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第一話

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『最後に伝える。あなたが嫌い……この身と心は彼に捧げます』
短い言葉で残された……遺書だ。文字が読めないひ孫の手の平。

「幸せって何だっけ?」すべてが虚構だ。末期の一筆は復讐か?

家族……半世紀つれそった相手。それも偽り……裏切りだった。
納得できずに調査した。慈悲のない経緯は優先された血統維持。

一周目の末期に……ひとの悪意を理解した。人生は一度限りだ。
もう一度だけやり直せば……幸せに。誰しも願うかなわない夢。


物語じゃない。現実の地震で……世界が変わるダンジョン誕生。
スキルの発生から新たな始まり。世界の理と常識まで変容する。

一部の人が得られたギフトは僥倖だ。特殊スキルが与えられた。
そのスキルが唯一無二の状況も幸いした。すべてをやり直せる。

オレは優次だ。事故を装う自殺も……恨みじゃないあきらめ感。
衝動的な行為が逆の意味で幸いだった。血族に対する恨み節か。

二周目の生で得た……世界で初の二重スキル。運命なんだろう。

一つ目は【リプレイ】……これはゲームだ。用語と概念は近い。
セーブを意識した時点からのやり直し。一連の試行に巾もある。


自分が純粋な意味で異種族。人間じゃないらしいと気がついた。
種族として固有スキルがリプレイ。納得できずにつないだ血脈。

二つ目が【操作】……アクティブスキル。ダンジョンの戦利品。
それが唯一で無二のユニークスキルだ。二周目の生で得られた。

視線をあわせた相手。記憶を自由に操作できる……それだけだ。
使用頻度はすくない。だがしかし……ほぼ無限に拡がる可能性。

単純で明快な欠点はあった。まっすぐに視線をあわせる茶番劇。
悪用厳禁……心に枷を刻んだ。恵まれた体格で冷静に判断する。



さて……本筋からそれた。リプレイの意味に別の使用法もある。
別の業界……パチスロ用語。四号機で搭載された新しいフラグ。

設定無関係に出玉維持とフラグ判別。優先制御は一部の機種だ。
機種は限定されるが五号機重複ボーナス。ゲーム性も進化する。

一部のリプレイ。ボーナス成立フラグが搭載されたゲーム性だ。
その進化も四号機時代は裏モノ。前兆で……関係ないネタ話だ。

フラグ仕様は……特殊なゲーム。規定のフラグを立てる重要性。
フラグを成立させる意味でギャルゲー。乙女ゲーも本筋だろう。


一周目は……おおむね満足した。自分が何者かもしらなかった。
始まりから終わり。つれあいの裏切りで……新たなフラグ成立。

順序が数日ずれた。その結果として……半世紀以上つれそいだ。
相方がウソつきだったリアル。改めて理解する哀しみと虚しさ。

その時点でほとんど余命もなかった。みじめさが優ったのかな。
表面上は「自損」事故だ。状況を装う運転ミス……決死の選択。

先に結論だ。最悪の選択肢を採らなければ……リプレイなのか?

リピートかリライフかもしれない日本人の大半口ずさめるCM。
『やめたくてとまらない』お菓子。ギャンブル中毒は関係ない。

スキルを得ずに死ねた状況……悔いを残した永遠のくり返しだ。


『幸と不幸は紙一重』目的がない永遠の……やり直しに疲れた。

新しく幸せな人生を……謳歌する。そこで現実は終わりだろう。
いやいやいや。改めて始まりになる。それが人生かもしれない。

終わらない人生のくり返しは……きっかけだ。糸口をつかんだ。
何百回のくり返し。何千回を超えて……初めて一目ぼれをした。

もちろん北海道米……イネじゃない。これが恋に墜ちる言葉だ。
「ねぇねぇ? あんた倒れそうに見えるから飴ちゃんあげるね」

ほとんど会話したこともないギャル。半年ほど近くにいた相手。
あまりの驚きに全身硬直する。なぜか無意識のままで後退した。


くり返し……つながり別れてやり直す。折れかけた心も萎える。
崩れる寸前だった。精神は体じゃない。生きることに絶望した。

一周目生まれた瞬間に意識だけが医者だった。絶対ありえない。
輪廻転生の……生まれ変わりじゃない。知識だけを持つ違和感。

なぜか医者になる宿命を強要された。先達の説明が絶妙すぎる。
血脈をつなぎ次世代に色濃く伝える。正しい意味の呪いだろう。

曲解された虚構。理解してから――無限周回のハ・ジ・マ・リ。
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