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最終章 【創界の物語】
最終章7 【暴食の拳】
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「っ……!」
一瞬一瞬が本当に気の抜けない戦い……。少しでも反応に遅れてしまえば、私の体はすぐにでも粉々にされちゃう。
ネイみたいに時間を止める魔法は使えない。でも、思考速度を加速させる魔法なら使える。それを用いて、私はなるべく全ての攻撃に反応できるようにする。それでも足りないところが出てくる。そんな時は、お父さんが横槍を刺す。
全力を尽くしても、同じ土俵には上がることの出来ない相手。闇に支配されていたお父さんでさえ、ここまで隙のない相手ではなかった。一体、お父さんと彼との間で、何が違うのだろうか。経験?それとも気持ち?
「分かんないけどっ……まだ死ぬわけには行かない!」
考えても埒が明かない問題なのは知っている。故に、私は生き残ることだけを考え、みんなの助けが来るまでを耐えるのだ。
ライザ「いつまでも逃げてんじゃねぇぞ!」
「っ……!」
段々と私が避ける方向が見えてきたのだろう。彼の攻撃が、段々と体に近づいてきている。
そろそろバリエーションを増やさないと……でも、やれる事はもうほとんどやった。魔法で反撃するのは、無駄にマナを消費するだけだからと端からするつもりはないが、それでも彼に攻撃が効いてくれたらどれだけ楽なことかと思う。
ウルガ「イデアル、考える前に動きなさい」
「分かってる……!けど……」
ウルガ「考える時間があるのなら、奴はとっくの昔に倒せれてますよ。私達には余裕がない。それくらい、賢いのですから理解したらどうですか」
むぅ……この人、味方なのか敵なのかよく分からない発言してくるなぁ。もっと味方を鼓舞するような言葉を使ってよ。
と、そんな事を考えてる時だった。
雷の拳が私の左頬を掠め、小さな切り傷を作った。
「っ!」
ライザ「はっ!もうお疲れか!」
「……これくらい、なんて事ありません!」
大丈夫。出来たのは、まだ微かな切り傷だけだ。
ーーと思っていた。でも、実際はただの切り傷じゃなかった。
「あ゛っ……!」
切り傷を中心にして、体の左半身が動かなくなった。
バランスが取れなくなり、私はその場に右膝で跪く。
ライザ「やっと捕まえたぜ!おうおうおう!体が随分と辛そうだなァ!」
「っ……!」
まずい……。次に攻撃されたら、確実に殺られる。どうにかして防衛術を考えないと……
一か八か、魔法で防ぎきってみよう。それくらいしか方法はない。お父さんの横槍にはあまり期待できないし。
ライザ「死ねゴルァ!」
「ユニバース・ツー!」
雷の拳と、全属性の防衛陣が激しくぶつかり合う。
ダメだ。防ぎきれない。横に受け流そうかとも考えたけど、こいつが微妙に手加減してるせいで、受け流したところですぐに体勢を戻されてしまう。
考えていないようで考えている。非常に厄介な相手だ事。でも……
「このくらいで……!」
受け流せないのなら、真正面から受け切ってやるのみ。だから、私は右手に込める力を強くする。防衛陣をもっともっと強くして、この受け流すことが出来ない程に手加減された雷の拳を受け切る!
ライザ「なっ……テメェ!」
「悪いけど、まだ負けてやるわけにはいかないから!」
ライザ「クソが!だったら……」
ライザが急に攻撃を止めた。
雷の衝撃から解放された私の右手が、小さく痙攣を起こしている。
ライザ「いい加減死ねゴルァ!」
ライザが攻撃を止めていたのは一瞬だけだった。すぐさま彼は右手を振り上げ、私の顔目掛けて振り落としてくる。それを、私がさっきの魔法で防ぐと、次は左手で殴ってきた。
そうして、右、左と交互に殴り付けられ、私はいつ反撃すればいいのかが分からなくなった。
ライザ「受け流しもダメ!かといってそのままじゃ俺様の勝ちになる!さぁ!どうすんだよ!クソババァ!」
まずい。まさか、こんな方法でやって来るとは思わなかった。
ーー相手は賢い。それに強い。私なんかが相手にできるものじゃなかった。今は、ただただ殴りつけられるのを黙って防いでいるだけ。でも、こんなの数分と持たない。どうにかして、脱出の糸口を探さないと……
でも、どうやって?もう、使えるものは使い果たしたし、逃げ出そうにも左半身が動かないんじゃ何も出来ない。ーーそうだ!お父さんは……!
ウルガ「全天の星空」
お父さんのことを思い浮かべた時、タイミング良くお父さんが横槍を刺してきた。
ライザ「っクソっ!」
お父さんの魔法がライザの右手を貫き、貫いた場所を中心にして爆発を起こした。ライザの右腕が無くなり、あたりに汚い血が飛び散る。
ウルガ「我慢させてしまってすみませんね」
「チャンスを伺ってたんでしょ。分かってるから……」
お父さんがどこからともなく私の隣に現れて、私の左半身を治癒した。
まだ若干の痺れはあるけれど、これなら普段通りの動きができる。
ライザ「クソが……あともう少しだって時にっ……。ふんっ、やっぱテメェも殺さなきゃならねぇか!」
ウルガ「殺せれるものならやってみてください。私は、イデアルと違ってそう易々とあなたの陣に入りませんよ」
「バカにしてる?」
ウルガ「いいえ。脅しです」
ライザ「ごちゃごちゃうるせぇんだよ!テメェら!」
ライザが再び高速で雷の拳を押し付けてきた。
今度は体がちゃんと動いてくれるので、私は右の方にちょいと避けて相手の攻撃をかわす。
ライザ「クソっ!」
「もう、あなた本当に何をしに来たんですか!何回も言いますけど、私人に恨まれるようなことはしてません!」
ライザ「自覚がねぇのかテメェは!」
「はいぃ!?」
え?私、マジで何かやらかしちゃってた?もしかして、記憶が無い間かなぁ?ペテルギウスと一緒に、色々ヤバい魔法を作ってたらしいし。うん、それくらいしか思い当たる節はない。
ライザ「自覚がねぇなら教えてやるよ!テメェは……テメェは……」
これから自分の罪が言い渡されるのかと思うと、戦闘中だというのに思わず唾を飲み込んでしまう。
ウルガ「イデアル。謝るなら早くにですよ」
「私自身知らないのにどうしろと?」
ライザ「テメェはイオラ師匠を殺した!1度ならず2度も!」
「い、イオラ?」
……ごめん。聞いたことないわ。
ライザ「俺様ァ、覚えてんだよ!テメェが水界の雪山で1度殺し、その次に同じ水界の訳分かんねぇ泉で殺した!忘れたとは言わせねぇぞ!」
ウルガ「イデアル、本当なのですか?」
「私、水界なんて数回しか行ったことないし、滞在期間も全部かなり短かった気がするんだけど……それに、戦争中の私は転移術まで使えなかったらしいし」
ウルガ「つまり、冤罪ということですか」
「かなぁ?」
こればっかりは、私自身に記憶が曖昧な期間があるため、絶対とは言いきれない。でも、彼の発言を聞く限り、どうにも人違いな気がする。……いや、だとしたら酷くない?
え?何?私、人違いで殺されかけてるの?たまったもんじゃないよそれは!私、まだ彼氏も出来てないんだから、人生に未練タラタラなんですけど!
ライザ「しらばっくれる気かテメェは!」
「しらばっくれるも何も、身に覚えがないんだけどー!」
ライザ「あぁ?そうやって逃れようってのかテメェは!」
うーん?多分、話が通じそうにないなぁ。こっちが相手に合わせつつ、どうにか穏便に事を運んであげないと。
とりあえず、そのイオラって人を殺した人物の特徴でも聞いてみるか。
「ねぇ!そのイオラって人を殺した人は、どんな特徴だったのー!」
ライザ「特徴?何言ってやがんだ!テメェそのものだろうが!」
なるほど。つまり、私似の白髪美龍人と。……ん?白髪の龍人なんて、私が知ってる中ではただ1人な気がする……。それも、最近金髪にイメチェンした……
……あれ?気のせいであると嬉しいな。
「もしかして、その人たくさん人格持ってたりするー?」
ライザ「人格?あぁ、確かにちょちょい髪色変わる変な奴だ……って、テメェの事だろうが!」
どうやら、ライザの方も少し、自分の探している相手に対して疑問を抱いてるっぽい。もしかしたら、私への冤罪は晴れるかも……!?
いやいやいや、落ち着け私。ここで焦っちゃいけない。折角、暴力じゃ埒が明かない相手と和解できるチャンスなんだ。慌てず騒がず相手を導け!
「人格が変わる……ふむふむ、となると、もしかしてやたら胸の大きな子じゃなかった?私の1.5倍くらいはありそうな」
ライザ「……ちょっと待て。確かに、あの女は師匠よりかなりデケェもん持ってた。盛ってるんじゃねぇかって思うくらいには……。そういや、ここってなんて名前の世界だっけ?」
「星界」
ライザ「星界……」
ライザは、急に大人しくなって雷の拳を振り解き、自分の記憶を確かめるように顎に手を当ててウロチョロ歩き回っている。右腕が無くなってる状態なんだけど、大丈夫かな?まあ、敵なんだから気にすることじゃないか。
あともうひと押し……
「もしかしてだけど、その人私の妹かもしれないわ」
ライザ「妹……?」
「そう!今は白髪じゃないけど、昔は綺麗な銀髪だった子よー。ついでに言うと、ここにいるお父さんと顔のパーツが諸々似てるわー!」
そう教えてあげると、ライザはお父さんの顔に近づき、ゆっくりとパーツ1つ1つを確認している。
本当は、一部お母さん似のものがあるんだけど、まあ大体はお父さんに似てるし、多分理解してくれるはず。
ライザ「もしかして、俺様ァ、大分勘違いしてた?」
「うん、多分」
ライザ「あ、そう?マジか……。あいつらがこの世界にいるって言うからわざわざ来てやったってのに、とんだ遠回りだったって事かよ!クソっ!」
ライザは足元を強く踏み付け、怒りを顕にしていた。
ライザ「迷惑かけたな。ちょっくら、俺に入れ知恵しやがった野郎共ぶっ飛ばしてからテメェの妹殺すわ」
「うんうん、頑張ってねー」
……
……
……
「で、許せるわけないでしょうがー!」
私は抑えきれなかった怒りを、立ち去るライザに向けて解き放った。
突然襲撃されたかと思えば、危うく殺されそうになるし、そしたらそれで、結局は人違いだったってわけだし、何なの?これ?私、またなんかやっちゃいました?
「ユニバース・インパクト!」
ライザ「っ!?テメェ!人が折角見逃してやろうってのに、何だその態度は!」
そうだよ。折角見逃してくれるのに怒りのままに行動しちゃう私ですよ!記憶が無い間、無感情に過ごしてた反動なのか知らないけど、私、ちょっと感情の起伏が激しいのよ!
「カラードライブ・コスモ!」
湧き上がる怒りの感情をそのまま原動力に変え、私はさっきまで以上の力を出してこの男を殺すことを考える。
いくら私に危害が無くなったとはいえ、次の標的が妹のネイに移っただけだ。あの子のもとに行かれたら……まあ、何だかんだでこいつを倒してしまうのだろうけど、それだと私の"姉"としての立場が無くなる(もう若干無くなってるかもしれないけど!)。
故に、私はこの男を殺す。何が何でも殺してやる……!さっきまでの仕返しだ!
ライザ「テメェ!調子乗ってんじゃねぇぞゴルァ!」
「あなたの方こそ、謝辞の1つでも無いんですかー!」
私の魔法と、彼の拳とが激しい激突を交わし、あたりに地響きを響き渡らせた。
ライザ「なっ、何だこの力……!」
「さっきまでの右も左も分からないような女と思わないでね!ユニバース・ゼロ!」
この世界の空を星空へと変え、私の手のひらに星々のエネルギーを集める。さっきのユニバース・ゼロとは違う。これは、本物の"ユニバース・ゼロ"だ。
全てを無に還す最大にして最凶の魔法。宇宙が誕生せし頃、全ては無だった。その無の再現!
「死んでぇぇぇぇ!」
ライザ「くっ……あ゛っ……」
ライザはさっきまでと同じだと思ったのか、自らの拳だけで全てを受け切ろうとした。でも、それは間違いだ!
そんな雷の拳如きで私の怒りは収まらない……!その身で味わえ!
ライザ「くっ……そっ…………あーあ、本気出さなきゃならねぇじゃねぇか!」
押し切られそうになり、冷や汗を垂らしていたライザの顔が、なぜか余裕そうな笑みへと変わった。そして、次の瞬間ーー
ライザ「暴食の拳」
私の魔法が、全て飲み込まれた……。いや、違う。全てーー
「食べ……られた?」
そう、まるで、肉を喰らい尽くすかのように、ライザの拳が全てを食らってしまったのだ。
ライザ「そういや、言わなかったか?」
力を出し尽くし、それでも届かなかったショックから、私は地面に膝立ち状態になる。そんな私を憐れむかのような目で見て、彼はこう言った。
ライザ「俺の名前はライザ。光楼宗、暴食の座に座る男だ」
彼は言った。
ーー自分は、"暴食"だと。
一瞬一瞬が本当に気の抜けない戦い……。少しでも反応に遅れてしまえば、私の体はすぐにでも粉々にされちゃう。
ネイみたいに時間を止める魔法は使えない。でも、思考速度を加速させる魔法なら使える。それを用いて、私はなるべく全ての攻撃に反応できるようにする。それでも足りないところが出てくる。そんな時は、お父さんが横槍を刺す。
全力を尽くしても、同じ土俵には上がることの出来ない相手。闇に支配されていたお父さんでさえ、ここまで隙のない相手ではなかった。一体、お父さんと彼との間で、何が違うのだろうか。経験?それとも気持ち?
「分かんないけどっ……まだ死ぬわけには行かない!」
考えても埒が明かない問題なのは知っている。故に、私は生き残ることだけを考え、みんなの助けが来るまでを耐えるのだ。
ライザ「いつまでも逃げてんじゃねぇぞ!」
「っ……!」
段々と私が避ける方向が見えてきたのだろう。彼の攻撃が、段々と体に近づいてきている。
そろそろバリエーションを増やさないと……でも、やれる事はもうほとんどやった。魔法で反撃するのは、無駄にマナを消費するだけだからと端からするつもりはないが、それでも彼に攻撃が効いてくれたらどれだけ楽なことかと思う。
ウルガ「イデアル、考える前に動きなさい」
「分かってる……!けど……」
ウルガ「考える時間があるのなら、奴はとっくの昔に倒せれてますよ。私達には余裕がない。それくらい、賢いのですから理解したらどうですか」
むぅ……この人、味方なのか敵なのかよく分からない発言してくるなぁ。もっと味方を鼓舞するような言葉を使ってよ。
と、そんな事を考えてる時だった。
雷の拳が私の左頬を掠め、小さな切り傷を作った。
「っ!」
ライザ「はっ!もうお疲れか!」
「……これくらい、なんて事ありません!」
大丈夫。出来たのは、まだ微かな切り傷だけだ。
ーーと思っていた。でも、実際はただの切り傷じゃなかった。
「あ゛っ……!」
切り傷を中心にして、体の左半身が動かなくなった。
バランスが取れなくなり、私はその場に右膝で跪く。
ライザ「やっと捕まえたぜ!おうおうおう!体が随分と辛そうだなァ!」
「っ……!」
まずい……。次に攻撃されたら、確実に殺られる。どうにかして防衛術を考えないと……
一か八か、魔法で防ぎきってみよう。それくらいしか方法はない。お父さんの横槍にはあまり期待できないし。
ライザ「死ねゴルァ!」
「ユニバース・ツー!」
雷の拳と、全属性の防衛陣が激しくぶつかり合う。
ダメだ。防ぎきれない。横に受け流そうかとも考えたけど、こいつが微妙に手加減してるせいで、受け流したところですぐに体勢を戻されてしまう。
考えていないようで考えている。非常に厄介な相手だ事。でも……
「このくらいで……!」
受け流せないのなら、真正面から受け切ってやるのみ。だから、私は右手に込める力を強くする。防衛陣をもっともっと強くして、この受け流すことが出来ない程に手加減された雷の拳を受け切る!
ライザ「なっ……テメェ!」
「悪いけど、まだ負けてやるわけにはいかないから!」
ライザ「クソが!だったら……」
ライザが急に攻撃を止めた。
雷の衝撃から解放された私の右手が、小さく痙攣を起こしている。
ライザ「いい加減死ねゴルァ!」
ライザが攻撃を止めていたのは一瞬だけだった。すぐさま彼は右手を振り上げ、私の顔目掛けて振り落としてくる。それを、私がさっきの魔法で防ぐと、次は左手で殴ってきた。
そうして、右、左と交互に殴り付けられ、私はいつ反撃すればいいのかが分からなくなった。
ライザ「受け流しもダメ!かといってそのままじゃ俺様の勝ちになる!さぁ!どうすんだよ!クソババァ!」
まずい。まさか、こんな方法でやって来るとは思わなかった。
ーー相手は賢い。それに強い。私なんかが相手にできるものじゃなかった。今は、ただただ殴りつけられるのを黙って防いでいるだけ。でも、こんなの数分と持たない。どうにかして、脱出の糸口を探さないと……
でも、どうやって?もう、使えるものは使い果たしたし、逃げ出そうにも左半身が動かないんじゃ何も出来ない。ーーそうだ!お父さんは……!
ウルガ「全天の星空」
お父さんのことを思い浮かべた時、タイミング良くお父さんが横槍を刺してきた。
ライザ「っクソっ!」
お父さんの魔法がライザの右手を貫き、貫いた場所を中心にして爆発を起こした。ライザの右腕が無くなり、あたりに汚い血が飛び散る。
ウルガ「我慢させてしまってすみませんね」
「チャンスを伺ってたんでしょ。分かってるから……」
お父さんがどこからともなく私の隣に現れて、私の左半身を治癒した。
まだ若干の痺れはあるけれど、これなら普段通りの動きができる。
ライザ「クソが……あともう少しだって時にっ……。ふんっ、やっぱテメェも殺さなきゃならねぇか!」
ウルガ「殺せれるものならやってみてください。私は、イデアルと違ってそう易々とあなたの陣に入りませんよ」
「バカにしてる?」
ウルガ「いいえ。脅しです」
ライザ「ごちゃごちゃうるせぇんだよ!テメェら!」
ライザが再び高速で雷の拳を押し付けてきた。
今度は体がちゃんと動いてくれるので、私は右の方にちょいと避けて相手の攻撃をかわす。
ライザ「クソっ!」
「もう、あなた本当に何をしに来たんですか!何回も言いますけど、私人に恨まれるようなことはしてません!」
ライザ「自覚がねぇのかテメェは!」
「はいぃ!?」
え?私、マジで何かやらかしちゃってた?もしかして、記憶が無い間かなぁ?ペテルギウスと一緒に、色々ヤバい魔法を作ってたらしいし。うん、それくらいしか思い当たる節はない。
ライザ「自覚がねぇなら教えてやるよ!テメェは……テメェは……」
これから自分の罪が言い渡されるのかと思うと、戦闘中だというのに思わず唾を飲み込んでしまう。
ウルガ「イデアル。謝るなら早くにですよ」
「私自身知らないのにどうしろと?」
ライザ「テメェはイオラ師匠を殺した!1度ならず2度も!」
「い、イオラ?」
……ごめん。聞いたことないわ。
ライザ「俺様ァ、覚えてんだよ!テメェが水界の雪山で1度殺し、その次に同じ水界の訳分かんねぇ泉で殺した!忘れたとは言わせねぇぞ!」
ウルガ「イデアル、本当なのですか?」
「私、水界なんて数回しか行ったことないし、滞在期間も全部かなり短かった気がするんだけど……それに、戦争中の私は転移術まで使えなかったらしいし」
ウルガ「つまり、冤罪ということですか」
「かなぁ?」
こればっかりは、私自身に記憶が曖昧な期間があるため、絶対とは言いきれない。でも、彼の発言を聞く限り、どうにも人違いな気がする。……いや、だとしたら酷くない?
え?何?私、人違いで殺されかけてるの?たまったもんじゃないよそれは!私、まだ彼氏も出来てないんだから、人生に未練タラタラなんですけど!
ライザ「しらばっくれる気かテメェは!」
「しらばっくれるも何も、身に覚えがないんだけどー!」
ライザ「あぁ?そうやって逃れようってのかテメェは!」
うーん?多分、話が通じそうにないなぁ。こっちが相手に合わせつつ、どうにか穏便に事を運んであげないと。
とりあえず、そのイオラって人を殺した人物の特徴でも聞いてみるか。
「ねぇ!そのイオラって人を殺した人は、どんな特徴だったのー!」
ライザ「特徴?何言ってやがんだ!テメェそのものだろうが!」
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……あれ?気のせいであると嬉しいな。
「もしかして、その人たくさん人格持ってたりするー?」
ライザ「人格?あぁ、確かにちょちょい髪色変わる変な奴だ……って、テメェの事だろうが!」
どうやら、ライザの方も少し、自分の探している相手に対して疑問を抱いてるっぽい。もしかしたら、私への冤罪は晴れるかも……!?
いやいやいや、落ち着け私。ここで焦っちゃいけない。折角、暴力じゃ埒が明かない相手と和解できるチャンスなんだ。慌てず騒がず相手を導け!
「人格が変わる……ふむふむ、となると、もしかしてやたら胸の大きな子じゃなかった?私の1.5倍くらいはありそうな」
ライザ「……ちょっと待て。確かに、あの女は師匠よりかなりデケェもん持ってた。盛ってるんじゃねぇかって思うくらいには……。そういや、ここってなんて名前の世界だっけ?」
「星界」
ライザ「星界……」
ライザは、急に大人しくなって雷の拳を振り解き、自分の記憶を確かめるように顎に手を当ててウロチョロ歩き回っている。右腕が無くなってる状態なんだけど、大丈夫かな?まあ、敵なんだから気にすることじゃないか。
あともうひと押し……
「もしかしてだけど、その人私の妹かもしれないわ」
ライザ「妹……?」
「そう!今は白髪じゃないけど、昔は綺麗な銀髪だった子よー。ついでに言うと、ここにいるお父さんと顔のパーツが諸々似てるわー!」
そう教えてあげると、ライザはお父さんの顔に近づき、ゆっくりとパーツ1つ1つを確認している。
本当は、一部お母さん似のものがあるんだけど、まあ大体はお父さんに似てるし、多分理解してくれるはず。
ライザ「もしかして、俺様ァ、大分勘違いしてた?」
「うん、多分」
ライザ「あ、そう?マジか……。あいつらがこの世界にいるって言うからわざわざ来てやったってのに、とんだ遠回りだったって事かよ!クソっ!」
ライザは足元を強く踏み付け、怒りを顕にしていた。
ライザ「迷惑かけたな。ちょっくら、俺に入れ知恵しやがった野郎共ぶっ飛ばしてからテメェの妹殺すわ」
「うんうん、頑張ってねー」
……
……
……
「で、許せるわけないでしょうがー!」
私は抑えきれなかった怒りを、立ち去るライザに向けて解き放った。
突然襲撃されたかと思えば、危うく殺されそうになるし、そしたらそれで、結局は人違いだったってわけだし、何なの?これ?私、またなんかやっちゃいました?
「ユニバース・インパクト!」
ライザ「っ!?テメェ!人が折角見逃してやろうってのに、何だその態度は!」
そうだよ。折角見逃してくれるのに怒りのままに行動しちゃう私ですよ!記憶が無い間、無感情に過ごしてた反動なのか知らないけど、私、ちょっと感情の起伏が激しいのよ!
「カラードライブ・コスモ!」
湧き上がる怒りの感情をそのまま原動力に変え、私はさっきまで以上の力を出してこの男を殺すことを考える。
いくら私に危害が無くなったとはいえ、次の標的が妹のネイに移っただけだ。あの子のもとに行かれたら……まあ、何だかんだでこいつを倒してしまうのだろうけど、それだと私の"姉"としての立場が無くなる(もう若干無くなってるかもしれないけど!)。
故に、私はこの男を殺す。何が何でも殺してやる……!さっきまでの仕返しだ!
ライザ「テメェ!調子乗ってんじゃねぇぞゴルァ!」
「あなたの方こそ、謝辞の1つでも無いんですかー!」
私の魔法と、彼の拳とが激しい激突を交わし、あたりに地響きを響き渡らせた。
ライザ「なっ、何だこの力……!」
「さっきまでの右も左も分からないような女と思わないでね!ユニバース・ゼロ!」
この世界の空を星空へと変え、私の手のひらに星々のエネルギーを集める。さっきのユニバース・ゼロとは違う。これは、本物の"ユニバース・ゼロ"だ。
全てを無に還す最大にして最凶の魔法。宇宙が誕生せし頃、全ては無だった。その無の再現!
「死んでぇぇぇぇ!」
ライザ「くっ……あ゛っ……」
ライザはさっきまでと同じだと思ったのか、自らの拳だけで全てを受け切ろうとした。でも、それは間違いだ!
そんな雷の拳如きで私の怒りは収まらない……!その身で味わえ!
ライザ「くっ……そっ…………あーあ、本気出さなきゃならねぇじゃねぇか!」
押し切られそうになり、冷や汗を垂らしていたライザの顔が、なぜか余裕そうな笑みへと変わった。そして、次の瞬間ーー
ライザ「暴食の拳」
私の魔法が、全て飲み込まれた……。いや、違う。全てーー
「食べ……られた?」
そう、まるで、肉を喰らい尽くすかのように、ライザの拳が全てを食らってしまったのだ。
ライザ「そういや、言わなかったか?」
力を出し尽くし、それでも届かなかったショックから、私は地面に膝立ち状態になる。そんな私を憐れむかのような目で見て、彼はこう言った。
ライザ「俺の名前はライザ。光楼宗、暴食の座に座る男だ」
彼は言った。
ーー自分は、"暴食"だと。
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