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3章
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しおりを挟む姉の設けた見合いの場は、しばらく続いていた。
数度繰り返した見合いの後、ようやくルカが姉の思惑に気付き、女性達との顔合わせをやめて欲しいと伝えたのは、半年近く過ぎた頃だ。
「あなたには支えてくれる人が必要よ」
心配そうに語る姉に、ルカは苦笑した。
「まだ、そんなに不安定に見えるんだね。だとしたらなおのこと、こんな不良債権を押し付けたら駄目じゃないか」
「不良債権だなんて言わないで。あなたの仕事ぶりは今でも十分素晴らしいと聞いているわ。私にも子供達にもいつも気を遣ってくれてる。あなたは優しい自慢の弟よ」
「ありがとう」
慰め合うようなハグは、姉が心配しているのが嫌というほど伝わってきた。
「レアンドロ、あなたはひどく生き急いでいるように見える。心配なの。心安らげる場所を、作って欲しいの」
気遣うような姉の言葉を聞きながら、ルカは苦く笑った。
興味すら、一欠片も抱けなかったのに、どうやって。
口先にまで出かかった言葉を、ルカは飲み込んだ。
会った相手のうち誰一人として覚えていなかった。いや、正しくは顔も名前も覚えている。どういう関わりのある人物で、どこと関わりが深い人物かも。ただ、女性としては、何一つ関心がない。そんな相手に安らげるはずがない。
けれどそうと言えば、姉は傷つく。だからそれは飲み込んだ。
「……まだ人と会うのが負担なんだ。心配してくれているのは嬉しいけど、プライベートで気を遣うのは疲れるんだ。もし紹介して欲しくなったらお願いするから、それまではこの話は終わりにしよう」
「……そう」
ルカの最も不安定な時期を見ている姉のことだ。いい年なのに帰ってきてから一度も女性と付き合う様子もなく、一人で暮らす弟の姿はさぞかし心配だろう。
姉のことは好きだ。家族という安心感もあれば、いざというとき助けてくれる信頼感もある。けれど、どうしても近すぎるのも否めない。寂しくはあるが、これ以上踏み込まれるのなら、少し距離をとる方が良いのだろうか。
そんなルカの心情を感じ取ったのかもしれない。姉は悲しそうに笑うとごめんね、と小さく呟いた。
「わかったわ、もう言わない。……あなたを傷つけたかったわけじゃないの」
「……わかってる」
ごめん。私の方こそ、気を遣わせて、ごめん。
ルカはなんとか笑顔を浮かべて姉を見た。
それ以降、望まない出会いの場をセッティングされることはなくなった。
正臣以外の誰かと共に人生を歩むなど考えたことがなかった。寂しいのは正臣がいないからで、他の誰かがいても満たされないのだ。正臣以外の「共に歩む誰か」には、興味がなかった。
十代の頃の、十年以上も昔の恋に囚われ続けている。
ルカはそんな自分の異常さに、今更ながら気付いた。十五年近く、ただの一度も他の誰かに心惹かれることもなく、ひたすら正臣を求め続けてきた。
忘れたいと思ってなお、彼以外欲しいと思わない。
気が狂っているとしか思えない。
ルカは自身を嗤った。
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