魔法学院の階級外魔術師

浅葱 繚

文字の大きさ
42 / 153
第7章 魔法学院の授業風景編

授業② パーティー発表② シアン・ノウブル

しおりを挟む
「では次のパーティー、シアン・ノウブルさんのパーティーですね。前に出てきてください」


他の3つのパーティーはそれぞれ、ジョン・ブラウン、ヘンリエッタ・オートロープ、ランダル・カーマインという生徒がリーダーのパーティーだった。


「はい、以上の5チームですね。別にこの5チームで優劣をつけるというわけではありません。もちろん試験の際は、個別試験の他にパーティーで行う試験もありますが、目標が達成できれば全員合格です。なので、皆で切磋琢磨して魔法力を高め合っていきましょう。どのチームもバランスが良いチームだと思いますよ。もうすでに新しい部屋に移動しているパーティーもいますが、今日からは寝食も共にする仲間ですからね。仲良くやっていきましょう」


ちなみにこのディナカレア魔法学院には新年度ごとのクラス替えはなく、パーティーメンバー変更も基本的にはない。なので、この1年生で決定したクラスとパーティーで6年間共に勉強していくこととなる。ゆえに、クラスメート、とりわけその中のパーティーの結束は非常に固いもので、卒業後もそのままそのパーティーで活動する人も多い。ディナカレア魔法学院は色々な国から生徒が集まっているので、家族の都合で自国に帰ったり、違う職業ギルドに所属する生徒もいるが、それでも連絡を取り合い、定期的に集まるのだ。


「では、まずはこのクラスの総リーダーを決めましょう。総リーダーはリーダーのまとめ役、そしてクラス全体のまとめ役ですね。一応、今の5人のリーダーの中から選びたいと思いますが…誰かやりたい人はいますか?」
そう言われてもなかなか手が上がるものではない。

それぞれのパーティーのリーダーに選ばれた者たちは、三者三様、どの者もリーダーらしい特質を備えているように思えた。

キリエは…そうでもないかも知れないが。

ジョン・ブラウンは長身で筋肉質な体つきの男子生徒で、肌は健康的に焼けていた。日々のトレーニングか何かをしているのかも知れない。どちらかと言うと、魔法学院よりも騎士学校にいそうな生徒ではあった。しかし、チームをまとめるカリスマ性のようなものを感じる。

ヘンリエッタ・オートロープは、大人びた容姿の女子生徒で、腰までくる長い黒髪は顔を半分ほど隠していた。白い肌、女性らしい体つき、そこからは何とも言えない妖艶さが漂っていた。本当に同学年なのだろうか、と思わせるような大人の色香を感じる。

そして、ランダル・カーマインは赤毛の短髪の男子生徒で、ジョンとはまた違ったかっこよさがある。こちらはどちらかと言うと中性的なかっこよさ、女子だと言われても納得してしまいそうなほど美しい顔立ちだった。

どの者も他のリーダーの出方を伺っているという感じだった。

「…私、そういうの向いてないと思うから降りてもいいかしら?」
ヘンリエッタが口を開いた。話し方や声の調子も何とも言えない色香を感じる。
「えー、なんでー、ヘティー?向いてるってー!」
声を上げたのは、オリヴィア・アライオンという生徒だった。オリヴィアは、黒髪のウェーブがかかったロングヘアで、ヘンリエッタとはまた違った大人っぽさを感じる女子生徒だった。
「オリー…あなたねぇ…いっつもそうやって私に面倒ごとを押し付けてなぁい?」
ヘンリエッタとオリヴィアは共にディナカレアの北部にあるディナカレア大森林を抜けた先にあるウェストニア公国出身の魔法使いで、小さい頃からの付き合いだった。
「そ、そんなことないって~、いやだなぁ~」
「まぁとにかく…私には荷が重いわ…どう?男子たちは?やってみる気はなぁい?」
別にその気はないのだろうが、なぜか誘惑しているような仕草になるヘンリエッタ。ある意味天然なのかもしれない。
「そうだなぁ…どうだい?ランディ?」
ランダルに話を振るジョン。
「んー…僕は何となくシアンさんが向いてると思うな」
「えっ、わ、私ですか?何でですか?」
「何となく見た目がリーダーっぽいからかな?」
爽やかな笑顔で答えるランダル。
「何なんですか、その適当な理由は…」
ずれたメガネをくいっと持ち上げるシアン。委員長キャラというのはこの魔法界においても共通認識らしい。
「それにさっきみんなが気になっていたのになかなか聞けなかったことを代表して聞いていたしね」
「あれは別にその…」
「私もアンが向いてると思うな!」
さっきシアンに声をかけていたライム・グリエッタという生徒が声を上げる。
「ね?ロッテもそう思うでしょ?」
「はぅ、は、はいっ、そうですね。アンさんは失敗ばかりの私にもいつも優しくしてくれますし、良いリーダーになると思いますっ」

ロッテと言われた生徒はシャルロッテ・キャルロットという生徒で、3人はディナカレアのラントという田舎町出身で、実はこのラントからAランクの魔法使いが出たのは初めての事だった。
魔力の『純度』と『基本属性値』以外の項目に関しては、完全に遺伝というわけではないが、やはり魔力が高い両親からは、魔力が高い子供が生まれる可能性が高い。魔力が高い魔法使いは仕事などで都会に移り住むことが多いので、どうしても優秀な魔法使いは都市部に集まりやすいのだ。
そんな田舎町ラントでは、シアンはもはやちょっとした有名人扱いだった。しかも今回は、ライムとシャルロッテ合わせて3人もディナカレア魔法学院に入学したということで、ラントではお祭り騒ぎとなったものだ。
田舎町にも魔法使いが個人的に開いている小さな学校のようなものがある。シアンはそこに通っている頃から才能を見い出されていた。そして、シアンは非常に熱心な勉強家でもあった。そして、同年代のライムやシャルロッテと共に魔法学院に合格するため、魔法の練習にも根気強く付き合い、共に成長し、見事3人とも魔法学院に入学することができたのだった。
真面目な努力家で責任感も強く、誰にでも公平で優しく人柄も良いシアンは、人徳もあり町の子供たちからも大いに慕われていた。

「わ、わたしは皆さんがいいのならその…頑張りますけど…?」

クラスからはシアンを是認する拍手が起こった。

「まぁ、俺らも全力でサポートするからさ。一緒に頑張ってこうぜ?」
「あぁ、そうだね」
ジョンとランダルもシアンにそう声をかけた。
「私、やるからには妥協はしませんよ!中途半端は嫌いなので!クラス対抗戦では絶対に一番を取りますよ!」
クラスからは歓声が上がった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!

よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。

【完結】名無しの物語

ジュレヌク
恋愛
『やはり、こちらを貰おう』 父が借金の方に娘を売る。 地味で無表情な姉は、21歳 美人で華やかな異母妹は、16歳。     45歳の男は、姉ではなく妹を選んだ。 侯爵家令嬢として生まれた姉は、家族を捨てる計画を立てていた。 甘い汁を吸い付くし、次の宿主を求め、異母妹と義母は、姉の婚約者を奪った。 男は、すべてを知った上で、妹を選んだ。 登場人物に、名前はない。 それでも、彼らは、物語を奏でる。

聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした

猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。 聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。 思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。 彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。 それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。 けれども、なにかが胸の内に燻っている。 聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。 ※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています

処理中です...