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第7章 魔法学院の授業風景編
授業② パーティー発表② シアン・ノウブル
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「では次のパーティー、シアン・ノウブルさんのパーティーですね。前に出てきてください」
他の3つのパーティーはそれぞれ、ジョン・ブラウン、ヘンリエッタ・オートロープ、ランダル・カーマインという生徒がリーダーのパーティーだった。
「はい、以上の5チームですね。別にこの5チームで優劣をつけるというわけではありません。もちろん試験の際は、個別試験の他にパーティーで行う試験もありますが、目標が達成できれば全員合格です。なので、皆で切磋琢磨して魔法力を高め合っていきましょう。どのチームもバランスが良いチームだと思いますよ。もうすでに新しい部屋に移動しているパーティーもいますが、今日からは寝食も共にする仲間ですからね。仲良くやっていきましょう」
ちなみにこのディナカレア魔法学院には新年度ごとのクラス替えはなく、パーティーメンバー変更も基本的にはない。なので、この1年生で決定したクラスとパーティーで6年間共に勉強していくこととなる。ゆえに、クラスメート、とりわけその中のパーティーの結束は非常に固いもので、卒業後もそのままそのパーティーで活動する人も多い。ディナカレア魔法学院は色々な国から生徒が集まっているので、家族の都合で自国に帰ったり、違う職業ギルドに所属する生徒もいるが、それでも連絡を取り合い、定期的に集まるのだ。
「では、まずはこのクラスの総リーダーを決めましょう。総リーダーはリーダーのまとめ役、そしてクラス全体のまとめ役ですね。一応、今の5人のリーダーの中から選びたいと思いますが…誰かやりたい人はいますか?」
そう言われてもなかなか手が上がるものではない。
それぞれのパーティーのリーダーに選ばれた者たちは、三者三様、どの者もリーダーらしい特質を備えているように思えた。
キリエは…そうでもないかも知れないが。
ジョン・ブラウンは長身で筋肉質な体つきの男子生徒で、肌は健康的に焼けていた。日々のトレーニングか何かをしているのかも知れない。どちらかと言うと、魔法学院よりも騎士学校にいそうな生徒ではあった。しかし、チームをまとめるカリスマ性のようなものを感じる。
ヘンリエッタ・オートロープは、大人びた容姿の女子生徒で、腰までくる長い黒髪は顔を半分ほど隠していた。白い肌、女性らしい体つき、そこからは何とも言えない妖艶さが漂っていた。本当に同学年なのだろうか、と思わせるような大人の色香を感じる。
そして、ランダル・カーマインは赤毛の短髪の男子生徒で、ジョンとはまた違ったかっこよさがある。こちらはどちらかと言うと中性的なかっこよさ、女子だと言われても納得してしまいそうなほど美しい顔立ちだった。
どの者も他のリーダーの出方を伺っているという感じだった。
「…私、そういうの向いてないと思うから降りてもいいかしら?」
ヘンリエッタが口を開いた。話し方や声の調子も何とも言えない色香を感じる。
「えー、なんでー、ヘティー?向いてるってー!」
声を上げたのは、オリヴィア・アライオンという生徒だった。オリヴィアは、黒髪のウェーブがかかったロングヘアで、ヘンリエッタとはまた違った大人っぽさを感じる女子生徒だった。
「オリー…あなたねぇ…いっつもそうやって私に面倒ごとを押し付けてなぁい?」
ヘンリエッタとオリヴィアは共にディナカレアの北部にあるディナカレア大森林を抜けた先にあるウェストニア公国出身の魔法使いで、小さい頃からの付き合いだった。
「そ、そんなことないって~、いやだなぁ~」
「まぁとにかく…私には荷が重いわ…どう?男子たちは?やってみる気はなぁい?」
別にその気はないのだろうが、なぜか誘惑しているような仕草になるヘンリエッタ。ある意味天然なのかもしれない。
「そうだなぁ…どうだい?ランディ?」
ランダルに話を振るジョン。
「んー…僕は何となくシアンさんが向いてると思うな」
「えっ、わ、私ですか?何でですか?」
「何となく見た目がリーダーっぽいからかな?」
爽やかな笑顔で答えるランダル。
「何なんですか、その適当な理由は…」
ずれたメガネをくいっと持ち上げるシアン。委員長キャラというのはこの魔法界においても共通認識らしい。
「それにさっきみんなが気になっていたのになかなか聞けなかったことを代表して聞いていたしね」
「あれは別にその…」
「私もアンが向いてると思うな!」
さっきシアンに声をかけていたライム・グリエッタという生徒が声を上げる。
「ね?ロッテもそう思うでしょ?」
「はぅ、は、はいっ、そうですね。アンさんは失敗ばかりの私にもいつも優しくしてくれますし、良いリーダーになると思いますっ」
ロッテと言われた生徒はシャルロッテ・キャルロットという生徒で、3人はディナカレアのラントという田舎町出身で、実はこのラントからAランクの魔法使いが出たのは初めての事だった。
魔力の『純度』と『基本属性値』以外の項目に関しては、完全に遺伝というわけではないが、やはり魔力が高い両親からは、魔力が高い子供が生まれる可能性が高い。魔力が高い魔法使いは仕事などで都会に移り住むことが多いので、どうしても優秀な魔法使いは都市部に集まりやすいのだ。
そんな田舎町ラントでは、シアンはもはやちょっとした有名人扱いだった。しかも今回は、ライムとシャルロッテ合わせて3人もディナカレア魔法学院に入学したということで、ラントではお祭り騒ぎとなったものだ。
田舎町にも魔法使いが個人的に開いている小さな学校のようなものがある。シアンはそこに通っている頃から才能を見い出されていた。そして、シアンは非常に熱心な勉強家でもあった。そして、同年代のライムやシャルロッテと共に魔法学院に合格するため、魔法の練習にも根気強く付き合い、共に成長し、見事3人とも魔法学院に入学することができたのだった。
真面目な努力家で責任感も強く、誰にでも公平で優しく人柄も良いシアンは、人徳もあり町の子供たちからも大いに慕われていた。
「わ、わたしは皆さんがいいのならその…頑張りますけど…?」
クラスからはシアンを是認する拍手が起こった。
「まぁ、俺らも全力でサポートするからさ。一緒に頑張ってこうぜ?」
「あぁ、そうだね」
ジョンとランダルもシアンにそう声をかけた。
「私、やるからには妥協はしませんよ!中途半端は嫌いなので!クラス対抗戦では絶対に一番を取りますよ!」
クラスからは歓声が上がった。
他の3つのパーティーはそれぞれ、ジョン・ブラウン、ヘンリエッタ・オートロープ、ランダル・カーマインという生徒がリーダーのパーティーだった。
「はい、以上の5チームですね。別にこの5チームで優劣をつけるというわけではありません。もちろん試験の際は、個別試験の他にパーティーで行う試験もありますが、目標が達成できれば全員合格です。なので、皆で切磋琢磨して魔法力を高め合っていきましょう。どのチームもバランスが良いチームだと思いますよ。もうすでに新しい部屋に移動しているパーティーもいますが、今日からは寝食も共にする仲間ですからね。仲良くやっていきましょう」
ちなみにこのディナカレア魔法学院には新年度ごとのクラス替えはなく、パーティーメンバー変更も基本的にはない。なので、この1年生で決定したクラスとパーティーで6年間共に勉強していくこととなる。ゆえに、クラスメート、とりわけその中のパーティーの結束は非常に固いもので、卒業後もそのままそのパーティーで活動する人も多い。ディナカレア魔法学院は色々な国から生徒が集まっているので、家族の都合で自国に帰ったり、違う職業ギルドに所属する生徒もいるが、それでも連絡を取り合い、定期的に集まるのだ。
「では、まずはこのクラスの総リーダーを決めましょう。総リーダーはリーダーのまとめ役、そしてクラス全体のまとめ役ですね。一応、今の5人のリーダーの中から選びたいと思いますが…誰かやりたい人はいますか?」
そう言われてもなかなか手が上がるものではない。
それぞれのパーティーのリーダーに選ばれた者たちは、三者三様、どの者もリーダーらしい特質を備えているように思えた。
キリエは…そうでもないかも知れないが。
ジョン・ブラウンは長身で筋肉質な体つきの男子生徒で、肌は健康的に焼けていた。日々のトレーニングか何かをしているのかも知れない。どちらかと言うと、魔法学院よりも騎士学校にいそうな生徒ではあった。しかし、チームをまとめるカリスマ性のようなものを感じる。
ヘンリエッタ・オートロープは、大人びた容姿の女子生徒で、腰までくる長い黒髪は顔を半分ほど隠していた。白い肌、女性らしい体つき、そこからは何とも言えない妖艶さが漂っていた。本当に同学年なのだろうか、と思わせるような大人の色香を感じる。
そして、ランダル・カーマインは赤毛の短髪の男子生徒で、ジョンとはまた違ったかっこよさがある。こちらはどちらかと言うと中性的なかっこよさ、女子だと言われても納得してしまいそうなほど美しい顔立ちだった。
どの者も他のリーダーの出方を伺っているという感じだった。
「…私、そういうの向いてないと思うから降りてもいいかしら?」
ヘンリエッタが口を開いた。話し方や声の調子も何とも言えない色香を感じる。
「えー、なんでー、ヘティー?向いてるってー!」
声を上げたのは、オリヴィア・アライオンという生徒だった。オリヴィアは、黒髪のウェーブがかかったロングヘアで、ヘンリエッタとはまた違った大人っぽさを感じる女子生徒だった。
「オリー…あなたねぇ…いっつもそうやって私に面倒ごとを押し付けてなぁい?」
ヘンリエッタとオリヴィアは共にディナカレアの北部にあるディナカレア大森林を抜けた先にあるウェストニア公国出身の魔法使いで、小さい頃からの付き合いだった。
「そ、そんなことないって~、いやだなぁ~」
「まぁとにかく…私には荷が重いわ…どう?男子たちは?やってみる気はなぁい?」
別にその気はないのだろうが、なぜか誘惑しているような仕草になるヘンリエッタ。ある意味天然なのかもしれない。
「そうだなぁ…どうだい?ランディ?」
ランダルに話を振るジョン。
「んー…僕は何となくシアンさんが向いてると思うな」
「えっ、わ、私ですか?何でですか?」
「何となく見た目がリーダーっぽいからかな?」
爽やかな笑顔で答えるランダル。
「何なんですか、その適当な理由は…」
ずれたメガネをくいっと持ち上げるシアン。委員長キャラというのはこの魔法界においても共通認識らしい。
「それにさっきみんなが気になっていたのになかなか聞けなかったことを代表して聞いていたしね」
「あれは別にその…」
「私もアンが向いてると思うな!」
さっきシアンに声をかけていたライム・グリエッタという生徒が声を上げる。
「ね?ロッテもそう思うでしょ?」
「はぅ、は、はいっ、そうですね。アンさんは失敗ばかりの私にもいつも優しくしてくれますし、良いリーダーになると思いますっ」
ロッテと言われた生徒はシャルロッテ・キャルロットという生徒で、3人はディナカレアのラントという田舎町出身で、実はこのラントからAランクの魔法使いが出たのは初めての事だった。
魔力の『純度』と『基本属性値』以外の項目に関しては、完全に遺伝というわけではないが、やはり魔力が高い両親からは、魔力が高い子供が生まれる可能性が高い。魔力が高い魔法使いは仕事などで都会に移り住むことが多いので、どうしても優秀な魔法使いは都市部に集まりやすいのだ。
そんな田舎町ラントでは、シアンはもはやちょっとした有名人扱いだった。しかも今回は、ライムとシャルロッテ合わせて3人もディナカレア魔法学院に入学したということで、ラントではお祭り騒ぎとなったものだ。
田舎町にも魔法使いが個人的に開いている小さな学校のようなものがある。シアンはそこに通っている頃から才能を見い出されていた。そして、シアンは非常に熱心な勉強家でもあった。そして、同年代のライムやシャルロッテと共に魔法学院に合格するため、魔法の練習にも根気強く付き合い、共に成長し、見事3人とも魔法学院に入学することができたのだった。
真面目な努力家で責任感も強く、誰にでも公平で優しく人柄も良いシアンは、人徳もあり町の子供たちからも大いに慕われていた。
「わ、わたしは皆さんがいいのならその…頑張りますけど…?」
クラスからはシアンを是認する拍手が起こった。
「まぁ、俺らも全力でサポートするからさ。一緒に頑張ってこうぜ?」
「あぁ、そうだね」
ジョンとランダルもシアンにそう声をかけた。
「私、やるからには妥協はしませんよ!中途半端は嫌いなので!クラス対抗戦では絶対に一番を取りますよ!」
クラスからは歓声が上がった。
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