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外伝 【夢幻の道】
外伝10 【夢と現実】
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ここは、どこなんだ?
ミューエがいる。あれだけボロボロになっていた体が、それが嘘だったかのように傷がなくなっている。
「ほら、デルシア。もうすぐ戴冠式よ。ぼーっとしてないで、早く着替えなさい」
着替えろと言われても、今は戦いの真っ最中だ。この格好から着替えるわけには......
......いつの間にか、私の服装は、戦闘に向いた服ではなく、普通の女の子らしい服装へと変わっていた。
「ほら、デルシア」
私は、ミューエに連れられるがままに服がたくさん並んだ部屋へと入る。
「「 お待ちしておりました。デルシア様 」」
「アイリスさんに、セルカさん!?」
メイド服を着た鬼族の姉妹。なぜ、ここにいるのだろう。
「だから、いつまでもぼーっとしてないの。ちゃっちゃと着替えちゃいなさい」
ミューエと、アイリス、セルカによって、私の服装は、正に「王族!」といった感じに変わる。
なんだか不思議な気分だ。
これは夢なのだろうか。ミューエが元気でいて、アイリスとセルカが当たり前のようにいる。
リエンドと戦っていたのが夢で、実はこっちの世界が本当の世界、なんてことはないだろうか。でも、それだけは有り得ないと分かる。だって、この世界は、今見た限りでも都合よく出来ている。
もう少し、この世界をよく見てみよう。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
本当に、夢みたいな景色だ。
シンゲン兄さんと、アルフレア兄さんが剣を携えずに笑いながら話している。
姉さんとサツキだって同じように話してるし。ゼータもシータもガンマもイグシロナも。私が知る人はみんないる。
みんな、私の戴冠式のためにここに集まっている。
誰からも殺意を感じない。感じるのは、『幸せ』という気持ちだけ。
「どうしたの?デルシア」
「......いえ。みなさんが、楽しそうに笑っているから」
「......そうね。前までは敵同士だったのに、戦いが終わってしまえばこんなのになるんだから」
一応戦いはあったみたいだ。だが、それも全ては過ぎたことになっている。
多分、私のお陰とかそういうのなんだろうな。だって、ここは都合のいい世界だから。そうなってるに違いない。
「デルシア、お前も遂に王様か。やったな」
「あ、シンゲン兄さん......」
「白と黒の長きに渡る戦争を止めた龍の勇者!その姿は龍人でありつつも、世界の平和を願った少女が辿り着いた最高の地!」
「シンゲン、お前、少し酒が入ってるんじゃないか」
「ハッハッハ!そう言うお前だって顔が赤くなってんぞ?見た目の割に酒は苦手かッ」
「......すまないな、デルシア。色々と慌てているだろう時期にバカを連れて来てしまって......」
「兄さんが気にすることじゃありませんよ。シンゲン兄さんは、大体こんな感じですから」
「ふっ......そうだな」
2人の仲は親友みたいに良くなっている。
今、シンゲンとアルフレアが同じ敵を相手にしたから協力関係を取っているが、これが戦いが終わっても続くとは思っていない。願ってはいる。
「ウォォォォ!」
「おりゃァァァ!」
「2人ともそんなに急いで食べなくても、食べ物は逃げたりしないわよ。生きてない限りね?」
「「 ふぐっ 」」
「ほら、急いで食べてるから」
私は、こんな日を夢に見てたのかもしれない。
みんなが笑っていて、争いがなくて、ちゃんと私もいて......。
「どうしたの?デルシア。泣いてるの?」
「......あれ」
気づけば、涙が頬を伝っていた。
「無理もないわ。あれだけ辛い思いをしてようやく手に入れた平和なんだから。泣いてもいいのよ」
「いえ......そういうわけじゃ......ないんです......」
なぜ、こんなにも涙が出てくるのだろうか。
なぜ、私は、この景色を欲したのだろうか。
なぜ、みんなが笑っているのに私は泣いているのだろうか。
なぜ、こんなにも寂しいのだろうか......。
......
遠くの扉の方に、龍の羽を生やした女の子の姿が見えた。
(......あれって)
この場に唯一いなかった人物。
その女の子はこちらをチラッと見た後、どこかへと姿を消した。
「あっ......待って!」
慌ててその後を追いかける。
スカートのヒラヒラとした部分が足を奪って走りづらい。二度とこんな服は着たくないと思ってしまった。
「デルシア、どうしたの?そんなに慌てて」
「見えたんです。ネイさんの姿が!」
「ネイ?誰?その子」
「え......」
知らない......?
「ネイさんは私達の仲間でしょ?私達と一緒に、平和のために戦ってくれた、大事な仲間でしょう?」
「ごめんなさい。私はその子を知らないわ。そんな子、軍の中にいなかったから」
どうなってるんだ......?
これだけ都合よく進んでいる世界で、唯一不都合が発生している。
夢じゃないということなのか?
いや、そんなはずがない。私には直前のリエンド戦の記憶がある。私は、リエンドの攻撃をもろに喰らってこの状況になった。ここが天国とかそういうのじゃないかとも考えている。
「ごめんなさい!」
走りづらいスカートの端をビリビリに破いて、普段の服装に近い形にする。見た目がちょっとあれだが、動ければそれで問題ない。
あの姿は紛れもなくネイだった。その彼女が私と目を合わせた後に消えた。何かを伝えようとしてるのは明白だ。ならば、私は彼女を追いかける。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
みんながいた城から出て数十分。たまに見えるネイの姿を頼りに、私は深い森へと足を踏み入れていた。
「ネイさん!どこにいるんですか!」
ただでさえ深い森だから視界が悪いというのに、霧のせいで余計何も見えなくなっている。それでも、ネイの姿が見えた方角に一直線に進む。
「ネイさん!」
彼女に会えば、この世界が何なのか分かるかもしれない。みんなが彼女のことを忘れている中で、私だけが覚えている。これには意味があるはずだ。
だから、ネイの後を追いかけ続けているのに、一向に追いつくことが出来ないでいる。
そして、体力もそろそろ尽きかけてきたかという時に、視界の開けた場所へと辿り着いた。
「......ネイさん!」
ネイがその場に立っている。もう逃げる様子はない。
「ネイさん!ネイさんは、この世界のことを知っているんですか!この、私にとって都合よく作られた世界のことを!」
「......」
ネイは振り向きもせず、また喋ることもなくその場に立っている。
「ネイさん!」
「やれやれ。そんなに大声を出さんでも聞こえておるよ」
「ネイ......さん?」
「そっちじゃなくて、こっちじゃこっち」
白陽の正月着を着た女の子が1人、ネイの後ろから現れた。
「さて、案内ご苦労さまじゃ」
ネイの体がストンとその場に崩れ落ちる。
「......あなたは?」
「妾もネイじゃ。お主がよぉーく知っておる」
いや、ネイはそんな喋り方をしない。もっと、お淑やかで上品な話し方をする人だ。
「見て分からんか。この角、この羽、そして、この胸のデカさを見ても、まだ違うと思うか」
体の各部を触りながら強調してくる。
「まあ、お主はあんまり見てないから分からんか。ボコボコにされた記憶くらいならあるんじゃないのか?」
「もしかして、私を原始化から解放してくれた......」
「おお。やっと思い出してくれたか」
「......で、それがネイさんだと繋がるわけじゃないと思うのですが」
「って、まだ分からんか......」
人を呆れさせる事に定評のある私だが、この夢世界でも呆れさせることになるとは思わなかった。
「まあ、この際妾がネイじゃとかそんなのはどうでもええわ。なんなら、今の妾はツクヨミと名乗った方がええくらいじゃし」
「んー、じゃあ、ヨミさんとでも......」
「もう気にせんわ。お主のあほんだらさは変わりないのう。いや、この時代のデルシアじゃから当たり前か」
さっきから言ってる事の意味が分からない。名前に関しては一段落付いたが、じゃあ、この人は何のためにここにいるのかが本番だ。
「お主、この世界を見てどう思った?」
「どうって......」
「シンゲンとアルフレアは親友のようにしており、アイリスとセルカはメイドとして戦いから無縁の生活。ミューエはちゃんと親友としてお主の側にいて、お主は創真王国の王となる。この世界をお主はどう思う?」
「......とても、幸せな世界だと思いました。私が望んでいたものそのものだと」
「......」
「みんな、幸せそうで、誰一人として欠けてなくて、シンゲン兄さんにサツキ、レイさんカイリさん、クウガさん、カンナさん。アルフレア兄さんにベルディア姉さん、オメガさんロウラさん、ゼータさんシータさん、イグシロナ、ガンマさん、カイナさん。アイリスさんとセルカさん。そして、ミューエさんがいる」
「全員、表の世界と裏の世界で戦ってきたお主の仲間、いや、家族じゃな」
「......はい。みんな、私の大事な家族です」
「......お主は、この世界をどう思う?」
「......幸せいっぱいの世界で、私はこれでもいいと思いました。でも......」
「気づいたんじゃな」
「......はい。こんな偽りの幸せ、なんの努力もなしに得た幸せ。こんなの、私が求めていたものじゃないんです。私は、例えボロボロになっても、みんなと一緒に本当の幸せを掴みたい」
「......デルシアらしいのう」
「......あなたは、なぜここにいるんですか?終焉の刃は渡したはずでしょう?」
「そう言えば、創世の剣の使い方を教えとらんかったなと思って。あと、妾は刃を回収しても歴史の管理があるから元の未来には戻れんのじゃ」
これまた難しい話を......。でも、それがこの人の役目なのだろう。
「創世の剣は、自分が創りたいと思った未来を創る。ここにある世界みたいに、丸ごとというわけではないがな。平たく言えば、その剣は使用者の想いを形にする武器じゃ」
「想いを......形に......?」
「終焉の刃のような、全てを終わらす武器では、リエンドを倒せてもその終わりを繰り返されるだけじゃ。それは、前回の周で経験したじゃろう」
薄らと記憶に残っている。
「お主がこの世界を望むのなら、この世界を選ぶが良い。リエンドはそれで感謝するじゃろうな。じゃが、苦労して手に入れたものに価値を感じるなら、戦うしかない。己の想いをその剣に込めて」
「......」
ここは、選択肢なのだろうか?
リエンドが作り出した理想郷と、私達の現実。
でも、そんなのは比べるまでもない。とっくに決まっている事だ。
「あなたは、何者なんですか?」
「時の創界神ネイ。エクストリームとかいう爺がおったじゃろ?あれの跡継ぎじゃ。全くめんどくさい物を押し付けやがって」
次元が飛びすぎて話が分からない。
「今、この時代におるネイは、いずれお主の傍から離れて己を見つける。別れは必然じゃが、それでもお主は理想のために戦うのじゃな?」
「はい。私は、私が夢見たものを、みんなと一緒に、私の夢を見るために......」
「なら、長い夢から覚めるが良い」
世界が崩れていく。
これが、本当に、夢だったんだと証明するように。私が目を覚ましたからこの世界は崩れ去っていく。
でも、私は、この景色を現実で再現してみせる。だって、夢は夢でも、思い描いていたものに変わりはないのだから。
「行け。真を創る勇者よ。お主の道は明るく照らされておるぞ」
......
......
......
「おい、デルシア、しっかりしろ!おい!」
この声......シンゲン兄さんか......。相変わらず、耳元でうるさい声を出す。
「デルシア、こんなところで倒れるな。ここで倒れたら、俺はお前を許さん」
そんな悲観に満ちた声で話さないでほしい。アルフレア兄さんには、兄さんらしく堂々としていてほしい。
アルフレア「デルシア」
イグシロナ「デルシア様」
ガンマ「デルシア様」
ベルディア「デルシアー」
羅刹「起きろよデルシア」
アイリス「デル......シア」
ネイ「デルシア......さん」
良かった。みんないるみたいだ。まだ、あの理想は叶えられそうだ。
「いつまで寝てるつもりなの?」
分かってる。いつもいつもそう言ってくるけど、ちょっと朝に弱いだけなんだから。
「さあ、起きてデルシア」
うん。私は、戦う。みんなのために。
「あなたは、私の親友よ。だから、こんなところで倒れちゃダメよ」
私の夢のために......
夢の続きを、現実で見るために......
「「 私達で、夢を現実に 」」
ミューエがいる。あれだけボロボロになっていた体が、それが嘘だったかのように傷がなくなっている。
「ほら、デルシア。もうすぐ戴冠式よ。ぼーっとしてないで、早く着替えなさい」
着替えろと言われても、今は戦いの真っ最中だ。この格好から着替えるわけには......
......いつの間にか、私の服装は、戦闘に向いた服ではなく、普通の女の子らしい服装へと変わっていた。
「ほら、デルシア」
私は、ミューエに連れられるがままに服がたくさん並んだ部屋へと入る。
「「 お待ちしておりました。デルシア様 」」
「アイリスさんに、セルカさん!?」
メイド服を着た鬼族の姉妹。なぜ、ここにいるのだろう。
「だから、いつまでもぼーっとしてないの。ちゃっちゃと着替えちゃいなさい」
ミューエと、アイリス、セルカによって、私の服装は、正に「王族!」といった感じに変わる。
なんだか不思議な気分だ。
これは夢なのだろうか。ミューエが元気でいて、アイリスとセルカが当たり前のようにいる。
リエンドと戦っていたのが夢で、実はこっちの世界が本当の世界、なんてことはないだろうか。でも、それだけは有り得ないと分かる。だって、この世界は、今見た限りでも都合よく出来ている。
もう少し、この世界をよく見てみよう。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
本当に、夢みたいな景色だ。
シンゲン兄さんと、アルフレア兄さんが剣を携えずに笑いながら話している。
姉さんとサツキだって同じように話してるし。ゼータもシータもガンマもイグシロナも。私が知る人はみんないる。
みんな、私の戴冠式のためにここに集まっている。
誰からも殺意を感じない。感じるのは、『幸せ』という気持ちだけ。
「どうしたの?デルシア」
「......いえ。みなさんが、楽しそうに笑っているから」
「......そうね。前までは敵同士だったのに、戦いが終わってしまえばこんなのになるんだから」
一応戦いはあったみたいだ。だが、それも全ては過ぎたことになっている。
多分、私のお陰とかそういうのなんだろうな。だって、ここは都合のいい世界だから。そうなってるに違いない。
「デルシア、お前も遂に王様か。やったな」
「あ、シンゲン兄さん......」
「白と黒の長きに渡る戦争を止めた龍の勇者!その姿は龍人でありつつも、世界の平和を願った少女が辿り着いた最高の地!」
「シンゲン、お前、少し酒が入ってるんじゃないか」
「ハッハッハ!そう言うお前だって顔が赤くなってんぞ?見た目の割に酒は苦手かッ」
「......すまないな、デルシア。色々と慌てているだろう時期にバカを連れて来てしまって......」
「兄さんが気にすることじゃありませんよ。シンゲン兄さんは、大体こんな感じですから」
「ふっ......そうだな」
2人の仲は親友みたいに良くなっている。
今、シンゲンとアルフレアが同じ敵を相手にしたから協力関係を取っているが、これが戦いが終わっても続くとは思っていない。願ってはいる。
「ウォォォォ!」
「おりゃァァァ!」
「2人ともそんなに急いで食べなくても、食べ物は逃げたりしないわよ。生きてない限りね?」
「「 ふぐっ 」」
「ほら、急いで食べてるから」
私は、こんな日を夢に見てたのかもしれない。
みんなが笑っていて、争いがなくて、ちゃんと私もいて......。
「どうしたの?デルシア。泣いてるの?」
「......あれ」
気づけば、涙が頬を伝っていた。
「無理もないわ。あれだけ辛い思いをしてようやく手に入れた平和なんだから。泣いてもいいのよ」
「いえ......そういうわけじゃ......ないんです......」
なぜ、こんなにも涙が出てくるのだろうか。
なぜ、私は、この景色を欲したのだろうか。
なぜ、みんなが笑っているのに私は泣いているのだろうか。
なぜ、こんなにも寂しいのだろうか......。
......
遠くの扉の方に、龍の羽を生やした女の子の姿が見えた。
(......あれって)
この場に唯一いなかった人物。
その女の子はこちらをチラッと見た後、どこかへと姿を消した。
「あっ......待って!」
慌ててその後を追いかける。
スカートのヒラヒラとした部分が足を奪って走りづらい。二度とこんな服は着たくないと思ってしまった。
「デルシア、どうしたの?そんなに慌てて」
「見えたんです。ネイさんの姿が!」
「ネイ?誰?その子」
「え......」
知らない......?
「ネイさんは私達の仲間でしょ?私達と一緒に、平和のために戦ってくれた、大事な仲間でしょう?」
「ごめんなさい。私はその子を知らないわ。そんな子、軍の中にいなかったから」
どうなってるんだ......?
これだけ都合よく進んでいる世界で、唯一不都合が発生している。
夢じゃないということなのか?
いや、そんなはずがない。私には直前のリエンド戦の記憶がある。私は、リエンドの攻撃をもろに喰らってこの状況になった。ここが天国とかそういうのじゃないかとも考えている。
「ごめんなさい!」
走りづらいスカートの端をビリビリに破いて、普段の服装に近い形にする。見た目がちょっとあれだが、動ければそれで問題ない。
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※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
みんながいた城から出て数十分。たまに見えるネイの姿を頼りに、私は深い森へと足を踏み入れていた。
「ネイさん!どこにいるんですか!」
ただでさえ深い森だから視界が悪いというのに、霧のせいで余計何も見えなくなっている。それでも、ネイの姿が見えた方角に一直線に進む。
「ネイさん!」
彼女に会えば、この世界が何なのか分かるかもしれない。みんなが彼女のことを忘れている中で、私だけが覚えている。これには意味があるはずだ。
だから、ネイの後を追いかけ続けているのに、一向に追いつくことが出来ないでいる。
そして、体力もそろそろ尽きかけてきたかという時に、視界の開けた場所へと辿り着いた。
「......ネイさん!」
ネイがその場に立っている。もう逃げる様子はない。
「ネイさん!ネイさんは、この世界のことを知っているんですか!この、私にとって都合よく作られた世界のことを!」
「......」
ネイは振り向きもせず、また喋ることもなくその場に立っている。
「ネイさん!」
「やれやれ。そんなに大声を出さんでも聞こえておるよ」
「ネイ......さん?」
「そっちじゃなくて、こっちじゃこっち」
白陽の正月着を着た女の子が1人、ネイの後ろから現れた。
「さて、案内ご苦労さまじゃ」
ネイの体がストンとその場に崩れ落ちる。
「......あなたは?」
「妾もネイじゃ。お主がよぉーく知っておる」
いや、ネイはそんな喋り方をしない。もっと、お淑やかで上品な話し方をする人だ。
「見て分からんか。この角、この羽、そして、この胸のデカさを見ても、まだ違うと思うか」
体の各部を触りながら強調してくる。
「まあ、お主はあんまり見てないから分からんか。ボコボコにされた記憶くらいならあるんじゃないのか?」
「もしかして、私を原始化から解放してくれた......」
「おお。やっと思い出してくれたか」
「......で、それがネイさんだと繋がるわけじゃないと思うのですが」
「って、まだ分からんか......」
人を呆れさせる事に定評のある私だが、この夢世界でも呆れさせることになるとは思わなかった。
「まあ、この際妾がネイじゃとかそんなのはどうでもええわ。なんなら、今の妾はツクヨミと名乗った方がええくらいじゃし」
「んー、じゃあ、ヨミさんとでも......」
「もう気にせんわ。お主のあほんだらさは変わりないのう。いや、この時代のデルシアじゃから当たり前か」
さっきから言ってる事の意味が分からない。名前に関しては一段落付いたが、じゃあ、この人は何のためにここにいるのかが本番だ。
「お主、この世界を見てどう思った?」
「どうって......」
「シンゲンとアルフレアは親友のようにしており、アイリスとセルカはメイドとして戦いから無縁の生活。ミューエはちゃんと親友としてお主の側にいて、お主は創真王国の王となる。この世界をお主はどう思う?」
「......とても、幸せな世界だと思いました。私が望んでいたものそのものだと」
「......」
「みんな、幸せそうで、誰一人として欠けてなくて、シンゲン兄さんにサツキ、レイさんカイリさん、クウガさん、カンナさん。アルフレア兄さんにベルディア姉さん、オメガさんロウラさん、ゼータさんシータさん、イグシロナ、ガンマさん、カイナさん。アイリスさんとセルカさん。そして、ミューエさんがいる」
「全員、表の世界と裏の世界で戦ってきたお主の仲間、いや、家族じゃな」
「......はい。みんな、私の大事な家族です」
「......お主は、この世界をどう思う?」
「......幸せいっぱいの世界で、私はこれでもいいと思いました。でも......」
「気づいたんじゃな」
「......はい。こんな偽りの幸せ、なんの努力もなしに得た幸せ。こんなの、私が求めていたものじゃないんです。私は、例えボロボロになっても、みんなと一緒に本当の幸せを掴みたい」
「......デルシアらしいのう」
「......あなたは、なぜここにいるんですか?終焉の刃は渡したはずでしょう?」
「そう言えば、創世の剣の使い方を教えとらんかったなと思って。あと、妾は刃を回収しても歴史の管理があるから元の未来には戻れんのじゃ」
これまた難しい話を......。でも、それがこの人の役目なのだろう。
「創世の剣は、自分が創りたいと思った未来を創る。ここにある世界みたいに、丸ごとというわけではないがな。平たく言えば、その剣は使用者の想いを形にする武器じゃ」
「想いを......形に......?」
「終焉の刃のような、全てを終わらす武器では、リエンドを倒せてもその終わりを繰り返されるだけじゃ。それは、前回の周で経験したじゃろう」
薄らと記憶に残っている。
「お主がこの世界を望むのなら、この世界を選ぶが良い。リエンドはそれで感謝するじゃろうな。じゃが、苦労して手に入れたものに価値を感じるなら、戦うしかない。己の想いをその剣に込めて」
「......」
ここは、選択肢なのだろうか?
リエンドが作り出した理想郷と、私達の現実。
でも、そんなのは比べるまでもない。とっくに決まっている事だ。
「あなたは、何者なんですか?」
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「今、この時代におるネイは、いずれお主の傍から離れて己を見つける。別れは必然じゃが、それでもお主は理想のために戦うのじゃな?」
「はい。私は、私が夢見たものを、みんなと一緒に、私の夢を見るために......」
「なら、長い夢から覚めるが良い」
世界が崩れていく。
これが、本当に、夢だったんだと証明するように。私が目を覚ましたからこの世界は崩れ去っていく。
でも、私は、この景色を現実で再現してみせる。だって、夢は夢でも、思い描いていたものに変わりはないのだから。
「行け。真を創る勇者よ。お主の道は明るく照らされておるぞ」
......
......
......
「おい、デルシア、しっかりしろ!おい!」
この声......シンゲン兄さんか......。相変わらず、耳元でうるさい声を出す。
「デルシア、こんなところで倒れるな。ここで倒れたら、俺はお前を許さん」
そんな悲観に満ちた声で話さないでほしい。アルフレア兄さんには、兄さんらしく堂々としていてほしい。
アルフレア「デルシア」
イグシロナ「デルシア様」
ガンマ「デルシア様」
ベルディア「デルシアー」
羅刹「起きろよデルシア」
アイリス「デル......シア」
ネイ「デルシア......さん」
良かった。みんないるみたいだ。まだ、あの理想は叶えられそうだ。
「いつまで寝てるつもりなの?」
分かってる。いつもいつもそう言ってくるけど、ちょっと朝に弱いだけなんだから。
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うん。私は、戦う。みんなのために。
「あなたは、私の親友よ。だから、こんなところで倒れちゃダメよ」
私の夢のために......
夢の続きを、現実で見るために......
「「 私達で、夢を現実に 」」
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