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上司・M氏の苦悩
1 魅惑のズッキーニ
しおりを挟むその時オレは、陳列されたズッキーニをじっと眺めていた。
先ほど見つけたそれは、大変に悩ましい大きさであった。
最近、オレの食事事情が大変なことになっている。
先日はホットドッグにかぶりつきながら、噛み切るのを躊躇うという辛い思いをした。
今日の弁当に入っていたウインナーを見たときは、箸でつまみ上げ、小学生の頃ぐらいだろうか……と、じっと眺めたりもした。
思うに……バナナはダメだ。あんなのは形だけだ。あの曲がり具合は悪くないとは思うが、口に入れたときの舌触りが既にアウトで、柔らかさは更にいただけない。あんなのは見た目だけだ。仕方がないのでチョコレートを被せてみたりもしたけれど、そもそも料理技術のないオレが思いつきで適当にそんなことをしたところできれいにコーティングされるはずもなかった。曲がり具合とつるりとしたチョコレートコーティングは、さぞかし相性が良かっただろうに、残念なことである。
その点フランクフルトは、舌触りや軽く歯を立てたときの食感は悪くないのだが、いかんせん細い。希望する太さに全く達していない。あんなのは篠塚中学生頃ではないかと推測する。
篠塚の息子さんとご対面以来、口でのセッションが忘れられない。
でかかった。とにかくでかかった。いや、ガタイがそもそもオレよりだいぶでかいのだから、身体に見合った物、ということになるのだろうが。なるほど、ゴムにもサイズがあるのが当然だと納得した。
そこに来て、このズッキーニである。
最近、食事の度に、小学生だの中学生だの考えながら生活しているオレが見つけた、スーパーの一角。
今まで気にしたことも見ることもなかった生鮮野菜コーナーでオレたちは出会った。
曲がり具合、太さ、つるんとしたさわり心地……、いろいろ思うところはあるが、うん、悪くない。
いかんせん瑞々しいと、歯を立てたときの感触は、きっとイマイチだろうというところが難だが、とにかく、悪くない。
だが長茄子、お前はダメだ。形も色も太さも申し分ないのは認めよう。だが重量感が足りない。いくらちんこが海綿体とは言え、血(すいぶん)の巡りが足りなくてスカスカすぎる。そんなんじゃオレを満足させられない。
……ズッキーニがオレを満足させられるのかというと、それはまた別の話だが。
いや別に、ズッキーニをあらぬところにつっこもうとか、そんなことは決して考えていない。食べ物をおもちゃ(大人の)にして遊ぶなど、許し難いことだ。何より突っ込むのならそれに適した物がある。故に食べ物は食べ物として全うすべきで、決しておもちゃなどではなく……だから、オレはほんのちょっと手にとって思いを馳せたいな、というか、ちょっと口に入れてみたいな、というか。
別にやましいことはないが、延々と自分に言い訳を続ける。
一番近いであろうサイズと形を探し出し、連れ帰ろうかどうしようか悩んでいるのだが、オレとて食べ物を無駄にするのは本意ではない。そもそもズッキーニって、生で食えるのか。生で食ったとして、それは旨いのか。
いや、この際、口に咥えるのは我慢したとしてもだ。見て触って楽しんだ後、調理するとして、包丁を入れるのが辛いのもひとまず置いておいて、……大事なことだが、オレには調理するだけの家事力がない。
連れ帰ったとしても、萎びるのを見つめるだけになるのではないか。挙げ句捨てるのか……ダメだ、オレには出来ない。連れ帰りたいのに、連れ帰った後のことを考えると、それはダメだと思う。
萎びた篠塚の息子を捨てる……。ダメだ、オレにはそんなかわいそうなことは出来ない。
萎びた篠塚の息子と言えば、舐め始めの力ない篠塚のちんこのふにっと感は、あれはアレでなかなか良い物だった。フル勃起のカチカチ感も感慨深い物だが、しおれたふにふに感もまた楽し。
だが萎びた野菜はそうもいかない。
そうはいっても一度で良いから連れ帰りたい。でもそんな魅惑のズッキーニを包丁でちょん切るのか手でボキンと折っ……ああああああ!
ズッキーニが、篠塚に似ていて、つらい。
閑話休題(それはおいといて)。
あれ以降、篠塚からお口プレイへのお誘いがかからない。
……そんなに、オレ、下手だったのか……?
確かに、決して上手くはなかっただろう。だってちんこ舐めたことないし。何よりあの無理矢理感にぞくぞくして、恥ずかしさもあって、あんまりがんばれなかった。
それとも精液を飲まなかったのがダメだったのか?
いやでも、アレは無理だろう。オレだって出来れば篠塚の精液飲みたかった。それで「濃いな」とか「どんなに溜め込んでたんだ」とか言ってみたかった……! だが飲み込もうとしたら喉が「これ食べ物じゃないよ!」と言わんばかりに飲食拒否してきやがった。無念……!
無理に飲み込もうとしたらガチで嘔吐いた。アレ飲み込めるヤツの精神力、ぱねぇよ。挙げ句、口の中はともかくとして喉の方に妙に精液張り付いたみたいになるし。
風呂場でオナった時のことを思い出す。精液ってお湯で流そうとすると肌にこびりつくからいつも水で流すのだが、思うに、あのお湯の時の現象が喉で起こったんじゃないだろうか。なんという悲劇。
だからすまん、篠塚、オレは精液は飲めない……!!
あれでもオレなりにがんばったんだ。それでは足りなかったのか。じゃあ、オレは、どうすれば良かったんだ……!!
最初のフェラがもっと上手ければ、イラマチオに移行する前にオレで楽しめたのかもしれない。やっぱりあそこで、もう少し積極的に舐めに行く方向が良かったのだろうか……。
いや……待てよ。 積極的にちんこ舐める上司とか……普通に引く案件じゃね? ていうか、そもそも篠塚はオレに対してマウント取りたいだけだし、オレが嫌がってなかったら、やる意味なくなるんじゃね……?
やだ、オレ、大変なことに気付いちゃったかも……。
オレがいやだ、やめろ、クッコロしちゃえばしちゃうほど、篠塚興奮しちゃうヤツ……!!
いやだやめてな無理矢理プレイに興奮するオレと、嫌がるオレを犯したい篠塚……需要と供給の一致!! これって、ベストパートナーじゃね?! win-winの関係ってヤツ?!
キタコレ……!!
……とか、浮かれていたのがいけなかったのだろうか。
最近というか、日に日に篠塚のプレイがやばくなってきている。
元々オレは表面上は拒絶の意志を示してきたのだから、基本的に全て篠塚とのエッチは無理矢理プレイになるのは必然である。それはもちろん大好きだし、うはうはしながらお相手をさせていただいているが、なんと言っても基本はダメなのである。
レイプダメ、絶対。
なのに篠塚のプレイは、回を重ねるごとに期待を遙かに超えて、オレを遙かなる高みへと連れて行ってくれている。つまり、倫理的にいろいろとやばい。オレは幸せだけどね。
最初にオレが危惧したとおり、脅したり暴行を加えているというその状況が、篠塚の精神面を蝕んでいる気がする。
悪いことに慣れると人はそれを正当化し始める。正当化する感情とは裏腹に、ダメだと思う理性が残っていたら、それはなおのこと酷く自分への嫌悪感という刃となり、心を傷つけていくのだろう。
悪化してゆく行為は、まるで自滅を望んでいるかのようだ。
関係が始まった頃は時と場合をそれなりにわきまえていた篠塚が、あの日のフェラ以降、あえて危機感を覚えるような場所で行為を強いてくるようになってきた。
良くない兆候だ。
どのくらい良くないかというと。
今オレは、口にハンカチをつっこまれ、両手首をネクタイで縛られている。ちなみに真っ昼間の仕事真っ最中だ。
これは……!! 憧れの拘束プレイ……!! しかも、いけないオフィスラブとのダブルコンボ……!
やっべ、マジで興奮する。
篠塚が相変わらずの鬼畜スパダリっぷりを発揮して、今日もオレの理想を先回りしてゆく。ダメだと思うほどに興奮する。
やだ、どうしよう。こんな興奮覚えてしまったら、オレ、もう元の身体に戻れない……!
という本心は置いておくとして、本当にこれはよろしくない。
会議室を貸し切って企画の話を詰めるとか、そういう話だったはずなのだが。
なのに今オレは、後ろ手に手首を縛られて上半身を机に倒されて、生尻をさらけ出しているんだが。
く……っ、なんたる失態!
だから、おっさんのケツは明るいところで見たらダメだと、あれほど……!! あんまりきれいじゃないから、見ないで……!! 篠塚のバカ!! オレ恥ずかしくって泣いちゃうぞ……!!
とか、趣味に走っている場合ではない。
仕事中だ。ガチで仕事中だぞ、おい。みんな他の部屋で普通の仕事してんだぞ、おい。鍵掛けて、一応人が来る可能性は限りなく小さいとは言え、仕事さぼって会社でセックスはダメだってば。
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