動物に成り切るしか能がないと言われて追放された私、慰謝料代わりにもらったゴミアイテムで街に現れたモンスターを倒したら英雄になった件

立風館幻夢/夜野一海

文字の大きさ
6 / 68

第6話 結成

しおりを挟む
「ふぅ……ここなら大丈夫ですね」
「あ、ありがとう、人ごみから救ってくれて……」

 私は女の子に連れられ、彼女が泊まる宿の部屋へと着いた。
 部屋の中には小さいベットが一つに、椅子が二脚とテーブルが一つ……最低限の設備しかない普通の部屋だ。
 ……と言っても、私の部屋よりかは十分豪華だけど。

「ありがとうは私のセリフです! モンスターから助けてくれてありがとうございます! 勇者様!」

 なんなんだ、勇者って……。

「ねぇ、その勇者様って何?」
「はい! 私、小さい頃からずーっと勇者様に憧れているんです! 幼い頃、お婆ちゃんにしてくれた勇者様のお話を聞いてから!」
「へ、へぇー……」

 勇者様のお話ねぇ、それと私が似てるってこと?

「お婆ちゃんは言ってました! 勇者様は様々なジョブになりきれる凄い方なんだって! 貴方はきっとそうなんです!」
「そ、そうかな?」

 そう言われると……なんか照れる。
 私が……勇者様か。

「勇者様! お願いです! 私とパーティを組んでいただけませんか?」
「ぱ、パーティ? いきなり何?」

 女の子は唐突に提案をする。
 いやいやいや、確かに私もパーティをクビになったわけだし? 嬉しいけどさ……うーん……。

「まずさ、貴方の名前が分からないんだけど? 私はアニマ、よろしくね」
「アニマさん! よろしくお願いします! 私は『エウロプ』と申します! 『ロープ』って呼んでください!」
「じゃ、じゃあ、よろしくね。ロープ」
「はい!」

 少女……ロープは元気よく返事をした。

「で……貴方のジョブはなんなの? 私は変身だけどさ」
「変身!? どんなジョブなのですか!?」
「あ、えーっとね……動物やモンスターになりきれるジョブだよ」
「わー! 凄いです! 見せてください!」
「い、いいけど……」

 この子なんかずっとテンション高いな……なんか疲れそうだ。
 変身を見せて欲しいか……何が良いかな? モンスターはアレだし……そうだ!

「よっと」

 私は彼女の祖先……キツネに変身した。
 4つの足で体を支え、全身が体毛に覆われる。
 目線も低くなり、ロープと同じ位置に来たようだった。

「わぁー! かわいいです! 凄いです!」
「あ、ありがとう……」

 ロープは変身した私を見て、飛び上がるように喜ぶ。
 そんなに凄いかな?

「体毛……モフモフですね」
「ちょ、ちょっと……」

 ロープは変身した私の頭を撫でる。
 キラキラした目で私を見つめ、変身した私に興味津々なようだった。

「あ、あんまり撫でないで……くすぐったいから……」
「あ、ご、ごめんなさい!」

 ロープは無心に私の頭を撫でていた。
 興味を持ってくれたのなら嬉しいけどさ……。
 私は元の姿に戻り、本題に戻そうと話を振った。

「……で、貴方のジョブはなんなの?」

 まず話はそれからだ、見た目的に彼女は武器を使うようなジョブではないことは分かった。
 私が質問をすると、ロープは元気一杯に答えた。

「はい! 私のジョブは『格闘』です!」
「格闘……」

 格闘、その名の通り、己の体力と拳だけで戦うジョブだ。
 言い方悪いけど、あまりパーティに呼ばれないジョブだ、パーティをクビになった私が言うのもなんだけど。

「私、体力には自信があるんですけど……やっぱりジョブのせいでパーティを転々としていて……さっきも、人手が足りないパーティが無いかを聞きにギルドへ……」
「あーなるほどね」

 つまり私と同じか、パーティをクビになって、別で雇ってくれそうなところを探す……辛いよね、そうだよね。

「ですけど! 貴方となら行ける気がします! どうか私とパーティを組んでください!」
「う、うーん……」

 そうだなぁ……この子のパーティ……。
 実力はよくわからないけど、ジョブが格闘なだけあって、若干ながら筋肉がついているようには見える、体力には自信があるというのは本当だろう。
 あのままギルドへ行っても色んなところから勧誘が来るだろう……うーん、でも多人数と組むのはしばらく嫌だな。
 ……ここは……乗るか!

「……うん、わかった! じゃあ、パーティ組もうか!」
「ほ、ほんとですか!? ありがとうございます!!」

 ロープは私の手を取り、握手の要領で思いっきり振り回した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...