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【私の話】 1
しおりを挟むお義父様は私を魔女と呼んでいました。お義父様だけでなく、お義母様もお義姉様も私のことを魔女と呼びました。
――――。
私は子供の頃から回復魔法が得意でした。
怪我をした野良猫を治したり、風邪を引いたお母様……血の繋がった本当のお母様を治したりすると、お母様は嬉しそうに喜んでくれるのでした。
「ありがとう。ユキアは優しい子ね」
そう言って、私の頭を優しく撫でてくれたのです。
私はそれが嬉しくて、もっともっと回復魔法に関する本を読んで勉強しました。
お母様や皆の怪我や病気を治せば、お母様や皆が喜んでくれる。
皆が喜んでくれれば、私も嬉しい。
「ユキア。貴女の使う回復魔法は、とても優しくて温かくて皆を元気にしてくれる魔法なの。だからそれを誇らしく思って、決して悪いことに使わないようにね」
「はい、お母様」
ベッドに上体を起こしているお母様に、私はそううなずいたのでした。
しかしそんな優しい回復魔法でも、治せない病気はありました。
お母様はその不治の病に冒されてしまって、私が十五歳の頃に亡くなってしまいました。
亡くなる直前、お母様は私にお話になりました。
「ユキア。私は先に天国に行ってるわね。でも私がいなくて寂しいからって、後を追ってきては駄目よ」
「……分かっています、お母様……」
病床のお母様はとてもやつれていて、目には隈も出来ていました。
私はお母様の手を握りながら、泣いていました。
「泣いちゃ駄目よ、ユキア」
「……うぅ……ぐすっ……」
お母様は私を諌めましたが、私の目からは涙は止まりませんでした。
結局、私は泣き止むことが出来ないまま……お母様は静かに目を閉じました。
お母様の目が再び開くことは二度とありませんでした。
お母様が亡くなっておよそ一年後、お父様……私の本当のお父様が再婚しました。その女性が、いまのお義母様です。
「新しいお母さんと仲良くするんだぞ、ユキア」
「ユキアさん、初めまして」
お義母様は最初会った時、ニコニコと笑っていました。けれど笑っているのは口ばかりで、目は笑っていないことは私にはすぐに分かりました。
「……初めまして……」
「私のことはお母様って呼んでいいからね、ユキアさん」
「…………」
私はすぐには呼ぶことが出来ませんでした。
その後、お義母様が陰口を言っているのを聞いてしまったことがあります。
「私、嫌だわ、あの子。笑わないし、何考えてるか分からないもの。気持ち悪い」
「そんなこと言うなよ。もう家族なんだからさ、仲良くしてくれよ」
「何、貴方、私よりあの子の方が大切なの? 私を一番愛してるって言ってくれたから結婚してあげたのに?」
「もちろん君を一番愛してるさ。でもユキアとも家族なんだから仲良くやっていこうよって話で……」
「ふん。分かってるわよ。あの子も年頃だし、さっさと誰かと婚約させて、出ていくまでは仲良くしてあげるわよ。貴方の為にね」
「はは……ありがとう、助かるよ」
お義母様にとって、私はいらない子で、悪い子で、邪魔者のようでした。
それからさらにおよそ一年後、私が十七歳の時に、お父様が急逝してしまいました。
お医者様の診断によると、急性心不全とのことでした。おそらく普段の仕事の疲れや寝不足、偏った食事や生活習慣など、様々な要因が重なったのだろうとのことでした。
お父様が倒れた時、私は学園にいて、すぐに駆けつけることが出来ませんでした。
でも例えすぐに駆けつけられたとしても、治せたかどうかは分かりません。いくら私でも、即死に近い場合は治すことが出来ません。
お母様の死も、お父様の死も、そうなる運命だったんだ……私はそう思って諦めることしか出来ませんでした。
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