グランストリアMaledictio

ミナセ ヒカリ

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外伝 【白と黒の英雄】

外伝6 【黒月王国の王女】

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 獣人の里と呼ばれる場所を目指して数時間。
 アルフレア兄様経由でお父様から伝えられたことだが、正直な話、私はデルシアの捜索を行いたかった。

 9ヶ月間、ずっと音沙汰なしでいるデルシア陣営。
 あれほどの啖呵を切っておいて、未だに何も活動が見られない。それどころか、どこにいるのかすらも分からない。

 もしや、あの戦いのあと、そのまま死んだのではないか。そう思ったこともある。

 分からない。黒月の国内は探し尽くした。白陽も、探せれるところまでは探した。
 グランアークも、イーリアスも、難しくはあったがラグナロクも探した。

 だけど見つからない。9ヶ月もの間、これほどまでに探して見つからないはずがない。軍隊を持っていないが、戦争を止めると言ったんだ。少しくらいは活躍があってもいいくらいだ。

「今は、そんなこと考えてる場合じゃないわね......」

 デルシアのことも気になるが、今は里の制圧。獣人の里さえ押さえてしまえば進軍が圧倒的に楽になる。そうなれば、白陽の国内も隅々まで探せれるようになるかもしれない......。
 いけない、またデルシアのことを考えてしまっている。

「ベルディア様、間もなく到着致します。戦支度を」

 ゼータが振り向き様にそう言ってきた。

「......おかしいわね。向こうに軍旗が上がってるわ」

「はい。しかし、彼らにそこまでの力はないはず。見せかけだけでしょうな」

 本当にそうだろうか。
 争いを好まない種族である獣人が、見せかけだけでも軍旗を上げるだろうか?いや、その前に、獣人族に掲げるような紋章はあっただろうか?

 嫌な予感がする。白陽が制圧したあとかもしれない。

「ゼータ、暗殺隊からの報告は?」

「今のところ何もございません。ただ......」

「......」

「......」

「どうしたの?早く言いなさいよ」

「......潜り込んだはずの暗殺隊が、1部隊だけ帰って来れていないとのことです」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「......全くもって厄介なことになりおったな......。9ヶ月もの間、攻めてこられんかったのは、ただの奇跡じゃったのかのぅ......」

「何をどう考えようと、黒月が攻めてきたことに変わりはありません。......今、この村にある戦力はどれ程でしょうか?」

「パッと見じゃが、あれの4ぶ、いや、5分の1にも満たんな。それに、向こうは戦闘用に鍛えられているのに対し、儂らはまともな戦をしたことが1度もない。戦力差は絶望的じゃな」

 厳しい......か。
 せめて、もう少し行動を起こすまでに時間をかけてほしかったものだが。そんなこと願ったところで、向こうには何も届かないのだが。

「作戦は、私達が敵将のところまで一気に攻めあがります。そこで、敵将を務めていると思われるゼータ、もしくは、シータ。彼らを説得するか、無理なら殺す。これでどうにかしてみせます」

「どうにかするってなぁ......」

「急ぎですから細部までは詰め込めれません。臨機応変に対応しましょう」

「そうじゃな。それはそうと、敵将を殺すかもしれないことはデルシア様に話したのじゃろうか?」

「いえ、私の独断で行います。デルシア様に責任は負わせません」

「......話し合いで決着がつくとええな」

「はい。では、私は戦場に足を運んできます」

「死ぬなよ。儂は、ちと悪知恵を働かせるとするからのう」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「暗殺隊が1つ帰ってきていない、ねぇ......」

「はい。他の部隊からは、襲撃されたなどの目撃情報はないのですが」

「不思議な話ね......」

 向こうに、バレずに小隊一個分を潰せれるほどの戦力はないはず。もし、万が一デルシア達がいたとしても、やはり、そこまでの力はないはずだ。

「死体は見つかってるの?」

「今のところ、見つかっておりません」

 死体もない。

 神隠しにでもあったのだろうか。もしくは、異次元への入り口でも見つけたか。

「仕方ないわ。彼らのことも気になるけれど、今は里の制圧よ」

 いくら考えても答えが出そうにないので、出撃準備に取り掛かる。

「待っててね、デルシア。お姉ちゃんが必ず見つけてみせるから」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「こんなところに隠し通路があるとは、驚きです」

「ホッホッホ。そうじゃろ。なんせ、なにかあった時用に何年もかけて掘り進めておいたからのう」

「そんな無駄なことに何年費やしたのよ......」

「......30年くらいかのう」

「爺ちゃん穴掘りを30年もしてたの!?」

 隠し通路があることにも驚きだが、これを作るのに30年もかけたことの衝撃はすごい。30年もあったら、30年もあったら、何ができるだろう。

「出口は、恐らく奴らの拠点近くに繋がっておるはずじゃ。それに、奴らは何を企んでおるのかは知らんが進軍を止めておる。今が好機じゃ」

 通路に入ってからそこそこに時間が経ってるから、さすがに、もう攻め始めているとは思うのだが......

 それはそうと、本当に、この龍人の子を連れて来て良かったのだろうか。本人は、第二人格が戦う気満々で剣を振り回してはいたが、もう1つの人格がそれを止めようとする。
 戦いの最中にそれが起きると困るのだが。念の為臆病な方の人格(多分、本体の方)には気絶してもらったが。

「お宅らもなかなかにひでぇことするなァ。まだ頭と腰と、あと首が痛いぜ」

「......本当に不思議な体、というよりかは人格を持っているわね」

「つっても、付き合いはまだ2ヶ月くらいしか経ってねえんだけどな」

「2ヶ月もあなたみたいな変人がまとわりついていたら、さぞその子は辛かったでしょうね。私なら自殺してるわ」

「安心しろ。こう見えてなんやかんやで上手くやってるからよ」

「本当ですか?私には、とてもそんな風には見えませんでしたけど」

「デルシア、騙されちゃダメよ。こいつは得体の知れない疫病神。これが終わったら取り除いてあげましょう」

「お前ら全員俺のことをどう思ってんだ!」

「「「 中の子が可哀想だなって 」」」

 全員が同じことを同時に言った。

「そんなにわけわからねえやつか?俺は」

「そうね。加えて言うと、そんな立派な体して俺俺口調は似合わないわ」

「うるせぇ!俺だって好きでこんなやつの体に取り憑いてんじゃねえよ!」

 そうは言われても......
 不思議な人。ただの多重人格なら、そういう人もいるもんだと思えたが、契約龍なるものがもう1つの人格として住んでいるというのは、どうにも理解し難い。

 そういうことも理解していかなければならないのだろうけど......

「......そう言えば、ネイさんは記憶が無いと言ってましたけど、第2人格さんはネイさんのことをどのくらい知ってるんですか?」

「ジークフリードだ。ジークって呼んでろ」

「分かりました。ジークさん」

「さん付けってなぁ......。まあいいや。そんで、お嬢のことだったな」

「はい。ネイさんのことを教えてほしいなって」

「悪ぃ。俺はお嬢のことは何も知らねえ。気づいたら勝手に契約結ばれてて、それ以前のことは何も知らねえ。つか、お嬢が記憶喪失だからお嬢からも話すことが出来ねえし、この世界はやたら龍人を嫌う人種が多いし、族共はなぜか襲ってくるし、苦労しかねえ生活だぜ」

 龍人が住みにくい世の中というのは、よくイグシロナから聞かされていたが、まさか、現実としてここまでの人がいるとは思っていなかった。
 
 きっと、彼女の臆病な性格はそこから来ているのだろう。

 戦争を終わらせることが出来ても、まだまだ問題は山積みになっている。やるべきこと、やりたいことがたくさんある。そのためにも、

「まずは、この戦いから止めてみせます」

「......なかなかいい覚悟してんじゃねえか」

 大丈夫。私ならやれる。ここには、少数ながらも、私の『仲間』がいるのだから。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「......お呼びでしょうか。父上」

 俺は、玉座の間に佇む我が父に正面から向き合っている。

「......デルシア。あの小娘の消息は掴めたのか」

「いえ。ベルディアが奮起になって探しておりますが、未だ何も得られず」

「そうか。まあよい。では、獣どもの里の制圧はどうなった?」

「今、ベルディアが向かっております。あいつなら、きっと上手くやれるでしょう」

「......そうだな。では、お前は何をやっている」

「白陽との決戦に向け、軍の再編、及び各地の制圧を行っております」

「......そうか。分かった。もう帰ってよいぞ」

「......は」

 あの人と話をする時は、いつも冷や汗が流れる。
 黒月の王子として、次の王位を継ぐ者として、父には厳しく育てられてきた。

 そう思うと、ベルディアとデルシアが羨ましく思える。でも、彼女達にこの負担を肩代わりさせるつもりは無い。全て、俺が引き受けてこそ、俺の存在意義がある。

 ベルディアが里に向かってから小一時間。報告が来るまでには、あと3時間ほどはかかる。

「デルシア......」

 9ヶ月もの間、行方不明となっている我が義妹。

 ベルディアがシスコンで良かったと思う。俺が何も命令せずともデルシアを探してくれる。
 ただでさえ負担が多い俺にとって、デルシアの捜索もかなり骨の折れる作業だったと思う。それを全てベルディアが肩代わりしてくれた。いや、正しくはそのような形になってしまったと言った方が正しいだろう。

「あいつは、今どこにいるのだろうな」

 あれほどの啖呵を切っておいて、未だになんの活躍も見られない。それどころか、従者諸共行方不明になる始末である。

「アルフレア様、ただいま戻って参りました」

「ご苦労。早速で悪いが、鬼族はどうなった?」

「今回もダメです。やはり、助力を得るには大軍で押し寄せる他ないようです」

「......しかし、それをやるとなると」

「里は壊滅。協力云々の話ではなくなります......」

 やはり、鬼族はもう放置しておくべきか......。協力を得られたからと言って格段に進行が楽になるわけではない。むしろ、そっちに使う労力が無駄だ。

「鬼族は諦めるか......」

「それが1番でしょう......」

 開戦から9ヶ月。
 一向に戦いが進む気配がない。お互いに小競り合いを続けて、これでは今までやってきたことと何ら変わらない。

 せめて、精鋭揃いの鬼族さえ味方につけれればと、思ったのだが、そちらも失敗。

 唯一の打開策が、ベルディアが進行している、獣人の里ただ一つだけになってしまった。

「ーーシータ、ギリエア大橋の制圧にかかる。すぐに兵を集めよ。それと、鬼族の集落にベルディアが連れて行かなかった暗殺隊を送れ。後ろから突かれる前に潰しておく」

「了解致しました」

 里の制圧だけでは不安だ。二手に分かれて進軍できるようにしてもいい。
 それに、今あの橋に白陽の軍隊はいなくなっているはず。

「これも全て、平和な世を作るためだ」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「......雲行きが怪しいですね」

「それは、物理的なもの?それとも精神的なもの?」

「......精神的なものです」

 ゼータがそうなるのも、少し分かる。

 なぜか、先程からずっと敵が迫ってきてるのではないかと思ってしまう。
 どこにも敵の姿は見えない。ただの勘違いだとは思う。

 でも、なぜだろう。すごく、嫌な予感しかしない。

「やはり、暗殺隊の一件のせいでしょうか」

 時は数刻前に遡る。

 消えたと思っていた暗殺隊の小隊が見つかった。
 もちろん、息はしていない。それどころか、無様な惨殺体となってそこら中に転がっていた。

「おかしな死体だったはね」

「ええ......」

「どう見ても、里の者たちがやったにしては無理な話だったわよね」

「もしかしたら、忍者とかを雇っている可能性もありますが、あの死体は暗殺隊の者共が忍者に不意を突かれたにしても、やられすぎです」

「......白陽の可能性も無さそうよね」

「白陽に特別な軍隊はありませんしね......」

 不気味な話だ。
 白陽がやったのでも、忍者がやったわけでもない。ましてや、里の者たちがやったわけでもない。

「オラオラオラオラァ!」

「......!?」

「ベルディア様!」

 横からの突然の物音。

 意識が追いついた時には、ゼータが私の体を突き飛ばした後だった。

「チッ、逃したか」

「我が主に向かって何をする!?」

「ゼータ......!」

 ゼータは間一髪のところで攻撃を逃れ、襲ってきた少女を抑えている。

「下がっててください、ベルディア様」

「邪魔なんだよ!」

「グハッ......」

 少女の蹴りがゼータの腹に直撃する。

「お前がこの軍の大将か。恨みはねえが殺らせてもらうぜ」

 かつてないほどの緊迫感。
 未だに、状況の整理が出来ていない。

 殺される。
 ただそれだけが脳を過った。

「ちょっと、待ちなさい!ジーク!話が違うでしょ!」

「あぁ?」

 金髪の少女が紐のような何かで少女の動きを抑える。

(あの子は確か......)

「ジークさん、話し合いでって言ったじゃないですか!」

「ジーク殿、作戦通りにやってもらわないと困りますよ」

 後ろからゾロゾロと謎の集団が現れる。

「デル......シア......?」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「とりあえず、これで良いでしょう」

 イグシロナが、ミューエの作った縄でネイ(ジーク)を木にぐるぐる巻きにする。

「クソっ......話が違ぇのはこっちもだよ」

 ジークが悪態をつく。

「すみません、ベルディア姉さん!」

 落ち着いたところで改めてベルディア姉さんに謝罪する。

「いや、いいのよ。事実私はここの里を攻めに来たのだから、敵だと思われても当たり前の話なのよ」

 ベルディア姉さんは苦笑いを浮かべてそう言う。

「すみませんすみません!あの子にはあとで火あぶりの刑にしておきますから!」

「おいちょっと待て!それはどういうことだ!」

「あなた、ここで彼女を殺していたらどうなってたと思うの?そう考えたら当然の話でしょ」

「仕方ねえだろ!俺は一応傭兵みたいな立場なんだしよ!」

 騒がしいものだ。折角姉さんと再会できたというのに。

「えーっと、とりあえず何があったのか説明してくれるかしら?」

「あ、はい」

ーー数十分後ーー

「と、いうわけで......」

「うん、よく分からないわ。まだ頭がおかしいままみたい」

 ベルディア姉さんは、謎の笑みを浮かべてそう言った。

「要するに、別世界に逃げたら、9ヶ月後にタイムスリップしてたってことでしょ?よく分からないわ」

 いや、今そのままのことを言ってましたが......

「......まあ、何はともあれ、デルシアが無事で良かったわ」

「......すみません」

「もう、一体私がどれだけ危険なことをしてまで探したと思ってるのよ」

「......すみません」

「国内全域を探して、イーリアスを探して、ラグナロクとグランアークでも探して、白陽も限界まで探して......心配したんだから」

 姉さんが、そっと抱きしめてくる。

「ごめんなさい......」

「いや、いいのよ。こうして、私の前に生きてる状態で現れてくれたのだから。厄介なお供を連れて......」

「す、すみません」

 あとで、ジークには何かしらの罰を与えよう。ネイが可哀想ではあるが。

「......さて、デルシア、あなたはここからどうするつもりなの?」

「......姉さんが里を攻めると言うのなら、私は姉さんを斬ります」

 できることなら、姉さんには諦めてほしい。ここで、姉さんを斬りたくはない。

 姉さんは私の目を見据えて、難しそうな顔をしている。

「......デルシア」

「はい」

「私は、ここを制圧して帰らないと、お父様に怒られちゃうわ」

「......はい」

「でもね、デルシアの言うことはよく分かるの。それで、決めたわ」

「......」

「デルシア、あなたに私はついて行くわ」

「......良いのですか?」

「デルシアの為だもの。それに、お姉ちゃん悪巧みは好きな方だから。お兄様達を騙す方法なんていくらでも思いつくわ」

 またしても、姉さんが謎の笑みを浮かべる。

「あの......何をする気ですか?」

「とりあえず、まずはこの里を制圧した『こと』にしておきましょ。そうすれば、お咎めなしだわ」

「失礼ですが、どうやって伝えるつもりですか」

 イグシロナが問いかける。

「里の人達には、降伏したことにしてもらうわ。そうすれば、しばらくは黒月の軍隊が来るでしょうけど、その軍隊は全部暗殺隊にしておく。暗殺隊の指揮権は私が握っているからね。そうして、しばらくは兄さん達の目は誤魔化せれるでしょう。あとは、その間に兄さんを少しでも説得、同時に白陽の王子様達にも説得しに行くわ」

「......お言葉ですが、ただ説得しただけで彼らが頷くとは思えません」

 ガンマの言う通り、あの兄さん達が簡単に折れてくれるとは思えない。
 できるだけ頑張ってはみるが、今のままでは難しい。

「実はね、暗殺隊のうちの1つが謎の壊滅をしてたの」

「壊滅......ですか?」

「ええ。いろいろと考えてみたけれど、犯人は分かりそうにないわ。それで、あなた達、特にミューエなら知っているかしら?その、裏世界からこちらの世界に敵が来ていないかとか」

「......可能性はあるわ。イグシロナを襲ってきた魔獣。姿が見えなかったわよね?」

「ええ。突然現れましたね......。まさか、そいつらが」

「私達がこっちの世界に戻る時に使った渓谷。あいつらがそれを通ってこちらにやってきている可能性があるわ」

 なるほど。別の敵がいる可能性があるのか。

「......確か、向こうの世界に生物はいなかったはずでは?」

 ガンマの言う通りだ。
 向こうの世界に生物はいない、とミューエは言っていた。

「私も、ずっとそう思っていたわ。ただ、お母さんがこっちの世界にやって来た理由は、向こうの世界に謎の敵が現れたから。もし、彼らが生き残っているというのなら......」

「......なるほどね。少なくとも、兄さんの説得はできそうね」

「いけますか?姉さん」

「昔からよく言うでしょ?敵の敵は味方だって。兄さん達には、その裏世界から来ている敵の存在を知らせればいいのよ。そうして、白陽と黒月が協力すれば、それを機に戦争も終わるんじゃないかしら?」

「上手くいくでしょうか?」

「心配しなくても大丈夫よ。イグシロナ。そこはあなた達の主であるデルシアが上手いことやってくれるから」

「え?私ですか!?」

「当たり前じゃない。私が説得できるのは兄さんだけ。白陽側はデルシアじゃないと説得できないでしょ?」

「うぅ......分かりました。頑張ります」

「それでいいのよ。私の可愛い、い・も・う・と」

 ほっぺたにキスされた。
 何度やられても、これだけは慣れない。

「......なんか、聞こえるぞ」

 ずっと黙っていたジークが、ここぞとばかりにそう言う。

「西の方面......そこそこ多いな。人の気配がする」

「そんなのどこにも見えないわよ」

「違ぇ、お前らが言ってた例の突然姿を現す敵だ!」

「「「 ......!? 」」」
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