マッチョサキュバス♂はご飯が食べたい

水瀬かずか

文字の大きさ
4 / 28

4 お前、本能をどこに忘れてきたんだ……

しおりを挟む
「なんで無理矢理襲わなかった」
「……苦手で……。あの、俺、相手が好意持って差し出してくれないと、不味くて食べれなくて……。無理矢理も不味いけど、騙しても……ほら、養殖と天然って、なんかちがうでしょう? そんな感じで興味なくって……。それで、俺、副団長がかまってくれたときの生気が一番好きで、それに気づいたら、俺、副団長のを一番に食べたくて、でも襲って嫌われて、不味くなったら、俺、生きていけない……」

 最後まで言うと、またボロボロと泣き出した。

「騎士団なら精気食い放題と思って入ったのにぃ……」

 ……それは悪かった。
 妙な罪悪感が湧く。
 お前を守っていたつもりだったんだ……。どうやら、私から守られていたのは、こいつではなく脳筋の団員たちのほうだったらしい。
 絶対、私が守ってやる必要ないような奴らばかりだ。余計なことをしたような気がしてならない。
 こいつに手を出しそうだった奴らは、ちょっと短絡的すぎるから、いっそ掘られればよかったんじゃないのか? などと不穏な考えがちらりとよぎったが、黙っておいた。
 ため息をつくと、恥ずかしそうにもじもじするガチムチが上目がちに見つめてくる。

「なんで女のとこじゃなくて、男所帯で食い放題なんだ……」
「あ、俺、サキュバスなんで入れられる方なんです。突っ込んでも一応食えますけど、あんまり好みじゃないんですよね……中に出してもらうほうが効率いいというか」

 ……こいつが、アホな脳筋共から犯されて「うまいっすー!」とよろこんでいるのをついうっかり想像して、妙な不快感が湧き上がる。
 それはだめだ。
 うん、私のやってきたことは間違いじゃなかった。
 騎士団の風紀が乱れすぎる。

「よくそんなんで生きてこられたな……」
「……俺、出来損ないというか……エネルギー効率いいというか……人の生気まで奪わなくても、精液だけで生きられるし、数年分は食い溜めできるんで……。相手が気持ちいいだけで、健康被害なく食事できるし……。相手さえ確保できてたら年齢に違和感出るまではひとところで暮らせるんです。それに人が俺に好意持ってくれて手を握ったりするだけである程度はまかなえるし……」

 ……効率、良すぎないか……?

「俺、あんまり他の魔性とは気が合わなくて、人と話すのが好きで……俺、絶対、人に害なんて与えないんで、だから、だから……副団長のちんちんなめさせてください……! で、できたら精液も……! あのっ、月一回でいんで……あ、いや、年一回で!!」

 眉間のシワがどんどん深くなっていく自分を自覚している。それにオロオロしながら彼がすがりついてくる。
 月一回? 年一回? それで足りるのか? それで、また人間に変化して紛れるのか……?
 こいつの変身は完璧だった。変化が解けるまで魔性だと全く気づかなかった。
 本当に弱い魔性が一年もの間、魔性の討伐を行うような騎士団で騙し通せるるものか……?
 そもそも弱い魔性が、騎士団などという敵地のど真ん中に乗り込んでこれるものか?
 死にに来るようなものだぞ?
 ……あまりに短絡的過ぎないか……? それともバレない自信がそれだけあったのか。……こいつが?

「……副団長……?」

 だめっすか? というように悲しそうに目をうるませる。
 無意識にぐりぐりと頭を撫でると、ほわっと彼の表情が緩む。

「副団長、すきぃー」

 確信した。
 ……わかった。ただの考えなしの行動だ。正体がバレてもなおこの様子なのだ。

「……その角と尻尾を隠せ」

 どうにも敵として対峙する気になれず、私は思考を放棄して問題を先延ばしにすることにした。
 けれど、「無理っす……」と、力ない返事が返ってくる。

「人間の姿は力そをこそこ使うんで、フラフラになって、ぼんやりするから、無理です……。理性とんじゃいます……」

 なるほど、あのときの酔っ払ったような様子は理性が飛んでいたのか。
 まて。……理性が飛んで、アレなのか……?

「お前、本能をどこに忘れてきたんだ……」

 おかしくなってきて、たまらず笑う。
 理性が飛んで、魔性が懇願? 襲うでも発狂するでもなく、泣きながら懇願? 魔性の本性は? 淫魔の本性は? その筋肉は? 持ちうるどの力も使わず、泣きながらの懇願が、理性を飛ばした本能丸出しの姿?

「……くくっ、はははは……!」
「……副団長?」

 これを笑わずにいられるか。ぐりぐりと彼の頭を撫でる。
 ……私は、甘いのだろう。

「……食うか?」

 私は、愚かなのだろう。

 ずっと足にしがみついたままの彼に、軽くズボンを引き下ろして見せる。
 彼が淫魔らしからぬ色気のない顔で、ぱぁっと顔を輝かせた。


しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

転生エルフの天才エンジニア、静かに暮らしたいのに騎士団長に捕まる〜俺の鉄壁理論は彼の溺愛パッチでバグだらけです〜

たら昆布
BL
転生したらエルフだった社畜エンジニアがのんびり森で暮らす話 騎士団長とのじれったい不器用BL

目が覚めたら宿敵の伴侶になっていた

木村木下
BL
日本の大学に通う俺はある日突然異世界で目覚め、思い出した。 自分が本来、この世界で生きていた妖精、フォランだということを。 しかし目覚めたフォランはなぜか自分の肉体ではなく、シルヴァ・サリオンという青年の体に入っていた。その上、シルヴァはフォランの宿敵である大英雄ユエ・オーレルの『望まれない伴侶』だった。 ユエ×フォラン (ムーンライトノベルズ/全年齢版をカクヨムでも投稿しています)

聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布
BL
完璧っぽいエリート騎士×無自覚な愛され系

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

そのモブは、私の愛しい唯一無二

ミクリ21
BL
アズエル・ミスティアはある日、前世の記憶を思い出した。 所謂、BLゲームのモブに転生していたのだ。 しかし、アズエルにはおかしなことに思い出した記憶が一つだけではなかった。 最初はモブだと信じきっていたのに、副会長セス・フェリクスに迫られ続けるアズエルの話。

【完結】三度目の正直ってあると思う?

エウラ
BL
俺には今の俺になる前の記憶が二つある。 どういう訳かその二つとも18歳で死んでる。そして死に方もほぼ同じ。 もう俺、呪われてんじゃね? ---という、過去世の悲惨な記憶のせいで引きこもりがちな主人公の話。 三度目は長生き出来るのか? 過去の記憶のせいで人生を諦めている主人公が溺愛される話です。 1話1話が長いですが、3話で終わる予定です。 R18には*がつきます。 3話の予定でしたが番外編的な1話を足しました。これで完結です。

処理中です...