動物に成り切るしか能がないと言われて追放された私、慰謝料代わりにもらったゴミアイテムで街に現れたモンスターを倒したら英雄になった件

立風館幻夢/夜野一海

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最終話 帰還、そして伝えたい事

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 城から離れる前私たちは、タイタンの遺体を城の前に埋めた。
 流石に……敵とはいえ、遺体をそのままにするのはどうかと思ったし……。
 私は熊に変身して、土を掘った後、その中にタイタンを埋めた。
 ……できることなら、生まれ変わってほしくないけど。

 遺体を埋めた後、私は馬に変身し、ロープを乗せて、下山した。
 辺りは真っ暗……城から灯り「借りて」、私たちは降りて行った。
 途中でムーンさんの教会に寄ろうと思ったが……どういうわけか、教会が見当たらなかった。
 仕方がないので、そのまま下山したけど……道を間違えたのかな? 今度改めて向かおう。

 休憩を挟みつつ、私たちは少しずつ少しずつ、ふもとへと向かっていた。
 ……そして。

「アニマさん! 見えてきましたよ!」
「だね!」

 私たちの目の前に、街並みが見えてきた。
 遠くから見ても、工事用の足場が様々な建物に付いているのが分かった。
 どうやら、街は復旧に向けて舵を切ったようだ。

「さ、早く行こう! しっかり掴まってね!」
「はい!」

 私はスピードを上げ、ふもとへと全力疾走した。



「ようやっと……着いたね」
「……はい」

 気が付けばあっという間だった。
 既に太陽が、私たちを迎えるように上っていた。
 街の検問を通ると……衛兵が驚愕の表情を浮かべていた。

「おお! あなた方は勇者様!」
「……え?」

 勇者様……あなた方?

「よくぞご無事で、さぁ、どうぞ行ってください」
「……?」

 まさかの顔パス……私とロープは顔を合わせ、お互いの困惑の表情を浮かべた。
 ……街の中に入ると、人々は復旧作業を進めていた。
 やはりみんな、困ったときはお互い様、助け合いながら作業を行っている。
 ……タイタンが言っていたような、欲望だけで動く人たちだけじゃない。
 そんなことを考えていると、街中の人々が私たちを見るや否や、サイほどの衛兵のような表情を浮かべた。
 ……え? なになに!?

「うおおおおおおおお!! 勇者様だ!!」
「喋るモンスターを倒した我らが英雄!」
「みんなで胴上げだ!!」

 ……まずい。

「ロープ! 行こう!」
「はい!」

 私は咄嗟に馬に変身し、ロープを乗せて走り去った。

「はぁ……はぁ……まさか街に戻った途端総出で英雄扱いとはね……」
「でも……嫌な気分ではないですね」
「……だね」

 私たちは路地裏に入り……2人きりになった。
 2人きり……そういえば。

「ねぇロープ」
「……はい」
「そういえば……何か伝えたい事があるんじゃなかった?」
「……そういえばそうでしたね」

 ロープは笑顔を私に向け……同時に、私の手を掴んだ。

「驚かないでくださいね……結構刺激が強いかもしれません」
「……私はなにも驚かないよ、だって……勇者様だよ?」
「……でしたね」

 ロープの伝えたい事……なんとなくわかった気がしたけど、彼女の口から言わせよう。
 私も答えは決まっている……正直、伝えるのはちょっと怖いけど。
 でもきっと大丈夫だ、私は……いや、私たちは勇者様だから。
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