恋人に捨てられた僕を拾ってくれたのは、憧れの騎士様でした

水瀬かずか

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16 もう少し、お金を稼がないと

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 話し合った結果、給金はクリスにすれば多すぎるほどの物となった。
 けれど、家賃と食費を引くと、ここから出ていくお金を貯めるのには少し心許ないくらいになることに気付いた。
 というのも、働くことが決まって数日後には「仕事する上での現物支給だ」と服から始まり、家具や日用品の小物まで全て、騎士が買いそろえてくれたためだ。
 雇う者の当然の費用だと言われたが、とんでもないと思う。これだけは出て行く前に全て返せるよう、給金を貯めていかなければならないと思ったのだ。

 それでも、食堂で働いていた頃よりも多く、十分すぎる金額である。以前までのクリスなら決して心許なくはない。
 しかし、それ以上に貯まらない難問が待ち構えていた。

 質素に暮らしていると「もしや給金が足らないだろうか」と騎士に心配されるのだ。今まで通りと言えば通りだったが、あまり切り詰め過ぎるのは雇い主の沽券に関わるのではと、みっともなくならない程度に必要な物はしっかりと買うことにした。

 それだけではない。
 騎士には、今までそんなにお金を使うことがなかったから、と説明をしたが、そうすると、騎士は何気なくクリスが興味を示した物に気づいては、色々買ってきて、クリスに「一緒に楽しもう」と差し出してくれるようになった。
 それはお菓子や小物、日用品、ちょっとした娯楽用品など、ささやかなものが多い。
 しかしこんな余分な使い方を、クリスはしたことがない。その贅沢におののいた。
 けれど明らかにクリスのためなのに、騎士が楽しんでいるため、止められない。なにより、クリスも騎士と楽しむささやかな時間が楽しかった。
 が、もらってばかりはいられない。騎士の、クリスのための散財を止めなければならない。

 気を使われているのはわかっている。それは嬉しいが、騎士にお金を使わせてしまうだなんて、とんでもないことだ。
 クリスは自分の欲しいものは自分で買って、騎士と楽しむようにした。
 自分のために買うのは腰が引けてしまうが、騎士と一緒にと思うと、買い物は楽しかった。
 クリスにとって贅沢とは、分不相応な後ろめたいものだった。けれど騎士と一緒に楽しむ贅沢は、ただただ楽しく幸せだった。

 などという事情が積み重なり、思ったほどにはお金は貯まらないのだ。
 買ってもらった諸々の代金を返した上で引っ越しの費用を考えると、今のペースなら一年以上はかかるだろう。
 もっとも、これだけ余裕のある生活をして、一年でそれだけ貯められるほど給金をもらうのは、もらいすぎだとさえ感じる。
 けれど、あまり長い間お世話になるのは申し訳ない。

 もう少し、お金を稼がないと。

 けれど、それを騎士からもらうと本末転倒だ。騎士以外からもらえる給金が欲しかった。
 幸いにもというか、申し訳ないことにというか、騎士がクリスに求めた家事は、それほど多い物ではない。何より休日まである。
 つまり、外で働けばいいのである。

「騎士様、僕、空いた時間を使って、少しどこかで働こうと思います」

 クリスの申し出に、騎士が固まった。

 
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