グランストリアMaledictio

ミナセ ヒカリ

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第3章 【記憶の結晶】

第3章29 【絆の物語】

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「聖龍・覚醒」

 クロムの全身からオーラのようなものが沸き立つ。

『フェノン。私達はあなたに負けることなどありません。あなたには、もう一度同じ歴史を繰り返してもらいます』

 クロムの背後にエクセリアの幻影のようなものが現れる。

「くだらねえな。同じ歴史を繰り返すのなら、また先の未来で私は蘇るぞ?」

「ああそうだな。そうなったら、また未来の奴らがお前を倒してくれるさ」

「結局、問題は先送りにしようとするのですね。しかし、それでいい。私がこの世界を破壊するのだから」

「させるか!」

 クロムの剣とフェノンが作り出した『闇』がぶつかり合う。

「敵は私だけではありませんよ?」

 フェノンの言うように、周りには無数の兵が湧いて出てくる。

 みな、マナが尽きかけている。

 周りの兵に対応することは難しい。それに、ソラを召喚していられる時間も少ない。

「ネクスト・レメディ」

 ネイがあの時に使った回復魔法を全員にかける。

「みなさん、少ない量ですが、これで持ち堪えてください」

 体内のマナが少しだけ増えた。

 クロムが決着をつけるまで耐え続ける。それならばできそうだ。

「言っておきますが、微量なのであまり高威力の魔法をーー」

「滅龍奥義・獄炎龍波」

 ネイは高威力の魔法を使うなと言おうとしてた。しかし、ヴァルはそれを無視してフェノンに滅龍の魔法を使った。

「あのバカ......」

  ヴェルドが呆れたように顔に手を当てる。

「言ったでしょう。滅龍の魔法は私には効かない」

「それはどうだろうな」

 いつの間にか、クロムがフェノンの背後に回っており、ヴァルと挟み撃ちの状態になる。

「しまった......」

 ヴァルとクロムの同時攻撃がフェノンに直撃する。

「う"っ......」

「どうした?効かないのではなかったのか?」

 フェノンには確かなダメージが入った。しかも、フェノンを片膝立ちにさせる程。

「私は......まだ......」

「終わりだ。聖龍・ルイン」

「うぁぁぁぁぁぁ!」

 フェノンの体を、クロムの聖剣が斬る。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ......」

 フェノンはクロムの剣撃を喰らってもまだ耐えている。

「最後に、お前に1つ聞きたいことがある」

 剣先をフェノンに向けながらクロムが言う。

「最後の......情けか......?」

「そうなるかどうかはお前の回答による」

「ハッ......じゃあ......無理だな......」

「そうか。なら、問おう。貴様は、未来で俺達にどんな目に遭わされたんだ?」

「そんな......ことか......。さっきから......ずっと......話してたのにな......」

「そうだったな。俺達がお前を殺そうとした。それだけの理由だったか......」

「そう......だ......。いいよなぁ......そっちの......私は......守ってもらえる......人が......いて......。私には......いなかったと......いうのに......」

 フェノンがクロムの隣に立つネイに向けてそう言う。

「お前がどれだけの悲しみを背負ってきたのか、俺には分からん」

「そうだろうな......。お前らに......私の......苦しみが......分かるはずがない......」

「......最後に、1つ言いたいことがある」

「まだ......あるのか......私が......回復する前に......さっさと殺せば良いものを......」

「お前、ここからやり直す気はないか?」

「突然何を言い出すんだクロム」

 後ろの方からヴェルドがそう言う。

「やり直す気があるのなら俺はお前を殺しはしない。どうなんだ?」

「ハッ。最初に言ったように、無理だ。それに、お前がここで私を殺しても、すぐに蘇る。100年も200年も経たずにな!」

「そうなったら、また殺してやるさ」

「どうだろうな。今の私はまだ半分も力を解放しきれていない。どこかの誰かさんが邪龍にならなかったせいでな。だが、次に蘇る時は全力の状態で蘇ろう。少しずつ力を溜めていって、お前らじゃ絶対に勝てない領域にまで行ってやる」

「ーーどうやら、話はできないようだな」

「最初から分かりきっていたことだろ......」

 フェノンはこのような状態になってもネイを睨み続けていた。

「終わりだ。フェノン」

 クロムが剣を高く上げる。

 そうして、振り下ろした剣がフェノンに当たり、フェノンが封印される......そう思っていた。

「ブラックホール......」

 突然、横に立っていたネイがクロムに向け、あの闇魔法を放つ。

「な......にを......する......」

 クロムの体が宙に固定されてしまった。

「すみません。クロムさん。でも、これが私なりのケジメのつけ方なんです」

 ネイがクロムが魔法の衝撃で落とした剣を拾ってフェノンの胸元に当てる。

「何を......するつもりだ......」

「あなたは私。私はあなた。あなたがこの先の遠くない未来で蘇ると言うのなら、私はあなたと共にこの命を捨てる」

「何言ってんだネイ!」

 ヴァルがネイのところに向かおうとする。

 それを、ネイは腰に巻きつけてある剣を鞘ごとヴァルに当てて来ないように阻止する。

「その剣......預かっててください」

「バカ!預かれるわけねえだろ!自分で持ってろ!それに、みんなのために死ぬなんて許さねえぞ」

「......ヴァルはそう言うって分かってました。それに、セリカも私に生きててほしいって......」

「......そうだよ......。この間、言ってたじゃん......。まだ、死にたくないって......」

「あれ、嘘だったんです。全部、私の本心のようで本心じゃない言葉。このまま生き続けてたら、私が邪龍として蘇ってしまう」

「そうなったら俺達が止めてやるよ!だからーー」

「止められますか?こんなになってしまった未来の私を止めるのに精一杯だったのに......」

「ッ......」

 何も、言い返せない。邪龍を倒すだけでかなりの苦戦を強いられた。とてもではないが、復活した邪龍を再び止めるなど......

「......いいんですよ。邪龍は止められない。一度復活してしまった以上、この先も復活し続ける。もしかしたら、次に復活するのは明日、なんてこともあるんですよ」

「だから自分の命を犠牲に平和な世にしようと言うのか。ふざけるな。そんなので許されると思っているのか!」

「お前、そうやって逃げ出すってのか......死んだって何も変わらねえ。残された奴らの気持ちを考えてみろ。罪悪感を残していくだけなんだぞ!」

「ネイ様。私はあまり貴方様と関わりはない。ですが、ここで死を選ぶということは、世界を邪龍の驚異から救っても、皆様の心に大きな傷を残していくことになります」

 フウロ、ヴェルド、アランがそれぞれネイを説得しようと試みる。

「うん。分かっています。私が死ぬことで、私をよく思っていない人だとしても心に罪悪感を刻んでしまうことは分かっています。でも、これが私にできる、最後の戦いなんです。それに、私が死んだら少しくらい改心してくれるでしょう?」

「だからって、死ぬことは許さん......その剣を返せ!」

 クロムが必死にブラックホールから解放されようと、もがいている。

「ごめんなさい。みなさん。でも、私はこれでいいんです。やっと見つけた私の命の使い方だから......もう、後戻りはできないんです」

 そう言うと同時に、ネイが後ろを振り向いて、フェノンの胸をクロムの剣で刺す。

「おぉのれぇぇぇぇぇぇ!」

 フェノンの断末魔が聞こえると同時に、ネイの体にフェノンの体から闇のオーラがまとわりつく。

「これで、私も邪龍ですね......」

 そう言うネイの顔は、酷く、悲しそうな顔をしていた。

「ネイ......」

「ごめんなさい。あの日、私を助けに来てくれたのに......私は、あなたに何も答えてあげることができなかった」

「答えなんて、いらねえよ。別に、告白したわけじゃねえんだし......」

「分かっています。でも、あなただけは、私のことを好意的に見てくれてた。それだけは嬉しかった。何度も言いますが、ごめんなさい」

「謝るな!謝ったって、俺は満足しねえよ!生きて、俺達と一緒に未来を描くんじゃなかったのか!」

「......最初に、あなた達に出会った時から分かりきっていたんです。記憶を取り戻したらどうなるのか。あの時は漠然とした感覚でしたけど、私が記憶を取り戻すことによって、みなさんが不幸になってしまうのではないか。だから、アマツとの契約の時に言ってたんです。『私がいなくなっても、みなさんが幸せな道を歩めるよう、導いてほしい』って」

 そんなことを契約していたのか......。出会って日も経っていない時に、そんなことを......

「短い間でしたけど、あなた達といて、楽しい日々を送れた。ありがとうございました」

「やめろ、ネイ!」

 ネイが淡い光を私達に浴びせる。

 咄嗟のことに目を瞑ってしまい、次に目を開けた時には......

「セリカさん!?」

 地上で、エフィ達が戦っている場所に全員いた。

「どうしたんだ?お前ら。邪龍の討伐は終わったのか?」

 グリードが近づいてきてそう言う。

「ネイ......りん......」

 日が昇りきった空には、邪龍・フェノンの巨体が見える。その頭の部分にネイがいることも。

「おいおいおいおい、あの飛龍の小娘はどうしちまったってんだ」

 グリードが必死に説明を求めてくる。

「ネイが......あの邪龍の上に......」

 ヴァルがネイの立っている方向を指さしてそう言う。

「なんで、ネイさんがあそこにいるままなんですか......。邪龍の討伐は終わったんじゃないんですか!」

 エフィがそう叫ぶ。

 邪龍の討伐なら終わった。でも、ネイを助けることに成功していない......

「あ......」

 邪龍の巨体が輝きだし、徐々にその姿を消していく。

 完全に体が消えてしまった後、空から1本の剣が落ちてくる。

「ネイーーーーー!」

 終わってしまった。あれだけ一緒にいてあげると言ってあげたネイが、その命を自分で消して......

「なんでだ。一緒にいてやるって約束したのに......なんでだ!」

 ヴァルが地面を殴りつけている。

 そうやっても、自分の無力はどうにもならないし、過ぎ去った過去は戻って来ない。そう分かっていても、ヴァルの悔しさが痛いほどにに感じられた。

「また、同じことを繰り返した......」

 ヴァルがそう呟いてた......
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