グランストリアMaledictio

ミナセ ヒカリ

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第6章 【龍の涙】

第6章4 【錬金術の魔導士】

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 ネイりんの熱中症には驚いたが、マジックアルケミストの協力もあって、なんとか大事には至らずに済んだ。

「うわー、龍人が本当にいるー!」

「だからやめときなさい。他の人が聞いてるかもしれないから」

「大丈夫だって。どうせこの宿には俺達以外にいねえから」

「そういう事だぞーサリアー!」

 ......よく見ると、ミーニャの猫耳カチューシャだと思ってた部分は、本物の猫耳だ。

「ミーニャのこれって......」

「ああ、あたし、猫人っていう種族らしくてさ、普通に猫耳生やしてたら色々と言われるからこうやって髪を染めて隠してるんだ」

「隠してるというか、カチューシャに見えるようにしてるってだけだけどね」

「そういう事なのだー!」

 1日中暴れてたと言うのに、物凄く元気だな。魔導士って、みんな疲れ知らずなのかな?

「それで、一先ずは落ち着いたところで聞きたいのだが、この龍人の子はどこで仲間になったんだ?龍人、それも飛龍の子なんてそうそういないだろ?」

「あー......、それに関しては海より深い理由があってだな......」

 まさか、邪龍教関係で仲間になったとは言えないだろう。

「えーっとだな......個人情報だ。話せねえ」

「そうか。ミーニャの出自に関しては色々話してやったと思うのだが」

「それはお前らから勝手に話してきたんだろ」

「そうだったな。いや、実を言うとうちのマスターが亜人趣味でな。他のギルドに亜人がいることを嫌う人なんだよ。決勝大会に進んでも、極力見せないようにしろよ。うちのマスターが何するかが分からん」

「相変わらずだな......」

 亜人趣味のマスターって何?そんな変な人がいるところなの?マジックアルケミストって。

「そういや、本当に、半分の5000ゼルを貰って良かったのか?」

「いいって気にすんな。ネイを助けてくれた礼だ」

「そうか」

「そういう事だ。んじゃ、腹も減ったし、飯だ飯ー!」

「おー!飯だー!」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「はむ、むしゃ、むぐ、ゴックン」
「はむ、むしゃ、むぐ、ゴックン」

 横に並べると、ミーニャはヴァルが女の子になった版に見える。

「ミーニャ、もっと落ち着いて食え。食べ物は逃げん」

「ヴァルももうちょっと落ち着いて食べようよ。喉に詰まるよ?」

「「 ふぐっ 」」

 あーあ、これは喉に詰まった感じだな。1歩遅かったか......

「「 はい、水 」」

「「 ぷはーっ 」」

 なんだこの光景。

「......そういや、ヴェルドとシアラは?」

トーリヤ「あの黒髪と青髪なら、どっかその辺に行ったぞ。なんか、黒髪の方が必死な顔して逃げるような感じだったな」

「いつもの鬼ごっこか......」

「あいつらのことなんか気にしなくていいんだよ。つか、いねえんだったらその飯俺達が食っても大丈夫だよな?」

「帰ってくるかもしれないからやめときなさい」

 食い意地だけは見上げたものだ。もう皿の中が空っぽになってる。

「わー、ご馳走様だー!」

「ごっそうさん」

 落ち着いて食べようよと言ったのに......。

「おっしゃミーニャ!食ったら走り込みだー!」

「おー!負けないぞー!」

 こいつらは兄妹......みたいに仲がいいな。本当に、私の知らないところで色んな関係が結ばれてる。

「......さて、あの赤髪の少年がいなくなったところで、あの龍人について聞きたいのだが、良いだろうか?」

「......」

 まさか、それを聞かれるとは思っていなかったので、思わず唾を飲み込む。

「......先程も言ったが、うちのマスターは極度の亜人趣味だ。飛龍の龍人も例外ではない」

「何を......言いたいんですか......」

「単刀直入に言う。ネイをうちのギルドに招待したい」

「......」

ハイルン「おいサリア。いきなりそれ言うのかよ」

「遠回しに言っても無駄だ。それに、ネイは龍人が故に、ギルドで苦しんでいるのではないか?」

 そりゃあ ......、確かにそういう節はあったけど......。

「うちのギルドは、亜人が多いお陰でそういう差別がない。ネイがいるには相応しいところだと思うんだ」

 そう言われても、私一人が決められることじゃないし......。どう答えるべきか......。

「実を言うと、私も狐族の者だ。今はこうして耳を隠しているが」

 髪色とほぼ同化していたカチューシャを外すと、今まで見えなかった獣らしい耳が顕になる。

「もしかして、トーリヤとハイルンも?」

トーリヤ「いや、俺達は普通の人間だ。人間と言うよりかは、猿人と言った方が良いかもな」

 猿人......そうか。私達は猿が進化して人になった姿だったっけ?確か、太古の歴史じゃそうなってたか。

「......でも、ネイりんはうちのギルドで幸せにやってるよ。色々あったけど」

「そうか。その色々と言うのは、邪龍教絡みか」

「......知ってるの?」

「あれだけの大きな事件だ。こちらの耳に届かないわけがない」

 それもそうだ。イーリアスとラグナロクという、国同士の争いでもあったのだから、どこかで聞いてるはずだ。

「もう一度言う。私は、彼女をうちのギルドに引き入れたい。マスターの為でもあるが、私自身、彼女に興味がある。この世界に数少ない龍人で、尚且つ飛龍の子だ。研究のしがいもある」

トーリヤ「サリア。それは、ただの怪しい研究者にしか見えねえぞ。もっと言葉を選べ」

「すまん。だが、私の気持ちを伝えるにはこうしかない。どうだろうか?」

 どうだろうか?って聞かれても......

 何をどう言われても、私に決定権はない。どうせ話すならヴァルにって......ヴァルに話しても埒が明かない事を分かっているから私に話してきたのか......。

 何をどう答えても、この人は引いてくれそうな感じがしない。私がフウロくらい強く当たれる人だったらな。

「ネイは......」

「私は、あなた達の所に行くつもりはありませんよ」

「......ネイりん!?熱、大丈夫なの?」

「ちょっと喉が渇いただけです。そしたら、なんか私を取り合うような内容の話が聞こえてきたので」

「......君は、私達のところに来るつもりはないのかい?君だって、そのギルドのところにいたんじゃ窮屈だろ?」

「そんなこと」

「黙っててください。セリカさん」

 いけない。私の方がカッとなってしまった。

「私は、私達が作ったギルドにいて幸せです。あなた達のような、訳の分からない亜人集団のところに行くつもりはありません」

「......意志は固いようだな」

「ええ。私はこのギルドが好きですから。亜人趣味のシーンさんには申し訳ないですけど、今回の話は、私という存在は見なかったことにしておいてください」

「......なんでうちのマスターの名前を知っている!?話したか?」

「調べたら1発です。私達を侮らないことですね。今度の大会、私達が勝ちますから」

「......やめだやめだ。今の話は全部なかったことにする。変なことを聞いてしまって済まないな」

ハイルン「いいのか?マスターにこの事が知られたら」

「黙ってたらいい。ミーニャにも口止めしとく。だが、次の大会。お前達は負けないと言ったな」

「ええ。私のギルドは負けませんよ」

「うちも負けないぞ。亜人の恐ろしさ、見せてやる」

 亜人同士の睨み合い。私がここにいて良かったのだろうか。

 まあ、そんな事よりも、ネイりんがグランメモリーズのギルドを好きでいてくれたことに驚きだ。

「......うっ」

 熱中症の症状が残っていたのか、ネイがその場に倒れる。

「ネイりん無理しちゃダメだよ」

「......すみません。まだ体が熱くて」

 仕方ないので肩を貸してあげる。

 体が熱いと言う割には、とても冷たい。冷やしていたからというのもあるのだが、ネイりん自体が冷たい体をしている。鬼族が冷たい体だとか言っていたが、飛龍族も冷たい体になるんじゃないのか?まあ、どうでもいいけど。

(セリカさん)

(......何?)

(絶対に、勝ちましょうね)

(......うん)

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「うおぉぉぉぉぉ!」

「うぉりやぁぁぁぁぁ!」

「な、なんだあいつら!?」

「うぉぉぉぉぉぉ!」

「うぉりやぁぁぁぁぁ!」


「しゃァ!俺の勝ちー!」

「負けたぞー!」

 砂浜で走ると、思った以上に体力を消費する。いい運動になった。

「走ったら腹減ってきたー」

「あたしもー。あそこに売店あんじゃん。しかも、まだ開いてるよー」

 こんな時間に開いている売店とはなんなのだろうか。まあいいや、なんか食えればそれでよし。

「おっちゃん!ここ何が売ってんだ」

「これがメニュー」

 なるほど。ハンバーガーショップか。ありがちだな。

「お前、何食う?」

「ん?あたしお金もってないよー。サリアに無駄遣いするからって、あたしのお金は預かられてるよー」

 しっかりしてんなーサリア。まあ、こんな奴に金を預けてたら、そら無駄遣いですぐに無くされるわな。

「俺が奢ってやるよ。これくらい安いもんだ」

 後でネイにバレたら怒られそうな話だが、ミーニャに口封じしておけば問題ない。

「んじゃー、あたしこれとこれねー」

 ビッグバーガーに、チキン&チーズバーガー。意外と食うなこいつ。いや、俺が言えたことじゃねえけど。

「おっちゃん。これとこれとこれな」

「はいよ。8ゼルね」

「はい」

「うりゃぁ」

「もうちょっと落ち着いて食えよ」

 ここにセリカがいたら「あんたがそれ言う!?」って言われそうだと思った。

「ごっそうさん!」

「早っ!」

「これくらいはペロッと平らげないとねー」

「口周り拭いとけよ。一応女なんだから、身だしなみには気をつけとけ」

「あーい」

 なんで俺がサリアみたいな事をしているのだろうか......。

「......なんでさー。人って、身だしなみとかそういうのに気を遣うんだろうねー。あたしはめんどくさいと思うんだけどなー」

 そらそうだろうな。その服とか水着だって、全部サリアが決めたやつだろ。

「この話したことあったっけ?あたしに妹がいたって話」

「いや、初耳だ」

「そうかー。んじゃ、話そっか。あたしにいた妹、名前はカイナって言うんだけどねー」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「そういや、昔カイナって人によく絡まれた記憶があるんですよ」

「カイナ?」

「あのミーニャって人とよく似てるんですよ。そのせいか、思い出しちゃいました」

「そうか......そういや、私達と会う前に5ヶ月の空白期間があったもんね」

「私にとっては空白じゃないんですけどね」

 デルシア......。創真王国の王になったと聞いたが、元気でやっているだろうか。

 もっと世界を見たいという言い訳で、ただ逃げてただけだった。自分からも、みんなからも。

 思えば、あの時にミイの人格を自覚してたからだったのかな。

「あの人、やたら私の体を触ってきてましてね。もうくすぐったいし、服がズレるしで大変でしたよ」

「そんな仲間もいたんだ。で、その人って、今どこにいるの?」

「さあ。創真王国あたりにいることは分かってるんですけどね。多分ですけど」

「創真王国?」

「あれですよ。最近建国されたって言う、デルシアさんが治める平和主義の国です。今の世の中じゃ有り得ない軍隊無しの国ですよ」

「ぐ、軍隊無し!?そんな国だったんだ......」

 彼女のことだから、争いはもう無しってことの表れなんだろうな。

 私も、彼女達について行けば別の未来があったのかな。邪龍にならず、変な記憶で苦しむこともない。

 ......でも、私はセリカ達に会えて良かったと思う。色々とはあったけど、自分を見つけることが出来た。一生の宝を手に入れることも出来た。

 それに、ミイ、いやユミとも心を通わせることが出来た。

「セリカさん。1つ、渡したい物があるんですよ」

「......?これって」

「精霊魔導師なら、これが何かは分かるでしょう?」

「鍵?誰の?」

「私の精霊、ウラノスです」

「えぇぇぇ!?ね、ネイりん精霊遣いだったの!?それに、それならこんなもの貰えないよ!」

「いいんですよ。彼には十分私のために尽くしてもらいましたから。ここらが潮時なんです。そろそろ、新しい術師のところに行ってもいいと思うんですよ」

 それに、ウラノスはたくさんの精霊を束ねるセリカの元にいるべきだとも思う。セリカなら、ウラノスの本当の力を引き出してくれる。

 簡単に言ってしまえば、期待してるってことになる。

「これをあげるんですから、負けたら承知しませんよ。あ、ただウラノスはマナの消耗が激しいので気をつけてくださいね」

「う、うん。ありがとう......」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「へー。そんな子がいたんだな。つっても、お前そっくりだな」

「まあそうだね。あたしそっくりに元気な子だったね」

「......今、そいつは何してるんだ?」

「さあ。大分前に、あたしが里を飛び出しちゃったからね。しかも、その里は最近消滅したって聞いちゃったし、本当にどこで何してるのかな」

 消滅した......?今、サラッととんでもない事を言ったぞこいつ。

「会いたい。だけど、どこにいるかも分からない。まあ、里を飛び出したあたしが、今更どんな顔で会いに行けるかは分からないけど」

「......まあ、そのうち会えるんじゃねえの?」

「そうだね。そろそろ、宿に戻ろうか」

 おてんば娘だと思ってたが、意外と思うところもあるんだな。ネイみたいなものか。

 こうして、俺達の7日間の修行は、なんやかんやあって終わった。本当に、なんやかんやあった。
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