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亀山瑠色3
亀山瑠色という男その3*6
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修也がボクをそこまで好いてくれるのは嬉しいけど、それはいくらなんでも悲しすぎる。
「身代わりで良いとか、そんなこと言わないでよ。ボクは、修也を文也の身代わりになんかしたくない」
これも、ボクの本音だ。
誰とでも寝るのは文也が自分のものにならないからだけど、だからってそんな申し出をホイホイうけるほどボクの気持ちは薄くない。
でも、修也はそうじゃなかった。
「違うよ、るい。オレは、身代わりでも良いくらい、るいの事が好きなんだ」
「そんなのダメだよ…」
「文也の代わりで良い。もっといえば、『誰でも良い』なら、オレにして欲しい」
修也に、ボクが適当に寝ているのを知られているんだ、と思った。
「頼むよ、るい。他の誰かで良いなら、オレにしてよ。オレは…るいにこっちを見て貰えるなら、何でも良い」
真剣な眼差しだった。
「るいが、文也のことを思っている年月と同じだけ、オレはるいの事が好きなんだよ。るいの気持ち、解るし、るいもオレの気持ち解るはずだ」
ここが、居酒屋からそう離れてない、人通りの多いところと解っていても、こんな話が止まらない。
修也の気持ちはよく解る。
でも。
「もう…こうなったら今回限りでも良い」
逡巡するボクを尻目に、修也はそう言った。
「えっ?」
「どうしてもオレじゃダメなら…今回限りでも良いから…」
こんどは修也が泣きそうだ。
やっぱり、ボクの気持ちは汲んで貰えないのだ。
もしこれで、ボクがオーケーしちゃったら、毎回こうやって押したらなんとかなると思われるかもしれない。
ボクの10年は、そんなに薄くない。
だけど。
修也の10年も、同じはずだ。
「…ここでする話じゃないよね。とりあえず、ボクの部屋行こう。そんで、ゆっくり話しよう」
もしかしたら、なし崩しに寝ることになるかもしれないけど、そうなってしまったらもう仕方がない。
もともと、適当なボクだ。自分の気持ちを誤魔化して、誰とでも寝ているようなボクだ。
どちらにせよ、ボクの気持ちはどうでもいいと思われているのだから、なし崩しになっても仕方がない。
ボクが家へ招くことを決めたら、修也はうれしそうだった。
「いっとくけど、何もないよ」
「コンビニ行くじゃん?」
「そう言う事ではなくて」
「そっか、まあでも、うん。久しぶりに二人で飲みたかったし」
マンションの近くに、コンビニがあるので、ソコへ寄ることにした。
二人で並んで歩く。ボクより修也の方が足が速いのに、合わせて歩いてくれるのは嬉しい。
「…るい、ホントにスピーチ引き受けて大丈夫だったのか?」
「今更じゃん、そんなの。ボクが断るとか、考えてないんだよ、文也」
「確かにな」
「失礼しちゃうよねぇ。ボクの気持ちなんかまるで考えてない」
悪く言うのはよくないと思っているのに、言葉が止まらない。
だって。10年の想いを、踏みにじられたような気持ちなんだもん。
いや、踏みにじられたような気持になっているのは、ボクの勝手だけど。
「…止めたんだよ、一応」
「え?」
「るいは、止めといた方が、いいんじゃないかー、って」
「そうなんだ」
「そしたら、文也のやつ『瑠色ならへんな事しないだろうし、まともな友達は瑠色くらいだからほかに考えられない』とか、他の人にだいぶ失礼な事言ってさ」
修也はケラケラ笑っていた。
「そっか…」
そうこうしているうちにコンビニに着く。
安い缶チューハイ、チンして食べられるおかずやら、おつまみコーナーの乾きものなんかを買い込む。
「どんだけ飲むの?」
「いいじゃん、余ったら普段飲んだり食ったりしたらいいだろ?」
「まあ…いいけどさ」
会計を済ませて、コンビニを出る。
ここからは、歩いてすぐだ。
エレベーターを上がる。
「お邪魔しまーす。お、相変わらず片付いてんな。蒼太のおかげだろ?」
「どうせボクは家事能力ないですよーだ」
コンビニで買い込んできたおつまみをリビングのテーブルに並べる。
酒は一度、冷蔵庫。買い置きの方を先に出す。
「ねえ、蒼太が作ったお惣菜なんかないの?」
甥っ子は、家事が得意だ。
正直、金の事以外でボクの方が世話をしてもらっている状態。
「えー。あ、昨日の残りのきんぴらあるよ」
「え! まじで! 食いたい!」
修也は蒼太のお惣菜がお気に入りだ。
「準備するから、向こうで待ってて」
おう、と返事をして、修也はリビングへ向かった。
「…るいさ、ここに誰か、呼んだことある?」
缶ビールを開けながら、修也が聞いて来た。
「友達とかとは外で交流する方が多いから、あんまり」
「いや、そうじゃなくて」
ああ。聞きたかったのはそっちか。
「いくらボクの名義だからって、甥っ子が住んでる家にオトコ連れ込めるわけないじゃん?」
「…それも、そっか」
「それに、ボクはそーいう相手には肩入れしないって決めてるから、家なんか連れて来ちゃったら大変なことになるでしょ?」
言外に、修也とはそうならないよ、と伝えているつもりだった。
「るいはさ、いつからそういう事してんの?」
「えー、なに、今日は質問攻め?」
「知りたい。るいがどれだけの男を、抱いたのか」
はっきりとした物言いに、苦笑がこぼれてしまう。
「数なんか覚えてない」
「そんなに?」
「一応、ボクも相手を選ぶからそんなに数は多くないけど、相手の事を覚えておかないようにしてるの。割り切るってそういう事でしょ?」
「同じ奴と、何回か寝たりしないの?」
「もー、ボクの話は良いよ…」
「知りたい」
家に呼んだからこういう話になったんだな、と思ったボクは、クッションを引き寄せて、どんと座った。
「じゃあ、初めて寝た人の事教えてあげる」
修也は、手にしていたビールをグイッと飲んだ。
「身代わりで良いとか、そんなこと言わないでよ。ボクは、修也を文也の身代わりになんかしたくない」
これも、ボクの本音だ。
誰とでも寝るのは文也が自分のものにならないからだけど、だからってそんな申し出をホイホイうけるほどボクの気持ちは薄くない。
でも、修也はそうじゃなかった。
「違うよ、るい。オレは、身代わりでも良いくらい、るいの事が好きなんだ」
「そんなのダメだよ…」
「文也の代わりで良い。もっといえば、『誰でも良い』なら、オレにして欲しい」
修也に、ボクが適当に寝ているのを知られているんだ、と思った。
「頼むよ、るい。他の誰かで良いなら、オレにしてよ。オレは…るいにこっちを見て貰えるなら、何でも良い」
真剣な眼差しだった。
「るいが、文也のことを思っている年月と同じだけ、オレはるいの事が好きなんだよ。るいの気持ち、解るし、るいもオレの気持ち解るはずだ」
ここが、居酒屋からそう離れてない、人通りの多いところと解っていても、こんな話が止まらない。
修也の気持ちはよく解る。
でも。
「もう…こうなったら今回限りでも良い」
逡巡するボクを尻目に、修也はそう言った。
「えっ?」
「どうしてもオレじゃダメなら…今回限りでも良いから…」
こんどは修也が泣きそうだ。
やっぱり、ボクの気持ちは汲んで貰えないのだ。
もしこれで、ボクがオーケーしちゃったら、毎回こうやって押したらなんとかなると思われるかもしれない。
ボクの10年は、そんなに薄くない。
だけど。
修也の10年も、同じはずだ。
「…ここでする話じゃないよね。とりあえず、ボクの部屋行こう。そんで、ゆっくり話しよう」
もしかしたら、なし崩しに寝ることになるかもしれないけど、そうなってしまったらもう仕方がない。
もともと、適当なボクだ。自分の気持ちを誤魔化して、誰とでも寝ているようなボクだ。
どちらにせよ、ボクの気持ちはどうでもいいと思われているのだから、なし崩しになっても仕方がない。
ボクが家へ招くことを決めたら、修也はうれしそうだった。
「いっとくけど、何もないよ」
「コンビニ行くじゃん?」
「そう言う事ではなくて」
「そっか、まあでも、うん。久しぶりに二人で飲みたかったし」
マンションの近くに、コンビニがあるので、ソコへ寄ることにした。
二人で並んで歩く。ボクより修也の方が足が速いのに、合わせて歩いてくれるのは嬉しい。
「…るい、ホントにスピーチ引き受けて大丈夫だったのか?」
「今更じゃん、そんなの。ボクが断るとか、考えてないんだよ、文也」
「確かにな」
「失礼しちゃうよねぇ。ボクの気持ちなんかまるで考えてない」
悪く言うのはよくないと思っているのに、言葉が止まらない。
だって。10年の想いを、踏みにじられたような気持ちなんだもん。
いや、踏みにじられたような気持になっているのは、ボクの勝手だけど。
「…止めたんだよ、一応」
「え?」
「るいは、止めといた方が、いいんじゃないかー、って」
「そうなんだ」
「そしたら、文也のやつ『瑠色ならへんな事しないだろうし、まともな友達は瑠色くらいだからほかに考えられない』とか、他の人にだいぶ失礼な事言ってさ」
修也はケラケラ笑っていた。
「そっか…」
そうこうしているうちにコンビニに着く。
安い缶チューハイ、チンして食べられるおかずやら、おつまみコーナーの乾きものなんかを買い込む。
「どんだけ飲むの?」
「いいじゃん、余ったら普段飲んだり食ったりしたらいいだろ?」
「まあ…いいけどさ」
会計を済ませて、コンビニを出る。
ここからは、歩いてすぐだ。
エレベーターを上がる。
「お邪魔しまーす。お、相変わらず片付いてんな。蒼太のおかげだろ?」
「どうせボクは家事能力ないですよーだ」
コンビニで買い込んできたおつまみをリビングのテーブルに並べる。
酒は一度、冷蔵庫。買い置きの方を先に出す。
「ねえ、蒼太が作ったお惣菜なんかないの?」
甥っ子は、家事が得意だ。
正直、金の事以外でボクの方が世話をしてもらっている状態。
「えー。あ、昨日の残りのきんぴらあるよ」
「え! まじで! 食いたい!」
修也は蒼太のお惣菜がお気に入りだ。
「準備するから、向こうで待ってて」
おう、と返事をして、修也はリビングへ向かった。
「…るいさ、ここに誰か、呼んだことある?」
缶ビールを開けながら、修也が聞いて来た。
「友達とかとは外で交流する方が多いから、あんまり」
「いや、そうじゃなくて」
ああ。聞きたかったのはそっちか。
「いくらボクの名義だからって、甥っ子が住んでる家にオトコ連れ込めるわけないじゃん?」
「…それも、そっか」
「それに、ボクはそーいう相手には肩入れしないって決めてるから、家なんか連れて来ちゃったら大変なことになるでしょ?」
言外に、修也とはそうならないよ、と伝えているつもりだった。
「るいはさ、いつからそういう事してんの?」
「えー、なに、今日は質問攻め?」
「知りたい。るいがどれだけの男を、抱いたのか」
はっきりとした物言いに、苦笑がこぼれてしまう。
「数なんか覚えてない」
「そんなに?」
「一応、ボクも相手を選ぶからそんなに数は多くないけど、相手の事を覚えておかないようにしてるの。割り切るってそういう事でしょ?」
「同じ奴と、何回か寝たりしないの?」
「もー、ボクの話は良いよ…」
「知りたい」
家に呼んだからこういう話になったんだな、と思ったボクは、クッションを引き寄せて、どんと座った。
「じゃあ、初めて寝た人の事教えてあげる」
修也は、手にしていたビールをグイッと飲んだ。
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