1 / 60
亀山瑠色1
亀山瑠色という男。
しおりを挟む
バイト帰り。
知り合いが多いけど少ないこの街で、ボク、亀山瑠色は今日の相手を探す。
行きつけのゲイバー【斜陽】のカウンター席で、いつもの通りにカクテルを手に品定め。
ゲイバーと言うからには、品定めするのは男の子だ。
ボクが、自分がゲイかもしれないと気が付いたのは12歳の時だった。
初恋の相手は幼馴染みの男の子。
とんでもなく有りがちな話だけど、体育祭のリレーでアンカーを勤めた彼の走りがカッコ良すぎて、ボクの胸は鷲掴みにされた。
もう、その日、世界は彼を中心に、キラキラとまばゆいくらいの光を放っていた。
けど。
ボクが目をつけるくらいだから、当然、女の子は放って置かない。
翌日から、女子たちは彼への告白ラッシュだ。休み時間のたびに、彼は女の子に囲まれて困っている顔をしていた。
――――そうか、どんなに頑張っても、ボクは女の子になれないんだ。
女の子相手でも困った顔なのに、ボクが相手ではどんな顔をされるのか、分かったものではない。
12歳にしてそれを悟ったボクは、この恋心に蓋をすることにした。
あれから10年。彼への想いを見ないことにし続けているボクは見事に方向を誤り、すっかり【誰とでも寝る】なんて言われるような男になってしまった。
だれとでも、なんて言われるけど、こちらにだって選ぶ権利は有るわけで。
本当の意味で誰とでも寝るわけじゃない。といっても、ボクが重視するのは3つだけ。
第1条件は、清潔な子。
誰だって、見た目に気を使ってないような汚い子は嫌だよね。
お洒落でなくても、清潔感があって、こざっぱりしてるような子が良い。
第2条件は、かわいい子。
見た目が可愛い子っていうだけじゃなくて、性格が可愛い子ね。
見た目がすべてな訳じゃないけど、やっぱり重要なとこだと思う。
大胆に誘ってくる子もキライじゃないけど、ボクが好みだからってチラチラこっちを見てるだけで勇気を出せない子とか、可愛くて好き。
第3条件が本当は一番重要で、お金目当てじゃない子。
ホテル代くらいはオゴってあげるし、いい感じの子だったらゴハンいったりするから、出してあげることはあるけど。
ボクじゃなくてボクのお金目当てになってる子は御断りな感じだ。
それというのも、僕はバイトをしているけど、実は贅沢をしなければかなり生活できるだけのお金はある。
だから、バイト生活にしては、他の人より少し裕福に見える生活をしているかもしれない。
それを見て、ボクをお財布と性欲処理の両方ができる人と認識して近づこうとするヤツが意外と居る。
ボクが持っている大金は、学校の事以外では手を付けていないし、人のために浪費するお金でもない。
親と、兄弟の保険金だ。
僕が18歳の時、居眠り運転のトラックに突っ込まれて、両親と兄夫婦が死んだ。
僕はたまたま、その時、たまたま出かけなかったから、良くも悪くも助かってしまった。
そして運よく、兄夫婦の一人息子も学校に行っていたので、助かった。
甥っ子は、その時12歳だった。
もう、僕は18だったから、甥っ子の面倒を見る事にした。
それが、せめてもの罪滅ぼしだと思って。
突っ込んできたトラックが大手の運送会社の物だったおかげで、僕の所にはとんでもない額のお金が転がり込んできてしまった。
そのおかげで、大多数の友人たちとの関係が切れた。
僕に転がり込んできた金は、4人もの人間の命と引き換えだったのに、金目当てに付き合いをしようとしてきたやつらなんか、縁を切って当然だ。
甥っ子は、素直にすくすくと育って、今や16歳の高校生。
成績優秀、スポーツも万能、さらに彼女もいて、結婚の約束もしていて、ボクとは違うまっとうな人生を歩もうとしている。
唯一の不運は、親が逝ってしまったという所だけだと思う。
あ、あと、ボクみたいなのが叔父だってことも、不運だと思う。
週末にゲイバー通いをするような、叔父なんて。
ボクはその甥っ子と一緒に暮らしているので、甥っ子に今日は帰らないよ、とメールをして、引き続きカクテルを片手に相手を探す。
【斜陽】は、推定30代のママが切り盛りするオシャレというよりはスナックじみたバー。
いつも人であふれていて、女の子の入店も断っていないので、男女入り乱れてわいわいとにぎやかだ。
ボクのお目当ての子は、今日はいないかもしれない。
小綺麗で可愛い、お金にしっかりしてる子なんて、そんな早々に見つかるわけがない。
まだ早いけど、そろそろ帰ろうかな…と思いながら、僕がカクテルグラスをテーブルの上に置くと、
「…あの、おひとりですか?」
背後から、控えめに声をかけてくる子がいた。
知り合いが多いけど少ないこの街で、ボク、亀山瑠色は今日の相手を探す。
行きつけのゲイバー【斜陽】のカウンター席で、いつもの通りにカクテルを手に品定め。
ゲイバーと言うからには、品定めするのは男の子だ。
ボクが、自分がゲイかもしれないと気が付いたのは12歳の時だった。
初恋の相手は幼馴染みの男の子。
とんでもなく有りがちな話だけど、体育祭のリレーでアンカーを勤めた彼の走りがカッコ良すぎて、ボクの胸は鷲掴みにされた。
もう、その日、世界は彼を中心に、キラキラとまばゆいくらいの光を放っていた。
けど。
ボクが目をつけるくらいだから、当然、女の子は放って置かない。
翌日から、女子たちは彼への告白ラッシュだ。休み時間のたびに、彼は女の子に囲まれて困っている顔をしていた。
――――そうか、どんなに頑張っても、ボクは女の子になれないんだ。
女の子相手でも困った顔なのに、ボクが相手ではどんな顔をされるのか、分かったものではない。
12歳にしてそれを悟ったボクは、この恋心に蓋をすることにした。
あれから10年。彼への想いを見ないことにし続けているボクは見事に方向を誤り、すっかり【誰とでも寝る】なんて言われるような男になってしまった。
だれとでも、なんて言われるけど、こちらにだって選ぶ権利は有るわけで。
本当の意味で誰とでも寝るわけじゃない。といっても、ボクが重視するのは3つだけ。
第1条件は、清潔な子。
誰だって、見た目に気を使ってないような汚い子は嫌だよね。
お洒落でなくても、清潔感があって、こざっぱりしてるような子が良い。
第2条件は、かわいい子。
見た目が可愛い子っていうだけじゃなくて、性格が可愛い子ね。
見た目がすべてな訳じゃないけど、やっぱり重要なとこだと思う。
大胆に誘ってくる子もキライじゃないけど、ボクが好みだからってチラチラこっちを見てるだけで勇気を出せない子とか、可愛くて好き。
第3条件が本当は一番重要で、お金目当てじゃない子。
ホテル代くらいはオゴってあげるし、いい感じの子だったらゴハンいったりするから、出してあげることはあるけど。
ボクじゃなくてボクのお金目当てになってる子は御断りな感じだ。
それというのも、僕はバイトをしているけど、実は贅沢をしなければかなり生活できるだけのお金はある。
だから、バイト生活にしては、他の人より少し裕福に見える生活をしているかもしれない。
それを見て、ボクをお財布と性欲処理の両方ができる人と認識して近づこうとするヤツが意外と居る。
ボクが持っている大金は、学校の事以外では手を付けていないし、人のために浪費するお金でもない。
親と、兄弟の保険金だ。
僕が18歳の時、居眠り運転のトラックに突っ込まれて、両親と兄夫婦が死んだ。
僕はたまたま、その時、たまたま出かけなかったから、良くも悪くも助かってしまった。
そして運よく、兄夫婦の一人息子も学校に行っていたので、助かった。
甥っ子は、その時12歳だった。
もう、僕は18だったから、甥っ子の面倒を見る事にした。
それが、せめてもの罪滅ぼしだと思って。
突っ込んできたトラックが大手の運送会社の物だったおかげで、僕の所にはとんでもない額のお金が転がり込んできてしまった。
そのおかげで、大多数の友人たちとの関係が切れた。
僕に転がり込んできた金は、4人もの人間の命と引き換えだったのに、金目当てに付き合いをしようとしてきたやつらなんか、縁を切って当然だ。
甥っ子は、素直にすくすくと育って、今や16歳の高校生。
成績優秀、スポーツも万能、さらに彼女もいて、結婚の約束もしていて、ボクとは違うまっとうな人生を歩もうとしている。
唯一の不運は、親が逝ってしまったという所だけだと思う。
あ、あと、ボクみたいなのが叔父だってことも、不運だと思う。
週末にゲイバー通いをするような、叔父なんて。
ボクはその甥っ子と一緒に暮らしているので、甥っ子に今日は帰らないよ、とメールをして、引き続きカクテルを片手に相手を探す。
【斜陽】は、推定30代のママが切り盛りするオシャレというよりはスナックじみたバー。
いつも人であふれていて、女の子の入店も断っていないので、男女入り乱れてわいわいとにぎやかだ。
ボクのお目当ての子は、今日はいないかもしれない。
小綺麗で可愛い、お金にしっかりしてる子なんて、そんな早々に見つかるわけがない。
まだ早いけど、そろそろ帰ろうかな…と思いながら、僕がカクテルグラスをテーブルの上に置くと、
「…あの、おひとりですか?」
背後から、控えめに声をかけてくる子がいた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
160
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる