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第7章 吸血鬼、日々鍛えてますから!

第156話 土手

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「はぁ……はぁ……」

 その頃、いかいやの近くの土手。
 瑠璃と同居している吸血鬼、キセノンは、動きやすい恰好をし、走っていた。
 曰く、「体が鈍るので鍛える」
 瑠璃が不在の数日間、キセノンはずっと同じところで走っていた。

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 一通り走った後、キセノンは土手に座り込み、水分の代わりに血液を飲んだ。
 芝生に汗が染みわたり、息を整える。

「よし……あと……もうちょっと……」

 一通り休んだ後、再び走り出そうと立ち上がろうとした……その時、キセノンはあることに気付く。

「あの子……ずっと……いる」

 川の近く、そこに、褐色肌で短い黒髪、白い服を身に纏った子どもが、数日間、同じ時間同じ場所にいることに違和感を覚えた。

「あの……服……確か……本で……見た」

 その子どもが着ていた白い服、それは、所謂「道着」だった。
 なぜここにそんな姿をした子どもが? キセノンは、気がかりになり、その子どもに近づいた。

「……ねぇ」
「うわぁ!?」

 後ろから声を掛けると、子どもは驚愕の声を上げた。

「貴方……ずっと前から……ここにいる……ご両親は?」

 キセノンは子供と目線を合わせ、質問をした。
 すると、子どもは、下を向いて……答えた。

「……別に、逃げたんだよ」
「……逃げた?」

 キセノンは、その子どもが言った「逃げた」と言う言葉に違和感を覚えた。

「何か……悩み?」
「……よくわからない」
「……よく……わからない?」

 キセノンは、子どもの一言に違和感を覚え、何か力になれないかと考えた。

「悩み……あるなら……聞く……貴方……名前は? 私……キセノン」
「……アタシは碧……『羽柴碧はしばあおい』……」
「碧ちゃん……いい名前」
「キセノンって変な名前……最近テレビで見る変な動物の人?」
「まぁ……そんなところ……今……日本の人のところ……居候してる」

 2人はお互いに自己紹介をし、キセノンは本題を切り出した。

「それで……逃げたって……何?」
「うん……アタシ、空手やってるんだけどさ、最近全然試合に勝てなくて……もう嫌になったんだ」
「なるほど……」

 キセノンは碧の悩みの内容をなんとなく理解したが、ここで悩みを掘り下げるのは良くないと考え、他愛のない会話をから始めようと考えた。

「空手……って……突きと蹴りを駆使する……沖縄発祥の武道……だよね?」
「う、うん、そうだけど……」
「私……空手……よくわからない……だから……教えて」
「お、教える?」
「うん……私……鍛えるの……好き……だから……教えて」
「う、うーん……」
「……ダメ?」

 碧はキセノンの唐突なお願いに困惑した。
 しかし、教えて欲しいと懇願するキセノンの表情に熱意を感じた碧は、静かに頷いた。

「わかった、ちょっとだけだよ?」
「うん……嬉しい」
「じゃあ、立って」

 土手を舞台に、異世界人と日本人の空手の稽古が始まった。
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