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亀山瑠色2
亀山瑠色という男その2
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ボクが初めて好きになった男の子の名前は、鬼塚文也くん。
彼は、一卵性双生児だった。ボクが好きになったのは、兄の方。
兄はいつも外で駆け回って遊んでいるようなスポーツ万能、それでいて、勉強も並み以上に出来る。
弟・修也の方は勉強ができて、成績が上位にあるような子だった。だからと言って物静かというわけではなく、スポーツは人並みに出来た。
20歳を過ぎた今でこそ、二人の雰囲気が変わっているので双子だと言わなければわからないくらいにはなっているが、没個性が良しとされる12歳の頃はどちらが兄でどちらが弟かなんて、わからないくらいに似ていた。
それぞれのクラスメイトすら間違えるほど似ていたのに、ボクは廊下でバッタリ会っても、街中でバッタリ会っても、絶対に間違える事なんてなかった。
一度、修也がボクをだまそうとして、自分は文也だと言い張ったことがあった。
でも、ボクにはそれが嘘だと解っていたのですぐに否定をした。修也はウソを認めて、どうしてわかるのかと聞いて来た。
ボクはその時、ただ何となく、としか答えられなかった。
でも、理由はちゃんとある。
ボクが、文也の事を好きだったからだ。だから、文也を見分ける事が出来た。
でもまさか、そんな事を言うわけにいかなかったから、何となくと誤魔化したんだ。
翌年、ボク達は同じ中学に入学した。
思春期に差し掛かって、文也と修也は少しずつ、「双子だからとひとくくりにされるのが嫌になった」と見た目の雰囲気を変えて行った。
文也はサッカー部に入部したのもあって髪を短く切り、修也は写真部に入部し、髪を伸ばして伊達眼鏡をかけ始めた。
ボクはというと、もともと好きだったのもあって、美術部。絵はうまい方じゃなかったから、目立たない存在だった。
まあ…目立ちたくないっていうのもあったし、美術室の窓から、サッカー部が練習している様子がよく見えたっていうのもある。
あとは、スケッチブックと鉛筆さえ持っていれば、何時間でも校庭の隅っこに座り込んでいても怪しまれないっていうのもあった。
すべては、こっそりと、部活動に勤しむ文也の姿を眺める為だった。
ストーカーじみた行動だけど、中学生のボクには、それしかできなかった。
時々、サッカー部や野球部の練習風景をスケッチしたりして、美術の先生に褒められたりもした。
怪しまれないように日によって描く場所を変えていたし、サッカー部が終わるちょっと前まで見ているために、一日に何枚も何枚も絵を描いた。
おかげで、3年間でかなり上達してしまったみたいだった。美術の先生から、才能を伸ばしなさいと強く勧められたりもした。
でも、動機が不純すぎて、その勧めを素直に飲み込むことはできなかった。
高校は、また三人で同じ所へ行ける事になった。
文也は高校でもサッカー部に入った。修也はアルバイトをするからと、部活には入らなかった。
高校は、グラウンドで練習するサッカー部の様子が見られなかったので美術部には入らなかった。
マネージャーになれたら、と思ったけど志願するのは女子ばっかりだったから、無理だとおもってやめた。
結果、ボクはなぜか園芸部に入っていた。
グラウンドの周りに植えてある植物の整備をするのは園芸部の仕事だった。
顧問は、生物の先生。そして、部員は3年生に2人と、ボク1人の3人だけ。
学校の使ってない敷地で、野菜や果物を育てたりして、収穫物を家庭科の授業で使ってもらったりした。
ボクらの通っていた高校はそんなに人数が多くなかったからできた事だと思う。
高校の3年間も、それなりに楽しかった。
ボクは、まだ、小学6年生の初恋を、引きずったままだったけど。
高校生の間に、文也には3人、修也には5人の彼女が出来た。
ボクといえば…地味を絵に描いたような男だったので、女子からのアプローチなんて1度も無く、彼女が出来たことはなかった。
別によかった。だって、ボクが好きなのは、文也だったから。
高校卒業と同時に、ボク達の進路はバラバラになった。
文也と修也は家業を継ぐために必要な知識を得るため進学を、やりたいことも無かったボクは、何となく大学に行く事にした。
幸いにして、ボクはそこそこ勉強ができた。上の下くらいかな。
そのため、自分のランクより少し低い学校を選び、受験も楽に済ませて、やりたいことをのんびり探そうと思っていた。
そんな矢先の事だった。
父と母、それから、兄とその奥さんが、居眠り運転のトラックに、轢かれてしまった。
運転手は割と重症だったようだが、命は取り留めた。
その時、甥っ子は12歳。
ボクと兄は14歳離れていて、兄が20歳で結婚してすぐ甥っ子が生まれたから、事故の当時兄は32歳。
義姉は19で結婚し、20歳で甥っ子を産んだ。事故当時は31歳だった。
両親は、まだ50歳も半ばを過ぎた頃だった。
父も母も、まだ現役で働いていた為、保険金やら慰謝料で、未成年の子供が手にするには大きすぎる金額が転がり込んできた。
遠縁の親戚が引き取ると言ってきかなかったけど、それはボクと甥っ子に転がり込んできた莫大な金が目当てだろうと思ったから、ボクは絶対に譲らなかった。
ボクの家も、甥っ子の家も処分した。残しておきたかったけど、親戚に知られているから、そうするより他になかった。
諸々の手続きを踏んで、ボクと甥っ子は二人暮らしを始めた。
甥っ子の蒼太は元々物静かで真面目な子だったが、ボク意外の身内が居なくなったことで、品行方正を絵に描いたような子になった。
ボクに大学を諦めさせた負い目とかを感じているのかもしれない。
そんな必要はないのに。
事故に関する、すべての処理が終わる頃。
ボクは今のバイト先に勤め始めることになった。
そして、ボクがこうやって男遊びを始めたのは、20歳になってから。
よくない噂というのはアッという間に広がるので、ボクは一年そこそこで、噂の人になってしまったのだった。
彼は、一卵性双生児だった。ボクが好きになったのは、兄の方。
兄はいつも外で駆け回って遊んでいるようなスポーツ万能、それでいて、勉強も並み以上に出来る。
弟・修也の方は勉強ができて、成績が上位にあるような子だった。だからと言って物静かというわけではなく、スポーツは人並みに出来た。
20歳を過ぎた今でこそ、二人の雰囲気が変わっているので双子だと言わなければわからないくらいにはなっているが、没個性が良しとされる12歳の頃はどちらが兄でどちらが弟かなんて、わからないくらいに似ていた。
それぞれのクラスメイトすら間違えるほど似ていたのに、ボクは廊下でバッタリ会っても、街中でバッタリ会っても、絶対に間違える事なんてなかった。
一度、修也がボクをだまそうとして、自分は文也だと言い張ったことがあった。
でも、ボクにはそれが嘘だと解っていたのですぐに否定をした。修也はウソを認めて、どうしてわかるのかと聞いて来た。
ボクはその時、ただ何となく、としか答えられなかった。
でも、理由はちゃんとある。
ボクが、文也の事を好きだったからだ。だから、文也を見分ける事が出来た。
でもまさか、そんな事を言うわけにいかなかったから、何となくと誤魔化したんだ。
翌年、ボク達は同じ中学に入学した。
思春期に差し掛かって、文也と修也は少しずつ、「双子だからとひとくくりにされるのが嫌になった」と見た目の雰囲気を変えて行った。
文也はサッカー部に入部したのもあって髪を短く切り、修也は写真部に入部し、髪を伸ばして伊達眼鏡をかけ始めた。
ボクはというと、もともと好きだったのもあって、美術部。絵はうまい方じゃなかったから、目立たない存在だった。
まあ…目立ちたくないっていうのもあったし、美術室の窓から、サッカー部が練習している様子がよく見えたっていうのもある。
あとは、スケッチブックと鉛筆さえ持っていれば、何時間でも校庭の隅っこに座り込んでいても怪しまれないっていうのもあった。
すべては、こっそりと、部活動に勤しむ文也の姿を眺める為だった。
ストーカーじみた行動だけど、中学生のボクには、それしかできなかった。
時々、サッカー部や野球部の練習風景をスケッチしたりして、美術の先生に褒められたりもした。
怪しまれないように日によって描く場所を変えていたし、サッカー部が終わるちょっと前まで見ているために、一日に何枚も何枚も絵を描いた。
おかげで、3年間でかなり上達してしまったみたいだった。美術の先生から、才能を伸ばしなさいと強く勧められたりもした。
でも、動機が不純すぎて、その勧めを素直に飲み込むことはできなかった。
高校は、また三人で同じ所へ行ける事になった。
文也は高校でもサッカー部に入った。修也はアルバイトをするからと、部活には入らなかった。
高校は、グラウンドで練習するサッカー部の様子が見られなかったので美術部には入らなかった。
マネージャーになれたら、と思ったけど志願するのは女子ばっかりだったから、無理だとおもってやめた。
結果、ボクはなぜか園芸部に入っていた。
グラウンドの周りに植えてある植物の整備をするのは園芸部の仕事だった。
顧問は、生物の先生。そして、部員は3年生に2人と、ボク1人の3人だけ。
学校の使ってない敷地で、野菜や果物を育てたりして、収穫物を家庭科の授業で使ってもらったりした。
ボクらの通っていた高校はそんなに人数が多くなかったからできた事だと思う。
高校の3年間も、それなりに楽しかった。
ボクは、まだ、小学6年生の初恋を、引きずったままだったけど。
高校生の間に、文也には3人、修也には5人の彼女が出来た。
ボクといえば…地味を絵に描いたような男だったので、女子からのアプローチなんて1度も無く、彼女が出来たことはなかった。
別によかった。だって、ボクが好きなのは、文也だったから。
高校卒業と同時に、ボク達の進路はバラバラになった。
文也と修也は家業を継ぐために必要な知識を得るため進学を、やりたいことも無かったボクは、何となく大学に行く事にした。
幸いにして、ボクはそこそこ勉強ができた。上の下くらいかな。
そのため、自分のランクより少し低い学校を選び、受験も楽に済ませて、やりたいことをのんびり探そうと思っていた。
そんな矢先の事だった。
父と母、それから、兄とその奥さんが、居眠り運転のトラックに、轢かれてしまった。
運転手は割と重症だったようだが、命は取り留めた。
その時、甥っ子は12歳。
ボクと兄は14歳離れていて、兄が20歳で結婚してすぐ甥っ子が生まれたから、事故の当時兄は32歳。
義姉は19で結婚し、20歳で甥っ子を産んだ。事故当時は31歳だった。
両親は、まだ50歳も半ばを過ぎた頃だった。
父も母も、まだ現役で働いていた為、保険金やら慰謝料で、未成年の子供が手にするには大きすぎる金額が転がり込んできた。
遠縁の親戚が引き取ると言ってきかなかったけど、それはボクと甥っ子に転がり込んできた莫大な金が目当てだろうと思ったから、ボクは絶対に譲らなかった。
ボクの家も、甥っ子の家も処分した。残しておきたかったけど、親戚に知られているから、そうするより他になかった。
諸々の手続きを踏んで、ボクと甥っ子は二人暮らしを始めた。
甥っ子の蒼太は元々物静かで真面目な子だったが、ボク意外の身内が居なくなったことで、品行方正を絵に描いたような子になった。
ボクに大学を諦めさせた負い目とかを感じているのかもしれない。
そんな必要はないのに。
事故に関する、すべての処理が終わる頃。
ボクは今のバイト先に勤め始めることになった。
そして、ボクがこうやって男遊びを始めたのは、20歳になってから。
よくない噂というのはアッという間に広がるので、ボクは一年そこそこで、噂の人になってしまったのだった。
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