僕と自分と俺の日々

いしきづ川

文字の大きさ
上 下
7 / 9

喫茶店のオムライス

しおりを挟む
筒井和也は部下の森村と朝から得意先の訪問を終えて、昼食の時間を向かえていた。
『この得意先を訪問したからには、いつもの喫茶店でオムライスにするかな。』

「今朝、通った商店街あっただろ。そこに良く通ってる喫茶店があってね。ランチもあるからせっかくだし食べて帰るか?」
和也は部下に尋ねた。
「あっ、そうなんですね。いきます。」

二人は得意先の敷地から出た所にある商店街の入り口に、昭和が感じられるモダンな作りの喫茶店に入っていった。店の中では老夫婦がお店を営んでいた。
和也はここのオムライスを食べるのが楽しみで月に数回は通っていた。

和也と森村は席に着くとメニューをみた。
「いつもはそっちの奥の席なんだ。」
和也は普段と違う喫茶店内の景色に新鮮さを感じていた。
『厨房がここからだと良く見えるなぁ。狭いけど昭和感あるなぁ。』

「結構、通ってるんですか。」
「なんかねぇ~。ここの得意先に来ると、ここばかりだよ。次から担当する時、使ってくれていいよ。」
「ありがとうございます。結構ランチ安いですよね。」
「そうなんだよ。しかも食後のコーヒーが付いてくるのが、お得感あるんだよね。」
マスターの奥さんがお水をもってくると、和也と森村は各々注文をして料理を待つことにした。

「ここのオムライスは昔ながらで、チキンライスを薄い卵焼きでくるんで、ケチャップをかけたやつなんだけど、これがなんだか懐かしくて10年は通ってるよ。たまに大盛も頼むんだけど100円プラスで結構いれてくれるんだよ。卵は薄いままだけどね。」
「へぇー、昔ながらのオムライスって卵薄くありません?最近はフワッとしたオムライスが主流というか。」
「そうなんだよ。あれはあれで好きなんだけど、何故か頼んじゃうんだよね。森村みたいに最初はしょうが焼き定食とか頼んでたんだけど、オムライスを頼んでから、オムライス以外に頼んだことないかもね。美味しいんだよ。」
「オムライスの大盛にしたら良かったかなぁ」
「またそのうち来たらいいよ。そこのお得意先の担当になったんだから。」
などと話していると、厨房の方で初老のマスターしょうが焼き定食の豚肉を焼き始めた。
「ほら、しょうが焼き作ってくれてるよ。あの年期の入ったフライパンいいねぇ。」
和也はマスターが調理している姿を見ていった。森村もチラッと厨房をみて相づちを打った。
しょうが焼き定食が出来上がるとマスターの奥さんがテーブルに運んできた。

そうこうしている間に次はオムライスをマスターが作るのだと雰囲気でわかった。
和也はフライパンで作られるチキンライスの行程をみれることが楽しかった。
『どんな感じの手さばきなんだろうか?』

フライパンを火にかけるとマスターは卵を器にいれてもってきたようだった。
そして、バターをフライパンに入れるとジュ~🎵というバターの溶ける音が聞こえた。
『次は白飯とチキンと…』
と思っていると厨房のなかからチーン🎵とレンジの音がなり、レンジを開ける音。
『白飯は冷凍だったかぁ~、まぁいい。そういう店もある。いや、チキンの方か?』

そのどちらでもなく、ここで和也の予想が裏切られることになった。マスターがレンジの中から出しフライパンにいれた食材は、食材と呼ぶにはあまりにも完成されている料理だった。それは和也もずっとお世話になっている料理
『格安スーパーの冷凍100円チキンライス』
和也は目を見開いた。
まるでマジックのタネ明かしを受けたような衝撃を受けていた。

『そりゃ、そうだわ。懐かしい味に決まってる。しょっちゅう食べてる。マジかぁ~。』

和也は天井を見上げて森村に目を落とすと、森村も厨房を見ていた。
和也の驚いてる姿を見て厨房の方が気になったのだ。

「筒井さん、なんとなくわかったんですけど多分オムライス大盛プラス100円の頼んだ時は、あれが2袋スッね。」

「みなまで言うな。10年間、全然分からなかったなぁ~。普通に美味しかったもんなぁ。」
「格安スーパーは偉大ですね。」
「偉大だねぇ~(>_<)」
「うちも使ってますよ。あれ」
「言うなって!( ̄▽ ̄;)」














しおりを挟む

処理中です...