グランストリアMaledictio

ミナセ ヒカリ

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最終章 【創界の物語】

最終章38α 【お調子者の神様と自意識過剰な天才】

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 私の世界を開く寸前、音速を飛ぶ弾丸がアヌの心臓を貫いた。

アヌ「……あら。どうしてこの空間にお呼ばれしていない人がいるのかしら」

 アヌは胸の傷をそっと撫で、傷痕を完全に消した。そして、この場にいた全員が弾丸の飛んできた方に目を向ける。

ヒカリ「あんたばっかりにカッコイイ真似はさせない。私だって、まだ戦えるから」

クロム「すまんな。だが、いいタイミングだと思って許してくれ」

 ヒカリちゃんが創世の権限で空を飛び、クロムさんに体を支えてもらう形で大きなライフルを構えていた。

ヒカリ「私が言えたことじゃないけど、世界を救うためって理由で命を捨てるのはバカバカしいわよ。本当に私が言えたことじゃないけど」

「……すみません」

ヒカリ「いいわ、謝らなくて」

 ヒカリちゃんがゆっくりと私の隣に降り立つ。さっきまであんなに泣いていたというのに、その涙は嘘泣きだったのかと疑いたくなるくらいには覚悟を決めた強い目をしている。

アヌ「いいところだったのに……まあいいわ。また殺せばいいだけの話だし」

 もう一度世界に嵐が訪れる。私の心にある恐怖心は、さっき立ち上がれたおかげで消えはしているが、それでも奴の必殺を止められる気がしない。

 ヒカリちゃんのは不意打ちだったから上手くいっただけ。アヌが驚いてその手を止めたから生き残れただけだ。なら、また別の方法で止めなくちゃならない。

ヒカリ「ネイ。あいつを除いた全ての時間を加速させて」

「……?」

ヒカリ「あいつの動きを止めることは出来なくても、私達の感覚上で動きを遅らせることは簡単なはずよ。ーー加速してる時間の間に奴を討つ。それしか手はないわ」

「……賢いですね、ヒカリちゃんは」

ヒカリ「あんたも同じ頭持ってんだから変わんないはずよ」

 そう言われましても、私バカなんですよ。

 まあでも、言われたことをやるだけはしてみましょうか。

「咲け、月下の花畑!」

 この世界を私の花々で染め上げる。嵐が吹き荒れるこの悪天候の中でも、私の花々は強く、強く地面に根を生やして耐える。

 流石に、ヴァル、ヒカリ、クロムの3人の時間を限界まで加速させるとなると、私は花々を咲き続けさせるだけで限界になる。だからーー

「皆さん。任せましたよ」

ヒカリ「ええ。この少ないチャンスを掴んでみせるわ」

ヴァル「何が何だかよう分からんが、要はやりゃぁいいんだろ!いくぜ!」

クロム「任せろ!」

 花弁をまとわりつかせ、3人の時間を加速させる。もう一度、嵐の本陣が来る前に、決着を付けさせる……!

ヴァル「こっからが本番だ!極龍王の咆哮!」

 加速が始まると同時に、ヴァルが空間全てを燃え上がらせるほどの炎を吹き出す。まとわりつかせている花弁までもが燃えてしまい、私はすぐに花弁を付け直させる。

 相変わらず勢いは凄くなる一方だが、先程までの黒い炎と違って今のはちゃんと黄金に輝く炎だった。やはり、ヴァルの心境があの黒い炎を作っていたのだろう。

ヒカリ「ネイ!ちょっと背中支えてて!」

「え!?いや、無理ーー」

ヒカリ「バーストバレット!」

「いやぁ!」

 急にヒカリちゃんに支えにされ、私は地面に突き刺したままの剣と共に反動で後ろに吹き飛んでしまった。

「ちょっと!何するんですか!」

 剣を突き刺して何とか体を踏ん張らせ、少し落ち着くと私はすぐさまヒカリちゃんに詰め寄った。

ヒカリ「クロムさんが普通に戦ってるの。で、私は今まともに力を入れれないから銃の反動がきついわけ。あとは分かるでしょ?」

「分かるか!」

 ヒカリちゃんの態度に呆れつつも、私はすぐに剣を地面に突き刺し、両手で押さえるようにして構え直した。

「やるんだったら、私も根を生やしますんで先に言ってください」

ヒカリ「余裕があったらね」

 これ、絶対言わないやつですね……。まあいいですけど。

ヴァル「クロム!合わせろ!」

クロム「任せろ!何をするかは知らんが!」

 ヒカリちゃんの弾丸がアヌの心臓を再び貫いたタイミングで、ヴァルが派手に飛び上がる。そして、それを追うようにして青色の炎を身にまとわりつかせたクロムも飛び上がる。

ヴァル「全力でやる!神話奥義・天照す神話の炎!」

 黄金の太陽がヴァルの手から放たれ、アヌを押し潰さんとばかりに落下して行く。

ヴァル「クロム!剣を投げろ!」

クロム「なるほど。エクセリア、任せたぞ!」

 ヴァルの太陽に向け、クロムが聖剣を投げつける。すると、太陽が大きな輪を描くようにして形を変え、聖剣は黄金に輝き出した。

 あれは、確か神話奥義の1つ、アメノオハバリ。かつて、多くの神を産んだとされるイザナミを死に至らしめる原因ともなったカグツチを殺す際に用いられた剣。使用者はイザナギであるが、殺されたものの魂が籠ったものとして、私の強欲の杯の中にもあの剣がある。

 ーーまさか、神話の中でもトップクラスのそれを魔法で召喚してしまうとは……。ヴァルはやっぱり何かを持っている人です。

クロム「何が何だかよく分からんが、凄まじいものが出来たな」

ヴァル「俺も出来るとは思わんかったが、上手くいって良かったぜ」

 アヌに突き刺さった聖剣は、そのまま太陽の輪をアヌの周囲にまとわりつかせ、全てを燃やし尽くさんとばかりに激しく燃え上がっている。でも、相手は私の心を簡単にへし折る神様だ。それだけじゃ死なない。

「ーーですが、チャンスであることに変わりはありません!ヒカリちゃん、美味しいところは持っていきますよ!」

 剣を突き刺したまま、私は翼を大きく広げて空へと飛び上がった。

「強欲の杯・十掬剣トツカノツルギ

 ヴァル達が召喚したアメノオハバリに並ぶ10束の剣を10本構える。綺麗な円形を描くように配置し、アヌが構える嵐とアヌの心の臓に狙いを定めてマシンガンのように放った。

 剣が1本刺さる度に様々な属性の爆発が起き、辺りの環境を滅茶苦茶に破壊して行く。世界に亀裂が走り、アヌの体にも同じように亀裂を走らせる。

「どうだ……」

 体力が底をつき、私は夜月の剣を引き抜いてアヌの方を見る。

アヌ「残念ねぇ……あともう少しが足りなかったかしら?」

「嘘……」

 アヌの体はボロボロだったが、その息の根を止めきることは出来ていなかった。そればかりか、アヌの嵐は本陣を迎え、もう一度世界が終わろうとしている。

「ヴァ……っ!」

 叫ぼうとすれば口から血が吹き出る。これ以上の無理はダメだと体が叫んでいる。

 ーーでも……!

ヒカリ「バーストライズ・テラドライブ!」

 ーー8本の剣がアヌの周囲をグルグルと回り、程よく回転力を付けたタイミングで対角線上に飛び交った。

 亀裂を広げさせ、そこから黒い血を吹き出させる。四股を引き裂き、最後には8本の剣が円を描くような配置でアヌの心臓を貫いた。

ヒカリ「美味しいところ、貰っていったわよ」

 ヒカリちゃんの手で無理矢理立たされる。本当、さっきまでのあの泣き声はどこへ行ってしまったのやらと口に出して言いたくなるくらいには憎たらしいドヤ顔を決めている。

 まあ、誰がトドメを刺そうが、アヌを倒してしまえば全部一緒。そう、一緒なのである。

「……」

 口の中に溜まった血を全て吐き出し、見るも無惨な姿に変わったアヌを見る。

「……まだ、意識だけは残ってますね」

ヒカリ「しつこい奴ね」

「ええ。ですが、彼女はもう再生が叶わないはずです。ヴァル、クロム。最後に、この剣で……!」

 終焉の刃をアヌにより近いヴァル達に向けて投げる。後はこの剣で心臓を貫けば全てが終わる。そのトドメを刺すのは、やっぱり英雄が1番だ。

ヴァル「……実はまだ戦えて、俺達を油断させようとしましたー、的な展開とか待ってない?」

クロム「勘弁してくれ……。そんなお約束をやられたら困る」

 困るなんてもんじゃないですけどね……。

ヴァル「この剣をぶっ刺せば終わり……。呆気ねぇ最後だったな、アヌ」

クロム「俺達の世界を狙ってしまったことを後悔するんだな。まあ、何が起きているのか、何だかんだで俺には全然分からんかったが」

 2人が終焉の刃の柄を握り、8本の剣が刺さったままの心臓に向けて剣を突き刺した。すると、崩壊途中だったアヌの体は完全に崩壊を初め、この世界諸共崩れ落ちた。

 そしてーー

「「「 ヴァル!ネイ! 」」」

 聞き親しんだ声が一斉に私達の名を呼ぶ。

ヴァル「おう!なんか心配かけたっぽいな!」

フウロ「馬鹿野郎!」

《ベシンッ!!》

 帰ってくるなり早々、フウロがヴァルに思いっきりビンタをかました。

ヴァル「痛って!何しやがんだ!」

フウロ「すまん。ついいつもの感覚でな」

ライオス「お前が普段から人に迷惑をかけすぎだということだ」

ヴァル「だからって叩くこたァねぇだろ!?」

デン「まあまあ、皆さん心配してたんですよ。特に、ライオスさんなんて」

レイ「それ以上言ったらライオスさんに怒られるよ」

ギーグ「そうだぜデン。ライオスさん、意外に恥ずかしがり屋な面がありやすからな」

レイ「あんたが言ったら意味無いだろ!」

 ーー戦っていたのはほんのちょっとだったかもしれない。でも、やっと帰ってこれた。そんな、長旅から久し振りに故郷に帰ってきたような気持ちになる。

 やっと……やっと……

ヒカリ「しばらく休んでなさい。あんた、気付いてるかどうか知らないけど、全身ボロボロよ」

「……そうですね。なら、お言葉に甘えてーー」

 私は剣を軸にゆっくりと立ち上がり、そのままヒカリちゃんの背にもたれた。

ヒカリ「誰がもたれていいなんて言ったのよ」

「いいじゃないですか……。ヒカリちゃんも、戦ってる最中にもたれかかってきたんですから」

ヒカリ「支えにしただけでしょうが……」

「似たようなものです」

 もたれかかった姿勢のまま、私は調子に乗って軽く飛び、ヒカリちゃんの背におんぶされるような形にした。

 突然のことに驚いたヒカリちゃんだったが、反射で手を背中に回し、私をおんぶしてくれた。

「ほら、満更でもないじゃないですか」

ヒカリ「ち、違うわよ!これは……その……!」

「素直になってくださいよ、ヒカリちゃん。あ、でもヒカリちゃんが素直になったら少し面白くないかもしれません」

ヒカリ「それどういう意味かしら」

「そのままの意味です」

 ヒカリちゃんは困ったようにしかめっ面になるが、私には心の中で彼女がどう思っているのかを分かっていた。

 ずっと暗がりの中にいた彼女を救い出したのは私だった。色んな要因が重なった末に彼女を助け出すことが出来たが、最終的な決定打になったのは私だった。私がヒカリちゃんを救った。だから、ヒカリちゃんは声に出しては言わないが、私に、そして皆に感謝の気持ちを抱いている。

 ーー全く、心が繋がってる状態なんだからもろ分かりですよ。

「……ありがとうございーー」
ヒカリ「……その、ありがとうーー」

 ……

 ……

 ……

「やっぱり、私達以心伝心ですね」

ヒカリ「……まあ、たまには良いんじゃない」

「あ、デレた」

ヒカリ「この硬い地面に叩き落としてやろうか?」

 またまたぁ~って思ったけど、手に力が入ってる……!これ冗談じゃない……!

「ご、ごめんなさい……」

ヒカリ「分かればいいのよ、分かれば」

 時々怖いのがヒカリちゃんの難点ですかね。顔は可愛いんですから、もっと丸くなればいいのに。

「「 っっっ!!? 」」

 ーー突如として、私の胸にどっしりと重くのしかかる何かが来た。しかも、それは私だけじゃなく、ヒカリちゃんにも同じようなものが来ていたらしい。そして、しばらくその場で心を奪われていると、気が付いた時には涙を流していた。

 2人揃ってーー
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