191 / 434
第8章√NH 【星界の家族】
第8章4 【星界のメイド】
しおりを挟む
「はぅ......えーっと、ネイ様がここに来られた理由は、ご主人様を探してで、顔がおさなーー」
ネイ「それ以上は言わなくていいです」
「は、はい......」
ネイ「で、この様子だと、お姉ちゃんはいなさそうですけど......」
「......はい。ご主人様は、2年前に家を出られたきり、ずっと帰られていません」
俯き加減にそう言う『スピカ』。
お姉ちゃんがいなくなってから、2年間この屋敷を維持し続けている。それも、なんの見返りもなしに。
気の毒な話だとは思うが、お姉ちゃんがいないのだったら、ここに残る理由もない。
スピカ「ど、どちらへ......?」
ネイ「お姉ちゃんがいないのだったら、ここにいる理由もありません。私の目的は、家族に会うことですから」
スピカ「......」
ネイ「......?」
地響き?
何やら、カタカタと音が鳴っている。
ネイ「......地震ですか?」
スピカ「......?あ、もしかして......」
ネイ「......?」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「グァァァァァァ!」
スピカに連れられて来た場所は、屋敷の地下にある、結界系の魔法によって覆われた空間。その中に、縦にすれば3mはあるそこそこの龍がいる。
ネイ「これが......地響きの原因ですか?」
スピカ「はい......2年前、突如としてこの屋敷を襲った龍です。ご主人様が、こうして封印されたのですが、最近の活動を見ると......」
ネイ「いつ結界を破るか分かったもんじゃない。という事ですね」
スピカ「はい......」
なるほど。このまま、黄色の龍をここに置いておくのも可哀想だし、安らかに逝かせてあげるか。
スピカ「な、何をするつもりですか!?」
ネイ「この龍を解放します。いつまでも、こんなところにいたんじゃ可哀想ですからね」
スピカ「で、でもそんな事したら......」
ネイ「一思いに殺すだけです」
スピカ「え、えぇ......」
結界を作り出していた魔術書を、全て燃やし尽くす。
ラナ(五龍王で決めよう)
ネイ「分かりました。五龍王憑依」
龍が完全に意識を取り戻す前にトドメをさす。
彩ネイ「「「 輝幻・氷海の閃光! 」」」
相手に幻惑の魔法をかけ、混乱させたところに一気に息の根を止めるべく、急所への道を照らす。あとは、そこにアマツ、シズの攻撃を合わせれば、この龍は死ぬ。
ヒカリ(何その力......!)
そういや、ヒカリには説明したことがなかったな。
スピカ「す、すごいです......龍が一瞬で......」
ネイ「......」
殺した龍は、その姿を集束させ、1冊の本へと変わる。
スピカ「......これは?」
ネイ「魔導書によって、龍を召喚していたようですね」
となれば、これは人工的に生み出されたもの。一体誰が?
お姉ちゃんが敷いていた魔導書も、ほんの申し訳程度の結界でしかない。お姉ちゃんは、この龍がどんなものかを知っていた?
スピカ「......はっ、ありがとうございました!私では、どうしようも無かったものを、流石はご主人様の妹様です!」
ネイ「いえいえ。これくらいは余裕ですから」
スピカ「流石です!」
龍を倒した。だからなんだ。お姉ちゃんが残したものの意味だって分からない。
召喚された龍、それを封じ込めるための魔導書。
ネイ「......?上の方に、誰かいますね」
スピカ「う、上?」
ネイ「誰かが、この屋敷に入って来たようです」
スピカ「な、なんで今日に限ってお客様がこんなにも......しかも、掃除も中途半端だと言うのに......」
ネイ「とりあえず、メイドなら出迎えた方がいいんじゃないですか?」
スピカ「そ、そうですね!行ってきまギャフン!」
床にあった出っ張りに、綺麗なくらい引っかかって頭からコケた。
私でも、ここまでのドジはしない。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「ここが、あいつの実家か」
「うん、そうみたい。この世界には似合わない立派な屋敷だけど......」
この世界には似合わないか......まあそうだな。こんな腐敗しきった世界では、これほど立派な屋敷など有り得ない。まあ、蔦が微妙に刈り残っているところを見ると、管理する奴は微妙な奴っぽいけどな。
《ギィィィ......》
見た目とは裏腹に、古臭さを感じさせる音。手入れが入ってるのか入ってないのかがよく分からないな。
「ポルックス、灯りを点けてくれ」
「うん、ルミナス」
薄暗い廊下。
壁は、所々が綺麗なところがあるが、やはり、所々が汚いまま。手入れする人間が雑なんだな。
「......足跡。しかも、埃の立方からして、つい数分前に誰かが訪れているな」
「見て、お兄ちゃん。この先の扉、無理矢理開けたような跡があるよ」
中途半端に掃除されていると言えど、埃の立方には目立つものがある。特に、隅の辺りとか、壁に沿った面にかなり埃が残っている。そして、突き当たりの扉前には、妙に綺麗になった部分が見られる。
「入ってみるか」
「うん」
やはりというかなんというか、この扉を開ける時には、玄関を開けてきたような軋む音がそこまで大きくなかった。
「......誰もいないな」
扉の先には、数々の本棚が円形に並んだ空間がある。
「ここだけは掃除が行き届いてるね。他と比べると綺麗だよ」
「ああそうだな」
他の雑っぷりと比べれば、遥かに綺麗なこの空間。別の人間が掃除でもしてるんじゃないのか?
「......誰だ!」
後ろから足音がした。
「女?」
「あああああ、あのあの、誰なんですか!あなた達!ここここ、ここはご主人様のお屋敷です!勝手に入って勝手に物色するとか、どどどど泥棒ですよ!」
メイド服を着ているが、この家の住人だろうか?
「あんた、ここの住人か?」
「ええええ、えっと、あ、あなた達は何者なんですか!」
......そうだな。俺達が名乗らんといけない立場だな。
「俺はカストル。こっちは、妹のポルックスだ。あんた、星界軍ってのは知ってるよな?」
「せ、星界軍......ですか。はい、知ってますけど......」
「ここ、イデアルって奴の家で間違いないか?」
「ご、ご主人様を知っているのですか!?」
「......?知ってるも何も、イデアルは俺達の軍にいる」
「ご、ご主人様が軍に......」
なるほどな。こいつは、イデアルが雇っていたメイドといったところか。
確かに、あいつは2年前からずっと軍本部で生活をしている。家には誰もいないと思っていたから、誰も連絡を寄越していないし、こいつが知らない理由もよく分かる。
「スピカさん、上2人は誰でしたかー?こっちは完全に解読完了ですよー」
スピカと呼ばれたメイドの後ろから、ポルックスと同じようにルミナスを点けた少女が現れる。
「......?イデアル?」
照らされた少女の姿は、白色の髪に、飛龍にしては低い身長。前髪のせいでよく見えないが、顔立ちも自然と似ているように思える。
「お兄ちゃん、あの人って......」
いや、イデアルは、第1部隊ごと戦線に出たはずだ。ここにいるわけがない。
何者だ?
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ネイ「カストルさんに、ポルックスさん?」
カストル「うむ。その名で間違いない」
ネイ「で、星界軍でしたっけ?」
カストル「ああそうだ」
はぇ......どこの世界にも、似たような争いがあるもんだなぁ、ヒカリの調べで知っていたけど、あえて知らないフリをする。
なんでかって?お姉ちゃんの居場所を聞くためには、知らないフリをしている方がホイホイと口を割ってくれるからだ。
スピカ「あ、あの、お飲み物は如何ですか?基本、なんでもありますよ」
カストル「そうか。なら、コーヒーの無糖」
ポルックス「私、ミルクコーヒー」
ネイ「私は緑茶でお願いします」
スピカ「りょ、緑茶ですか?」
ネイ「無いんですか?」
スピカ「い、いえ、一応ありますけど、その、緑茶を飲む人なんてあまり、見ないものですから」
まあ、ヴァル達の世界でも、緑茶はある一定の地域での飲み物だからね。和の少ない世界では、これが普通。
ヒカリ(あんたも変わったものを飲むわね。私なら、迷わずブラックよ)
私は、ヒカリほど苦いものが得意ってわけじゃないのだけれど......
カストル「それで、あんたは何者だ?イデアルに似ているかと思ったが、顔立ちはちょっと違うっぽいし、でもこの屋敷にいるくらいだ。何か関係があるんだろ?」
ネイ「私の名前はネイ。イデアルとは、多分姉妹の関係です」
カストル「多分?」
ネイ「......まだ、姉の姿をこの目で見た事がないんです。というか、つい先日まで姉の存在は知りませんでしたし」
そこからは、私が姉を探すに至った経緯を説明した。なるべく過去を知られない範囲で、相手が納得できる説明をする。
カストル「なるほどな。姉がいると知った以上、何もしないわけにはいかないと、この腐敗した世界にやって来たわけか」
ポルックス「お兄ちゃん、今の話が本当なら、この人、とんでもない人だよ」
カストル「ああそうだな」
ネイ「......で、あなた達はお姉ちゃんの居場所を知っているんですか?私を見た時に、一言『イデアル?』なんて呟いてましたけど」
カストル「聞こえてたのか」
そりゃあ、耳がかなり良いものですからね。どんな話をしていても、何でも聞こえますから。
カストル「......なあ、あんた。星界軍の仲間になる気はないか?」
ネイ「薮からスティックに何ですか」
カストル「正直に話す。イデアルは、俺達星界軍の一員として戦っている。俺達の仲間になれば、あいつに面倒な手続き無しで会うことが出来る」
ネイ「その代わり、私があなた達の戦を有利に進める。という条件ですか」
カストル「悪くない話だろ」
まあ、悪くはない。戦争とはいえど、今の私が参戦してしまえば一瞬で終わる。ゆっくり話す時間だってたっぷりと作ることが出来る。
ただ、この世界の理を考えれば、睡眠薬とかで簡単に眠らされてしまう。戦時中だ。人を殺したり、利用したりするための道具はなんでも揃っているだろう。それで、神様だなんだ言っても、睡魔に抗うことが出来ない私は、簡単に牢に鎖で繋がれる。
......いや、出始めからこの人達を疑うのも失礼か。今までが今までだけに、ちょっと疑心暗鬼になってるのかな。
ヒカリ(あんたが悩む理由も分かるけど、私は乗ってもいい船だと思う)
ヒカリがそう思うのなら、それで良いか。
ネイ「分かりました。あなた達に手を貸すことは約束しましょう」
カストル「本当か!」
ネイ「ただし、私の戦い方はあなた達の想像するものの斜め上です。あなた達には理解できないことも多々あるでしょう」
カストル「それは皆も理解してくれるだろう」
ネイ「それと、軍本部に着いたら、真っ先にお姉ちゃんに会わせること。会わせないことには、戦場に出ませんから」
カストル「即か......しばらく待つことになるかもしれんな」
ネイ「構いませんよ。私に時間はたっぷりとありますから」
カストル「......分かった。隊長にはそう伝えておく」
まあ、その気になれば無理矢理お姉ちゃんに会いに行くことは可能なんですけどね。でも、それだとゆっくりと話す機会が無くなってしまうかもしれない。
大人しく、今は普通の人間のフリをしておくのが吉。
スピカ「あの、お飲み物をお持ち致しましあぁっ!」
スピカが、積み上げておいた本に足を取られ、盆に飲み物を入れた容器を乗せたまま転げる。そして、それは私の後ろで行われたことであり、もちろん、転んだ先には私がいる。あとは分かりますよね?
カストル「......だ、大丈夫か?」
頭にかかる、緑色の液体。何を手違ったか、冷たい液体である。
スピカ「すみませんすみませんすみません!」
ネイ「スピカさん。別に転げたことはどうでもいいんですけど、これ緑茶ですよね?超冷たいんですけど」
スピカ「え、ええ!?あ、お湯を沸かすのに失敗してたかもしれません!」
......
......
......
お姉ちゃん、本当に、こんな絵に描いたようなドジっ子メイドを、お姉ちゃんが雇ったの?
ネイ「それ以上は言わなくていいです」
「は、はい......」
ネイ「で、この様子だと、お姉ちゃんはいなさそうですけど......」
「......はい。ご主人様は、2年前に家を出られたきり、ずっと帰られていません」
俯き加減にそう言う『スピカ』。
お姉ちゃんがいなくなってから、2年間この屋敷を維持し続けている。それも、なんの見返りもなしに。
気の毒な話だとは思うが、お姉ちゃんがいないのだったら、ここに残る理由もない。
スピカ「ど、どちらへ......?」
ネイ「お姉ちゃんがいないのだったら、ここにいる理由もありません。私の目的は、家族に会うことですから」
スピカ「......」
ネイ「......?」
地響き?
何やら、カタカタと音が鳴っている。
ネイ「......地震ですか?」
スピカ「......?あ、もしかして......」
ネイ「......?」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「グァァァァァァ!」
スピカに連れられて来た場所は、屋敷の地下にある、結界系の魔法によって覆われた空間。その中に、縦にすれば3mはあるそこそこの龍がいる。
ネイ「これが......地響きの原因ですか?」
スピカ「はい......2年前、突如としてこの屋敷を襲った龍です。ご主人様が、こうして封印されたのですが、最近の活動を見ると......」
ネイ「いつ結界を破るか分かったもんじゃない。という事ですね」
スピカ「はい......」
なるほど。このまま、黄色の龍をここに置いておくのも可哀想だし、安らかに逝かせてあげるか。
スピカ「な、何をするつもりですか!?」
ネイ「この龍を解放します。いつまでも、こんなところにいたんじゃ可哀想ですからね」
スピカ「で、でもそんな事したら......」
ネイ「一思いに殺すだけです」
スピカ「え、えぇ......」
結界を作り出していた魔術書を、全て燃やし尽くす。
ラナ(五龍王で決めよう)
ネイ「分かりました。五龍王憑依」
龍が完全に意識を取り戻す前にトドメをさす。
彩ネイ「「「 輝幻・氷海の閃光! 」」」
相手に幻惑の魔法をかけ、混乱させたところに一気に息の根を止めるべく、急所への道を照らす。あとは、そこにアマツ、シズの攻撃を合わせれば、この龍は死ぬ。
ヒカリ(何その力......!)
そういや、ヒカリには説明したことがなかったな。
スピカ「す、すごいです......龍が一瞬で......」
ネイ「......」
殺した龍は、その姿を集束させ、1冊の本へと変わる。
スピカ「......これは?」
ネイ「魔導書によって、龍を召喚していたようですね」
となれば、これは人工的に生み出されたもの。一体誰が?
お姉ちゃんが敷いていた魔導書も、ほんの申し訳程度の結界でしかない。お姉ちゃんは、この龍がどんなものかを知っていた?
スピカ「......はっ、ありがとうございました!私では、どうしようも無かったものを、流石はご主人様の妹様です!」
ネイ「いえいえ。これくらいは余裕ですから」
スピカ「流石です!」
龍を倒した。だからなんだ。お姉ちゃんが残したものの意味だって分からない。
召喚された龍、それを封じ込めるための魔導書。
ネイ「......?上の方に、誰かいますね」
スピカ「う、上?」
ネイ「誰かが、この屋敷に入って来たようです」
スピカ「な、なんで今日に限ってお客様がこんなにも......しかも、掃除も中途半端だと言うのに......」
ネイ「とりあえず、メイドなら出迎えた方がいいんじゃないですか?」
スピカ「そ、そうですね!行ってきまギャフン!」
床にあった出っ張りに、綺麗なくらい引っかかって頭からコケた。
私でも、ここまでのドジはしない。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「ここが、あいつの実家か」
「うん、そうみたい。この世界には似合わない立派な屋敷だけど......」
この世界には似合わないか......まあそうだな。こんな腐敗しきった世界では、これほど立派な屋敷など有り得ない。まあ、蔦が微妙に刈り残っているところを見ると、管理する奴は微妙な奴っぽいけどな。
《ギィィィ......》
見た目とは裏腹に、古臭さを感じさせる音。手入れが入ってるのか入ってないのかがよく分からないな。
「ポルックス、灯りを点けてくれ」
「うん、ルミナス」
薄暗い廊下。
壁は、所々が綺麗なところがあるが、やはり、所々が汚いまま。手入れする人間が雑なんだな。
「......足跡。しかも、埃の立方からして、つい数分前に誰かが訪れているな」
「見て、お兄ちゃん。この先の扉、無理矢理開けたような跡があるよ」
中途半端に掃除されていると言えど、埃の立方には目立つものがある。特に、隅の辺りとか、壁に沿った面にかなり埃が残っている。そして、突き当たりの扉前には、妙に綺麗になった部分が見られる。
「入ってみるか」
「うん」
やはりというかなんというか、この扉を開ける時には、玄関を開けてきたような軋む音がそこまで大きくなかった。
「......誰もいないな」
扉の先には、数々の本棚が円形に並んだ空間がある。
「ここだけは掃除が行き届いてるね。他と比べると綺麗だよ」
「ああそうだな」
他の雑っぷりと比べれば、遥かに綺麗なこの空間。別の人間が掃除でもしてるんじゃないのか?
「......誰だ!」
後ろから足音がした。
「女?」
「あああああ、あのあの、誰なんですか!あなた達!ここここ、ここはご主人様のお屋敷です!勝手に入って勝手に物色するとか、どどどど泥棒ですよ!」
メイド服を着ているが、この家の住人だろうか?
「あんた、ここの住人か?」
「ええええ、えっと、あ、あなた達は何者なんですか!」
......そうだな。俺達が名乗らんといけない立場だな。
「俺はカストル。こっちは、妹のポルックスだ。あんた、星界軍ってのは知ってるよな?」
「せ、星界軍......ですか。はい、知ってますけど......」
「ここ、イデアルって奴の家で間違いないか?」
「ご、ご主人様を知っているのですか!?」
「......?知ってるも何も、イデアルは俺達の軍にいる」
「ご、ご主人様が軍に......」
なるほどな。こいつは、イデアルが雇っていたメイドといったところか。
確かに、あいつは2年前からずっと軍本部で生活をしている。家には誰もいないと思っていたから、誰も連絡を寄越していないし、こいつが知らない理由もよく分かる。
「スピカさん、上2人は誰でしたかー?こっちは完全に解読完了ですよー」
スピカと呼ばれたメイドの後ろから、ポルックスと同じようにルミナスを点けた少女が現れる。
「......?イデアル?」
照らされた少女の姿は、白色の髪に、飛龍にしては低い身長。前髪のせいでよく見えないが、顔立ちも自然と似ているように思える。
「お兄ちゃん、あの人って......」
いや、イデアルは、第1部隊ごと戦線に出たはずだ。ここにいるわけがない。
何者だ?
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ネイ「カストルさんに、ポルックスさん?」
カストル「うむ。その名で間違いない」
ネイ「で、星界軍でしたっけ?」
カストル「ああそうだ」
はぇ......どこの世界にも、似たような争いがあるもんだなぁ、ヒカリの調べで知っていたけど、あえて知らないフリをする。
なんでかって?お姉ちゃんの居場所を聞くためには、知らないフリをしている方がホイホイと口を割ってくれるからだ。
スピカ「あ、あの、お飲み物は如何ですか?基本、なんでもありますよ」
カストル「そうか。なら、コーヒーの無糖」
ポルックス「私、ミルクコーヒー」
ネイ「私は緑茶でお願いします」
スピカ「りょ、緑茶ですか?」
ネイ「無いんですか?」
スピカ「い、いえ、一応ありますけど、その、緑茶を飲む人なんてあまり、見ないものですから」
まあ、ヴァル達の世界でも、緑茶はある一定の地域での飲み物だからね。和の少ない世界では、これが普通。
ヒカリ(あんたも変わったものを飲むわね。私なら、迷わずブラックよ)
私は、ヒカリほど苦いものが得意ってわけじゃないのだけれど......
カストル「それで、あんたは何者だ?イデアルに似ているかと思ったが、顔立ちはちょっと違うっぽいし、でもこの屋敷にいるくらいだ。何か関係があるんだろ?」
ネイ「私の名前はネイ。イデアルとは、多分姉妹の関係です」
カストル「多分?」
ネイ「......まだ、姉の姿をこの目で見た事がないんです。というか、つい先日まで姉の存在は知りませんでしたし」
そこからは、私が姉を探すに至った経緯を説明した。なるべく過去を知られない範囲で、相手が納得できる説明をする。
カストル「なるほどな。姉がいると知った以上、何もしないわけにはいかないと、この腐敗した世界にやって来たわけか」
ポルックス「お兄ちゃん、今の話が本当なら、この人、とんでもない人だよ」
カストル「ああそうだな」
ネイ「......で、あなた達はお姉ちゃんの居場所を知っているんですか?私を見た時に、一言『イデアル?』なんて呟いてましたけど」
カストル「聞こえてたのか」
そりゃあ、耳がかなり良いものですからね。どんな話をしていても、何でも聞こえますから。
カストル「......なあ、あんた。星界軍の仲間になる気はないか?」
ネイ「薮からスティックに何ですか」
カストル「正直に話す。イデアルは、俺達星界軍の一員として戦っている。俺達の仲間になれば、あいつに面倒な手続き無しで会うことが出来る」
ネイ「その代わり、私があなた達の戦を有利に進める。という条件ですか」
カストル「悪くない話だろ」
まあ、悪くはない。戦争とはいえど、今の私が参戦してしまえば一瞬で終わる。ゆっくり話す時間だってたっぷりと作ることが出来る。
ただ、この世界の理を考えれば、睡眠薬とかで簡単に眠らされてしまう。戦時中だ。人を殺したり、利用したりするための道具はなんでも揃っているだろう。それで、神様だなんだ言っても、睡魔に抗うことが出来ない私は、簡単に牢に鎖で繋がれる。
......いや、出始めからこの人達を疑うのも失礼か。今までが今までだけに、ちょっと疑心暗鬼になってるのかな。
ヒカリ(あんたが悩む理由も分かるけど、私は乗ってもいい船だと思う)
ヒカリがそう思うのなら、それで良いか。
ネイ「分かりました。あなた達に手を貸すことは約束しましょう」
カストル「本当か!」
ネイ「ただし、私の戦い方はあなた達の想像するものの斜め上です。あなた達には理解できないことも多々あるでしょう」
カストル「それは皆も理解してくれるだろう」
ネイ「それと、軍本部に着いたら、真っ先にお姉ちゃんに会わせること。会わせないことには、戦場に出ませんから」
カストル「即か......しばらく待つことになるかもしれんな」
ネイ「構いませんよ。私に時間はたっぷりとありますから」
カストル「......分かった。隊長にはそう伝えておく」
まあ、その気になれば無理矢理お姉ちゃんに会いに行くことは可能なんですけどね。でも、それだとゆっくりと話す機会が無くなってしまうかもしれない。
大人しく、今は普通の人間のフリをしておくのが吉。
スピカ「あの、お飲み物をお持ち致しましあぁっ!」
スピカが、積み上げておいた本に足を取られ、盆に飲み物を入れた容器を乗せたまま転げる。そして、それは私の後ろで行われたことであり、もちろん、転んだ先には私がいる。あとは分かりますよね?
カストル「......だ、大丈夫か?」
頭にかかる、緑色の液体。何を手違ったか、冷たい液体である。
スピカ「すみませんすみませんすみません!」
ネイ「スピカさん。別に転げたことはどうでもいいんですけど、これ緑茶ですよね?超冷たいんですけど」
スピカ「え、ええ!?あ、お湯を沸かすのに失敗してたかもしれません!」
......
......
......
お姉ちゃん、本当に、こんな絵に描いたようなドジっ子メイドを、お姉ちゃんが雇ったの?
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
[完結]7回も人生やってたら無双になるって
紅月
恋愛
「またですか」
アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。
驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。
だけど今回は違う。
強力な仲間が居る。
アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
2度死んだ王子は今度こそ生き残りたい
緑緑緑
ファンタジー
王太子ロイは、かつて二度の革命によって祖国を崩壊させてしまった過去を持つ。命を落とすたび、彼はある時点へと巻き戻される。そして今、三度目の人生が静かに幕を開けようとしていた。
――自分は民を理解しているつもりだった。
だが実際には、その表面しか見えていなかったのだ。
その痛烈な自覚から、物語は動き始める。
革命を回避するために必要なのは、制度でも権力でもない。「人を知る」ことこそが鍵だと、ロイは気付く。
彼はエコール学園での生活を通じ、身分も立場も異なる様々な人間と深く関わっていく。
そこで出会う一人ひとりの想いと現実が、やがて国の未来を大きく左右していくことになるとは、この時のロイはまだ知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる