S系攻め様は不憫属性

水瀬かずか

文字の大きさ
28 / 87
上司・M氏の苦悩

1 魅惑のズッキーニ

しおりを挟む

 その時オレは、陳列されたズッキーニをじっと眺めていた。
 先ほど見つけたそれは、大変に悩ましい大きさであった。

 最近、オレの食事事情が大変なことになっている。
 先日はホットドッグにかぶりつきながら、噛み切るのを躊躇うという辛い思いをした。
 今日の弁当に入っていたウインナーを見たときは、箸でつまみ上げ、小学生の頃ぐらいだろうか……と、じっと眺めたりもした。

 思うに……バナナはダメだ。あんなのは形だけだ。あの曲がり具合は悪くないとは思うが、口に入れたときの舌触りが既にアウトで、柔らかさは更にいただけない。あんなのは見た目だけだ。仕方がないのでチョコレートを被せてみたりもしたけれど、そもそも料理技術のないオレが思いつきで適当にそんなことをしたところできれいにコーティングされるはずもなかった。曲がり具合とつるりとしたチョコレートコーティングは、さぞかし相性が良かっただろうに、残念なことである。

 その点フランクフルトは、舌触りや軽く歯を立てたときの食感は悪くないのだが、いかんせん細い。希望する太さに全く達していない。あんなのは篠塚中学生頃ではないかと推測する。

 篠塚の息子さんとご対面以来、口でのセッションが忘れられない。
 でかかった。とにかくでかかった。いや、ガタイがそもそもオレよりだいぶでかいのだから、身体に見合った物、ということになるのだろうが。なるほど、ゴムにもサイズがあるのが当然だと納得した。

 そこに来て、このズッキーニである。
 最近、食事の度に、小学生だの中学生だの考えながら生活しているオレが見つけた、スーパーの一角。
 今まで気にしたことも見ることもなかった生鮮野菜コーナーでオレたちは出会った。
 曲がり具合、太さ、つるんとしたさわり心地……、いろいろ思うところはあるが、うん、悪くない。
 いかんせん瑞々しいと、歯を立てたときの感触は、きっとイマイチだろうというところが難だが、とにかく、悪くない。

 だが長茄子、お前はダメだ。形も色も太さも申し分ないのは認めよう。だが重量感が足りない。いくらちんこが海綿体とは言え、血(すいぶん)の巡りが足りなくてスカスカすぎる。そんなんじゃオレを満足させられない。
 ……ズッキーニがオレを満足させられるのかというと、それはまた別の話だが。

 いや別に、ズッキーニをあらぬところにつっこもうとか、そんなことは決して考えていない。食べ物をおもちゃ(大人の)にして遊ぶなど、許し難いことだ。何より突っ込むのならそれに適した物がある。故に食べ物は食べ物として全うすべきで、決しておもちゃなどではなく……だから、オレはほんのちょっと手にとって思いを馳せたいな、というか、ちょっと口に入れてみたいな、というか。
 別にやましいことはないが、延々と自分に言い訳を続ける。

 一番近いであろうサイズと形を探し出し、連れ帰ろうかどうしようか悩んでいるのだが、オレとて食べ物を無駄にするのは本意ではない。そもそもズッキーニって、生で食えるのか。生で食ったとして、それは旨いのか。
 いや、この際、口に咥えるのは我慢したとしてもだ。見て触って楽しんだ後、調理するとして、包丁を入れるのが辛いのもひとまず置いておいて、……大事なことだが、オレには調理するだけの家事力がない。
 連れ帰ったとしても、萎びるのを見つめるだけになるのではないか。挙げ句捨てるのか……ダメだ、オレには出来ない。連れ帰りたいのに、連れ帰った後のことを考えると、それはダメだと思う。

 萎びた篠塚の息子を捨てる……。ダメだ、オレにはそんなかわいそうなことは出来ない。
 萎びた篠塚の息子と言えば、舐め始めの力ない篠塚のちんこのふにっと感は、あれはアレでなかなか良い物だった。フル勃起のカチカチ感も感慨深い物だが、しおれたふにふに感もまた楽し。
 だが萎びた野菜はそうもいかない。
 そうはいっても一度で良いから連れ帰りたい。でもそんな魅惑のズッキーニを包丁でちょん切るのか手でボキンと折っ……ああああああ!
 ズッキーニが、篠塚に似ていて、つらい。





 閑話休題(それはおいといて)。
 あれ以降、篠塚からお口プレイへのお誘いがかからない。
 ……そんなに、オレ、下手だったのか……?
 確かに、決して上手くはなかっただろう。だってちんこ舐めたことないし。何よりあの無理矢理感にぞくぞくして、恥ずかしさもあって、あんまりがんばれなかった。
 それとも精液を飲まなかったのがダメだったのか?

 いやでも、アレは無理だろう。オレだって出来れば篠塚の精液飲みたかった。それで「濃いな」とか「どんなに溜め込んでたんだ」とか言ってみたかった……! だが飲み込もうとしたら喉が「これ食べ物じゃないよ!」と言わんばかりに飲食拒否してきやがった。無念……!
 無理に飲み込もうとしたらガチで嘔吐いた。アレ飲み込めるヤツの精神力、ぱねぇよ。挙げ句、口の中はともかくとして喉の方に妙に精液張り付いたみたいになるし。
 風呂場でオナった時のことを思い出す。精液ってお湯で流そうとすると肌にこびりつくからいつも水で流すのだが、思うに、あのお湯の時の現象が喉で起こったんじゃないだろうか。なんという悲劇。
 だからすまん、篠塚、オレは精液は飲めない……!!
 あれでもオレなりにがんばったんだ。それでは足りなかったのか。じゃあ、オレは、どうすれば良かったんだ……!!

 最初のフェラがもっと上手ければ、イラマチオに移行する前にオレで楽しめたのかもしれない。やっぱりあそこで、もう少し積極的に舐めに行く方向が良かったのだろうか……。
 いや……待てよ。 積極的にちんこ舐める上司とか……普通に引く案件じゃね? ていうか、そもそも篠塚はオレに対してマウント取りたいだけだし、オレが嫌がってなかったら、やる意味なくなるんじゃね……?

 やだ、オレ、大変なことに気付いちゃったかも……。
 オレがいやだ、やめろ、クッコロしちゃえばしちゃうほど、篠塚興奮しちゃうヤツ……!!
 いやだやめてな無理矢理プレイに興奮するオレと、嫌がるオレを犯したい篠塚……需要と供給の一致!! これって、ベストパートナーじゃね?! win-winの関係ってヤツ?!
 キタコレ……!!


 ……とか、浮かれていたのがいけなかったのだろうか。
 最近というか、日に日に篠塚のプレイがやばくなってきている。
 元々オレは表面上は拒絶の意志を示してきたのだから、基本的に全て篠塚とのエッチは無理矢理プレイになるのは必然である。それはもちろん大好きだし、うはうはしながらお相手をさせていただいているが、なんと言っても基本はダメなのである。
 レイプダメ、絶対。

 なのに篠塚のプレイは、回を重ねるごとに期待を遙かに超えて、オレを遙かなる高みへと連れて行ってくれている。つまり、倫理的にいろいろとやばい。オレは幸せだけどね。
 最初にオレが危惧したとおり、脅したり暴行を加えているというその状況が、篠塚の精神面を蝕んでいる気がする。
 悪いことに慣れると人はそれを正当化し始める。正当化する感情とは裏腹に、ダメだと思う理性が残っていたら、それはなおのこと酷く自分への嫌悪感という刃となり、心を傷つけていくのだろう。
 悪化してゆく行為は、まるで自滅を望んでいるかのようだ。

 関係が始まった頃は時と場合をそれなりにわきまえていた篠塚が、あの日のフェラ以降、あえて危機感を覚えるような場所で行為を強いてくるようになってきた。
 良くない兆候だ。


 どのくらい良くないかというと。
 今オレは、口にハンカチをつっこまれ、両手首をネクタイで縛られている。ちなみに真っ昼間の仕事真っ最中だ。
 これは……!! 憧れの拘束プレイ……!! しかも、いけないオフィスラブとのダブルコンボ……!
 やっべ、マジで興奮する。
 篠塚が相変わらずの鬼畜スパダリっぷりを発揮して、今日もオレの理想を先回りしてゆく。ダメだと思うほどに興奮する。
 やだ、どうしよう。こんな興奮覚えてしまったら、オレ、もう元の身体に戻れない……!
 という本心は置いておくとして、本当にこれはよろしくない。

 会議室を貸し切って企画の話を詰めるとか、そういう話だったはずなのだが。
 なのに今オレは、後ろ手に手首を縛られて上半身を机に倒されて、生尻をさらけ出しているんだが。
 く……っ、なんたる失態!
 だから、おっさんのケツは明るいところで見たらダメだと、あれほど……!! あんまりきれいじゃないから、見ないで……!! 篠塚のバカ!! オレ恥ずかしくって泣いちゃうぞ……!!
 とか、趣味に走っている場合ではない。

 仕事中だ。ガチで仕事中だぞ、おい。みんな他の部屋で普通の仕事してんだぞ、おい。鍵掛けて、一応人が来る可能性は限りなく小さいとは言え、仕事さぼって会社でセックスはダメだってば。

しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

無自覚両片想いの鈍感アイドルが、ラブラブになるまでの話

タタミ
BL
アイドルグループ・ORCAに属する一原優成はある日、リーダーの藤守高嶺から衝撃的な指摘を受ける。 「優成、お前明樹のこと好きだろ」 高嶺曰く、優成は同じグループの中城明樹に恋をしているらしい。 メンバー全員に指摘されても到底受け入れられない優成だったが、ひょんなことから明樹とキスしたことでドキドキが止まらなくなり──!?

隣人、イケメン俳優につき

タタミ
BL
イラストレーターの清永一太はある日、隣部屋の怒鳴り合いに気付く。清永が隣部屋を訪ねると、そこでは人気俳優の杉崎久遠が男に暴行されていて──?

完結|好きから一番遠いはずだった

七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。 しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。 なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。 …はずだった。

人気アイドルグループのリーダーは、気苦労が絶えない

タタミ
BL
大人気5人組アイドルグループ・JETのリーダーである矢代頼は、気苦労が絶えない。 対メンバー、対事務所、対仕事の全てにおいて潤滑剤役を果たす日々を送る最中、矢代は人気2トップの御厨と立花が『仲が良い』では片付けられない距離感になっていることが気にかかり──

地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛

中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。 誰の心にも触れたくない。 無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。 その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。 明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、 偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。 無機質な顔の奥に隠れていたのは、 誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。 気づいてしまったから、もう目を逸らせない。 知りたくなったから、もう引き返せない。 すれ違いと無関心、 優しさと孤独、 微かな笑顔と、隠された心。 これは、 触れれば壊れそうな彼に、 それでも手を伸ばしてしまった、 不器用な男たちの恋のはなし。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

処理中です...