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第54話 答え
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「……すみません、少しいいですか?」
「……何?」
ロープは、私の背中を拭きながら、質問をしてきた。
……聞きたい内容は、なんとなくわかった。
「……なぜ、あのロードモンスターの言い分が間違っていないと……そう考えたのですか?」
「……ごめん、やっぱ気になるよね」
「……すみません」
……深呼吸をし、私はなぜそんなことを思ったのかを言った。
「あいつ……言ってたでしょ? 『人は欲望のためならどんなこともする』ってさ……今まで戦ったロードモンスター……誰も彼も欲望を口にしてたでしょ? それが人間の本質って……あながち間違いでもないんじゃないかってさ……」
「……」
ロープは私の体を拭きながら、黙って聞いていた。
「ほら、カロンたちだってさ……ヒドラのロードモンスターを躊躇なく殺害して……報酬を得ようとしてたでしょ? そりゃ向こうは中身がヒドラであることは知らないのは当然だけどさ……私たちだって、報酬が欲しくないわけじゃないでしょ? ……だってほら、ダンジョンでモンスター退治をしてたのも根本を言えば報酬目当てだし……もうなんだか……自分が何なのか……」
私は自分の思っていることを率直に話した……。
すると、ロープは背中を拭き終えたのか、正面に回ってきた。
ロープの顔は……微笑んでいたが、目は悲しそうだった。
「……馬鹿ですよ、アニマさんは」
「……ロープ?」
ロープは……私を抱きしめてきた。
突然のことに、私は困惑してしまった。
「……私たちは、報酬のためにこれまでロードモンスターと戦ってきたのですか?」
「そ、それは……」
……違う、確かに報酬が欲しくなかったわけではない……でも、それが第一かと聞かれたら……間違いなく違うと言い切れる。
「……私だって、報酬は欲しいですよ……でも、そんなことよりも、みんなを守ることができてよかった、みんなが安心してくれてよかった……とか、そう思いません?」
「……」
確かに、そうだ。
報酬は欲しい、でも、それよりも、人々が安心してよかったと思うのが第一だ。
「確かに、中には己の欲望目当てで動く人だってたくさんいます、でもそれは単に『そういう人もいる』ってだけじゃないですか?」
「……そういう人もいる……か」
ロープの言う通り、全員が全員そういうわけではない。
少なくとも私……それにロープは、「そのためだけに今までやってきたわけではない」
「……そっか、そうだよね!」
私はロープの肩を掴み、お互いに目を合わせた。
「……ありがとう、ロープ……私、答え……決めたよ」
「……アニマさん」
「明日……伝えよっか、あいつに……答えを」
「……はい!」
私たちはお互いに笑い合い、「答え」の確認をした。
もう……迷わない、これが私たちの答えだ。
「それじゃ……最後まで拭いてくれる?」
「……はい!」
ロープは再び、私の体を拭き始めた。
「……何?」
ロープは、私の背中を拭きながら、質問をしてきた。
……聞きたい内容は、なんとなくわかった。
「……なぜ、あのロードモンスターの言い分が間違っていないと……そう考えたのですか?」
「……ごめん、やっぱ気になるよね」
「……すみません」
……深呼吸をし、私はなぜそんなことを思ったのかを言った。
「あいつ……言ってたでしょ? 『人は欲望のためならどんなこともする』ってさ……今まで戦ったロードモンスター……誰も彼も欲望を口にしてたでしょ? それが人間の本質って……あながち間違いでもないんじゃないかってさ……」
「……」
ロープは私の体を拭きながら、黙って聞いていた。
「ほら、カロンたちだってさ……ヒドラのロードモンスターを躊躇なく殺害して……報酬を得ようとしてたでしょ? そりゃ向こうは中身がヒドラであることは知らないのは当然だけどさ……私たちだって、報酬が欲しくないわけじゃないでしょ? ……だってほら、ダンジョンでモンスター退治をしてたのも根本を言えば報酬目当てだし……もうなんだか……自分が何なのか……」
私は自分の思っていることを率直に話した……。
すると、ロープは背中を拭き終えたのか、正面に回ってきた。
ロープの顔は……微笑んでいたが、目は悲しそうだった。
「……馬鹿ですよ、アニマさんは」
「……ロープ?」
ロープは……私を抱きしめてきた。
突然のことに、私は困惑してしまった。
「……私たちは、報酬のためにこれまでロードモンスターと戦ってきたのですか?」
「そ、それは……」
……違う、確かに報酬が欲しくなかったわけではない……でも、それが第一かと聞かれたら……間違いなく違うと言い切れる。
「……私だって、報酬は欲しいですよ……でも、そんなことよりも、みんなを守ることができてよかった、みんなが安心してくれてよかった……とか、そう思いません?」
「……」
確かに、そうだ。
報酬は欲しい、でも、それよりも、人々が安心してよかったと思うのが第一だ。
「確かに、中には己の欲望目当てで動く人だってたくさんいます、でもそれは単に『そういう人もいる』ってだけじゃないですか?」
「……そういう人もいる……か」
ロープの言う通り、全員が全員そういうわけではない。
少なくとも私……それにロープは、「そのためだけに今までやってきたわけではない」
「……そっか、そうだよね!」
私はロープの肩を掴み、お互いに目を合わせた。
「……ありがとう、ロープ……私、答え……決めたよ」
「……アニマさん」
「明日……伝えよっか、あいつに……答えを」
「……はい!」
私たちはお互いに笑い合い、「答え」の確認をした。
もう……迷わない、これが私たちの答えだ。
「それじゃ……最後まで拭いてくれる?」
「……はい!」
ロープは再び、私の体を拭き始めた。
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