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3章
99 1 新しい生活1
しおりを挟む西国に帰国後、偽姉と乳母とは、別れることになった。西国海運の貿易拠点である商業都市に二人とも残ることにしたためだ。ここは東国フォンタナ商会にとっても西国最大の拠点であり、東国からの船は必ず真っ先にたどり着く場所であるのだ。
二人をここに置いていくことについてはあまり心配していない。ここならフォンタナ商会を通じて生活基盤も整えやすいし、そもそも乳母は母の側仕えである。この国では確実にルカよりも顔が広いのだ。それに何かあっても、ここならば東国と違い容易に連絡が取れる。
西国に着いて二人の今後の生活の目処も立ち、ルカはようやく成すべきことを為したのだと肩の荷が下りた気がした。
「予定通り、明日にはここを発って、西国のフォンタナ商会に行くよ」
アンナとマリカの借りた部屋もようやく片付いた。所々に解いてない荷物もあるが、ひとまずはこれで落ち着ける。ぐるっと部屋の中を見回し、ルカは自分の宿泊するホテルに戻るために立ち上がった。
西国に着いてからのそれぞれの身の振り方は、三人で何度も話し合って決めたことだ。二人とはこの町で別れ、ルカだけ西国の首都へ向かうことになる。
「寂しくなるわね」
偽姉……もう姉と名乗ることはないアンナがルカをハグした。
今では男の様相に戻っているルカは、彼女を軽く抱きとめると、ポンポンとその背を撫でる。次いで乳母であるマリカとも別れを惜しみつつハグをする。
これから二人はここでアンナの夫の帰国を待つことになる。そしてアンナの夫はそのまま東国との貿易に直接携わるだろうことを考えると、この商業都市にそのまま留まることになるだろう。マリカも同様に商会に関わる仕事をすることを決めていた。離れていてもルカの母の役に立ちたいという彼女らしい判断だ。
もう頻繁に会うことが出来なくなるのだ。
けれど、二人にとっては知人の多い場所での生活となる。
ルカは西国と東国、それぞれのフォンタナ商会の橋渡しに携わる事になるため、東国の仕事のみに携わる商業都市に身を置くわけにはいかない。
けれどルカの立場上、時折この商業都市にも来ることになるだろうから、二人の様子を見に来ることも出来るだろう。
商業都市で半月ほど商会との顔つなぎも兼ねて留まっていたが、そろそろ発たなければならない。既に実の姉フローラとの連絡が付いており、楽しみに待っていると、電報で帰りを急かされた。一瞬で言葉を伝えるこんな便利な物が出来ていることに驚いた物だ。今は会話が出来る機械も開発されていると聞き、更に驚いた。
その姉とも約十年ぶりの再会となる。ルカが戻る場所は、八歳まで生まれ育った西国の首都、西国フォンタナ商会の本拠地がある場所だ。
これからのことに思いを馳せながら、ルカは三人で支え合った二年に渡る長い旅が終わったのを感じた。
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