70 / 123
世界は何も変わっていないのに1
しおりを挟む
翌日から、またいつも通りの月曜日が始まる。
いつも通りにルーチンワークをこなしていたら、部長の斎藤から、
「三上は土日で何か良い事でもあったのか?」
と聞かれた。
「特に…」
と口に出したところで、副島とのデートの事が頭をサッと過って、恥ずかしさが湧き出した。
顔が熱くなるものだから、思わず下を向く。
赤くなっている事を突っ込まれたくないと思ったのだが、斎藤は何か察してしまったらしく、一瞬ニヤッとしてから、
「人生が楽しいのは良い事だ。仕事にも張り合いが出るからな!」
と言って笑ったきり、それ以上突っ込んでくることはなかった。
しかし、何か察せられた事自体が、日和は本当に恥ずかしい。
オフィスから給湯室に逃げるように入り、日和は一心不乱に湯飲みを洗った。
昼休憩の直前、日和は珍しく大きめの発注ミスをした。
朝一番に、斎藤から『良い事があったのか?』と聞かれて、気を引き締めていたつもりだった。
部長の斎藤が気づいて食い止めてくれた為、大ごとにはならなかったが、日和は自己嫌悪でいっぱいになった。
昼食を食べに社員食堂へ向かっても、到底食べる気持ちにならなかった。
いつもなら日替わりランチの定食を楽しみにしていたが、とりあえず何か腹に入れて、午後からは本当に気を引き締めなければいけない、と、食堂の隅っこできつねうどんをすすった。
一口、また一口と啜るうち、ミスをした事で委縮した内臓が暖められて戻ってくるような気がして、日和はぼんやりと肩の力を抜いた。
高い天井をぼんやりと眺めながら、ほ…とため息が勝手に口から零れ落ち、それにハッとしてまたうどんをすする。
きつねうどんを食べ終わるころには、日和の落ち込みはだいぶ緩和されていた。
食器を返して、喫煙室に行く。
タバコに火を着けて、一口吸い込むと、ため息と一緒に煙をフーッと長く吐き出す。
最後の一口を吸い終わって、日和は吸い殻を灰皿へ捨てた。
「…しっかりしないと…」
総務部は、縁の下の力持ちだ。
縁の下で支えている総務のミスは、全体に大きな打撃を与える場合があることを、日和は良く知っている。
確かに、日曜は楽しかった。
はた目から見て、良い事があったのかと聞かれてもおかしくないくらい、気持ちがふわふわとしていたことも本当だ。
だからと言って、仕事中にミスをして良いわけがない。
自分の取り柄は真面目な事だけなんだから、それを失くしたら自分には何も残らないのに、と日和は誰もいない喫煙室で、自分の両頬を叩いた。
「よし、大丈夫」
そして、日和は自分のデスクへと戻った。
いつも通りにルーチンワークをこなしていたら、部長の斎藤から、
「三上は土日で何か良い事でもあったのか?」
と聞かれた。
「特に…」
と口に出したところで、副島とのデートの事が頭をサッと過って、恥ずかしさが湧き出した。
顔が熱くなるものだから、思わず下を向く。
赤くなっている事を突っ込まれたくないと思ったのだが、斎藤は何か察してしまったらしく、一瞬ニヤッとしてから、
「人生が楽しいのは良い事だ。仕事にも張り合いが出るからな!」
と言って笑ったきり、それ以上突っ込んでくることはなかった。
しかし、何か察せられた事自体が、日和は本当に恥ずかしい。
オフィスから給湯室に逃げるように入り、日和は一心不乱に湯飲みを洗った。
昼休憩の直前、日和は珍しく大きめの発注ミスをした。
朝一番に、斎藤から『良い事があったのか?』と聞かれて、気を引き締めていたつもりだった。
部長の斎藤が気づいて食い止めてくれた為、大ごとにはならなかったが、日和は自己嫌悪でいっぱいになった。
昼食を食べに社員食堂へ向かっても、到底食べる気持ちにならなかった。
いつもなら日替わりランチの定食を楽しみにしていたが、とりあえず何か腹に入れて、午後からは本当に気を引き締めなければいけない、と、食堂の隅っこできつねうどんをすすった。
一口、また一口と啜るうち、ミスをした事で委縮した内臓が暖められて戻ってくるような気がして、日和はぼんやりと肩の力を抜いた。
高い天井をぼんやりと眺めながら、ほ…とため息が勝手に口から零れ落ち、それにハッとしてまたうどんをすする。
きつねうどんを食べ終わるころには、日和の落ち込みはだいぶ緩和されていた。
食器を返して、喫煙室に行く。
タバコに火を着けて、一口吸い込むと、ため息と一緒に煙をフーッと長く吐き出す。
最後の一口を吸い終わって、日和は吸い殻を灰皿へ捨てた。
「…しっかりしないと…」
総務部は、縁の下の力持ちだ。
縁の下で支えている総務のミスは、全体に大きな打撃を与える場合があることを、日和は良く知っている。
確かに、日曜は楽しかった。
はた目から見て、良い事があったのかと聞かれてもおかしくないくらい、気持ちがふわふわとしていたことも本当だ。
だからと言って、仕事中にミスをして良いわけがない。
自分の取り柄は真面目な事だけなんだから、それを失くしたら自分には何も残らないのに、と日和は誰もいない喫煙室で、自分の両頬を叩いた。
「よし、大丈夫」
そして、日和は自分のデスクへと戻った。
10
あなたにおすすめの小説
BL小説家ですが、ライバル視している私小説家に迫られています
二三@冷酷公爵発売中
BL
BL小説家である私は、小説の稼ぎだけでは食っていけないために、パン屋でバイトをしている。そのバイト先に、ライバル視している私小説家、穂積が新人バイトとしてやってきた。本当は私小説家志望である私は、BL小説家であることを隠し、嫉妬を覚えながら穂積と一緒に働く。そんな私の心中も知らず、穂積は私に好きだのタイプだのと、積極的にアプローチしてくる。ある日、私がBL小説家であることが穂積にばれてしまい…?
※タイトルを変更しました。(旧題 BL小説家と私小説家がパン屋でバイトしたらこうなった)2025.5.21
【完結】取り柄は顔が良い事だけです
pino
BL
昔から顔だけは良い夏川伊吹は、高級デートクラブでバイトをするフリーター。25歳で美しい顔だけを頼りに様々な女性と仕事でデートを繰り返して何とか生計を立てている伊吹はたまに同性からもデートを申し込まれていた。お小遣い欲しさにいつも年上だけを相手にしていたけど、たまには若い子と触れ合って、ターゲット層を広げようと20歳の大学生とデートをする事に。
そこで出会った男に気に入られ、高額なプレゼントをされていい気になる伊吹だったが、相手は年下だしまだ学生だしと罪悪感を抱く。
そんな中もう一人の20歳の大学生の男からもデートを申し込まれ、更に同業でただの同僚だと思っていた23歳の男からも言い寄られて?
ノンケの伊吹と伊吹を落とそうと奮闘する三人の若者が巻き起こすラブコメディ!
BLです。
性的表現有り。
伊吹視点のお話になります。
題名に※が付いてるお話は他の登場人物の視点になります。
表紙は伊吹です。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
青は藍より出でて藍より青し
フジキフジコ
BL
ヤクザの跡取りの高校生とその同級生の話。高校生からはじまり40代になるまで続きます。
【青は藍より出でて藍より青し】本編。高校時代。
【番外編/白い花の家・月を抱く】葉月と綾瀬が出会った頃の話。
【番外編/Tomorrow is another day ・Sweet little devil】綾瀬と高谷の高校時代の短いエピソード。
【朱に交われば赤くなる】本編「青は藍~」の続き。
【狭き門より入れ】本編「朱に交われば~」の続き。7年後のお話になります。
【番外編/BLEED】篤郎の事情
【三代目の結婚】本編「狭き門~」の続き。綾瀬の結婚問題。
【番外編/刺青】高谷×綾瀬のいちゃいちゃ
【瑠璃も玻璃も照らせば光る】本編「三代目の結婚」の続き。主役は篤郎です。エピローグに高谷×綾瀬のいちゃ。
【番外編/古傷】高谷×綾瀬のいちゃいちゃ
【番梅花は蕾めるに香あり 】本編「瑠璃も玻璃~」の続き。高谷と男子高校生の話。
【天に在らば比翼の鳥】本編の完結編。
他シリーズ『チェリークール』の【番外編】「東京ミスティ」「東京ミスティ2」「微笑みの行方」に綾瀬と高谷が出ています。
イケメンキングαなおじいさんと極上クィーンΩなおばあさん(男)の幸せをねたんで真似したゲスなじいさんとばあさん(男)がとんでもないことに
壱度木里乃(イッチー☆ドッキリーノ)
BL
誰もが知っている昔話の懐かしさあり、溺愛あり、禁断の主従関係ありの――BL大人の童話第2弾。
戸籍年齢と肉体年齢が見事に一致しないオメガ妻を愛するイケオジの桁外れな武勇伝です。
※ですます調の優しい語り口でお送りしながら、容赦なくアダルトテイストです。
※少し変わっています。
※エンターテイメント型小説として楽しんで頂ける方向けです。
※横書きの利点として英数字表記も併用しています。
※美表紙はのんびり猫さん♡
愛され少年と嫌われ少年
透
BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。
顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。
元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。
【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】
※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。
【完結】君を上手に振る方法
社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」
「………はいっ?」
ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。
スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。
お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが――
「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」
偽物の恋人から始まった不思議な関係。
デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。
この関係って、一体なに?
「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」
年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。
✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧
✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧
婚約破棄されて森に捨てられたら、フェンリルの長に一目惚れされたよ
ミクリ21 (新)
BL
婚約破棄されて森に捨てられてしまったバジル・ハラルド。
バジルはフェンリルの長ルディガー・シュヴァに一目惚れされて、フェンリルの村で暮らすことになった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる