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外伝 【夢幻の道】
外伝4 【殺と命】
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「ヒャッハハハ!逃げても無駄だぞー!」
蜘蛛のように壁や天井を這いずり回る男。ヤンキーみたいな口調で、舌を出して歩き回るその姿は、不気味と言うよりも気持ち悪いと言うべきだろう。
「あれだけ天井を破壊して、この城は大丈夫なんですかね」
「きっと、自動修復機能とかが付いてるんですよ」
だとしたら、是非とも白陽と黒月の王城に取り入れたい。まあ、そんな悠長なことを考えてる暇はないのだけれど。
「小娘2人で俺に勝とうってんだから生意気なんだよ!死ね!」
このまま走り続けていれば、あの攻撃にはまず当たらない。だが、私は人間で、ネイに至っては極度の体力不足。考えるまでもなく逃げ続けられるわけがない。だから、どこかでこちらから攻撃しなければならないのだが、そのタイミングが分からない。
だってあいつ、移動する度に天井を崩してくるんだもん。逃げるのをやめればどうにかなるかもしれないが、その時に頭上から降り注いでくる破片を避けなければならない。そうすれば、また奴が移動して天井が崩れて、以下無限ループだ。
それほどまでにあいつの攻撃は厄介なのである。ネイの言うように、天井に自動修復機能でも付いてるのか、崩れた側から直っていくし、何が2対1だ。不利なのはこちらではないか。
「デルシア......さん......いつまで......逃げる......つもり......ですか......」
まずいな。そろそろ息切れを起こしてきた。
「ジークさんに変わってください。この状況を切り抜けます」
「分かり......ました......」
ジークからネイに戻った時が大変らしいが、そこは我慢してもらおう。切り抜けることが出来ればこちらのもんだ。いくらでも休め......時間は限られるが休むことは出来る。
「そろそろ疲れてきたんじゃないのか?」
「ああ疲れてきたな。だが、俺はどうってことねえ」
まさかの、ジークに切り替わったネイが、破片を一刀両断して蜘蛛男を地に叩きつける。
「なっ......」
「お嬢に悪いから、秒で蹴りをつけてやる」
こんな事なら、最初からジークに変わっていれば?と思ったのは今更の話である。
「蜘蛛みてえな動きしてても、捕まえられた途端これか」
「ひぃっ、や、やめろ!」
「俺達がやめろつっても、お前はやめねえだろ。だから、俺もやめない」
蜘蛛男のどす黒い血があたりに広がる。
「こんな事なら、もっと早くに俺に変わってたら良かったな」
「そ、そうですね......」
こんな近場でどす黒い血を見てしまったもんだから、若干の吐き気が込み上げてきた。
「じゃあ、しばらくお嬢をよろしくな。いざとなったら、この剣に語りかけりゃ出てくるからよ」
「わ、分かりました」
そう言うと、ジークからネイに戻ったのか、ネイが力なくその場に座り込む。
「はぁ......はぁ......」
「少し......休憩しましょうか」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「母......さん......?」
あの女は、どう見ても母さんだ。
幼き頃に死に別れたと聞かされていた母さんの姿そのものだ。
「死んだ......はずでは......?」
「確かに、私は表世界じゃ死んだことにされている」
どういう事だ?
だって、母さんはデルシアを産んだ際に死んだはず......。それなのに、なぜこっちの世界で生きてるんだ?
意味がわからない。
「なんで......母さんが......」
「生きてるとか死んでるとかどうでもいいだろ?」
「違う、そうじゃない。なんで、母さんがこんなところにいるんだ」
「こちらの世界の住人だから。それで十分か?シンゲン」
違う。俺が聞きたいのはそういうことじゃない。
死んだ時に聞かされていた。なのに、なぜこちらの世界で生を得ているのか。
こちらの世界の住人だと聞かされても、それだけで納得出来るほど俺は賢くない。
「ついてきなさい」
「......」
戦う気はないのか......。だが、ついてこいと言われて何も考えずについて行く訳がない。
「判断は任せる。だが、この先に行かんとお前らが倒したがってる奴には会えんぞ?」
「......どうする?兄さん」
「......カンナとカイナは距離を置いてついてこい。俺とサツキとシータが先導を切る」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「アルフレア様!落ち着いてください!」
アルフレアと男の戦い。私達は周りの魔獣と戦っている。
「ほらほら、そんな剣じゃ俺には当たらないよ?」
アルフレア様の剣は、お世辞にも強いとは言えない。
剣の先はブレブレだし、力任せに振ってるようにしか見えない。
このままでは、押し切られるのはアルフレア様の方。どうにかしなければならないのだが、この魔獣を無視して助けに行くことも出来ない。表の世界で戦ってた奴らとは格が違う。
一瞬の油断でさえ許されない。
投げナイフだけではこいつらを倒せない。だが、私にはそれ以外の武器を使うことが出来ない。
暗殺隊も似たようなもので、魔法は使えないし、剣よりも暗器の扱いに長けている。
ただ、唯一勝てそうな仲間ならいる。レイだ。彼女は槍による力強い一突きで魔獣の硬い皮膚を貫通して攻撃出来る。だが、敵はそれだけでやられるほどやわではない。私達でレイを全力でサポートする必要がある。
「シャドウスピア!」
敵の動きを暗器で抑え、そこにレイが強力な一撃を撃ち込む。時間はかかるが、1匹1匹を確実に殺すことが出来る。
「くっ......」
「あれ?剣の動きが遅くなってきたね?」
アルフレア様の動きは確実に鈍くなっている。感情で動く剣士に、強い者などいない。常に冷静で、物事全てを把握しなければ勝つことは出来ない。
今のアルフレア様には、その能力が備わってない。それは、誰の目から見ても明らかだ。
「アルフレア様!」
「......」
「お仲間の声も聞こえないとか、もう頭おかしいんじゃないの?それとも何?自分のプライドを侮辱されて悔しいの?操り人形」
恐らく、アルフレア様は操り人形という言葉が気に食わないのだろう。
だが、だからといってこんなにも冷静じゃなくなるのはおかしい。何かがあるっていうのか。
「ゼータ殿。ここは、私とレイに任せて、アルフレア様の援護に回ってください」
「分かりました」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
(いい?ミューエの縄であの男の周りにトラップを仕掛けるわよ)
(( トラップ? ))
(トラップと言っても、簡易的なものだけどね。相手の足を絡めとるわよ)
(( ...... ))
そんな上手くできるだろうかって顔をしてるわね。まあ、それで有利になれたらいいなってくらいの作戦だから、失敗しても戦い方に変わりはない。
(まあいいわ。とりあえず、これだけ作れば十分かしらね)
(まあ、外れてもそこまで問題はないと思うわ)
(上手く、いくでしょうか?)
(失敗したら、ガンマが頼りよ。私もミューエも魔法だからね。物理で戦えるのはあなただけよ)
本来なら、デルシアと人格を変えたネイが前線を担当するはずだったが、こうなってしまっては老剣士に頼るしかない。
(行くわよ。1、2ぃの、3!)
縄を張ると言っても、ミューエの水魔法は地面に埋めることが出来る。これで、後は正面からせめて敵の出方を伺うだけ。
「ガンマ、行くわよ」
「お任せください」
さあ、敵はどう出る?
「シャイン!」
「セヤァッ」
「......」
動かない......?
それどころか、私とガンマの攻撃を堂々と喰らい、その姿を消した。
「どういう事......?」
正直、この展開は予想してなかった。
「うっ......」
「見つけたぞ。創真の姫......」
いつの間にか、敵はミューエの背後へと回り込んでいた。
「......!ミューエから離れなさい!シャイン!」
男は、影になり私の魔法をかわす。
「なっ......」
「寝てろ」
突然、睡魔が襲ってきた。
「な......んで......」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「ネイさん、そろそろ行きましょう」
「はぁ......はい......」
足つきがふらつく。こんなので戦えるだろうか。いや、戦えるわけない。
ジークに切り替えてもいいが、これ以上は体を壊しかねない。無理はやめておこう。
「......!ネイさん!」
「え?」
突然、わけも分からずデルシアに突き飛ばされた。
「......痛てて」
何が起きたのだろうと確認すると、デルシアの体を覆うように巨大な糸?があった。
「......デルシアさん!」
「こんなところにいたとはなァ。まさか、泳龍の娘と飛龍の娘がこんなところにいるとは。危うく殺しちまうところだったぜ」
あの蜘蛛男だ。
「2人運ぶのは難しいな。まあ、泳龍の娘を連れて、後は部下共に任せときゃ問題ねえか」
そのまま蜘蛛男は逃げ去った。
「ま、待て......!」
体が上手く動かない。疲れが込み上げてきている。
「......なっ」
ほんの一瞬目を瞑っただけの間に、目の前に大量の蜘蛛人間が現れていた。
「この娘も捕まえておけだとよ」
「捕まえたら好きにしていいんだな」
「らしいぞ。あの御方は泳龍にしか興味はないからな」
「へっ、なら好き勝手してやるぜ」
......まずい。非常にまずい。
今の体では、例えジークになったとしても数分ともたないだろう。
「野郎共かかれー!」
「うっ......」
また来た。
あいつの魂が、俺にやらせろと叫んでいる。
この状況を、あいつが突破できるのだろうか。下手したら死ぬっていうのに。
でも、今はあいつに任せてみるしかないか......。
「ぼーっとしてたら死ぬぞオラァー!」
「死ぬのはてめぇらだ」
血が飛び散る。
あたり一面を真っ赤に染めあげていく。
「汚ねえ色してんなぁ」
「なっ......、怯むな!」
向こうからやってきてくれるとは、疲れきった体には楽な仕事だ。いや、楽な殺しだ。
「うぁぁぁぁ」
「ぎやぁぁぁ」
「うぷっ......」
断末魔が次から次へと鳴り響く。
その音は、とても心地のいいものだった。
「これだよこれ。これを求めてたんだ」
最高のショーだ。
これだけ殺すことが出来るんだから。
俺の乾きも、これで潤されるだろうか。
「飢えてんだよ。乾いてんだよ。だからよ、死ね」
「いつまでも俺達がやられると思うな!」
周囲をぐるっと囲む形で蜘蛛男達が陣取る。
「楽な仕事をありがとな!」
「ぎやぁぁぁ」
「あ"あ"ぁぁぁぁ」
いい響きだ。それが、360°から聞こえてくるんだ。
「最高だ」
もっと来いよ。もっと血を浴びせろよ。てめぇらの汚ねえ血をよォ!
「て、撤退だ!こいつは諦めろ!」
「逃がすわけねえだろ」
「うぁぁぁぁ」
「汚ねえ色だな」
あたりに敵はいなくなった。根性のない奴らだった。まあいいや。どうせこの先を進めばまた奴らを見ることになるだろう。
「うっ......」
そろそろ時間切れか......。全く、この体を操るには気が遠くなるような時間が必要だな。それまで、こいつが生きててくれるといいんだが。
......
......
......
「......何これ」
自分の体にベッタリとつく血の塊。
目の前には、数え切れないほどの死体が転がっている。そして、私につく血の色は、それと同じ黒い色だった。
「......」
あいつが......またあいつが......
......
......
......
「い......や......嫌......嫌ぁぁぁぁ」
蜘蛛のように壁や天井を這いずり回る男。ヤンキーみたいな口調で、舌を出して歩き回るその姿は、不気味と言うよりも気持ち悪いと言うべきだろう。
「あれだけ天井を破壊して、この城は大丈夫なんですかね」
「きっと、自動修復機能とかが付いてるんですよ」
だとしたら、是非とも白陽と黒月の王城に取り入れたい。まあ、そんな悠長なことを考えてる暇はないのだけれど。
「小娘2人で俺に勝とうってんだから生意気なんだよ!死ね!」
このまま走り続けていれば、あの攻撃にはまず当たらない。だが、私は人間で、ネイに至っては極度の体力不足。考えるまでもなく逃げ続けられるわけがない。だから、どこかでこちらから攻撃しなければならないのだが、そのタイミングが分からない。
だってあいつ、移動する度に天井を崩してくるんだもん。逃げるのをやめればどうにかなるかもしれないが、その時に頭上から降り注いでくる破片を避けなければならない。そうすれば、また奴が移動して天井が崩れて、以下無限ループだ。
それほどまでにあいつの攻撃は厄介なのである。ネイの言うように、天井に自動修復機能でも付いてるのか、崩れた側から直っていくし、何が2対1だ。不利なのはこちらではないか。
「デルシア......さん......いつまで......逃げる......つもり......ですか......」
まずいな。そろそろ息切れを起こしてきた。
「ジークさんに変わってください。この状況を切り抜けます」
「分かり......ました......」
ジークからネイに戻った時が大変らしいが、そこは我慢してもらおう。切り抜けることが出来ればこちらのもんだ。いくらでも休め......時間は限られるが休むことは出来る。
「そろそろ疲れてきたんじゃないのか?」
「ああ疲れてきたな。だが、俺はどうってことねえ」
まさかの、ジークに切り替わったネイが、破片を一刀両断して蜘蛛男を地に叩きつける。
「なっ......」
「お嬢に悪いから、秒で蹴りをつけてやる」
こんな事なら、最初からジークに変わっていれば?と思ったのは今更の話である。
「蜘蛛みてえな動きしてても、捕まえられた途端これか」
「ひぃっ、や、やめろ!」
「俺達がやめろつっても、お前はやめねえだろ。だから、俺もやめない」
蜘蛛男のどす黒い血があたりに広がる。
「こんな事なら、もっと早くに俺に変わってたら良かったな」
「そ、そうですね......」
こんな近場でどす黒い血を見てしまったもんだから、若干の吐き気が込み上げてきた。
「じゃあ、しばらくお嬢をよろしくな。いざとなったら、この剣に語りかけりゃ出てくるからよ」
「わ、分かりました」
そう言うと、ジークからネイに戻ったのか、ネイが力なくその場に座り込む。
「はぁ......はぁ......」
「少し......休憩しましょうか」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「母......さん......?」
あの女は、どう見ても母さんだ。
幼き頃に死に別れたと聞かされていた母さんの姿そのものだ。
「死んだ......はずでは......?」
「確かに、私は表世界じゃ死んだことにされている」
どういう事だ?
だって、母さんはデルシアを産んだ際に死んだはず......。それなのに、なぜこっちの世界で生きてるんだ?
意味がわからない。
「なんで......母さんが......」
「生きてるとか死んでるとかどうでもいいだろ?」
「違う、そうじゃない。なんで、母さんがこんなところにいるんだ」
「こちらの世界の住人だから。それで十分か?シンゲン」
違う。俺が聞きたいのはそういうことじゃない。
死んだ時に聞かされていた。なのに、なぜこちらの世界で生を得ているのか。
こちらの世界の住人だと聞かされても、それだけで納得出来るほど俺は賢くない。
「ついてきなさい」
「......」
戦う気はないのか......。だが、ついてこいと言われて何も考えずについて行く訳がない。
「判断は任せる。だが、この先に行かんとお前らが倒したがってる奴には会えんぞ?」
「......どうする?兄さん」
「......カンナとカイナは距離を置いてついてこい。俺とサツキとシータが先導を切る」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「アルフレア様!落ち着いてください!」
アルフレアと男の戦い。私達は周りの魔獣と戦っている。
「ほらほら、そんな剣じゃ俺には当たらないよ?」
アルフレア様の剣は、お世辞にも強いとは言えない。
剣の先はブレブレだし、力任せに振ってるようにしか見えない。
このままでは、押し切られるのはアルフレア様の方。どうにかしなければならないのだが、この魔獣を無視して助けに行くことも出来ない。表の世界で戦ってた奴らとは格が違う。
一瞬の油断でさえ許されない。
投げナイフだけではこいつらを倒せない。だが、私にはそれ以外の武器を使うことが出来ない。
暗殺隊も似たようなもので、魔法は使えないし、剣よりも暗器の扱いに長けている。
ただ、唯一勝てそうな仲間ならいる。レイだ。彼女は槍による力強い一突きで魔獣の硬い皮膚を貫通して攻撃出来る。だが、敵はそれだけでやられるほどやわではない。私達でレイを全力でサポートする必要がある。
「シャドウスピア!」
敵の動きを暗器で抑え、そこにレイが強力な一撃を撃ち込む。時間はかかるが、1匹1匹を確実に殺すことが出来る。
「くっ......」
「あれ?剣の動きが遅くなってきたね?」
アルフレア様の動きは確実に鈍くなっている。感情で動く剣士に、強い者などいない。常に冷静で、物事全てを把握しなければ勝つことは出来ない。
今のアルフレア様には、その能力が備わってない。それは、誰の目から見ても明らかだ。
「アルフレア様!」
「......」
「お仲間の声も聞こえないとか、もう頭おかしいんじゃないの?それとも何?自分のプライドを侮辱されて悔しいの?操り人形」
恐らく、アルフレア様は操り人形という言葉が気に食わないのだろう。
だが、だからといってこんなにも冷静じゃなくなるのはおかしい。何かがあるっていうのか。
「ゼータ殿。ここは、私とレイに任せて、アルフレア様の援護に回ってください」
「分かりました」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
(いい?ミューエの縄であの男の周りにトラップを仕掛けるわよ)
(( トラップ? ))
(トラップと言っても、簡易的なものだけどね。相手の足を絡めとるわよ)
(( ...... ))
そんな上手くできるだろうかって顔をしてるわね。まあ、それで有利になれたらいいなってくらいの作戦だから、失敗しても戦い方に変わりはない。
(まあいいわ。とりあえず、これだけ作れば十分かしらね)
(まあ、外れてもそこまで問題はないと思うわ)
(上手く、いくでしょうか?)
(失敗したら、ガンマが頼りよ。私もミューエも魔法だからね。物理で戦えるのはあなただけよ)
本来なら、デルシアと人格を変えたネイが前線を担当するはずだったが、こうなってしまっては老剣士に頼るしかない。
(行くわよ。1、2ぃの、3!)
縄を張ると言っても、ミューエの水魔法は地面に埋めることが出来る。これで、後は正面からせめて敵の出方を伺うだけ。
「ガンマ、行くわよ」
「お任せください」
さあ、敵はどう出る?
「シャイン!」
「セヤァッ」
「......」
動かない......?
それどころか、私とガンマの攻撃を堂々と喰らい、その姿を消した。
「どういう事......?」
正直、この展開は予想してなかった。
「うっ......」
「見つけたぞ。創真の姫......」
いつの間にか、敵はミューエの背後へと回り込んでいた。
「......!ミューエから離れなさい!シャイン!」
男は、影になり私の魔法をかわす。
「なっ......」
「寝てろ」
突然、睡魔が襲ってきた。
「な......んで......」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「ネイさん、そろそろ行きましょう」
「はぁ......はい......」
足つきがふらつく。こんなので戦えるだろうか。いや、戦えるわけない。
ジークに切り替えてもいいが、これ以上は体を壊しかねない。無理はやめておこう。
「......!ネイさん!」
「え?」
突然、わけも分からずデルシアに突き飛ばされた。
「......痛てて」
何が起きたのだろうと確認すると、デルシアの体を覆うように巨大な糸?があった。
「......デルシアさん!」
「こんなところにいたとはなァ。まさか、泳龍の娘と飛龍の娘がこんなところにいるとは。危うく殺しちまうところだったぜ」
あの蜘蛛男だ。
「2人運ぶのは難しいな。まあ、泳龍の娘を連れて、後は部下共に任せときゃ問題ねえか」
そのまま蜘蛛男は逃げ去った。
「ま、待て......!」
体が上手く動かない。疲れが込み上げてきている。
「......なっ」
ほんの一瞬目を瞑っただけの間に、目の前に大量の蜘蛛人間が現れていた。
「この娘も捕まえておけだとよ」
「捕まえたら好きにしていいんだな」
「らしいぞ。あの御方は泳龍にしか興味はないからな」
「へっ、なら好き勝手してやるぜ」
......まずい。非常にまずい。
今の体では、例えジークになったとしても数分ともたないだろう。
「野郎共かかれー!」
「うっ......」
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あいつの魂が、俺にやらせろと叫んでいる。
この状況を、あいつが突破できるのだろうか。下手したら死ぬっていうのに。
でも、今はあいつに任せてみるしかないか......。
「ぼーっとしてたら死ぬぞオラァー!」
「死ぬのはてめぇらだ」
血が飛び散る。
あたり一面を真っ赤に染めあげていく。
「汚ねえ色してんなぁ」
「なっ......、怯むな!」
向こうからやってきてくれるとは、疲れきった体には楽な仕事だ。いや、楽な殺しだ。
「うぁぁぁぁ」
「ぎやぁぁぁ」
「うぷっ......」
断末魔が次から次へと鳴り響く。
その音は、とても心地のいいものだった。
「これだよこれ。これを求めてたんだ」
最高のショーだ。
これだけ殺すことが出来るんだから。
俺の乾きも、これで潤されるだろうか。
「飢えてんだよ。乾いてんだよ。だからよ、死ね」
「いつまでも俺達がやられると思うな!」
周囲をぐるっと囲む形で蜘蛛男達が陣取る。
「楽な仕事をありがとな!」
「ぎやぁぁぁ」
「あ"あ"ぁぁぁぁ」
いい響きだ。それが、360°から聞こえてくるんだ。
「最高だ」
もっと来いよ。もっと血を浴びせろよ。てめぇらの汚ねえ血をよォ!
「て、撤退だ!こいつは諦めろ!」
「逃がすわけねえだろ」
「うぁぁぁぁ」
「汚ねえ色だな」
あたりに敵はいなくなった。根性のない奴らだった。まあいいや。どうせこの先を進めばまた奴らを見ることになるだろう。
「うっ......」
そろそろ時間切れか......。全く、この体を操るには気が遠くなるような時間が必要だな。それまで、こいつが生きててくれるといいんだが。
......
......
......
「......何これ」
自分の体にベッタリとつく血の塊。
目の前には、数え切れないほどの死体が転がっている。そして、私につく血の色は、それと同じ黒い色だった。
「......」
あいつが......またあいつが......
......
......
......
「い......や......嫌......嫌ぁぁぁぁ」
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