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2.聖女、ここに至るまで略歴
リーナ=ヴァルセリアは聖女だった。
より正確に言うと、先日ようやく一人前の聖女として認められたばかり。
性格はお人好しだが潔癖で真面目、そのせいで融通が利かないのがたまに傷。
幼い頃からずっと教会で暮らし、人々のために生きる事を信念に過ごしてきた。
ヴァルセリアは聖女の資格を持つ人間が一律名乗る姓だった。本来の名前はリーナ=ノートン。農民だが、そこそこ裕福な方の家だった。
生家から引き取られたのは、物心つくかつかないかといったところ。
庭の花を咲かせて遊んでいるのを人に見られた二日後には、白い衣の大人達が教会から彼女を迎えにやってきた。彼女たちに簡単なテストとやらを受けさせられて、リーナは聖女の素質があると言われた。
無神教とまではいかずとも、並程度の信仰しか持ち合わせていなかったらしい両親は、可愛がっている長女を手放すことを当初大層渋った。が、誰にでもできることではない、あなたがたの娘は選ばれたのだ、この先数え切れないほど多くの人を救うのだ、このまま放置すればきっと本人にも周りにもよくないことが起きる――等々、柔和な微笑みに老獪な皺を隠す大人達に時間をかけて説得されると、ついには泣く泣く娘を聖女にすることに同意した。
元気でやるんだよ、と頭を撫でて、父はお守りの短剣を、母はお気に入りのハンカチーフを持たせてくれた。思い出は時が経てば色あせ、二人の顔もおぼろげだけど、物は手元に残り続ける。リーナは今でも大事に二つとも持ち歩いて手放そうとしなかった。
聖女とは癒やしの力を持つ女性に与えられる称号であり、職業だ。
奇跡の力を扱うという点で魔法使いとも似ているが、力を持つのが必ず女性であること、生命力への干渉のみに特化していることを特徴とする。
ヴァルセリア教会は古くはそんな聖女の保護、教育、管理等々を行う国際的機関だ。
聖女は皆教会に所属するが、ヴァルセリアは誰にも属さない。そんな中立性を保つことで、聖女の力を平等に人類の公的資産とすることを目的とする。聖女の任務は病気や怪我の治療を主としているが、時には魔物退治を請け負うこともある。
聖女は大抵、ちょうどリーナのように幼少期の才能を見出されて連れてこられる。
自制心の弱い幼い頃は、教会の中にほぼ軟禁状態で、娯楽も検閲だらけ、外出があっても大人達の厳しい監視を必要とする。
そのかわり、真面目に修行を積んだら少しずつ権利が増えていき、一人前の聖女ともなれば任務をこなす限り自由行動を取ることができるようになる……というシステムによって、教会は彼女たちをうまいこと働かせてきた。
厳しい修行や見習いの任務に耐え、ようやく一人前としてヴァルセリアの姓を与えられたリーナがまずしたい自由行動とは、両親に会いに行くことだった。
リーナは修行中の素行が非常によろしかったこともあって、本格的に任務を始める前に一ヶ月程度の休暇期間が与えられた。この間に思う存分羽を伸ばして後顧の憂いを断っておけというようなことも先輩聖女から言われたわけだが、ともかく彼女はそういったわけで久々に故郷への旅路を歩んでいる最中だったのだ。
品行方正、趣味は人助け、聖女の鑑であるような彼女に、教会が懸念するような聖女なりたての少女に無垢数々の誘惑による間違いなど、本来起こりようはずもなかった。
より正確に言うと、先日ようやく一人前の聖女として認められたばかり。
性格はお人好しだが潔癖で真面目、そのせいで融通が利かないのがたまに傷。
幼い頃からずっと教会で暮らし、人々のために生きる事を信念に過ごしてきた。
ヴァルセリアは聖女の資格を持つ人間が一律名乗る姓だった。本来の名前はリーナ=ノートン。農民だが、そこそこ裕福な方の家だった。
生家から引き取られたのは、物心つくかつかないかといったところ。
庭の花を咲かせて遊んでいるのを人に見られた二日後には、白い衣の大人達が教会から彼女を迎えにやってきた。彼女たちに簡単なテストとやらを受けさせられて、リーナは聖女の素質があると言われた。
無神教とまではいかずとも、並程度の信仰しか持ち合わせていなかったらしい両親は、可愛がっている長女を手放すことを当初大層渋った。が、誰にでもできることではない、あなたがたの娘は選ばれたのだ、この先数え切れないほど多くの人を救うのだ、このまま放置すればきっと本人にも周りにもよくないことが起きる――等々、柔和な微笑みに老獪な皺を隠す大人達に時間をかけて説得されると、ついには泣く泣く娘を聖女にすることに同意した。
元気でやるんだよ、と頭を撫でて、父はお守りの短剣を、母はお気に入りのハンカチーフを持たせてくれた。思い出は時が経てば色あせ、二人の顔もおぼろげだけど、物は手元に残り続ける。リーナは今でも大事に二つとも持ち歩いて手放そうとしなかった。
聖女とは癒やしの力を持つ女性に与えられる称号であり、職業だ。
奇跡の力を扱うという点で魔法使いとも似ているが、力を持つのが必ず女性であること、生命力への干渉のみに特化していることを特徴とする。
ヴァルセリア教会は古くはそんな聖女の保護、教育、管理等々を行う国際的機関だ。
聖女は皆教会に所属するが、ヴァルセリアは誰にも属さない。そんな中立性を保つことで、聖女の力を平等に人類の公的資産とすることを目的とする。聖女の任務は病気や怪我の治療を主としているが、時には魔物退治を請け負うこともある。
聖女は大抵、ちょうどリーナのように幼少期の才能を見出されて連れてこられる。
自制心の弱い幼い頃は、教会の中にほぼ軟禁状態で、娯楽も検閲だらけ、外出があっても大人達の厳しい監視を必要とする。
そのかわり、真面目に修行を積んだら少しずつ権利が増えていき、一人前の聖女ともなれば任務をこなす限り自由行動を取ることができるようになる……というシステムによって、教会は彼女たちをうまいこと働かせてきた。
厳しい修行や見習いの任務に耐え、ようやく一人前としてヴァルセリアの姓を与えられたリーナがまずしたい自由行動とは、両親に会いに行くことだった。
リーナは修行中の素行が非常によろしかったこともあって、本格的に任務を始める前に一ヶ月程度の休暇期間が与えられた。この間に思う存分羽を伸ばして後顧の憂いを断っておけというようなことも先輩聖女から言われたわけだが、ともかく彼女はそういったわけで久々に故郷への旅路を歩んでいる最中だったのだ。
品行方正、趣味は人助け、聖女の鑑であるような彼女に、教会が懸念するような聖女なりたての少女に無垢数々の誘惑による間違いなど、本来起こりようはずもなかった。
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