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第5章 【黒の心】
第5章15 【雪は心を映す】
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「キーワード。強盗、鬼、あと『ユミ』」
本棚が次々と消えていき、最後に三棚だけ残る。
「まだ何か足りないか......」
鬼族で、強盗なんてそんなに数はないと思っていたのに、意外と多くが残ったな。
「......あー、時間を入れてみるか......」
話では、つい最近だったと聞いている。とりあえず、1年以内で調べてみるか。
「年数指定。過去1年間」
それでも残った本は3冊。3冊程度なら1日で調べ終わる。
「......ふう。とりあえず、それっぽいのだけは見つけてきた」
「お帰り......なのかな?」
「お帰りでいいですよ」
「で、情報は得られたの?」
「3冊分ですね。これだけあれば答えくらいにまで近づけますよ」
「......本当にどうなってんの、その頭」
なんかおかしな奴を見てるような目線で見られる。事実おかしな奴なのかもしれないけど。
それにしたって、その哀れみの目はないだろう。哀れまれるほどの悲しい能力でもないし。
セリカの目線を気にしつつ、持ってきた本をパラパラとめくる。
(量に対して内容が薄い......)
それに、ユミと関係しているのかどうか疑わしい記述ばかりだ。
(ユミなんて珍しい名前じゃないしな......)
過去にも似た事例はある。驚くべき事に、全部鬼族での話だ。鬼族で『ユミ』という名前の人は、代々強盗に襲われる血筋でも持ってるのか?
「ネイりん......これ、なんかおかしくない?」
「......おかしいって何がです?」
「だってこれ、ページをめくってもめくっても、同じ文章の繰り返しなんだもん」
それはどういう事だ?
慌てて自分が読み進めている本を確かめる。
(本当だ。ずっと同じことの繰り返しだ)
妙に感じてた違和感、量に対しての内容の薄さはこれが原因だったのだろう。だとしたら、なぜ私が気づけなくてセリカが気づくことが出来たのか。
「3冊あって、全部が2ページ程度で終わる内容の繰り返し。これじゃあ、一生答えに辿り着けない......」
「ネイりんの書庫も当てにならないね」
「むっ......」
セリカは何も知らないからそんなこと言えるのだ。
こんな状況初めてだ。知りたいことならなんでも調べられる書庫が、なんの意味も示さないなんて。
「おい、本棚の調べはついたか」
「痛てっ」
急に誰かに頭をしばかれた。
「すぐに暴力振るのやめてくれませんか?」
「うるせえな雑魚。俺達は調べを付けてきたぞ」
「そうですか。収穫はありましたか」
「......」
黙るってことは大した情報は得られなかったみたいだな。
「転移術ってすげぇんだな。たった1日で黒月とこっちを行き来できるとは」
今度はヴァルか。
「こっちはこれといって何もなかった。そっちはどうだ?」
「不思議なことが起きてます」
「不思議なこと?」
「本がおかしいんですよ。3冊にまで絞り込んだのに、全部同じ文章の繰り返しなんです」
「へぇー......」
ヴァルが確かめようと本を読み進める。
「確かにこりゃぁ、不思議......なんだよな?何枚めくっても同じ言葉の繰り返しだし......」
「めくってもめくっても同じ言葉の繰り返しなんて、初めてですよ。しかも、3冊同時に」
「よく分かんねえけど、異常ってことで捉えていいんだな?」
「はい。ちょっともう1回書庫に入り直してきます」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「ネイが書庫に入り直したのはいいとして、俺達はどうするかだな」
正直、1番当てにしていたネイの書庫がダメだった時点でもう調べることは出来ない。
となると、後はフウロが調べてる盗賊共の盗品か......。
「おまたせ。調べをつけてきましたよ」
「早かったな」
「情報が何も無かったもんですから、調べも早いですよ」
「へぇー......何も見つからなかったんかい!」
期待外れ第2弾到来。これはもう、本格的に迷宮入りだ!
「ただ、1つだけ情報が得られそうな場所なら見つけましたよ」
「一応聞いておくが、どこだ?」
「白陽王国の南部。朱雀と呼ばれる街にはぐれ鬼族の集まる住宅街があるらしいですよ」
「街かぁ......」
「この国の王都よりかは劣りますけど、かなり発展してるところですよ。温泉街としても有名ですね」
「待て、その口ぶりだと、まるで旅行にでも行こうと言ってるような気がするのだが」
「「 ......ちっ 」」
「なんだその舌打ちは」
勘のいい人は嫌われると言うが、本当に嫌われそうになるんだな。今度から思ったことを素直に言うのやめよ。
「温泉街とかどうでもいいから、そこに行けば何か分かるんだろ?なら、行ってみて損はないだろ」
「俺が言ってるのはそういう事じゃない。白陽つったら、移動は乗り物だろ」
「あ......」
気づかなかったのか......。
「でもさ、それならミイとネイの転移術でどうにかなるんじゃない?」
「あれは、発動できる条件が厳しいんですよ。周りのマナを喰い尽くすし、何より、人が沢山いるような場所に転移したら、それを見ている人達がどう思うことやら」
「周りの目は気にするタイプなんだ」
「私だって周りの目くらいは気にしますよ。ミイじゃありませんし」
「おいそれはどういう意味だ」
マジでこいつら同じ人物なの?暇さえありゃすぐ喧嘩しそうになるし。正反対だからそうなるのも仕方ないのか......。仕方ないのか?
「よう。旅行がうんたらかんたら盛り上がってるな」
「あ、フウロお帰り」
「最初に言っておく。めぼしい情報は何も得られなかった。一応、盗賊の残党に話を聞いてみたが、奴らは亜人の家は襲ったことがないそうだ」
「そうか......。じゃあ、もうネイの言う場所で調べてみるしかないってことか」
「旅行だね......」
「決して旅行ではない。依頼だ。依頼解決のために......」
「まあまあ、ヴァル。たまにはいいではないか、旅行くらい。私も、その温泉街とやらには興味がある」
世の中珍しいこともあるもんだ。フウロが温泉だって。明日は大雪だな。
とかそんなことを口走ってみろ。締め上げられて、最終的に殺される。間違いないな。
「世の中珍しいこともあるもんだな。お前が温泉街とか、明日は大雪だな」
......。
「ほう。それはどういう意味だ?」
「言ったまんまの意味だ。お前が温泉とか言う日が来るんだなって」
こいつは正直すぎる。悪い意味で。
「フウロ、言っておくが、気にしない方がいい。こいつには何を言っても、きっと意味がないんだ」
「......。そうだな。気にしない気にしない」
フウロを呆れさせるやつなんて、金輪際現れることはないだろうな。
「旅行か......。面白そうな話してんなぁ」
「お前は連れていかねえぞグリード」
「なんでぇ。俺もついて行っていいじゃねえかよォ」
「お前がいるとややこしくなる」
「そう言いつつ、お前はハーレムを堪能しようって寸法か」
何をどうしたらそういう考えになるのやら......。
ネイ、ミイ、セリカ、フウロ......見事に俺以外女ばっかだな。そりゃ、こんなラノベなんだし、そういう考えになるな。
あ、今メタ発言って思った人、ちょっと黙ってなさい。
「まあいいか。お前も真面目にやるってんなら連れて行ってやってもいいぜ」
「おう、頑張ってやるわ」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「「 オェーー 」」
「「「 言わせねえよ!? 」」」
これは日常。これは日常。もう見なれた光景。
「お前ら、仲良しなのはいいが、そう毎度毎度吐かれると、こっちの気分も悪くなる」
「しあたねえやろ、ぼう、これはとくへいだ」
特性ってねぇ......。
まあ、体質なんだし、特性なんだろうなぁ......。
「胃袋消したら、こんな思い、しなくて、いいでふかね?」
多分、それは意味ないだろうね。胃袋無くても、気持ち悪いって思いは普通にやってくるし、やるなら平衡感覚から消していかないと。
「情けねえなァおい。折角、俺がついていってやんのに」
あんたの存在は、多分というか絶対関係ない。
「なんだァセリカ。その汚物を見るみたいな目はァ」
事実、汚物を見てるようなもんなんだけど......。とは、口にしてはいけない。
「白陽の、朱雀って街まで、どれくらいだっけ?」
「大体4日半だ。と言っても、ずっと揺られているわけにはいかないからな。所々で宿を借りるが......。でないと、そこの2人がもれなく衰弱死するしな」
となると......、大体移動だけで7日から9日くらいはかかりそうだ。遠いな。イーリアスに行くのとは大違いだ。
「「 オェーー 」」
「「「 だから、吐くな! 」」」
こんな調子で行けるのか?申し訳ない話だけど、ヴァルとネイりんは置いていった方が良かったんじゃないのか?本気でそう思う。
「「 オェーー 」」
「「「 だからお前ら! 」」」
この光景を、あと7日は最低でも見続けることになるのか......。貰い酔いしそう......。
そんなこんなで2日間移動し、これといった問題は発生せずに白陽国内へと入ることが出来た。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「あー、やっと開放されたー......」
「死ぬかと思いました......」
「お前らはもうちょっと鍛えろ!」
「まあまあ、吐かずに済んだんだし、それでいいじゃねぇか」
2日間吐かずに済んだのは本当に奇跡だと思う。あの2人が2日間も耐えた。前までは絶対に出来なかったのに......。
乗り物酔いが無くならないのは仕方ないとして、吐かずに済むだけで相当成長したとは思う。
「それで、俺達が泊まる宿ってのはどこなんだァ?」
「この先にある」
「もしかして、あのオンボロ宿だとでも言うんじゃねえだろうなァ?」
「......その通りだが」
いかにもお化けとか出てきそうなオンボロ具合だな。まあ、人が住めそうではあるけど......。
「座敷童子とか出てきそうだなァ。ここ白陽だし......」
近くに来ると、余計オンボロ具合が際立つ。本当にここに泊まるの?
「文句があるなら、1人外で寝ててもいいんだぞ?」
「こんな寒空で寝たら死ぬァ」
「なら、ここで一夜過ごせ。そして、そこの乗り物酔い2人も体を休めておけ」
「なんか、幽霊とか出てきそうな場所ですね......」
それ、さっきグリードが近い事言った。そんなに、ここお化けが出そうに見えるの?ただのオンボロ宿......というよりもアパートにしか見えないんだけど。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
オンボロ宿だと言った。そのことに関して謝ろう。
オンボロなんて、見た目だけだった。内装は新築そのものだし、温泉まである。この先、温泉街に行くのに、今入っていいものかとも考えたが、体が疲れていたので普通に入った。
「いやぁ......極楽極楽......」
ババくさいことしか言えないが、それだけ快適だった。
ネイ、ミイ、フウロと女子があと3人もいるのに、誰1人として入りに来ないのはなぜだろうか。
ネイは肌を見せたくないからとしてーーじゃあ、なんで胸元開いた服装なんだよとは思うーーミイは単純に恥ずかしがり屋。フウロは、こういう事に興味無さそう。いや、出発前に温泉街に興味があるとか言ってたよね。
「シアラとヴェルドも連れて来た方が良かったかな?」
あとエフィ。
冷静に考えると、今回のメンバーでまともな女子が誰1人としていないのはどういう事なのだろうか。
龍人の体をよく見てみたかったな。特にミイの方。
「はぁ......」
もっと、こう、ワイワイした度になると思ってたのにな。
「セリカさん、ちょっと良いですか?」
誰も来ないと思ってた浴場に、ネイが入ってきた。ちゃっかりバスタオル巻いてるし。あと、体も若干濡れてる。さては、バレないように洗ってたな?
「今入るのは勿体ないと思ったんですけど、やっぱり、入っておきたいなって」
「分かるーその気持ちー」
ただし、バスタオル巻いてても分かる、その体さえなければ仲間だった。完全な。
「......傷だらけ」
「あ、ちょ、見ないでください」
無限の再生力があるとは言え、傷跡は消えないのか。右肩から腰にかけて、斜めに大きな傷跡もあるしーーちなみに、この時もうバスタオルは外してます。こら、そこの変態紳士、変な妄想をするんじゃないーー怠惰怠惰言えど、1番頑張ってるのはネイじゃないのか。
「ふぅ......」
「傷だらけの腕......」
「み、見ないでくださいって言ったじゃないですか!」
だって目に入るんだもん。嫌でも見ちゃう。
「ネイりんって、もしかして、わざと怠惰な性格だと見せようとしてる?」
「い、いきなり何言うんですか!」
「だって、これだけ傷だらけの体で......。めんどくさがりなニートは、こんな傷跡だらけの体にならないよ」
「......別に、頑張ってるっていう訳じゃないんですよ。ただ、みんなに認めてほしくて......その......」
自分が必要な存在って思ってほしかったのか。なんともネイらしい考えだが、みんなはもうとっくに必要な存在だと思ってあげてるのに。
心を読まなくなったというのを、一時期怪しんでいたが、本当に心を読んでないんだな。なんなら、他人の気持ちを計ることも出来なくなってるのか。
「......髪の毛洗ってあげる」
「え、いや、別にいいですよ」
「いいからいいから」
無理矢理ネイを洗い場に立たせる。
「体は洗えてるようだけど、髪の洗い方が雑ね」
「そりゃ、1時間もこんな所で洗うわけにはいきませんし......」
1時間!?
心の中でそう叫んでしまった。
冷静に考えろ。確かにネイりんの髪は長い。足首超える程だから、相当長い。それで、1時間もかけるってどれだけ丁寧に洗ってるのか、それとも洗い方が下手なのか。
「んー......見た感じ......綺麗に洗えてるし......」
さっきの数分でもここまで洗えてるのなら問題ないだろう。なら、なぜ1時間もかけるのだ?益々謎なんだが。
「あー、でも、これだけ長かったら、1時間もかかるかもねー」
「ついでにを言うと、その羽も洗わないといけませんからね」
よく見ると、羽にも鱗やら羽毛やらが付いている。
「雑に洗っても禿げないから大丈夫ですよ。ただし、引っ張られると痛いのでやめてくださいね」
神経は通ってるのね。
「あー、明日からも馬車移動ですか......」
「本当に乗り物苦手だよね」
「何をどうしたらあんな酔いやすい乗り物ができるんですかね......」
「あはは......」
多分、ネイりんの場合は体が全体的に弱いせいでもあるのだろう。
本人曰く14歳の成長不良の体ーーとは言うが、私から見れば十分成長しているように見える。ネイの言う成長不良は身長が低いだけでしょーーで、体力もないくせにあれだけ暴れ回ってーー中にいる別人格達がーー休まる暇もないんだろうな。精神的にも追い詰められてたし。
「ネイりんの体が弱いのって、多分、ストレスじゃない?」
「ストレス......ですか......」
「そうそう。ちょっと、色々あって疲れてるんだよ」
「だとしたら、この旅も悪くはないかもしれませんね」
そうだそうだ。依頼兼休みだと考えてしまえばいい。大人数で来てるんだし、1人あたりが頑張る量だって少なくなるはず。
「明日からも......頑張りましょう......」
本棚が次々と消えていき、最後に三棚だけ残る。
「まだ何か足りないか......」
鬼族で、強盗なんてそんなに数はないと思っていたのに、意外と多くが残ったな。
「......あー、時間を入れてみるか......」
話では、つい最近だったと聞いている。とりあえず、1年以内で調べてみるか。
「年数指定。過去1年間」
それでも残った本は3冊。3冊程度なら1日で調べ終わる。
「......ふう。とりあえず、それっぽいのだけは見つけてきた」
「お帰り......なのかな?」
「お帰りでいいですよ」
「で、情報は得られたの?」
「3冊分ですね。これだけあれば答えくらいにまで近づけますよ」
「......本当にどうなってんの、その頭」
なんかおかしな奴を見てるような目線で見られる。事実おかしな奴なのかもしれないけど。
それにしたって、その哀れみの目はないだろう。哀れまれるほどの悲しい能力でもないし。
セリカの目線を気にしつつ、持ってきた本をパラパラとめくる。
(量に対して内容が薄い......)
それに、ユミと関係しているのかどうか疑わしい記述ばかりだ。
(ユミなんて珍しい名前じゃないしな......)
過去にも似た事例はある。驚くべき事に、全部鬼族での話だ。鬼族で『ユミ』という名前の人は、代々強盗に襲われる血筋でも持ってるのか?
「ネイりん......これ、なんかおかしくない?」
「......おかしいって何がです?」
「だってこれ、ページをめくってもめくっても、同じ文章の繰り返しなんだもん」
それはどういう事だ?
慌てて自分が読み進めている本を確かめる。
(本当だ。ずっと同じことの繰り返しだ)
妙に感じてた違和感、量に対しての内容の薄さはこれが原因だったのだろう。だとしたら、なぜ私が気づけなくてセリカが気づくことが出来たのか。
「3冊あって、全部が2ページ程度で終わる内容の繰り返し。これじゃあ、一生答えに辿り着けない......」
「ネイりんの書庫も当てにならないね」
「むっ......」
セリカは何も知らないからそんなこと言えるのだ。
こんな状況初めてだ。知りたいことならなんでも調べられる書庫が、なんの意味も示さないなんて。
「おい、本棚の調べはついたか」
「痛てっ」
急に誰かに頭をしばかれた。
「すぐに暴力振るのやめてくれませんか?」
「うるせえな雑魚。俺達は調べを付けてきたぞ」
「そうですか。収穫はありましたか」
「......」
黙るってことは大した情報は得られなかったみたいだな。
「転移術ってすげぇんだな。たった1日で黒月とこっちを行き来できるとは」
今度はヴァルか。
「こっちはこれといって何もなかった。そっちはどうだ?」
「不思議なことが起きてます」
「不思議なこと?」
「本がおかしいんですよ。3冊にまで絞り込んだのに、全部同じ文章の繰り返しなんです」
「へぇー......」
ヴァルが確かめようと本を読み進める。
「確かにこりゃぁ、不思議......なんだよな?何枚めくっても同じ言葉の繰り返しだし......」
「めくってもめくっても同じ言葉の繰り返しなんて、初めてですよ。しかも、3冊同時に」
「よく分かんねえけど、異常ってことで捉えていいんだな?」
「はい。ちょっともう1回書庫に入り直してきます」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「ネイが書庫に入り直したのはいいとして、俺達はどうするかだな」
正直、1番当てにしていたネイの書庫がダメだった時点でもう調べることは出来ない。
となると、後はフウロが調べてる盗賊共の盗品か......。
「おまたせ。調べをつけてきましたよ」
「早かったな」
「情報が何も無かったもんですから、調べも早いですよ」
「へぇー......何も見つからなかったんかい!」
期待外れ第2弾到来。これはもう、本格的に迷宮入りだ!
「ただ、1つだけ情報が得られそうな場所なら見つけましたよ」
「一応聞いておくが、どこだ?」
「白陽王国の南部。朱雀と呼ばれる街にはぐれ鬼族の集まる住宅街があるらしいですよ」
「街かぁ......」
「この国の王都よりかは劣りますけど、かなり発展してるところですよ。温泉街としても有名ですね」
「待て、その口ぶりだと、まるで旅行にでも行こうと言ってるような気がするのだが」
「「 ......ちっ 」」
「なんだその舌打ちは」
勘のいい人は嫌われると言うが、本当に嫌われそうになるんだな。今度から思ったことを素直に言うのやめよ。
「温泉街とかどうでもいいから、そこに行けば何か分かるんだろ?なら、行ってみて損はないだろ」
「俺が言ってるのはそういう事じゃない。白陽つったら、移動は乗り物だろ」
「あ......」
気づかなかったのか......。
「でもさ、それならミイとネイの転移術でどうにかなるんじゃない?」
「あれは、発動できる条件が厳しいんですよ。周りのマナを喰い尽くすし、何より、人が沢山いるような場所に転移したら、それを見ている人達がどう思うことやら」
「周りの目は気にするタイプなんだ」
「私だって周りの目くらいは気にしますよ。ミイじゃありませんし」
「おいそれはどういう意味だ」
マジでこいつら同じ人物なの?暇さえありゃすぐ喧嘩しそうになるし。正反対だからそうなるのも仕方ないのか......。仕方ないのか?
「よう。旅行がうんたらかんたら盛り上がってるな」
「あ、フウロお帰り」
「最初に言っておく。めぼしい情報は何も得られなかった。一応、盗賊の残党に話を聞いてみたが、奴らは亜人の家は襲ったことがないそうだ」
「そうか......。じゃあ、もうネイの言う場所で調べてみるしかないってことか」
「旅行だね......」
「決して旅行ではない。依頼だ。依頼解決のために......」
「まあまあ、ヴァル。たまにはいいではないか、旅行くらい。私も、その温泉街とやらには興味がある」
世の中珍しいこともあるもんだ。フウロが温泉だって。明日は大雪だな。
とかそんなことを口走ってみろ。締め上げられて、最終的に殺される。間違いないな。
「世の中珍しいこともあるもんだな。お前が温泉街とか、明日は大雪だな」
......。
「ほう。それはどういう意味だ?」
「言ったまんまの意味だ。お前が温泉とか言う日が来るんだなって」
こいつは正直すぎる。悪い意味で。
「フウロ、言っておくが、気にしない方がいい。こいつには何を言っても、きっと意味がないんだ」
「......。そうだな。気にしない気にしない」
フウロを呆れさせるやつなんて、金輪際現れることはないだろうな。
「旅行か......。面白そうな話してんなぁ」
「お前は連れていかねえぞグリード」
「なんでぇ。俺もついて行っていいじゃねえかよォ」
「お前がいるとややこしくなる」
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何をどうしたらそういう考えになるのやら......。
ネイ、ミイ、セリカ、フウロ......見事に俺以外女ばっかだな。そりゃ、こんなラノベなんだし、そういう考えになるな。
あ、今メタ発言って思った人、ちょっと黙ってなさい。
「まあいいか。お前も真面目にやるってんなら連れて行ってやってもいいぜ」
「おう、頑張ってやるわ」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「「 オェーー 」」
「「「 言わせねえよ!? 」」」
これは日常。これは日常。もう見なれた光景。
「お前ら、仲良しなのはいいが、そう毎度毎度吐かれると、こっちの気分も悪くなる」
「しあたねえやろ、ぼう、これはとくへいだ」
特性ってねぇ......。
まあ、体質なんだし、特性なんだろうなぁ......。
「胃袋消したら、こんな思い、しなくて、いいでふかね?」
多分、それは意味ないだろうね。胃袋無くても、気持ち悪いって思いは普通にやってくるし、やるなら平衡感覚から消していかないと。
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「なんだァセリカ。その汚物を見るみたいな目はァ」
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となると......、大体移動だけで7日から9日くらいはかかりそうだ。遠いな。イーリアスに行くのとは大違いだ。
「「 オェーー 」」
「「「 だから、吐くな! 」」」
こんな調子で行けるのか?申し訳ない話だけど、ヴァルとネイりんは置いていった方が良かったんじゃないのか?本気でそう思う。
「「 オェーー 」」
「「「 だからお前ら! 」」」
この光景を、あと7日は最低でも見続けることになるのか......。貰い酔いしそう......。
そんなこんなで2日間移動し、これといった問題は発生せずに白陽国内へと入ることが出来た。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「あー、やっと開放されたー......」
「死ぬかと思いました......」
「お前らはもうちょっと鍛えろ!」
「まあまあ、吐かずに済んだんだし、それでいいじゃねぇか」
2日間吐かずに済んだのは本当に奇跡だと思う。あの2人が2日間も耐えた。前までは絶対に出来なかったのに......。
乗り物酔いが無くならないのは仕方ないとして、吐かずに済むだけで相当成長したとは思う。
「それで、俺達が泊まる宿ってのはどこなんだァ?」
「この先にある」
「もしかして、あのオンボロ宿だとでも言うんじゃねえだろうなァ?」
「......その通りだが」
いかにもお化けとか出てきそうなオンボロ具合だな。まあ、人が住めそうではあるけど......。
「座敷童子とか出てきそうだなァ。ここ白陽だし......」
近くに来ると、余計オンボロ具合が際立つ。本当にここに泊まるの?
「文句があるなら、1人外で寝ててもいいんだぞ?」
「こんな寒空で寝たら死ぬァ」
「なら、ここで一夜過ごせ。そして、そこの乗り物酔い2人も体を休めておけ」
「なんか、幽霊とか出てきそうな場所ですね......」
それ、さっきグリードが近い事言った。そんなに、ここお化けが出そうに見えるの?ただのオンボロ宿......というよりもアパートにしか見えないんだけど。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
オンボロ宿だと言った。そのことに関して謝ろう。
オンボロなんて、見た目だけだった。内装は新築そのものだし、温泉まである。この先、温泉街に行くのに、今入っていいものかとも考えたが、体が疲れていたので普通に入った。
「いやぁ......極楽極楽......」
ババくさいことしか言えないが、それだけ快適だった。
ネイ、ミイ、フウロと女子があと3人もいるのに、誰1人として入りに来ないのはなぜだろうか。
ネイは肌を見せたくないからとしてーーじゃあ、なんで胸元開いた服装なんだよとは思うーーミイは単純に恥ずかしがり屋。フウロは、こういう事に興味無さそう。いや、出発前に温泉街に興味があるとか言ってたよね。
「シアラとヴェルドも連れて来た方が良かったかな?」
あとエフィ。
冷静に考えると、今回のメンバーでまともな女子が誰1人としていないのはどういう事なのだろうか。
龍人の体をよく見てみたかったな。特にミイの方。
「はぁ......」
もっと、こう、ワイワイした度になると思ってたのにな。
「セリカさん、ちょっと良いですか?」
誰も来ないと思ってた浴場に、ネイが入ってきた。ちゃっかりバスタオル巻いてるし。あと、体も若干濡れてる。さては、バレないように洗ってたな?
「今入るのは勿体ないと思ったんですけど、やっぱり、入っておきたいなって」
「分かるーその気持ちー」
ただし、バスタオル巻いてても分かる、その体さえなければ仲間だった。完全な。
「......傷だらけ」
「あ、ちょ、見ないでください」
無限の再生力があるとは言え、傷跡は消えないのか。右肩から腰にかけて、斜めに大きな傷跡もあるしーーちなみに、この時もうバスタオルは外してます。こら、そこの変態紳士、変な妄想をするんじゃないーー怠惰怠惰言えど、1番頑張ってるのはネイじゃないのか。
「ふぅ......」
「傷だらけの腕......」
「み、見ないでくださいって言ったじゃないですか!」
だって目に入るんだもん。嫌でも見ちゃう。
「ネイりんって、もしかして、わざと怠惰な性格だと見せようとしてる?」
「い、いきなり何言うんですか!」
「だって、これだけ傷だらけの体で......。めんどくさがりなニートは、こんな傷跡だらけの体にならないよ」
「......別に、頑張ってるっていう訳じゃないんですよ。ただ、みんなに認めてほしくて......その......」
自分が必要な存在って思ってほしかったのか。なんともネイらしい考えだが、みんなはもうとっくに必要な存在だと思ってあげてるのに。
心を読まなくなったというのを、一時期怪しんでいたが、本当に心を読んでないんだな。なんなら、他人の気持ちを計ることも出来なくなってるのか。
「......髪の毛洗ってあげる」
「え、いや、別にいいですよ」
「いいからいいから」
無理矢理ネイを洗い場に立たせる。
「体は洗えてるようだけど、髪の洗い方が雑ね」
「そりゃ、1時間もこんな所で洗うわけにはいきませんし......」
1時間!?
心の中でそう叫んでしまった。
冷静に考えろ。確かにネイりんの髪は長い。足首超える程だから、相当長い。それで、1時間もかけるってどれだけ丁寧に洗ってるのか、それとも洗い方が下手なのか。
「んー......見た感じ......綺麗に洗えてるし......」
さっきの数分でもここまで洗えてるのなら問題ないだろう。なら、なぜ1時間もかけるのだ?益々謎なんだが。
「あー、でも、これだけ長かったら、1時間もかかるかもねー」
「ついでにを言うと、その羽も洗わないといけませんからね」
よく見ると、羽にも鱗やら羽毛やらが付いている。
「雑に洗っても禿げないから大丈夫ですよ。ただし、引っ張られると痛いのでやめてくださいね」
神経は通ってるのね。
「あー、明日からも馬車移動ですか......」
「本当に乗り物苦手だよね」
「何をどうしたらあんな酔いやすい乗り物ができるんですかね......」
「あはは......」
多分、ネイりんの場合は体が全体的に弱いせいでもあるのだろう。
本人曰く14歳の成長不良の体ーーとは言うが、私から見れば十分成長しているように見える。ネイの言う成長不良は身長が低いだけでしょーーで、体力もないくせにあれだけ暴れ回ってーー中にいる別人格達がーー休まる暇もないんだろうな。精神的にも追い詰められてたし。
「ネイりんの体が弱いのって、多分、ストレスじゃない?」
「ストレス......ですか......」
「そうそう。ちょっと、色々あって疲れてるんだよ」
「だとしたら、この旅も悪くはないかもしれませんね」
そうだそうだ。依頼兼休みだと考えてしまえばいい。大人数で来てるんだし、1人あたりが頑張る量だって少なくなるはず。
「明日からも......頑張りましょう......」
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