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金木犀
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ふわっと香る金木犀を見ながら「懐かしいね」と君は笑った。君の手を握ると出会ったときと同じように確かにぬくもりを感じた。いつもとなにも変わらず楽しそうに話す君は、静かな広いあの部屋で医者にいのちを告げられた。ぼくは理解ができなかった。なんで君なの?残酷な運命を突きつけられた。でも、きっとぼくより君のほうがつらいよね。君の方を見ると、君はわかっていたのか、静かにぼくの方を向いて優しく微笑んでくれたがやっぱり少し悲しそうに見えた。君が笑うからぼくも笑うしかなかったから、君に向かって微笑んでみせた。今にも泣き出しそうだったかもしれない。
そして死期は少しずつ君の笑顔を奪っていった。君が眠ってしまうのが怖かった。君が瞬きをするのもこわくなっていった。
ある時、ぼくは君に「どんな物語もハッピーエンドで終わるでしょ?だから、悲しい場面で終わりなんて見たことないから大丈夫だよ」と言った。君は黙ったまま笑顔で聞いてくれた。
それからどれぐらい時間がたったのだろう。君は遠くに行ってしまって、もう二度と会えなくなった。毎日どこかでいくつもの人が消えていく。簡単にいなくなってしまう人間が馬鹿らしくなった。「じゃあ、僕も」
それでもきみは最後に「生きてね」と言ったんだ。
眠ったままの彼女の前で「ぼくの命を全部あげよう、君と一緒に過ごしていたかった、来世なんていらないから、お願いどうか、帰ってきてよ、ねぇ。」と弱音が漏れた。そんな背中を金木犀が香る優しい風が背中を押し、「大好きな君が好きな僕、君がいなくても少しずつ生きるよ」とポツリと呟いた。
そして死期は少しずつ君の笑顔を奪っていった。君が眠ってしまうのが怖かった。君が瞬きをするのもこわくなっていった。
ある時、ぼくは君に「どんな物語もハッピーエンドで終わるでしょ?だから、悲しい場面で終わりなんて見たことないから大丈夫だよ」と言った。君は黙ったまま笑顔で聞いてくれた。
それからどれぐらい時間がたったのだろう。君は遠くに行ってしまって、もう二度と会えなくなった。毎日どこかでいくつもの人が消えていく。簡単にいなくなってしまう人間が馬鹿らしくなった。「じゃあ、僕も」
それでもきみは最後に「生きてね」と言ったんだ。
眠ったままの彼女の前で「ぼくの命を全部あげよう、君と一緒に過ごしていたかった、来世なんていらないから、お願いどうか、帰ってきてよ、ねぇ。」と弱音が漏れた。そんな背中を金木犀が香る優しい風が背中を押し、「大好きな君が好きな僕、君がいなくても少しずつ生きるよ」とポツリと呟いた。
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