57 / 434
第3章 【記憶の結晶】
第3章23 【邪龍】
しおりを挟む
邪龍教......
それは、今まではただの怪しい宗教団体だと思っていた。
邪龍なんて復活させられるわけがない。
そもそも、本当に邪龍がいたのかすら怪しい......
しかし、滅界の祭壇、聖龍の墓場、幻想の祭壇......それに、ネイの契約龍。
邪龍復活なんて無理だと思っていたのに、今ではそれが可能だということが分かっている。
そして、目の前に立ち塞がる男が、帝国の皇帝にして邪龍教の大司教。グリモワ・ラグナロク。
この世界では1番と言っても誰も文句を言わないほどの魔導士である。
「ーー姉を殺され、いや、自害に追い詰めた我々を相当憎んでおるようだな、王子」
ただ喋るだけなのに、なんだこの威圧感は......
「他の教徒を皆殺しとは......いかにしてそれができたのかが知りたいね」
「「「 私達がやった。私達にかかれば不死だろうがなんだろうが関係ない 」」」
「面白い小娘だ。お前もつい先日までは欲しかったのだがね」
「「「 誰が貴様なんぞに貰われるもんか! 」」」
グリモワに対して臆することがないのは、ヴァル、クロム、ネイだけである。
いや、本当は心の中ではかなり震えているのかもしれない。でも、それを表に出さない強者の意地。
私なんかグリモワの顔を見ているだけでガタガタと手の震えが止まらないのに......
「ーー残念だが、儀式は終わったよ。貴様らもここに来るまでに見てきただろう?あちこちに死体が転がっているのを......」
確かに見てきた。あれ程の死体が連なっているのを私は今までに見た事がない。
「素晴らしい信者達だったな。皆、邪龍を復活させると聞いたらどんなに遠くだろうが駆けつけてきたよ」
「貴様には、国民を守るという使命がないのか!」
クロムが声を大にして叫ぶ。
「守る?笑わせないでくれ。あいつらは自ら望んでここにやって来たのさ。私は関係ない」
確かに見てきた。その通りなのだろう。信徒達は自ら望んでやって来た。邪龍復活という世界の終わりを作るために......
「と言っても、儀式は終わったが、まだ憑依先を決めていない。私がなっても良かったのだが、そこに飛龍の小娘がいるのならそちらの方が都合が良い」
ネイが必要なくなったというのは、自分が邪龍になれるからなのか......しかし、ネイの方が都合が良いのは、ネイがかつての邪龍・フェノンと同じ容姿であるからだろう。
本当にネイが可哀想だと思う。
龍人であることを理由に蔑まれ、周りから嫌われてきた。
そんな彼女に、これ以上の不幸を与えるわけにはいかない。
「ーー邪龍を復活させるのをやめるつもりはないか?」
「今更やめるわけなかろう」
知っていたことだが、クロムの質問にグリモワが即答した。
「ーーさて、ではケリをつけようか?行け、お前ら。奴らが最後の"生贄"だ」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「炎龍の火砕!」
「聖龍・レイズ!」
ヴァルとクロムが同時にグリモワに攻撃する。
グリモワはそれを意図も簡単に防ぐ。
魔法の類なのだろうが、グリモワは詠唱をしていなければ、一切動いてもいない。
「アイスニードル!」
「ウォータースプライト!」
ヴェルドとシアラが周りにいる教徒に向かって攻撃する。
こちらも、攻撃は当たるのだが、死ぬことはない。更に、幹部らしき者達もおり、そいつらに限っては不死の他に様々な能力を見せる。
地面に釘刺しにされれば、別の教徒に体を乗換える者。
無限に刃を放ち続ける者。
地形を乱し、私達に攻撃をさせない者。
他にも色々といるが、とりあえずは戦えている。
「カグヤ、大丈夫?」
私が呼び出したカグヤも、敵の攻撃により疲労していた。精霊は基本的には契約者のマナ依存だから疲れることなどなかったのだが......
「ああ"ぁ"!セレナ様の仇!」
この状況で、唯一自由に動けているのがペガサスに乗るフェリシアくらい。後は......
「「「 輝戦幻想・輝く生者の夢 」」」
ネイは後方から支援魔法をかけてくれている。
捕まってはいけない以上、ネイは自然と後ろから戦うことになる。教徒を倒せれるのはネイだけなのだが、状況がそれを許さない。
「「「 セリカさん、右! 」」」
ネイがこちらを向いて叫んでくる。
「「「 輝導・ニルヴァーナ 」」」
私の右側にやって来た教徒をネイが焼き尽くす。
「ごめん」
「「「 謝ってないで次に備えてください! 」」」
それもそうだ。ただ、教徒達はあらかた片付いたように見える。
後は、幹部らしき者達とグリモワ......
「「「 皆さん、幹部は全員私がやります。だから、皆さんでグリモワを倒してください! 」」」
「「「 分かった 」」」
今はネイを信じて動くしかない。
「「「 輝導羅戦幻彩・絆の記憶! 」」」
淡い6色の光が教徒達を包み込み、瞬きの間に全て消え去った。
「エキドナ!」
「アイスブレイク!」
「ウォーターブレイク!」
「エレキマグナム!」
「爆炎剣!」
「連獄!」
「聖龍・ルイン!」
ここぞとばかりに総攻撃を仕掛ける。
「貴様らの攻撃は全て効かん。諦めてその場で死んでいろ」
これだけの攻撃でも、グリモワは動きもせずに全てを無効化する。
「クソっ、奴はどうなってんだ......」
魔術の一種であるとは思うが、こんなにも実力差があると、何か違うものでもあるんじゃないかと思う。
「「「 セリカさん。その考え、間違ってないと思いますよ 」」」
考えが間違っていない、なら、本当に何か違うものが......
「「「 多分ですけど、あいつが座っている椅子が関係してますよ 」」」
なるほど。あの玉座に見える椅子は、暗殺を阻止する目的で最近作られたあれか......そして、邪龍教徒が改造して更に強力な魔法も防げれるようになったと......
「なら、グリモワを椅子から引き剥がせれれば......」
「「「 はい、攻撃が通るようになります。周りには邪魔な教徒達もいませんので、あいつの椅子をぶっ壊しましょう 」」」
そうは言っても、あの椅子自体が魔法を守る構造になっている以上、どうすれば......
「「「 エンドラル・フィア 」」」
突然、ネイが地面に向けて火属性の魔法を放つ。
それは、綺麗な円を玉座をも囲いながら広がり、円の中に様々な図形を書いて、焼き跡を残して消えていく。
「「「 今です!エフィさん、手伝ってください! 」」」
「え?あ、はい!」
エフィは戸惑ったように返事をしたが、すぐにネイの言いたいことを理解し、地に手を置いた。
「「 錬成 」」
錬成陣が反応し、地形を崩していく。
やがて、グリモワが座っていた位置まで崩し、椅子を粉々にする。
あの椅子は対魔法用に作られ、錬金術も跳ね返せれるが、衝撃に弱い。更に、地に椅子の足を付けておかないと、マナを吸収することが出来ずに本来の力を完全に発揮することが出来ない。
地形破壊によって衝撃を与え、加えて少しばかりの錬成力で破壊できる。
「チッ、まあよい。私が直接動けば良いだけだ」
邪魔となる椅子は壊せれた。後はグリモワを倒すだけ......
「シックス・ジャッジメント」
なんだ?と思った時には遅かった。
辺りに焼けるような光が満ち、気づいた時には体が動かなくなっていた。
(何が、起こったの......)
辛うじて首は回る。
辺りを見渡す。皆、同じようにその場に倒れていた。
「哀れなものだ。邪龍様の裁きを全て受けてしまうほど、君達は悪人だったようだ」
体に痛みはない。ただ、動かないだけ。
1つ、懐かしい記憶が蘇る。
(この技、エンド・カラーに似てる)
ヒカリが暴走状態の時に放った技だが、あれも同じように光が辺りに満ちて爆発を起こした。
「さて、では誰から生贄に捧げようか......」
グリモワが品定めをするかのような目付きで私達を見ている。
「ほう。この娘、精霊魔導士だったのか......」
グリモワが私が手に握っていた鍵を拾い上げてそう言う。
「では、貴様から生贄にーー」
「ニルヴァーナ!」
突然、グリモワの手元を掠める攻撃が来る。
「なぜ、動けているのかなぁ?」
ネイが憑依を解除した状態で佇んでいた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け。
何度、そう思っても体は動いてくれない。
あの光に何があったというのか。
「ほう。この娘、精霊魔導士だったのか......」
精霊魔導士、セリカのことだ。奴は今、セリカの近くにいるということか......
「では、貴様から生贄に ーー」
まずい、セリカがやられる。
「ニルヴァーナ!」
誰かが魔法を撃った。
(ネイ......)
間違いなく、あの声はネイだろう。なぜ、動けているのか。それに関しては今はいい。
「アルテマ、メテオ、ブラックホール」
ネイが次々に現代では誰も使用できない魔法を詠唱し、放ってゆく。
「う"......クソぅ」
流石のグリモワでも、あれだけの高威力の魔法は避けられないし、当たればかなりのダメージが入るだろう。
「ネクスト・レメディ」
ネイが回復魔法をグリモワを除いた全員にかける。
「体が......動く......」
さっきまでピクリともしなかった体が、突然動き出す。しかも、体中についていた傷も全部治っている。
「ヴァル、今のうちに......」
ネイがこちらを向いて、何らかの支援魔法をかけてくる。
「アマルナ」
よく分からないが、なぜか頭に出てきた魔法の構築式が、俺の体を通して再現される。
強い光がグリモワを包み込み、太陽のような暑さで焼いていく。
「終わりだな。グリモワ」
グリモワは何かの魔法を使ったのか、辛うじて耐えていたが、今の状態ではクロムに簡単にやられてしまうだろう。
「まだだ、まだ私には......」
なぜ、その体でそこまで動けれる?という程の速さでグリモワが最初に座っていた場所に戻る。
「この祭壇の力を使えば......私が世界の終わりを作ることが出来る......」
「やめろ!」
クロムが急いでグリモワの手を斬る。
「あ"、あ"ぁ"......」
グリモワが斬られた手首辺りを押さえて蹲っている。
「貴様には、聞きたいことが山ほどある」
クロムが怒りに満ちた目でグリモワを見据えている。
「私は......邪龍様のために......」
「もうよい、グリモワ。そなたは十分に私に尽くしてくれた」
突然、どこからか、ダミのかかった女性の声がする。
近くにいたネイがギュッと俺の腕を掴んでくる。
「どうした?ネイ」
「来る。何か、とてつもないものが......」
ネイの顔が青ざめ、恐怖からなのか震えていた。
「私は、まだ貴方様に......」
「だから、もう大丈夫だと言っておる。この祭壇には生者のエネルギーがたくさん集まった。お前の役目も終わりだ」
祭壇の奥から徐々に人の姿が見えてくる。
「まだ、私は貴方様の力になりきれてなどーー」
「なら、死ね」
ダミ声の主がグリモワの体を片手で消滅させる。そして、その主の姿は......
「ネイ......」
隣にいるネイが、俺の腕を掴む力をより一層強める。
「やあ、久し振りだねぇヴァル。それに、すぐ傍に臆病だった私もいるじゃないか......」
「おいおい嘘だろ......」
祭壇には、もう1人のネイがいた。
それは、今まではただの怪しい宗教団体だと思っていた。
邪龍なんて復活させられるわけがない。
そもそも、本当に邪龍がいたのかすら怪しい......
しかし、滅界の祭壇、聖龍の墓場、幻想の祭壇......それに、ネイの契約龍。
邪龍復活なんて無理だと思っていたのに、今ではそれが可能だということが分かっている。
そして、目の前に立ち塞がる男が、帝国の皇帝にして邪龍教の大司教。グリモワ・ラグナロク。
この世界では1番と言っても誰も文句を言わないほどの魔導士である。
「ーー姉を殺され、いや、自害に追い詰めた我々を相当憎んでおるようだな、王子」
ただ喋るだけなのに、なんだこの威圧感は......
「他の教徒を皆殺しとは......いかにしてそれができたのかが知りたいね」
「「「 私達がやった。私達にかかれば不死だろうがなんだろうが関係ない 」」」
「面白い小娘だ。お前もつい先日までは欲しかったのだがね」
「「「 誰が貴様なんぞに貰われるもんか! 」」」
グリモワに対して臆することがないのは、ヴァル、クロム、ネイだけである。
いや、本当は心の中ではかなり震えているのかもしれない。でも、それを表に出さない強者の意地。
私なんかグリモワの顔を見ているだけでガタガタと手の震えが止まらないのに......
「ーー残念だが、儀式は終わったよ。貴様らもここに来るまでに見てきただろう?あちこちに死体が転がっているのを......」
確かに見てきた。あれ程の死体が連なっているのを私は今までに見た事がない。
「素晴らしい信者達だったな。皆、邪龍を復活させると聞いたらどんなに遠くだろうが駆けつけてきたよ」
「貴様には、国民を守るという使命がないのか!」
クロムが声を大にして叫ぶ。
「守る?笑わせないでくれ。あいつらは自ら望んでここにやって来たのさ。私は関係ない」
確かに見てきた。その通りなのだろう。信徒達は自ら望んでやって来た。邪龍復活という世界の終わりを作るために......
「と言っても、儀式は終わったが、まだ憑依先を決めていない。私がなっても良かったのだが、そこに飛龍の小娘がいるのならそちらの方が都合が良い」
ネイが必要なくなったというのは、自分が邪龍になれるからなのか......しかし、ネイの方が都合が良いのは、ネイがかつての邪龍・フェノンと同じ容姿であるからだろう。
本当にネイが可哀想だと思う。
龍人であることを理由に蔑まれ、周りから嫌われてきた。
そんな彼女に、これ以上の不幸を与えるわけにはいかない。
「ーー邪龍を復活させるのをやめるつもりはないか?」
「今更やめるわけなかろう」
知っていたことだが、クロムの質問にグリモワが即答した。
「ーーさて、ではケリをつけようか?行け、お前ら。奴らが最後の"生贄"だ」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「炎龍の火砕!」
「聖龍・レイズ!」
ヴァルとクロムが同時にグリモワに攻撃する。
グリモワはそれを意図も簡単に防ぐ。
魔法の類なのだろうが、グリモワは詠唱をしていなければ、一切動いてもいない。
「アイスニードル!」
「ウォータースプライト!」
ヴェルドとシアラが周りにいる教徒に向かって攻撃する。
こちらも、攻撃は当たるのだが、死ぬことはない。更に、幹部らしき者達もおり、そいつらに限っては不死の他に様々な能力を見せる。
地面に釘刺しにされれば、別の教徒に体を乗換える者。
無限に刃を放ち続ける者。
地形を乱し、私達に攻撃をさせない者。
他にも色々といるが、とりあえずは戦えている。
「カグヤ、大丈夫?」
私が呼び出したカグヤも、敵の攻撃により疲労していた。精霊は基本的には契約者のマナ依存だから疲れることなどなかったのだが......
「ああ"ぁ"!セレナ様の仇!」
この状況で、唯一自由に動けているのがペガサスに乗るフェリシアくらい。後は......
「「「 輝戦幻想・輝く生者の夢 」」」
ネイは後方から支援魔法をかけてくれている。
捕まってはいけない以上、ネイは自然と後ろから戦うことになる。教徒を倒せれるのはネイだけなのだが、状況がそれを許さない。
「「「 セリカさん、右! 」」」
ネイがこちらを向いて叫んでくる。
「「「 輝導・ニルヴァーナ 」」」
私の右側にやって来た教徒をネイが焼き尽くす。
「ごめん」
「「「 謝ってないで次に備えてください! 」」」
それもそうだ。ただ、教徒達はあらかた片付いたように見える。
後は、幹部らしき者達とグリモワ......
「「「 皆さん、幹部は全員私がやります。だから、皆さんでグリモワを倒してください! 」」」
「「「 分かった 」」」
今はネイを信じて動くしかない。
「「「 輝導羅戦幻彩・絆の記憶! 」」」
淡い6色の光が教徒達を包み込み、瞬きの間に全て消え去った。
「エキドナ!」
「アイスブレイク!」
「ウォーターブレイク!」
「エレキマグナム!」
「爆炎剣!」
「連獄!」
「聖龍・ルイン!」
ここぞとばかりに総攻撃を仕掛ける。
「貴様らの攻撃は全て効かん。諦めてその場で死んでいろ」
これだけの攻撃でも、グリモワは動きもせずに全てを無効化する。
「クソっ、奴はどうなってんだ......」
魔術の一種であるとは思うが、こんなにも実力差があると、何か違うものでもあるんじゃないかと思う。
「「「 セリカさん。その考え、間違ってないと思いますよ 」」」
考えが間違っていない、なら、本当に何か違うものが......
「「「 多分ですけど、あいつが座っている椅子が関係してますよ 」」」
なるほど。あの玉座に見える椅子は、暗殺を阻止する目的で最近作られたあれか......そして、邪龍教徒が改造して更に強力な魔法も防げれるようになったと......
「なら、グリモワを椅子から引き剥がせれれば......」
「「「 はい、攻撃が通るようになります。周りには邪魔な教徒達もいませんので、あいつの椅子をぶっ壊しましょう 」」」
そうは言っても、あの椅子自体が魔法を守る構造になっている以上、どうすれば......
「「「 エンドラル・フィア 」」」
突然、ネイが地面に向けて火属性の魔法を放つ。
それは、綺麗な円を玉座をも囲いながら広がり、円の中に様々な図形を書いて、焼き跡を残して消えていく。
「「「 今です!エフィさん、手伝ってください! 」」」
「え?あ、はい!」
エフィは戸惑ったように返事をしたが、すぐにネイの言いたいことを理解し、地に手を置いた。
「「 錬成 」」
錬成陣が反応し、地形を崩していく。
やがて、グリモワが座っていた位置まで崩し、椅子を粉々にする。
あの椅子は対魔法用に作られ、錬金術も跳ね返せれるが、衝撃に弱い。更に、地に椅子の足を付けておかないと、マナを吸収することが出来ずに本来の力を完全に発揮することが出来ない。
地形破壊によって衝撃を与え、加えて少しばかりの錬成力で破壊できる。
「チッ、まあよい。私が直接動けば良いだけだ」
邪魔となる椅子は壊せれた。後はグリモワを倒すだけ......
「シックス・ジャッジメント」
なんだ?と思った時には遅かった。
辺りに焼けるような光が満ち、気づいた時には体が動かなくなっていた。
(何が、起こったの......)
辛うじて首は回る。
辺りを見渡す。皆、同じようにその場に倒れていた。
「哀れなものだ。邪龍様の裁きを全て受けてしまうほど、君達は悪人だったようだ」
体に痛みはない。ただ、動かないだけ。
1つ、懐かしい記憶が蘇る。
(この技、エンド・カラーに似てる)
ヒカリが暴走状態の時に放った技だが、あれも同じように光が辺りに満ちて爆発を起こした。
「さて、では誰から生贄に捧げようか......」
グリモワが品定めをするかのような目付きで私達を見ている。
「ほう。この娘、精霊魔導士だったのか......」
グリモワが私が手に握っていた鍵を拾い上げてそう言う。
「では、貴様から生贄にーー」
「ニルヴァーナ!」
突然、グリモワの手元を掠める攻撃が来る。
「なぜ、動けているのかなぁ?」
ネイが憑依を解除した状態で佇んでいた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け。
何度、そう思っても体は動いてくれない。
あの光に何があったというのか。
「ほう。この娘、精霊魔導士だったのか......」
精霊魔導士、セリカのことだ。奴は今、セリカの近くにいるということか......
「では、貴様から生贄に ーー」
まずい、セリカがやられる。
「ニルヴァーナ!」
誰かが魔法を撃った。
(ネイ......)
間違いなく、あの声はネイだろう。なぜ、動けているのか。それに関しては今はいい。
「アルテマ、メテオ、ブラックホール」
ネイが次々に現代では誰も使用できない魔法を詠唱し、放ってゆく。
「う"......クソぅ」
流石のグリモワでも、あれだけの高威力の魔法は避けられないし、当たればかなりのダメージが入るだろう。
「ネクスト・レメディ」
ネイが回復魔法をグリモワを除いた全員にかける。
「体が......動く......」
さっきまでピクリともしなかった体が、突然動き出す。しかも、体中についていた傷も全部治っている。
「ヴァル、今のうちに......」
ネイがこちらを向いて、何らかの支援魔法をかけてくる。
「アマルナ」
よく分からないが、なぜか頭に出てきた魔法の構築式が、俺の体を通して再現される。
強い光がグリモワを包み込み、太陽のような暑さで焼いていく。
「終わりだな。グリモワ」
グリモワは何かの魔法を使ったのか、辛うじて耐えていたが、今の状態ではクロムに簡単にやられてしまうだろう。
「まだだ、まだ私には......」
なぜ、その体でそこまで動けれる?という程の速さでグリモワが最初に座っていた場所に戻る。
「この祭壇の力を使えば......私が世界の終わりを作ることが出来る......」
「やめろ!」
クロムが急いでグリモワの手を斬る。
「あ"、あ"ぁ"......」
グリモワが斬られた手首辺りを押さえて蹲っている。
「貴様には、聞きたいことが山ほどある」
クロムが怒りに満ちた目でグリモワを見据えている。
「私は......邪龍様のために......」
「もうよい、グリモワ。そなたは十分に私に尽くしてくれた」
突然、どこからか、ダミのかかった女性の声がする。
近くにいたネイがギュッと俺の腕を掴んでくる。
「どうした?ネイ」
「来る。何か、とてつもないものが......」
ネイの顔が青ざめ、恐怖からなのか震えていた。
「私は、まだ貴方様に......」
「だから、もう大丈夫だと言っておる。この祭壇には生者のエネルギーがたくさん集まった。お前の役目も終わりだ」
祭壇の奥から徐々に人の姿が見えてくる。
「まだ、私は貴方様の力になりきれてなどーー」
「なら、死ね」
ダミ声の主がグリモワの体を片手で消滅させる。そして、その主の姿は......
「ネイ......」
隣にいるネイが、俺の腕を掴む力をより一層強める。
「やあ、久し振りだねぇヴァル。それに、すぐ傍に臆病だった私もいるじゃないか......」
「おいおい嘘だろ......」
祭壇には、もう1人のネイがいた。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
[完結]7回も人生やってたら無双になるって
紅月
恋愛
「またですか」
アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。
驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。
だけど今回は違う。
強力な仲間が居る。
アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
2度死んだ王子は今度こそ生き残りたい
緑緑緑
ファンタジー
王太子ロイは、かつて二度の革命によって祖国を崩壊させてしまった過去を持つ。命を落とすたび、彼はある時点へと巻き戻される。そして今、三度目の人生が静かに幕を開けようとしていた。
――自分は民を理解しているつもりだった。
だが実際には、その表面しか見えていなかったのだ。
その痛烈な自覚から、物語は動き始める。
革命を回避するために必要なのは、制度でも権力でもない。「人を知る」ことこそが鍵だと、ロイは気付く。
彼はエコール学園での生活を通じ、身分も立場も異なる様々な人間と深く関わっていく。
そこで出会う一人ひとりの想いと現実が、やがて国の未来を大きく左右していくことになるとは、この時のロイはまだ知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる