。

「そうね、そう見えるかもね」

 彼女は興味はない、面倒なことに頭を突っ込みたくないという態度を取ったつもりだった。

「……なあ、どうしたらいいと思う?」
「へえ。あんたも少しは周りに気を配るようになったんだ」

 毒が強すぎる嫌味。
 でも幼馴染の言葉もなんのその。

「……俺は二人にいつも通りに元気になってほしい。そしてまた冒険を続けたいんだ」
「……やっぱりワガママね。二人はそれを望んでないかもしれないわよ。こんなところに来るんじゃなかったって後悔しているかもしれない。今すぐにでもおうちに帰りたいと思っているかもしれないじゃない」
「……二人がこんなところで諦めるとは思わない。師匠は仇を取るって言ってたし、マチルドはお金が欲しいって言ってた」
「いいことを教えてあげましょうか? 人間なんて口ばっかよ。追い込まれた時に本性が出るもの」
「本性か……」

 テオはしばらく逡巡する。命の危険が迫る死線を思い出したのちに、

「……うん。やっぱり、俺は何をするべきだと思う?」
「えぇー……今の流れでまたそこに行き着くわけ? というかそもそも私に聞かないでよ」
「ビクトリアがどうしたいか聞きたくってさ」
「人の心なんて知ったこっちゃないわ。それにどうせ私の意見聞いたってあんたは好き勝手するんでしょう?」
「俺、そんなに好き勝手にしてる……?」
「はあ、自覚なし……付き合ってられないわ……」

 ビクトリアはしっしっと犬を追い払うように手を払う。

「探知魔法の邪魔。あっち行ってて」
「俺、とりあえずやれることをやってみるよ。話聞いてくれてありがとうな、ビクトリア」
「礼を言われるようなことなんてしてないわよ、馬鹿テオ」

 テオは幼馴染に見送られると早速動く。
 焚火を見つめるマチルドの元に行くと、

「なあ、マチルド。あのジャックとどんな関係なんだ?」

 ド直球に聞く。
 同時に鍋や杖が転がる音。

「……大将、それはいくらなんでも」
「……もうちょっと回り道しなさいよ、馬鹿テオ」

 こっそりと聞き身を立てていたロビンとビクトリアが漏らす。

「……聞いてどうするわけ?」

 マチルドは焚火を見つめたまま返す。

「力になりたい」

 テオはマチルドしか見ていなかった。

 パチリ。

 焚火が火の粉を吹き出し燃え上がる。
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