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外伝 【白と黒の英雄】
外伝3 【世界の裏側】
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「どこまで行っても、真っ白な視界しか広がりませんね......」
「仕方ないわ。今日は多分、白夜の日だから」
「白夜の日?お日様はどこにも見えませんよ?」
「この霧を晴らすことができれば、1日中見ることができるはずよ。ただ、白夜の日はこうして霧が1日中かかっているから」
そうなのか......。
それはそうとして、視界が不安定なことに変わりはない。イグシロナが先を行きながら、地面があるかどうかを確認する。サクサク進めれないことが少しだけもどかしい。
「本当なら、どこか洞窟でも見つけて白夜が終わるのを待ちたいのだけれど......」
「洞窟なら、ここにありますよ」
「そう、そんな都合のいい......。今なんて言った?」
先を行っていたイグシロナが、ある一点を指さして立ち止まる。
霧のせいでよく見えないが、確かにそれっぽい穴はある。
「一応、中を確認してみますか?それで休めれそうならそこで暖を取りましょう」
「そうね。お願い」
再び、イグシロナが先を行く形で進んだ。
洞窟の前は道がでこぼこしていて歩きづらい。あちらこちらでつまづきそうになる。
が、しかし、ミューエ達はつまづくどころか、歩きづらいはずの道を平気な顔して進んで行く。
「デルシア、こんなところで足止めくらってるようでは何もできないわよ。外に出た経験が少ないからそうなのかもしれないけれど、これから戦場を回ることになるのよ。しっかり鍛えておきなさい」
突然、ミューエが振り向いたかと思うと、そんなことを言ってきた。
「分かっていまーす」
口でならそう言えるが、正直こんな足場を歩きたくはない。足の裏がすごく痛いからだ。
「イグシロナ、分かっていてほしいのだけれど......」
「デルシア様を甘やかすな、でしょう?分かっておりますよ。それに、こんな先の見えないところでおんぶだなんて危険すぎてできませんよ」
先に奥の手が潰されてしまった......
やはり、ミューエの勘は鋭すぎる。私がやろうとしていることを全て先読みしてくる。
まあ、その割には私の決断だけは読めなかったらしいが......
「そんなに辛いのなら、その羽で飛べばいいじゃない」
「この羽は飛ぶようではありませんし、そもそもおじいちゃんは永龍族です!」
「そうだったわね」
いつもそうなのだが、ミューエは小馬鹿にするような感じで話してくる。そんなに私の反応が面白いのか。
イグシロナもイグシロナで、私に対してちょっと厳しいように見える。まあ、あれはベルディア姉さんのせいだったのではないかと思っているが......
そんなこんなで、やっと2人の背中に追いついた。
「遅いわよデルシア。欠伸が出ちゃったわ」
「す、みません......」
何か言い返したいぐらいだったが、足裏の痛さで何も言う気になれなかった。
「イグシロナ、中は大丈夫そう?」
「結構広そうですね。ここなら、3人入っても窮屈なんてことはないでしょう」
そう言って、イグシロナが手探りで洞窟の奥に進む。
外に比べると霧がない分視界が良好だが、洞窟ということもあって、暗く視界が悪いことに変わりはない。
「大丈夫そうですね。ここで一晩過ごしましょう」
引き返してきたイグシロナがそう言った。
「そう。じゃあ決定ね」
「ええ。ですが......」
そこでイグシロナが口を閉じる。
「?どうしました?」
「大丈夫だとは思うのですが......」
やはり、そこで口を閉じてしまう。
「何かあるならハッキリ言いなさい。黙っていられる方が迷惑だから」
「......この洞窟の奥から、生き物の声らしきものがするのですよ」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「生き物......ですか」
「はい。と言っても、声というよりは息遣いの方が正しいでしょうな」
「この洞窟だけじゃなく、この世界自体に生き物はいないはずなのだけれど......」
3人で恐る恐る洞窟内を覗いてみる。
微かに何かの息遣いが聞こえてくる。でも、ただの隙間風なのではないか?とも思う。
とにかく、用心することに変わりはない。
「デルシア......様?」
意を決して、洞窟内に踏み込もうとした時、洞窟内から人影が現れた。
「その声、もしかしてガンマさん?」
視界が悪くてよく見えないが、声は昔私の傍で世話をしていたガンマのものだった。
「やはり、デルシア様なのですね」
「はい。そう言うあなたも、ガンマさんですよね?」
「ええ。......まさか、こんなところであなた様に会えるとは......。天も粋な客を寄越したものです」
ガンマがその場に座り込んだ。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫です。しばらくの間、ずっとここから脱出する方法を探して歩き回っていたものですから」
安心したのか感激したのか、ガンマが涙を流し出す。
「デルシア、この人は誰なの?あなたの知り合いなのでしょう?」
「彼はガンマ。イグシロナと同じく、私の世話係としてついていた人です。ですが、8年前に死んだはずなのですが......」
「見たところ、彼は8年前のその時のままね。多分、ここの時間の流れが原因ね」
「そうですか......」
「とりあえず、生き物の声っていうのはこの人のことだったようね」
「そうですね......。一安心です」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「私は、10日程前、あなた達にとっては8年前の日、エルドラによって渓谷下に突き落とされてしまいました。デルシア様の教育方針を巡っての対立でした。話し合いの場を、あの渓谷付近にしようと言われた時は罠だと思いましたが、頭にきていた私はその挑発に乗ってしまいました......」
ガンマが一括りに言い切った。
渓谷は私達が飛び降りたあの場所で間違いないだろう。
そして、8年前となると、私が12歳の時だ。確か、その時に白陽に返されたような気がする。
「万が一のことを考えて、デルシア様をこっそりと白陽に引き渡す手筈を整えておりました。本来ならデルシア様はずっと、その生涯を黒月で過ごす予定でした。ですが、エルドラを危険だと考えた私は、憎き相手ですが白陽ならばと思い、考えた時には実行に移しておりました。カイリ殿が、私の協力者でございます」
そうだったのか......。通りで、挨拶もなしに黒月を出ていってしまったわけだ。
「デルシア様をカイリ殿に引き渡した後、私はその足でエルドラの元へ向かい、案の定渓谷下に突き落とされてしまいました」
「なるほどね。大体のことは分かったわ」
ガンマの話を聞き終えて、真っ先にミューエがそう言う。
「10日程度なら、食糧と水を少しでも携えておけば生きれるわ。もしくは、この世界のどこかに湧き水でも出ていたのかもしれないわね。それで、ガンマを突き落としたエルドラって人は......」
「恐らく、彼女は黒月に残っていることでしょう。彼女ほど頭の効く女ならばアルフレア殿を誤魔化すのは容易いことです。適当に、私に責任を擦り付けているでしょうな」
エルドラさんか......。
あの人も優しい人だったな。でも、まさかガンマさんを殺そうとする人だとは思いもしなかった。
「......ところで、デルシア様達は、なぜこんなところへ?」
一息ついたガンマがそう問いかけてきた。
「実は、さっきも話したように外では8年も経っています。それで、白陽と黒月が戦争を始めてしまいました」
「いつもの小競り合いではなく、戦争という形でですか......」
「はい。それで、私はその戦争を止めようと、両陣営の小隊を1つずつ壊滅させることに成功したのですが......」
「それで話を聞いてもらえると思ったが、かえって火に油を注ぐ結果になってしまったと......。中々に無茶なことをしますな」
「......すみません」
「デルシア様が謝ることではございません。戦争を止めたいと思うのは立派なことです。ただ、あの2つの国が本気で戦い始めて、果たして止めることなど可能なのでしょうか?」
「分かりません。でも、やるしかないんです」
「......立派な志ですな。私も、お供いたしましょう」
「お供するのは勝手なのだけれど、ガンマはここに来るまでに、何か、大きな谷とか渓谷らしきものは見なかった?」
頭を下げるガンマに対して、ミューエがそう言う。
「渓谷......ですか。確か、付近でそれらしきものは見ました」
「それ本当!?」
「ええ、ですが......」
何か、危ないことでもあったのだろうか。本当に、イグシロナもガンマも、大事なことは話したがらない。
「......あの付近には、魔物がいます。視界が悪いだけかもしれませんが、姿が見えないもの達です」
薄々勘づいていたが、やはり妨害するものはいるらしい。
それに、外に出たとして、行く宛ても決まっていない。
「今後の計画ですが、まずはこの世界から脱出することを優先しましょう。魔物が来るという話ですが、正面は私が、横と後ろはデルシア様達に任せます。倒す必要はない。渓谷に飛び降りることができればそれでいいはずです」
「待って、それが本当に外の世界と繋がっているものとは限らないのよ。もうちょっと慎重に進めるべきだわ」
「ですが、ここは鏡の世界。位置的にはこの付近にあるものこそ我々が飛び込んできたものとリンクしているはずです。渓谷なんて、そうそう2つも近くにできることなんてありませんよ。表の世界でも、あの渓谷の近くに別の渓谷はない。迷う必要はないでしょう」
「......確かにそうね。あなたの言う通りだったわ」
ミューエがちょっと悔しそうにそう言った。
「それで、外に出たあとなのですが......」
「一応聞いておくんだけど、行く宛てはあるの?デルシア」
行く宛ては決まっていない。そもそも、あの戦争が起きること自体一昨日まで知らなかったのだから。
戦争を止めるだなんて言ってしまったけれど、兵力が足りない。私達4人で説得に行ったとしても、力でねじ伏せられてしまうだけだ。最低限の兵力は確保しておきたいのだが、やはり、そんな宛はどこにもない。
「......獣人の里を訪れてみるのは如何でしょうか?」
黙って聞いていたガンマがそう言った。
「あそこは、位置的には白陽と黒月の間にあり、両国どちらからも干渉は受けていない場所です。恐らく、戦争が始まれば両国から力を貸すように、と連絡が来るでしょう。しかし、どちらかを選べば選ばなかった方がすぐさま攻撃に来る。ならば、我々が第三の道として手を差し伸べるのはどうでしょうか?彼らは戦争を好まない人種だ。戦争を止めようとする我らに協力してくださることでしょう」
なるほど。それはいい案だ。
「では、この世界から脱出後は、獣人の里に向かうという方針でよろしいですか?」
イグシロナの問いかけに、全員が首を縦に振った。
「獣人の里までの道のりは私が案内します。それに、あの里の者には私の顔が知れ渡っている。苦労することはないでしょう」
そうか。ならば、そうしよう。
方針は決まった。後は、渓谷周りにいる魔物がどうにかなればいいのだが......
「仕方ないわ。今日は多分、白夜の日だから」
「白夜の日?お日様はどこにも見えませんよ?」
「この霧を晴らすことができれば、1日中見ることができるはずよ。ただ、白夜の日はこうして霧が1日中かかっているから」
そうなのか......。
それはそうとして、視界が不安定なことに変わりはない。イグシロナが先を行きながら、地面があるかどうかを確認する。サクサク進めれないことが少しだけもどかしい。
「本当なら、どこか洞窟でも見つけて白夜が終わるのを待ちたいのだけれど......」
「洞窟なら、ここにありますよ」
「そう、そんな都合のいい......。今なんて言った?」
先を行っていたイグシロナが、ある一点を指さして立ち止まる。
霧のせいでよく見えないが、確かにそれっぽい穴はある。
「一応、中を確認してみますか?それで休めれそうならそこで暖を取りましょう」
「そうね。お願い」
再び、イグシロナが先を行く形で進んだ。
洞窟の前は道がでこぼこしていて歩きづらい。あちらこちらでつまづきそうになる。
が、しかし、ミューエ達はつまづくどころか、歩きづらいはずの道を平気な顔して進んで行く。
「デルシア、こんなところで足止めくらってるようでは何もできないわよ。外に出た経験が少ないからそうなのかもしれないけれど、これから戦場を回ることになるのよ。しっかり鍛えておきなさい」
突然、ミューエが振り向いたかと思うと、そんなことを言ってきた。
「分かっていまーす」
口でならそう言えるが、正直こんな足場を歩きたくはない。足の裏がすごく痛いからだ。
「イグシロナ、分かっていてほしいのだけれど......」
「デルシア様を甘やかすな、でしょう?分かっておりますよ。それに、こんな先の見えないところでおんぶだなんて危険すぎてできませんよ」
先に奥の手が潰されてしまった......
やはり、ミューエの勘は鋭すぎる。私がやろうとしていることを全て先読みしてくる。
まあ、その割には私の決断だけは読めなかったらしいが......
「そんなに辛いのなら、その羽で飛べばいいじゃない」
「この羽は飛ぶようではありませんし、そもそもおじいちゃんは永龍族です!」
「そうだったわね」
いつもそうなのだが、ミューエは小馬鹿にするような感じで話してくる。そんなに私の反応が面白いのか。
イグシロナもイグシロナで、私に対してちょっと厳しいように見える。まあ、あれはベルディア姉さんのせいだったのではないかと思っているが......
そんなこんなで、やっと2人の背中に追いついた。
「遅いわよデルシア。欠伸が出ちゃったわ」
「す、みません......」
何か言い返したいぐらいだったが、足裏の痛さで何も言う気になれなかった。
「イグシロナ、中は大丈夫そう?」
「結構広そうですね。ここなら、3人入っても窮屈なんてことはないでしょう」
そう言って、イグシロナが手探りで洞窟の奥に進む。
外に比べると霧がない分視界が良好だが、洞窟ということもあって、暗く視界が悪いことに変わりはない。
「大丈夫そうですね。ここで一晩過ごしましょう」
引き返してきたイグシロナがそう言った。
「そう。じゃあ決定ね」
「ええ。ですが......」
そこでイグシロナが口を閉じる。
「?どうしました?」
「大丈夫だとは思うのですが......」
やはり、そこで口を閉じてしまう。
「何かあるならハッキリ言いなさい。黙っていられる方が迷惑だから」
「......この洞窟の奥から、生き物の声らしきものがするのですよ」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「生き物......ですか」
「はい。と言っても、声というよりは息遣いの方が正しいでしょうな」
「この洞窟だけじゃなく、この世界自体に生き物はいないはずなのだけれど......」
3人で恐る恐る洞窟内を覗いてみる。
微かに何かの息遣いが聞こえてくる。でも、ただの隙間風なのではないか?とも思う。
とにかく、用心することに変わりはない。
「デルシア......様?」
意を決して、洞窟内に踏み込もうとした時、洞窟内から人影が現れた。
「その声、もしかしてガンマさん?」
視界が悪くてよく見えないが、声は昔私の傍で世話をしていたガンマのものだった。
「やはり、デルシア様なのですね」
「はい。そう言うあなたも、ガンマさんですよね?」
「ええ。......まさか、こんなところであなた様に会えるとは......。天も粋な客を寄越したものです」
ガンマがその場に座り込んだ。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫です。しばらくの間、ずっとここから脱出する方法を探して歩き回っていたものですから」
安心したのか感激したのか、ガンマが涙を流し出す。
「デルシア、この人は誰なの?あなたの知り合いなのでしょう?」
「彼はガンマ。イグシロナと同じく、私の世話係としてついていた人です。ですが、8年前に死んだはずなのですが......」
「見たところ、彼は8年前のその時のままね。多分、ここの時間の流れが原因ね」
「そうですか......」
「とりあえず、生き物の声っていうのはこの人のことだったようね」
「そうですね......。一安心です」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「私は、10日程前、あなた達にとっては8年前の日、エルドラによって渓谷下に突き落とされてしまいました。デルシア様の教育方針を巡っての対立でした。話し合いの場を、あの渓谷付近にしようと言われた時は罠だと思いましたが、頭にきていた私はその挑発に乗ってしまいました......」
ガンマが一括りに言い切った。
渓谷は私達が飛び降りたあの場所で間違いないだろう。
そして、8年前となると、私が12歳の時だ。確か、その時に白陽に返されたような気がする。
「万が一のことを考えて、デルシア様をこっそりと白陽に引き渡す手筈を整えておりました。本来ならデルシア様はずっと、その生涯を黒月で過ごす予定でした。ですが、エルドラを危険だと考えた私は、憎き相手ですが白陽ならばと思い、考えた時には実行に移しておりました。カイリ殿が、私の協力者でございます」
そうだったのか......。通りで、挨拶もなしに黒月を出ていってしまったわけだ。
「デルシア様をカイリ殿に引き渡した後、私はその足でエルドラの元へ向かい、案の定渓谷下に突き落とされてしまいました」
「なるほどね。大体のことは分かったわ」
ガンマの話を聞き終えて、真っ先にミューエがそう言う。
「10日程度なら、食糧と水を少しでも携えておけば生きれるわ。もしくは、この世界のどこかに湧き水でも出ていたのかもしれないわね。それで、ガンマを突き落としたエルドラって人は......」
「恐らく、彼女は黒月に残っていることでしょう。彼女ほど頭の効く女ならばアルフレア殿を誤魔化すのは容易いことです。適当に、私に責任を擦り付けているでしょうな」
エルドラさんか......。
あの人も優しい人だったな。でも、まさかガンマさんを殺そうとする人だとは思いもしなかった。
「......ところで、デルシア様達は、なぜこんなところへ?」
一息ついたガンマがそう問いかけてきた。
「実は、さっきも話したように外では8年も経っています。それで、白陽と黒月が戦争を始めてしまいました」
「いつもの小競り合いではなく、戦争という形でですか......」
「はい。それで、私はその戦争を止めようと、両陣営の小隊を1つずつ壊滅させることに成功したのですが......」
「それで話を聞いてもらえると思ったが、かえって火に油を注ぐ結果になってしまったと......。中々に無茶なことをしますな」
「......すみません」
「デルシア様が謝ることではございません。戦争を止めたいと思うのは立派なことです。ただ、あの2つの国が本気で戦い始めて、果たして止めることなど可能なのでしょうか?」
「分かりません。でも、やるしかないんです」
「......立派な志ですな。私も、お供いたしましょう」
「お供するのは勝手なのだけれど、ガンマはここに来るまでに、何か、大きな谷とか渓谷らしきものは見なかった?」
頭を下げるガンマに対して、ミューエがそう言う。
「渓谷......ですか。確か、付近でそれらしきものは見ました」
「それ本当!?」
「ええ、ですが......」
何か、危ないことでもあったのだろうか。本当に、イグシロナもガンマも、大事なことは話したがらない。
「......あの付近には、魔物がいます。視界が悪いだけかもしれませんが、姿が見えないもの達です」
薄々勘づいていたが、やはり妨害するものはいるらしい。
それに、外に出たとして、行く宛ても決まっていない。
「今後の計画ですが、まずはこの世界から脱出することを優先しましょう。魔物が来るという話ですが、正面は私が、横と後ろはデルシア様達に任せます。倒す必要はない。渓谷に飛び降りることができればそれでいいはずです」
「待って、それが本当に外の世界と繋がっているものとは限らないのよ。もうちょっと慎重に進めるべきだわ」
「ですが、ここは鏡の世界。位置的にはこの付近にあるものこそ我々が飛び込んできたものとリンクしているはずです。渓谷なんて、そうそう2つも近くにできることなんてありませんよ。表の世界でも、あの渓谷の近くに別の渓谷はない。迷う必要はないでしょう」
「......確かにそうね。あなたの言う通りだったわ」
ミューエがちょっと悔しそうにそう言った。
「それで、外に出たあとなのですが......」
「一応聞いておくんだけど、行く宛てはあるの?デルシア」
行く宛ては決まっていない。そもそも、あの戦争が起きること自体一昨日まで知らなかったのだから。
戦争を止めるだなんて言ってしまったけれど、兵力が足りない。私達4人で説得に行ったとしても、力でねじ伏せられてしまうだけだ。最低限の兵力は確保しておきたいのだが、やはり、そんな宛はどこにもない。
「......獣人の里を訪れてみるのは如何でしょうか?」
黙って聞いていたガンマがそう言った。
「あそこは、位置的には白陽と黒月の間にあり、両国どちらからも干渉は受けていない場所です。恐らく、戦争が始まれば両国から力を貸すように、と連絡が来るでしょう。しかし、どちらかを選べば選ばなかった方がすぐさま攻撃に来る。ならば、我々が第三の道として手を差し伸べるのはどうでしょうか?彼らは戦争を好まない人種だ。戦争を止めようとする我らに協力してくださることでしょう」
なるほど。それはいい案だ。
「では、この世界から脱出後は、獣人の里に向かうという方針でよろしいですか?」
イグシロナの問いかけに、全員が首を縦に振った。
「獣人の里までの道のりは私が案内します。それに、あの里の者には私の顔が知れ渡っている。苦労することはないでしょう」
そうか。ならば、そうしよう。
方針は決まった。後は、渓谷周りにいる魔物がどうにかなればいいのだが......
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